終章
ヴィエルジュの御使いの腕の中で、かつて人間の神として君臨した者が息絶える。
エイルリオンによって本来あるべき姿を取り戻し、太陽の力と月の剣によって人としての死を迎えた亡骸。
開いたままの瞳を悲しげに見つめた後。
御使いは紅の瞳の瞼を閉じ、俯く。
目的を達成した御使いは、亡骸をその場に置くと、リリーシアの元へ行く。
「エルは……。あなたに何を望んだの?」
「すべてが終わった後、この体をお前に返すよう頼まれた」
「どうして、そんなこと……」
「受け取れ」
魂の抜けた身体を抱きとめると、リリーシアは、そのまま崩れるように座り込んだ。
もう開かない瞼に向かって、大粒の涙を落とす。
「どうして……」
もう、答えることのない亡骸に向けて。
「どうして、エルが望んだ未来に、エルが居ないの……」
敵として定められたものは滅び、勇者の目的は達成された。
氷の大地で神々しく輝いていた大樹が光を失う。
生気を失った大樹は、一瞬にして枯れ果てた。
それは、妖精の女王の死。
彼女が最後に選んだ答え。
妖精の女王の選択に、あらゆる妖精が共鳴する。
世界中のありとあらゆる樹木が、草が、花が、一斉に色を失い崩れ落ちる。
大地が震え、遠く、竜の山からアンシェラートの手が飛び出す。
地上に張り巡らされた植物が枯れ、抑制されていたアンシェラートの力が次々と解放される。
大地を割り、海を裂き、地中深くから伸びたいくつもの手は、空を越えて、更に遠く彼方へ。
そして、とうとう創世の神と手を繋ぐ。
お
か
え
り
ま
い
だ
た
アンシェラートと、その片割れである創世の神の魂が手を結び、根源の神、オーへと還っていく。
大地が崩れ、自然が崩壊し、星の生き物が死に絶える。
その魂が片割れを求めて死者の世界へと押し寄せると、生まれることのない世界で魂は自らの片割れと共に一つとなり、全ての魂が根源の神、オーに還る。
それは世界の終りであり、はじまり。
END
~あとがき~
エル編バッドエンド「不協和音」
読んでいただき、ありがとうございました。
終わりました。
エル編だと何が起こってるか、さっぱりわからないかもしれません。
とにかく後味が悪い。
誰も救われない。
本当に救われない。
今回のバッドエンドは、アレクとの戦いで負けたことで、エルがヴェラチュール戦に対する保険(ヴィエルジュとの契約)をかけ、自己防衛を全く考えない戦い方をした為に起きてます。リリーとのコミュニケーション不足も大きいし、撤退の判断も遅い。……敗因を数えたらきりがないね、これ。
エルの防具は優秀です。攻撃力がカンストしてそうな紅の剣のクリティカルヒットを二度も防ぎました。けど、三度目はなかった。
逃走用の魔法の玉を持って来ていたら良かったかもしれないけど、どちらにしろ、エルがリリーが手の届く範囲に居なければ、すぐに離脱することは出来なかったので、詰んでた。
RPGのラスボス戦で世界を救えないって、きっと、こんな感じだと思う。
本当に救われない。




