1.前後不覚
Septarche2リリー編、Ⅲ.剣術大会編ラストまで未読の方は、ネタバレありです。
リリー編バッドエンド「計画を壊す者」
エル編バッドエンド「孤高の王者」とは違うストーリーです。エル編の方を先にお読みください。
Ⅲ.剣術大会編の終盤。「84 前後不覚」を差し替えた状態からスタートです。
ところどころ真ルートと違います。
また、全体の話の流れと若干違う部分もあります。
目次
1.前後不覚
2.胡蝶の夢
3.計画を壊す者
4.終章
優勝決定戦。
バーレイグを下段の構えで持つ。
…勝たなきゃ。
エルが刀を構える。
初撃に気を付けて。
大丈夫。
呼吸を、整えて。
「始めっ!」
審判の合図。
同時に、下段からエルに向かって突き刺す。
…あぁ、これ。久しぶりだ。
触れているのすらわからないぐらい軽やかな受け流し。でも、エルの技は何度も見てる。
引かずに、そのまま左に向けてなぎ払うと、エルが逆方向に後退する。
斬り返して、エルを追うようにバーレイグを振る。
今度はエルがバーレイグを刀で突き、私の攻撃の軌道をずらしながら後退。
風の魔法を使ってるから、追いかけてもきっと追いつかない。体勢を立て直すように構え直す。
エルは別の場所に着地して構え直す。
…そっか。場外にならないように位置取りも計算してるんだ。エルが立っているのは試合会場のほぼ中央。
今度はエルが私に向かって刀を振る。
速い。一気に間合いに入られた。
エルの振る刀を、刀身の下方、手元に近い部分で受けながら、後退する。
反撃に出られるような甘い攻撃はしてくれないな。このまま後退し続けるわけにもいかないし…。
エルの攻撃を、相手のリズムを崩すように軽く引いて受け止め、そのまま押し返す。そして、バーレイグを左から右に向かって大きく振る。
エルは鍔迫り合いを避けて私の攻撃を受け流し、突攻撃。
その攻撃をかわしながら、回転して攻撃を放つ。きっと回避されるだろうけど、エルを後退させることぐらいは出来るはず。
回転して振り返った先に…、居ない?
上!
バーレイグを振り上げながら頭上を仰ぎ見ると、エルの刀がバーレイグに当たる。
「良くわかったな」
エルが上に居ると思ったのは、完全に勘。
それ以外の場所だったら危なかった。
あれ?
エルの後ろ。
上空に、斑の光。
「フォルテ…?」
『エル!フォルテだ!』
『こっちに来てるわねぇ』
「なんだって?」
私の近くに着地したエルが空を見る。
「あいつ…。おい、審判。ドラゴンが来た。試合を中断して、観客を退避させろ」
言うと同時に、エルが魔法で飛ぶ。
「待って!」
「試合は中断!…市民の安全を!」
あっという間に、エルが皇太子席まで飛んで行ってしまう。
…置いて行かれた。
「リリーシア様!」
「リリー!」
「ライーザさん、マリユス」
二人が私の傍に走って来る。
「こちらへ」
「安全な場所に避難しよう」
避難?また?
「そんなの駄目。私も戦う!」
今は戦うための武器も持ってる。
「エルロックさんを追う気?避難中に観客の流れに逆らって皇太子席に行くなんて無理だよ」
「でも!」
ドラゴンの咆哮が聞こえて空を見ると、フォルテが皇太子席の近くで羽ばたく。
「エル!」
エルが連れて行かれちゃう。
『レイリスだ』
「…レイリス様」
観客席を飛び越えて、レイリスが私たちの側に飛んでくる。
「マリユス、ライーザ。観客の避難を優先しろ。闘技場は封鎖する。リリーは、」
「エルの所に連れて行って!」
「…俺が預かる」
「かしこまりました」
「お願いします」
ライーザさんとマリユスが走って行く。
「来い、リリー」
レイリスが私を抱えて空を飛ぶ。
皇太子席だ。
「アレクさん」
他の人は誰も居ない。近衛騎士も観客の避難を優先してる?
「困ったな。エルはもう行ってしまったよ」
レイリスが、リュヌリアンの鞘だけを持ってる。
エルは、フォルテとリュヌリアンで戦うつもりなんだ。
なら、私はバーレイグで。
「あの、私…」
「エルを追いかけたいんだね」
「はい」
「なら、レイリスに魔法で飛ばしてもらったら良い」
「魔法で?」
「何言ってるんだよ。リリーは魔法もろくに使えないのに、上に行ってどうするんだ」
「大丈夫だよ。援軍も来たようだからね」
空を見上げると、赤いドラゴンが飛んでる。
「ルーベル?」
自分と同じ種族と戦うのに、助けに来てくれたの?
「俺はフォルテ殺しは手伝わないぞ。フォルテを狙ってあいつが来る確率も高いんだし」
「そうだね」
「あいつって?」
「リリーシアも会っただろう。王家の敵だよ」
王家の敵が、フォルテを狙ってる?
どういうこと?
「こら。お前らが会ったのは本体じゃないぞ」
「なんだ。本体じゃないから殺さなかったのかい」
「あれが存在する限り、力を放出し続けなきゃいけないからな。本体がまだ封印されているなら、あれを野放しにして力を使い果たしてもらった方が良いんだよ」
「そんなに得策なことには聞こえないけれど。精霊は殺戮を嫌うからね」
…何の話し?
「でも、ブラッドドラゴンは野放しにできない。あれは精霊にとって無害でも、私たちにとっては害のあるものだからね。…それに、このままエルを一人にしておくわけにもいかないだろう」
レイリスが溜息を吐く。
「リリーをルーベルに向かって飛ばせば良いのか?」
でも、ここから飛ぶなら…。
「レイリス、フォルテに攻撃したいから、フォルテに向かって飛ばして」
鞘から抜いたバーレイグを構える。下段から斬り上げる感じで行けば良いかな。
「俺の話し、聞いてたか?」
「え?」
「俺はリリーを飛ばした後、助けに行けないって言ってるだろ。ルーベルに拾われなかったらどうするんだよ」
「えっと…」
『エルが助けてくれるんじゃない?』
「そうだね」
アレクさんが私の兜を外す。
「こうすれば大丈夫だよ。エルがリリーシアを落っことしたりするわけないだろう」
「落ちても知らないからな」
体に魔法がかかって、宙に浮く。
「いってらっしゃい。リリーシア」
「いってきます」
「ほら、飛べ」
真っ直ぐ空に向かって飛ぶ。
自分が矢になったみたいだ。
前にも体感したことのある砂嵐。でも、視界は良好だ。位置も良い。
まっすぐフォルテに向かって飛んで、バーレイグで攻撃する。
レイリスの魔法の勢いでドラゴンの皮膚を斬りつけた攻撃は、ドラゴンの肉を完全に切り裂くには至らず、途中で止まってしまった。
「あ…」
どうしよう。
こんなに深く突き刺さった場所で止まるなんて。
バーレイグに捕まってぶら下がる私に、何かが巻きついた。
『エルだ』
エルの魔法のロープだ。
急いでバーレイグを回収しなきゃ。
フォルテの体に足を着けて、バーレイグを動かしながら抜こうとするけど、全然抜けない。フォルテも暴れていて、上手く力も入らない。
『いつまでもしがみついてないで、エルのところに行きなよ』
エルが放った魔法のロープに引かれるまま、バーレイグを手放す。
あぁ。
「バーレイグが…」
ここで武器を失うなんて。
『エルがリュヌリアンを持ってるだろ』
そうだけど…。貸してくれるかな。
ロープで引かれて、ルーベルの背の上に居るエルの傍に着地する。
「何やってるんだよ!」
怒られた。
「レイリスに頼んで飛ばしてもらったの」
「はぁ?」
『流石リリーね』
「何考えてるんだよ!」
そんなに怒らなくても良いのに。
「だって、どこにでも連れて行ってくれるって言ったよ」
『エルが置いて来るからこんなことになるんだよ』
もう、エルを一人で戦わせることなんてしない。
それはアレクさんとレイリスの意思でもある。
「あのまま落ちてたらどうするんだ」
「大丈夫だったよ」
「俺が助けるのが間に合わなかったら、」
「エルは、ちゃんと助けてくれるよ」
「当たり前だ。俺が言ってるのは…」
『二人とも、痴話げんかしてる場合じゃないよ』
イリスの声に振り返ると、フォルテがブレスの予備動作をしてる。
戦闘中だった。
エルがため息を吐く。
「リリー。俺が援護するからフォルテの翼を斬り落とせ」
「でも、バーレイグはフォルテの首に刺さっちゃって…」
あれを取りに行くのは無理そうだ。
「だから、その…」
…怒られるかな。
「これを使え」
エルがリュヌリアンを出す。
「ありがとう!」
良かった。
これで戦える。
―「ブレスは回避するか?」
ルーベル。
ドラゴンのブレスならリュヌリアンで斬れるだろうけど、空中での位置取りは難しそうだ。下手をしたらルーベルに当たってしまう。
―「俺が防ぐ」
エルが?
魔法で?
『真っ向勝負する気か』
レイリスもやってたから出来るのかな…?
でも、エルが使ってるのは月の魔法じゃなく、氷の魔法の盾だ。
綺麗…。
いろんな形の結晶が空中に浮かぶ。
この前見た巨大な氷の盾じゃないけど、これで防ぎきれるのかな。
フォルテがブレスを吐いた瞬間、エルが吹雪の魔法を使う。
吹雪で視界が不良になって、体勢を低くする。
『大丈夫?』
「うん」
氷の盾が砕ける音だけが聞こえる。
…耐えた?
吹雪が止んで顔を上げると、今度はエルが炎と闇の鎖でフォルテを縛っている。
―「二度も同じ手が通用すると思うな」
フォルテ、魔法で縛られてるのに飛んでいられるんだ。
「借りるぞ」
「え?」
エルが私のウエストのリボンを解く。
「こんな場所でリリーと離れるわけにはいかないからな」
そして、私とエルの体をリボンで結ぶ。
―「ルーベル、フォルテの上空に飛んでくれ」
―「わかった」
―「リリーと一緒にフォルテに飛び移る。俺とリリーが落ちそうになったら、また援護してくれ」
―「良いだろう」
ルーベルが旋回しながらフォルテの背を目指す。
目が回る…。
酔いそう。
エルが私を抱きしめながら、フォルテに向かって飛び降りる。
こんな上空でも酔うなんて…。
でも、足手まといにはなれない。
エルから頼まれたこと、やりきらなくちゃ。
リュヌリアンを振り上げて、フォルテの翼めがけて振り降ろす。
真っ赤な血が噴き出して足元が傾く。…けど、エルが私の体を支えてくれる。
もう一度、攻撃を加える。
翼の一部が裂けてきたけど、こんな方法じゃ時間がかかりそうだ。もっと効果的な攻撃手段…。
―ドラゴン退治に使えそうな毒薬でも作ろうか。
「あのね、これ使ってみても良い?」
荷物の中から毒薬の瓶を出してエルに見せる。
「なんだそれ」
「ルイスがドラゴン用に作ってくれた毒薬」
エルが眉をひそめる。
あ…。
もしかして、エルには言わない方が良かった?
ルイス、ごめん。
「傷口にかけてやれ」
「わかった」
毒薬をフォルテの翼の根元にかけると、フォルテが大きな咆哮を上げてもがく。
すごい効果。
でも、さっきより足場が安定しない。
『リリー、もしかして酔ってる?』
「少し…。でも、まだ大丈夫だよ。酔いそうな感じがするってだけで、吐きそうな感じはしないから」
『それって大丈夫って言うの?』
「大丈夫!」
剣を振り降ろすだけの簡単な作業。
翼を斬り落とすぐらい、やらなきゃ!
―「何故、精霊が人間に味方するのだ」
傷口をもう一度斬ると、フォルテが叫ぶ。
さっきより攻撃が深く入る。
この調子なら…!
―「今と昔では違うんだよ!」
「いっけー!」
力を込めてリュヌリアンを振り降ろすと、翼の半分ほどが切り裂けた。
さっきまで上を向いていた翼が力を失くしたように落ちる。自力で自分の翼は動かせなくなったと思うんだけど…。
この状態でもまだ飛べるの?ドラゴンって。
―「おのれ…」
急に、背後で爆発音が鳴る。
何の音?花火?
「リリー、落とすぞ」
何かの合図だったのかな。
「離れるなよ」
「うん」
私を抱きしめるエルの体に腕を回す。
…あれ?周囲に起こってる風って、エルの魔法?
いつの間にか風の魔法陣が描かれている。
もしかして、翼を失ったドラゴンが飛べるのはエルの魔法があるから?
―「エルロック。真下に落とすというのなら、手伝ってやろうか」
ルーベルだ。
―「頼む」
エルが私を抱きしめたままフォルテの背から降りる。
一気に落下すると思ったけど、エルが砂の魔法を使っているのか、落ちる速度は緩やかだ。
頭上で、ルーベルがフォルテの尻尾を咥えて、フォルテを地面に向かって投げつけてるのが見える。
真下は闘技場。
観客席に人はほとんど居ない。何人かが弓を持ってるから、兵士なのかも。
観客の避難は、もう終わってるんだ。
ルーベルが飛んできて、私とエルを背中に乗せる。
―「あの翼では、もう飛べないだろう」
―「手伝ってくれてありがとう、ルーベル。俺たちはこのまま地上に降りるよ」
―「では、さらばだ」
もう一度ルーベルの背からエルと一緒に魔法で飛びおりながら、ルーベルを見送る。
闘技場では、飛べなくなったフォルテと、兵士や魔法使いたちが戦っている。
飛べなくなってもブレスの威力は健在だ。複数の魔法使いが防御魔法を使っているのが見える。
エルがリボンを解いて、私の腰に結び直す。
「イリス、ナターシャ。リュヌリアンに宿ってリリーを援護してくれ」
『了解』
『わかったわ』
イリスとナターシャがリュヌリアンに宿る。
そういえば、エルが初めてフォルテと戦った時。フォルテのブレスを斬った瞬間、ブレスが氷結してたよね。
それはリュヌリアンに二人を宿してたからなんだ。
深呼吸。
地上なら酔うことはないから全力で戦える。
「行ってくる」
きっと、今のリュヌリアンはフォルテに対して一番効果のある属性になってるに違いない。
このまま止めを刺す。
真っ直ぐ、フォルテに向かって走る。
「通して!」
兵士が開いた道をまっすぐ駆けて、フォルテの首に向かって攻撃を仕掛ける。けど、フォルテが首を振り回す。…簡単には狙わせてくれないよね。フォルテの攻撃をかわし、その頭に向かって攻撃すると、フォルテが傷のついていない翼を羽ばたかせて風を起こす。
リュヌリアンを地面に突き刺してその風に耐え、風が止むと同時に翼を斬りつける。回避行動を取られたせいでダメージは浅そうだ。
「撃て!」
誰かの号令に合わせて矢が降り注ぐ。
翼を羽ばたかせてフォルテがその攻撃に対抗してる。
下段からリュヌリアンを振り上げて、フォルテの首を斬りつけると、フォルテが私を睨む。
もう一度…。
攻撃を加えようとしたところで、足元が真っ黒になるのが見えて、その場から離脱する。
前も見たことのあるエルの魔法。
地面から溢れた闇がフォルテの体を縛って動きを封じる。
もがけばもがくほど絡む闇。
対抗するようにブレスの予備動作をしたフォルテめがけて氷の魔法が突き刺さり、フォルテがその衝撃で首の付け根を私の目の前にさらす。
―首の付け根に心臓があるよ。
その付け根めがけて、リュヌリアンを突き刺す。
大きく、鼓動が波打つ音。
まるで、心臓を掴んでいるかのような感覚。
フォルテの心臓の鼓動が、リュヌリアンを通じて伝わってくる。
『リリー、下がって!首が落ちてくる!』
手放しかけたリュヌリアンを握り直す。
リュヌリアンを引き抜きながら下がると、首の付け根から鮮血が噴き出した。
視界を染める、血の赤。
そして、ドラゴンの大きな頭が地面に落ちて砂埃を上げる。
その瞳は閉じたまま開かない。
…なのに。
手から伝わる心臓の音が、耳から、体から離れない。
この音は、私のじゃないのに、どうして?
目の前の亡骸を見る。
あぁ。
私が、奪ったからだ。
フォルテの命を。
「大丈夫か?」
私の傍に来たエルが私を抱きしめる。
「エル…」
体の震えが止まらない。
「私…」
これが、生き物の命を奪うってことなんだ。
「エルが言ってたこと、ようやく分かった気がする」
「俺が言ってたこと?」
「誰かを殺したいなんて願わないでって」
「リリー…」
「フォルテは、殺すべきだったんだよね?」
なんだか、悪い事をしているみたい。
こう思ったのは二度目だ。
一度目は、紫竜ケウスがブラッドに堕ちた理由をアレクさんから聞いた時。
フォルテは、どうしてブラッドに堕ちたんだろう。
それも人間のせいだったとしたら…?
こうする以外に方法はなかった?
私がしたことって、良かったの?
エルが私の頭を優しく撫でて、その腕に私を包む。
「そうだよ」
エルの鼓動の音が聞こえる。
いつもの、落ちつく音。
エル…。
Take1(フォルテ戦)
優勝決定戦において、お互いの素性は知らない状態。
レクス(エル)は彩雲と逆虹を持ち、精霊の光を隠す防具を装備。
バーレイグ(リリー)はバーレイグを持ち、白銀の全身鎧(もちろん頭部を完全に覆う兜も)装備。
優勝決定戦で二人が向かいあって、試合が始まろうとした瞬間。
ドラゴンの咆哮が響き、フォルテが襲来する。
⇒リリー視点
『フォルテだ』
えっ?この声、メラニー?
『こっちに来てるわねぇ』
ユールまで居るの?どういうこと?
仮面の騎士、レクスが空を見上げる。
「あいつ…」
この、声…。
「おい、審判。ドラゴンが来た。観客を退避させろ」
エル?
レクスの正体はエルなの?
「バーレイグ、試合は後回しだ。俺はあいつに用がある」
言うと同時に、エルが魔法で飛ぶ。
「エル!」
叫んだけれど、エルはもう空の高いところを飛んでいる。
『リリー。ボクも行くよ』
「イリス、知ってたの?」
『知ってるよ。知らないのは二人だけだ』
イリスがエルを追って飛んでいく。
…エル。
「リリー」
「レイリス!」
レイリスが私の傍に飛んでくる。
「どうしよう。エルがまた一人で戦ってる。私…」
「上に行きたいって言うなら、飛ばしてやっても良いぜ」
「飛ばす?」
空を見上げる。
「エルの所に送ってくれるの?」
「あぁ。こいつを持って行って欲しいんだ」
「リュヌリアン!ずっとレイリスが持ってたの?」
「当たり前だろ。俺はエルの代わりにずっと皇太子席に居たんだぜ」
そっか。あの金色の光は、エルじゃなくてレイリスの光だったんだ。
「私、持って行くよ」
レイリスから貰ったリュヌリアンを背負って、バーレイグを持つ。
「両方持って行く気か」
「私もエルと一緒に戦いたい。このままバーレイグでフォルテに攻撃ってできる?下から振り上げる感じで行きたいの」
「わかってると思うが、砂の魔法は攻撃魔法。俺がリリーに魔法を使えばリリーは魔法の攻撃を…」
「大丈夫。魔法の攻撃で気を失うことなんてないから」
「魔法を甘く見るな。話しは最後まで聞け。砂の魔法の攻撃を受けるが、その鎧で魔法の効果は軽減できる。俺が飛ばせるのは、その鎧が崩れるまで。その間に攻撃が出来るならやれば良い。上に行けば、たぶんルーベルが助けてくれる」
「ルーベル?」
見上げると、赤いドラゴンが飛んでいるのが見える。
手伝いに来てくれたんだ。
「わかった。まかせて、レイリス」
「じゃあ、行くぜ」
レイリスの魔法で体が宙に浮く。
「ほら、飛べ」
前にも体感したことのある砂嵐。
真っ直ぐ、空の高みへ…。
後、もう少し。
フォルテに向かってバーレイグで攻撃した瞬間、装備していた白銀の鎧が崩れた。
レイリスの魔法の勢いを失ったバーレイグの攻撃は、中途半端な位置で止まってしまう。
「あ…」
どうしよう。
こんなに深く突き刺さった場所で止まるなんて。
バーレイグに捕まってぶら下がる私に、何かが巻きついた。
それに引かれて、ルーベルの方に向かう。
⇒エル視点
地上から放たれた一筋の光が、フォルテに向かって攻撃する。
「なっ…」
何だあれ?
人間?
…あの姿。
「バーレイグ?」
白銀の鎧を身にまとった優勝決定戦の相手が、バーレイグでフォルテを攻撃してる。
…と。次の瞬間。白銀の鎧が砂のように崩れ、長い黒髪が現れる。
「!」
風のロープを編んで、バーレイグに捕まる体を縛り上げて、自分の方に引き寄せる。
無事に自分の傍まで来た相手を抱きしめると、大きな輝く黒い瞳が俺を見上げる。
「あの…。リュヌリアン、届けに来たよ」
「……」
言いたいことが多すぎて。何から言えば良いかわからない。
END.
…というわけで。
没ネタです。
Septarche2を書き始めた当初の構想では、リリーがレイリスの庇護下に居ない(リリーがレイリスに封印魔法を使われていない)状態だったので、レイリスの魔法が効く→鎧が崩れる→正体がばれる。というわけで、お互いの正体がばれるのはフォルテ戦の予定でした。
その為に特注の鎧まで用意したのに、このシーンを使うことはなかったんだよなぁ。
リリーが地上からレイリスに飛ばしてもらってフォルテに攻撃、ってシーンが入れられただけましなのかな。
真エンド進行では、アレクの演説?も何とか入れられたし。
アレクとロザリーに関して言うなら、優勝者パレードをリリーが辞退して、アレクとロザリーが婚約披露のパレードをするって案もあったんですが、あの人が来たせいで、それどころじゃなくなってしまいました。
予定通りにはいかないものです。




