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力を求めて

 まず渡されたのが、蝋で封をされた手紙。


「これは私が懇意にしているナドップの鍛冶工房の紹介状だ。ここにも聖戦器が一つある」

「鍛冶、となると槍か?」

「その通り、かつて悪魔が使ったとされる槍を磨き、鍛え上げた物だ」

「ああ、振る武器がすぐ壊れるからって襲いかかってきた悪魔から分捕った槍を修理に出したら綺麗になって帰ってきた奴じゃな?」


 こうなってくるともう歴史の真実を紐解きたくなくなってくるぞ。


「その時の鍛冶士達の末裔が作った工房だ。腕は確かだ」


 受け取った手紙をそのまましまう。


「もう一つは今持ってきて貰う」


 ラファエル王が鈴を鳴らすと、側仕えの人たちが大きめの箱を運んでくる。


「報酬というよりかは、使い道が分からない物を譲るという方が正しいのだがな。売り払っても構わないし、何らかの役に立ててくれてもいい」


 ディーサ伯爵の財産を没収した際に見つかった物だ、と箱を開けると、そこには人が入っていた。


「いや、人じゃ無いな。人形か?」


 真っ白な髪の毛に青い瞳、それに整った顔立ちに、それとなく分からないように間接部を隠す軟質系の素材。


 一見すると人間だが、決定的な差異はお腹の部分に大きめの穴が開いていること。

 そしてボディバランスは人のバランスというよりかは、人形などの芸術品のような印象を受ける。


「常々思うんだが、胸について大きいだの小さいだのとと言うよりかはいかにその体に合うかどうか、その一点に尽きると思うんだわ」


 つまり、ある程度出ているが、全体の調和が取れた感じ。


「お主が何を言っているのかは分からんが、これは魔道人形じゃな。魔王の時代以前に使われていたと言われる兵器じゃ」


 魔道人形、いわゆるゴーレムやオートマタとかそういう奴か。


「最初は伯爵の趣味かと思ったが……なるほど、魔力で動く人形か」


 宮廷術士に頼んで動かして貰おうか、とラファエロ王が呟く中、プルミが飛び乗る。

 そしてそのまま腹の穴に飛び込む。


「おいおい、そこは巣穴じゃないぞ」


 そう言った瞬間、プルミから溢れる魔力。それが一気に人形に伝わり、その目を開かせる。


「起動シーケンス、開始。魔力炉心からの魔力供給開始。システム初期化、マスターをシステム接触者の呼称『プルミ』へ設定」

「こやつ、自分を動力源にこの人形を動かしおったぞ!?」


 このドラゴンこれ以上属性増やすつもりか!


「き、きき、きどどどう、エラー、問題なし。あー」


 なんか様子がおかしい。というか全身の関節という関節が変に脈動しているというか、これ一歩間違えたらクリーチャーな動きだこれ!


「システムに不正なプロトコルが検出、術式改竄発生、危険、きけききききき―――修正完了」


 それだけ告げて、人形がこちらに向き直る。


「ふんっ!」


 繰り出される拳、それをすんでの所で避ける。


「いきなり何する!」

「じゃかしや! おんどれの胸に聞かんか!」


 そのまま何度か振るわれた拳を避け、取っ組み合いになる。


「つーかお前プルミか!」

「それ以外の何に見える! この大戯け!」

「見えるわけ無いだろ!」


 とりあえず軽くいなしてから距離を取る。


「というかウサギなのに本体はドラゴンってだけで属性過多なんだよ! その上人形だぁ!? もう聖戦士時代からのなんやかんやに振り回されるのは疲れたんだよぉ!」

「ええい落ち着かんか!」


 氷の剣が声を上げ、いったん二人そろって休戦にする。


「命拾いしたのぅ」

「そっちがな」


 ソファに座り直す。しょうが無いのでスノーバインダーで服を編み始める。いくら人形とはいえ、全裸だとこっちがいたたまれない。


「それで、プルミなのかの?」

「その通りじゃん。ちょっと動かす体にしようと思って動かしてみたら、こっちのことを制御しようとしてきたから返り討ちにしてくれたわ」


 なんかプルミの口調が安定しない。


「会話にこの人形が覚えてた物使ってるんだけどぉ、なんか知らんが壊れたんかいろいろ混ざっちょる。まぁ、支障ないけん」


 いやすっごい聞き取りにくい。


「早速だが、君にその人形を預けて良かったと思う」


 そのラファエル王の言葉に、ものすごい不敬をやらかしていたことに気がつく。今はもう人じゃ無いからあまり気にもしてないが。


「失礼しました」


 それでも最低限の礼儀だけは保っておこうと思う。


「いや、構わない。おもしろい物を見せて貰った。では、依頼については頼んだ。何か分かったら、港街の酒場で『アンダーに伝言』と伝えてくれ」

「アンダーじゃと?」


 氷の剣が怪訝な声を上げる。


「氷の剣殿はアンダーをご存じでしたか」

「どういう関わりじゃ?」


 その言葉に、俺とファレ、それとベルでいろいろやっていた時のことを思い出す。


「ああ、チェルシーに俺の居所を教えたっていう怪しい奴か」

「彼が怪しいのは私も認めているが、腕は確かだ。各地で私の耳になってくれている」


 なるほど、そのアンダーが何らかの事情をもって、チェルシーに俺の居場所を教えたのだろう。


「すでにアンダーへ創世教を探るよう伝えてある。何か分かったら情報を共有する」

「分かった。何か分かったときは伝える」


 話が終わった後、ラファエル王の執務室を後にする。

 部屋の外で待っていたと思われる執事から、お金った袋を渡される。


「こちら、今回の騒動における謝礼と、王命を行うための資金でございます」


 中を確認すると、金貨が十枚ほどと銀貨で二十枚くらい。一介の冒険者に渡す量としてはかなりの奮発だろう。


「くれぐれもどうか、我が国の宝をお願いいたします」


 非常に綺麗なお辞儀に、ついこちらも深々とお辞儀を返すのであった。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




「という訳で新人のプルミ君です、皆、仲良くしてやってな」


 とりあえず間に合わせで作ったシャツとズボンを履かせてプルミを皆の前に連れてくる。


「ウィッシュ! プルミだよん」


 笑顔で迎えようとしてた三人が固まる。魔道人形、なぜ今その言語でしゃべった。


「この通り、プルミ君は少々言葉がおかしい時があるが、基本は無害だ」

「好きでこうしてる訳じゃないやい!」


 繰り出される回し蹴りをしゃがんで回避。


「よくもまあ人の鱗だの血だの散々っぱら食い散らかしてくれたのぅ! 巨人狩ったりワイバーン食べたりと回復に忙しかったんやで!」

「こっちだって土手っ腹に風穴開けられたり、全身の骨が粉状になってタコみたいな軟体生物にさせられたり本気で生死の境を彷徨ったんだぞ!?」


 カウンターで攻撃を合わせながら全力で殴り合う。


「スノゥ様、プルミ? 少し静かにしましょう?」


 お互いに拳を振るおうとした瞬間、その間に巨人の手斧が差し込まれる。そして手斧の堅い本体部分に拳がめり込む。


「ぎゃああああ! 私の手斧に見事な拳の後がくっきりぃ!?」

「手! 手が折れる!」

「手の部分にすごい負荷が! 体から警告がものっそくでてるぅ!?」


 三者三様で絶叫が響く。


「それで、創世教の情報は何かあったか?」


 俺がラファエル王に会っている間、それぞれの視点で情報収集を頼んでいた訳だが、


「騎士団の人たちにはあまり接触がなかったみたい。接点があったと思われる人たちは軒並み賊軍に回ってたみたい」


 数少ない関係者も末端程度でそんなに情報がなかった様子。


「でも、クーデターの直前辺りは活発に動いてたみたい」


 それも戦況が悪くなると同時に蜘蛛の子を散らすように消えたらしい。


「宮廷術士の人に話を聞いたけど、何人かに勧誘が来てたみたいだったよ?」

「うん、しつこくて皆困ってたみたい。それも、水と土の術士の人は相手が本当にしつこかったって」


 いい情報だ、ファレとベルには飴をやろう。


「ここだけの話になるが、生命の樹の種が盗まれた」


 沈黙が支配する。


「それでだ、これからの目的は生命の樹の種を取り返すというのも追加されたが、それよりも先にやることがある」


 俺の言葉に全員が息を飲む。


「装備の強化だ。特にチェルシーとベル」

「うん、なんとなく分かる」

「私はこの斧で問題ないけど……」


 ベルについては、今も自前で作った氷の槍で戦闘している。メインが術だが、節約もしないといけないので、槍の強化は必須だ。


「チェルシー、お前の斧の柄、何本目だ?」

「七本目だよ?」


 そう、七本だ。ここ最近の戦闘で、かなり強靱に作った圧縮雪の柄が何本もひしゃげるのである。


「かなりの量の雪を圧縮しているのにもかかわらず馬鹿力でポンポンへし折るから、新造して貰う」


 というかこの間ベルと協力して作った限界まで圧縮した雪の棒が三日と立たずに曲がったことからすでに限界が見えていた。


「でも、そんな物、出来るの?」

「作って貰う、力尽くでもな」


 まあ、力尽くの部分は冗談だが。これで、次の目的地は決まった。

 情報収集も兼ねて、一度ナドップに行こう。


「おっと、そうなったらアトラ姫に挨拶に行かないと」


 あらかじめ教えられていたアトラ姫の部屋に向かう。そして部屋のドアをノック。

 しばらく待つが反応がないのでもう一度ノックするが、やはり反応無し。


「失礼、」

 ほんの少しだけドアを開くと、そこにはラファエル王の肖像画が大量に壁に掛けられている部屋の中で、等身大の人形を抱きしめるアトラ姫の姿があった。


「もう、お兄様、こんなところで、誰か来たらどうするおつもりですの? お兄様ったら大胆なのですね」


 絡みつくような抱きつき方をするアトラ姫。これはあれだ、練習という奴だろう。なんのとは絶対に問わないが。


「しました」


 そのまま静かにドアを閉じる。


「どうしたの?」

「留守だった。出直そう」


 ファレにはまだ早い。おそらく後八年くらいは。

 そっと心に鍵を掛けて、俺たちはその場を去るのだった。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




「アーテル王国の始まりはアリスタポートで、終わりもまたアリスタポートか」


 再びの船旅に、今度はどうやって暇をつぶそうかを考える。


「それで、なんでアトラ姫がここに?」

「お見送りですわ。執務で忙しいお兄様の代わりというのもあります」


 港には騎士団の人間、それにアトラ姫が見送りに来ていた。

 騎士団の人間は護衛を残して、チェルシーに群がっている。なんか滞在中騎士団のアイドル状態だったし、妥当か?


 そして一人だけいた術士の人はベルとファレに本を渡している。表紙からして術の本だと思われる。


「騎士団と宮廷術士を代表して来たそうです。団長と筆頭術士は執務の関係で来れないことをそれはもう悔しそうにしていました」


 愉快な国ですね。


「私もお兄様も助力は惜しみませんが表だって動けないので、アンダーを通して協力いたします。それと、これはお兄様と私からです」


 渡されたのは、樹で出来たナイフ。


「モルジュロペラが生み出した樹で作った守りのナイフです。何かの役に立つかも知れませんので」


 丁重に受け取り、懐にしまう。


「ありがとよ、依頼果たし終わったらまた来る」


 お互いに握手をし、短い間の仲間と別れる。


 旅は、まだ続く。

これでこの章は終了となります。

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