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幕間 巨人の剣とその素材に関する考察

「しっかし、デカいな。氷の剣もかなりの大きさだけど、これはそれを上回るな」


 よく使い込まれた外観の剣で全長は三メートルほど。名付けるなら巨人の剣になると思うが、ちょっとした違和感に気がつく。


「これ、何か線入ってないか?」


 剣の形状としてはシンプルな二等辺三角形を描くような物だが、切っ先から真ん中を通るように柄まで線が引かれている。


 そしてそこにはわずかばかりの溝、いや隙間。


「これ、こじ開けられる?」


 試しにナイフを突き立てると、隙間が広がり、剣が真っ二つに割れる。


「まさかこんなので壊れるか?」


 いや、さっきまで氷の剣と打ち合っていたんだ。少しは歪みとかそういう物が現れても、と思ったが真相は違った。


 真っ二つに割れた刀身を横にどけると、中に剣が一本収まっていた。巨人の尺度からするとナイフくらいのものだろうか。


 無論俺にしてみれば体くらいはある大物だけど、普通の人であれば片手剣サイズだろう。


「つまり、何かするときはこのナイフで作業して、敵と戦うときはこの外付けの刃を使う訳か」


 この剣を覆う鞘であり、鞘自体が巨人の武器であるといったところか。

 氷の剣の知識によるとこの剣は巨人の体内で生成、巨人が死ぬまで体内で成長を続ける剣で、縄張り争いの際は倒した巨人からこの剣を取り出し、自身の力のほどを示すのだそうだ。


「つまり胆石とかそういう感じの物になるのか」


 少し嫌な気分だが、竜の骨とか普通に工芸として使っている身としてはその程度の事は飲み込まねばなるまい。


 取りあえず、先頃作ったワイバーン革バックを取り出す。このバッグには便利な魔法である無限収納という術を付与してあり、重さや大きさに関係なくありとあらゆる物を収納出来る様になっている。


 この無限収納に関しては氷の剣の世界を作るという部分の術を応用している。

 ほんのさわりしか引き出せなかったが、本来の世界にほんの少しの隙間を空けてその空間を拡張して世界としているとのこと。

 この場合のほんのすこしがどれだけの規模によるかで世界の大きさが決まるんだそうな。


 では、それを鞄の中に適用するとどうなるか、というのを目的に氷の剣の知識を引き出そうと試みたところ、ほんのわずかな世界を作る術式を貰った。


 なんとなくだが、氷の剣に意思の様な物を感じることがあり、その意識がこちらへの知識提供の有無を決めているのだろう。


 そしてこの小さな鞄に使った術式はこの世界を作るのにフィードバックされるのだろう。それこそが氷の剣の目的なんだけど。


 話が逸れてしまったが、再び巨人の剣とナイフを見つめながら考える。


「鞘となる刀身は仕舞って、剣は飾ってみるか」


 剣を壁に半分埋め込む形で飾ると、なんだか非常に良いインテリアになった。


「鞘の方も何かに使えないか考えてみよう」


 なにせ氷の剣を普通に受け止めるだけの武器だ。何かに利用出来ないか試してみたい気持ちで一杯だ。

 一体どんな物が出来るのかが、非常に楽しみだ。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○



「というわけで、巨人の剣の実験と参りましょうか」


 用意したのは、巨人の剣の鞘の方。これがどれくらい堅いかを検証するため、まずは雪のナイフで切ってみようとするが、逆にナイフの刃が潰れた。


 次は氷の剣を抜いて切ってみる。こちらはあっさり切れたが、切った断面は光の当てる角度によって虹色に光る。


 しばしその光景を堪能した後、今度は内側だった部分に雪のナイフを当ててみると、こっちには切れ込みが入った。


 内側は柔らかく、外側は堅いか。そう思ってもう一度内側にナイフを当てるが、今度はナイフが弾かれる。


 よく見ると虹色の部分があっという間に鈍い鋼色に変色する。


「酸化とかで堅くなるのか?」


 もう一度氷の剣で切り、今度は切った断面を術で凍らせる。すると氷を当てた瞬間に鋼色に変わる。

 ならば、と鋼色の部分にファイヤーブレスを当てる。変化無し。虹色の部分に当てると、飴細工の様に融ける。


「俺のファイヤーブレスってワイバーンに比べてそんなに温度高くないはずだよな……」


 俺のブレスがライターだとしたら、あっちは芝焼き用バーナーだ。

 こちとら雪妖精ベースなのでどうしても火力が上がらない。相当魔力を込めれば実戦でも使えるのだが、その分の魔力を別なところに回した方が効率が良い。


 つまり、巨人の剣の材質を纏めると、ベースは虹色に輝く柔らかい物体だが、冷却されると性質が変化して非常に堅くなり、以降の変化をあまり受け付けなくなる。虹色の状態の時は低温の炎でも融ける。


 さらに試してみるため、融かした虹色液体を外から汲んできたキンキンに冷えた水に突っ込んで見る。

 すると虹色の光沢そのままに固まった。ただ、雪のナイフを受け付けない位には堅くなっている事から、急冷すると虹色の光沢そのままに鋼色の状態になったと思われる。


 これは面白いかもしれない。試しに氷で鋳型を作り、ブローチを作成。流し込んだ液体が固まり、虹色に光る。


「巨人の虹色石かな?」


 どれくらいの速度で冷却しなくちゃいけないかは分からないけど、少なくとも、しばらくの間は楽しめそうだ。


 今度はもう少し巨人の剣を集めてこようと思った。

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