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パーティーと暗躍する影と報酬と

「此度の戦いにおいて、重要な役割を担った者達を讃え、これより叙勲式を行う」


 二度目にもなればこういった衣装も慣れた物。とは行かない。


「駄目だ、モツはみ出そう」


 スノゥ・ドラコリィ、この世界に生を受けて早四年ほど。二度目の胴体圧迫による耐久限界に挑戦しております。


「―――」

「だ、大丈夫?」


 式の序盤だというのに、すでにベルがモツどころか魂まではみ出そうな状態です。ファレも苦しそうですが、まだなんとか余裕がある様子。


「前回、生意気言って済みませんでした」


 前回はコルセットを免れたチェルシー選手ですが、今回はしっかりと強度を持たせた特注品を使用して、ウエストサイズの二十センチ減に成功。


 どんなに体に力を入れようとも、その拘束具は外れない様子です。


「良かったな、魔獣の革で出来たインナーなんてなかなかお目にかかれないぞ」

「うれしくないし、着ないし」


 普通に動きが制限されるから着ないよな。


「我が妹を守るために協力してくれた勇士達、その代表としてスノゥ・ドラコリィ、前へ」


 おっと、モツが出そうな地獄と格闘している内に出番か。俺を先頭に、後ろにチェルシーとベル、ファレが続く。


「貴殿とその仲間は臣下で無いにもかかわらず、我が妹の窮地を救い、その身を守り抜くという勇気を見せてくれた」


 その栄誉を称え、ナイトの称号を贈るとラファエル王が宣言し、騎士勲章を四つ渡される。


「卑賤な身にはもったいなき栄誉。謹んで賜ります」


 お付きの侍女達が勲章を胸の辺りに付ける。樹の枝を模した剣のエンブレムに、この国らしさを感じた。


 事前に伝えられた通りの作法で礼をし、そのまま最初に並んでいた位置に戻る。特に変な声も上がらなかったので、問題は無いだろう。


 こうしてつつがなく式を終えた俺たちだったが、


「ここからが本当の地獄だぜ……!」


 式典の後は当然ながらパーティーである。


「その白銀を思わせる剣で姫様に害為す者を切り捨てた訳ですな、スノゥ殿」

「いやはや、本能で行動することが多いと聞いていた妖精ですが、理性的な面もあるのですな」

「ささ、こちらは特産であるアルテの木の実です、召し上がってください」


 俺たちは今、貴族から全力でツバを付けられている最中である。

 表面上の透明度が高いだけの笑顔を浮かべ、軽くあしらうようにして取り入ろうとする輩を言外に切り捨てる。


 ほかのメンツの方を確認すると、まずはベルとファレはいかにも学者肌と言わん空気を出しているじいさんに絡まれている。


「えっと、まずは魔力を感じて、その後にどういう形にしたいかを決めて、それを魔力で表現するってスノゥは言ってた」

「なるほど、式を決めてからイメージするのでは無く、イメージを決めてから式を書くのか。まさしく逆転の発想じゃな」

「さすがにそれだけじゃあ無駄が多いので、できあがった式から余計な部分を取り除いて整理するという作業も必要ね。魔力の大きい人用の術の組み方と言えるわ」


 やや専門的な内容に寄った話なので、周囲の貴族が近寄れない様子。まあ、下手にファレに接触したりしても悪影響しか及ぼさないから、結果オーライだが。


 そういえばチェルシーはどうしたと思いながら会場を見渡したが、どこにも居ない。


「ん?」


 いや、窓の外、練兵場となっている一角が見えるが、そこに見覚えのあるメイド服姿が。


「せい!」

「なんの!」


 あのー、なんで騎士団の人たちと手合わせしているんでしょうかあの子?


「まだまだ技術は荒いが思い切りの良さがある! 独学か!?」

「半分独学、もう半分は、巨人かな!?」


 訓練用のハルバートを振るい、騎士団の人と汗を流すチェルシー。騎士団とはコネクションが出来そうだが、それでいいのか脳筋メイド。


「楽しんでいるかな?」


 聞こえてきた声の方に顔を向けると、そこにはラファエル王が。即座に跪く。


「そう畏まるな。私も所詮は王という役割を剥けばただの人だ」

「そうは言いましても……」

「なるほど、妖精というよりかは人間なのだな、君は」


 楽にして良い、と言われたので、跪くのを止める。


「アトラから話を聞かせて貰ったよ。その剣のことを含め、後で私の部屋に来て欲しい」


 それだけ告げて、ラファエル王は別の受勲者の元へと向かった。


「……どうする?」

「行くしかあるまいて」

 面倒な話だが、行くしかあるまい。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




 パーティも終わり、ラファエル王の部屋に全員で向かう。


 通された部屋は、王の執務室であり、重厚な机が置かれている。調度品も全体的に落ち着いた色合いでまとめられている。


「まあ、掛けたまえ」


 ソファに全員が掛けるとラファエル王が口を開く。


「アトラから聞いたが、その雪の剣の内側に氷の剣が納められていると言うが、本当かな?」

「その通りですラファエル王」


 久しぶりに圧縮雪のカバーを外すと、そこには氷で出来た、透き通った刀身が現れる。


「なるほど、伝承にある通りだな。諸君らのこの国へ来た目的を聞きたかった」

「今回の件が創世教信者の手引きであることを聞いたので、個人的な借りを返しに来ました」


 奴らが聖戦器と魔王器を集めていることを知り、目的がアーテル王国のモルジュロペラであることを知ったということも付け加える。


「そうか、そういうことか。よく理解した」


 王の顔に渋面が浮かぶ。


「城の宝物庫が荒らされた。そして無くなっていた物が二つある。一つは其方らの情報通りモルジュロペラだ」


 王から告げられた言葉に、一瞬思考が飛ぶ。

 現在は箝口令を引き、そのこと自体を伏せているとのこと。


「アトラ姫から聞きましたが、王族で無いと開けられない扉であると聞きましたが」

「最初からそのつもりだったのだろう。宝物庫の壁が破壊された」


 何というか、一時期流行った重機でATMを根こそぎかっさらう強盗みたいな感じだな。

 どうやら、賊は目的の物を奪うと、すぐに逃げ出したらしい。


「ふん、アステルと似てしたたからしいな」


 氷の剣が声を上げる。


「これが、氷の剣の声、か」

「特別に聞こえるようにしておる。しかし、そのお主の背後に掛けられている剣がモルジュロペラじゃろ?」


 バレたか、という表情を浮かべ、後ろの壁に掛かっている剣を取り、鞘から抜く。

 たったそれだけ、それだけで王の体から力が溢れ出てくる。見た目は木の枝をただ削った様な刀身に見えるが、あふれ出る清浄な空気がこの剣が生きていることを教えてくれる。


「宝物庫のモルジュロペラはただの儀礼用の模造剣なのでな」


 元々今回の件を怪しんでいたラファエル王が、宝物庫からモルジュロペラをあらかじめ取り出し、儀礼用の物とすり替えておいたらしい。


「今頃彼らも慌てているだろう、信じて金庫破りをして入手した聖戦器が儀礼用の金属製の剣にすり替えられていたなんて……! とな」


 それは愉快な話だ。真相が発覚した瞬間が見られないのが非常に残念だ。


「しかし、奴らの目的は達せられたとみるべきだ。もう一つ盗まれた物として、生命の樹の種だ」


 噂の鉛と鉄の小箱に保管されているという話の物か。


「モルジュロペラで出来ることを、生命の樹の種で出来ないことも無いだろうと、私は考えている」


 親戚どころか直系の子孫であれば生命の樹に至れるかもしれない。


「ところで、ワシも知らんのだが、生命の樹とはどこにあるのじゃ?」


 アステルと出会った頃にはすでにモルジュロペラを所持していたとのこと。


「アステル王の遺言により、王にのみ口伝で伝えられ、口外を禁じられております」


 ただ、生命の樹を追い求める者に対して一言だけ伝えるように言われている言葉があるとのこと。


「そんな物はこの世界に存在しない、と」


 存在しない? 現にモルジュロペラは存在するから、一種の謎かけなのだろうか?


「なるほど、それならば見つけることは叶わないな」


 氷の剣は何かを察したように、そのまま黙り込んだ。


「それで、君たちに依頼がある」

「生命の樹の種を取り返してくれ、か?」


 その通りとラファエル王が頷く。


「奴らが生命の樹へ到達できるとは思わない。しかし、生命の樹の種はきっと世界に災いを呼ぶ」


 だからこそ取り戻す必要がある、とラファエル王がモルジュロペラを鞘に収めながら言う。


「分かった、あの野郎をぶん殴るついでに取り返してくる」


 どうせ、アリアンに借りを返さないといけない、ついでの仕事が少し増えるだけだ。


「では、前払いということで、二つほど渡したい物がある」

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