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触手プレイはきっとロマン。

「で、どうしてこうなった……」


 現在俺がいるのは街を離脱する人達の最前列。先頭集団とも言う。


 事のあらましはこうだ。


 宿で代金を支払い、引き払った後のこと。街の中央広場でこの辺りの地図を広げながら輪を作る。


「まず、これから隣のネルソンポートへ移動するけど、そこでの滞在期間の検討を付ける必要がある」


 具体的には、あの手紙の解読が完了するまでになるのだが。


「ベル、どれ位掛かりそう?」

「一週間は欲しい、かな?」

「ファレも手伝うね!」


 目安はそれくらいか。


「スノゥ様、あの下手人はどうします?」

「決まってる、この状況で森に入るなんて自殺行為だ。中止」


 作戦、命大事に。


「ま、賢明じゃろ。それでネルソンポートではどうするのじゃ?」

「そこは現地に行って考える。何か仕事とかあるかもしれないしな」


 そうして街に入り口まで行くと、人だかりが出来ていた。これらが全て、街を離れる人だろうか。


「えー、我がアストン商会ではこれからネルソンポートへ向かう隊商の護衛を求めております、どなたか、一緒にネルソンポートへの護衛を引き受けてくれないでしょうか?」


 その中に一台だけ、少々古びた馬車が一台、そしてその前で一人の小太りな男が道行く冒険者に対して護衛の仕事の宣伝をしている。


「お、護衛かぁ……報酬は?」


 早速この街を離れようとする身なりの良さそうな冒険者が声を掛ける。


「ええと、少なくて申し訳無いのですが、銀貨五枚とネルソンポートでの乗船チケットの手配を」

「済まない、先約があるので」


 そう言って、身なりの良い冒険者が去って行く。


「護衛の相場としてはかなり高い方だよね?」


 その光景を眺めながら呟くチェルシーに返す。


「隣町までなら確かに破格だけど、ここに来る人って基本お金持ちばっかりだからなぁ」


 冒険者ですら金を持ってくる街だ。銀貨五枚などいわゆるはした金だろう。ま、俺らも今はそれなりに金があるから銀貨五枚は安く見える。


 そんな落胆する商人に近づく。


「なあ商人さん、さっきの条件は本当か?」


 だから、俺はそれに乗ることにする。


「え、妖精さんが受けてくれるのかい!?」


 俺の手を掴んで顔を寄せてくる商人さん。顔が近いし暑苦しい。


「ま、受けるのは吝かじゃ無いな、あと顔が近い」


 済まない、と離れてくれる商人さん。


「さて、改めて条件確認したいんだが、銀貨五枚とネルソンポートでの乗船チケットの手配だったな?」

「ああ、チケット代までは無理だが、少し安く出来るよ。それでどうかな?」


 取りあえず全員に目配せ。

 まずチェルシー、頷いて了承の意を返してくる。次いでベル。手紙とにらめっこしながらも指で輪を作ってOKと。で、ファレも頷く。


「じゃ、その条件で乗った!」

「おお、ありがとうございます! わたくし、アストン商会のアストンと申します」


 小太りな体を揺らしながら、一礼してくるその姿は、少し滑稽にも見えるが、動きの端々にキレの様な物が見える事から昔はかなり動けた人だと思う。


「ああ、俺はスノゥ、あっちの子がファレで、メイドがチェルシー、俺のそっくりさんがベルだ」

「誰がそっくりさんよ」


 氷の塊が飛んできたのではたき落としておく。


「まあ、短い道中だが、よろしく」

「はは、よろしくお願いします」


 交渉が纏まったところで、全員で挨拶してから馬車の空きスペースに皆で乗り込む。

 そして俺は屋根の上に登って、そこで寝転ぶ。


「じゃあ、出しますよ?」

「お手柔らかに」


 馬車が走り出し、ネルソンビーチの門を抜ける。


「いやはや、助かりました。普段なら問題ないんだけど、まさか主が倒されるなんて予想外ですよ」

「こっちもだ。一体どこのどいつなんだろうな」


 そうやって話しながら道を進むこと三十分ほど。


「ん、妙ですね?」


 そのアストンの声に正面を見る。しばらく先で馬車が止まってる様子。


「おーい、ベル。ゼクスの一人を偵察に出してくれ」

「分かったけど、命令しないで」


 そのまま荷台からエルフィ・ゼクスが一人飛び出す。


「どうだ?」

「うーん、魔物みたい。今先に進んでいた連中が戦ってる」


 それを聞いたアストンが馬車を止める。


「どうした?」

「いや、それってかなり危険なんじゃ」


 いや、はっきり言うとこの状況で止まる事こそ危険だ。


「ここで止まると、夜までに街に入れなくなって、殺気立った魔物達と一緒に夜を過ごすことになるぞ?」

「そうなったらあんたが寝ず番してね」


 うーわー、ベルが辛辣だ。


「俺もそれはご免被りたい、と言うわけで詳細な状況が見れるまで前進すべきだな」


 最悪ネルソンビーチに引き返せば良いし。


「分かりました。では進みましょう」


 その言葉に馬車が進み始める。


「しかし、先行していたのは大きい商会や各地の貴族だったり、護衛にはかなりお金を掛けている人達ばかりのはずなんですが……」


 要人は先に逃がすかきっちり守るかしないと信用に関わる。ただし責任者は最後まで指揮を執る必要があると言うのが俺の持論だ。


「スノゥ、私あそこに今もの凄く行きたくなくなった」


 なんかベルがいきなりそんな事を言い出した。


「どんなの? わたし気になる!」


 そんな言葉を言うファレに、もうちょっと大人になってからねと優しく諭すベル。


「えっと、スノゥ様、ベル様……私たち、あれの居るところに行くんですか?」


 チェルシーも前方の光景を捉えたのか、少し声が引きつっている。


「うむ……ワシら、スノゥやベル、ファレは特に有利な相手じゃな。チェルシーはまあ、戦えるけど防衛に専念の必要があるの」


 氷の剣も見た光景からしっかりと彼我の戦力を分析している。

 よし、俺もしっかりと正面を見る。


「なんというか、大きいお友達が大歓喜な光景だなぁ……」


 確かに寄りたくは無いな。


「あれはデジェストと呼ばれるスライム種の仲間じゃな。肉食で、自分を包める相手の粘膜など弱い部分から浸食、そのまま内部から食い荒らす対応の寄生型スライムじゃ。

 大きい個体になるとそのまま包み込んだりして獲物を生きたまま溶かすことでも有名じゃ」


 なるほど、だから今目の前で繰り広げられている光景なのだろう。


―――スライムが体から触手を伸ばして、手当たり次第人間を縛っては口やその他粘膜部分を目指してまさぐっているという状態。

 しかも、このスライムに拘束された人を無事な人達が触手を切って拘束を解除しても、またすぐに拘束されるという状態。

つまり、身も蓋もない言い方をすれば触手プレイだ。


 今のところ手遅れという状況にはなっていない様子だが、あまりよろしくない状態でもある。


 拘束された人は鎧の隙間などから触手に侵入され、そこから開口部や粘膜部を狙うものだから、実に危ない光景が繰り広げられている。


―――何せ、スライムは雌雄同体生物で性区別は無い。対象は男女問わずにだ。


「奥に居る大型のスライムが親で、小さいのが子に当たるようじゃの」

「よくもまあ目の前でいろんな意味で危険な状態が繰り広げられているのにそこまで冷静だよな」

「ワシ、肉体依存の快楽という物は知らんし」


 ごもっとも。


「ねえねえベル、あの男の人は何でお尻の方を抑えてるの?」

「きっとトイレを我慢しているのよ?」


 ベルがファレに対してソフトな方向に誘導して思考を逃がしている。本来なら何も見なかったことにしたいけどこの状況じゃ無理と判断してか。


「しかし、困りましたね。スライム種には打撃が効かず、剣などで斬る事でダメージは与えられますがあれでは焼け石に水ですね」


 アストンさんが苦い顔で呟く。


「私も昔は冒険者でしたが、基本ナックルでの格闘術でしたので、あまりあいつ相手は得意ではないんです」


 しかし、金持ちや要人を逃がすんなら術士の一人や二人居そうだが。


「そうですね、先行した人達の護衛で術士はだいたい三、四人というところでしょうね」


 馬車の数がだいたい六台、それに対して各車四人ほど護衛がいる様子だが、術士は希少か。


「術士で冒険者というのも少ないですし、それにその術士達も要人を守るので精一杯の様子ですね」


 うむ。それなら恩は売れるだろう。


「よし、追加報酬で稼ぐぞ!」


 全員が一斉に戦闘態勢に以降する。


「ファレ、使う魔法は火か氷にするのじゃ。相手を焼いてしまうか、凍らせて砕けるようにするのじゃぞ」

「はーい!」


 馬車が先行車に追いついた辺りで停止。


「私は役に立ちそうに無いので、ここで待機してますね」

「一応エルフィ・ゼクスを置いて行くから、何かあればすぐに戻りますね」


 馬車に残るアストンさんと護衛のエルフィ・ゼクスを背に、全員が一斉に飛び出す。

 取りあえず手近なところに居たスライムに対して、氷の剣で切り裂く。切断面が凍り付き、そのまま全体が完全に凍って砕け散る。


「なるほど、これは効果抜群だな」

「ワシも聖戦器、ただの喋る剣と思わん事じゃな」


 その割に過去には防具扱いされていた時もあったようだが、触れないでおこう。


「確かに、私の槍も問題無く効果を発揮してるわ」

「ええっと、巨人の手斧でも同じなんだけど」


 ふむ、ベルの槍は氷製だから分かるけど、巨人の手斧はこれいかに?


「持ち手部分は雪製じゃろうが」


 ああ、なるほど。すっかり忘れていた。


「君たちは!?」


 後ろから来た俺たちを見て、一瞬身構える護衛集団に、氷の剣を掲げて答える。


「ちょいと苦戦してる様子だから、加勢しに来たぜ。幾らで雇う?」


 その言葉に、戦場を沈黙が支配する。


「あれ?」

「その話しは後にしましょうね、スノゥ様?」


 あ、はい理解しました。落ち着いて、チェルシー? 目がなんか怖いし、その振り下ろす寸前の斧はあのスライム相手にしましょう?


「か、加勢か!?」

「助かったぞ!」

「あ、ダメ、癖になる―――!」


 約一名助かってない様な存在も居るが、取りあえず安全確保した後、本丸でも叩くことにしよう。

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