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目指せ、南の門

「どうだ?」

「大丈夫じゃな。ただの魔力切れで休眠しているだけじゃ」


 良かった、と一息付く昼のスノゥ。


「ところでスノゥ様、こっちのスノゥ様に無い女の子らしさを凝縮した妖精さんは誰ですか?」


 さて、どう説明した物か。まあ、掻い摘まんで説明するか。


「俺の内側に眠ってたもう一人のスノゥって感じだ」

「いや、もう少ししっかり説明して」


 仕方が無いので、しっかりと説明する。説明した内容について行けないチェルシーと興味津々処か食らいつかんばかりの氷の剣との対比が笑えた。


「つまり、こやつはワシが本来作る予定だった眷属の人格ということか」

「その通りです、我が創造主。と言うわけでこの異常人格を処分して『凍てついた銀河』に戻りましょう」


 うーわー、本当にお前俺の事嫌いなんだなぁ。


「当たり前です。こんな人間として存在したら確実に駄目人間の烙印を押されるような人格が私の体を使ってるとか、正直反吐が出ます」

「言うじゃねえか、生まれて数週間のよちよち赤ん坊が」

「たかだか数年程度の差しか無い上、術も大した物も使えない脳筋妖精の癖に」


 お互いの手に魔力が籠もると同時に、俺とスノゥの頭にげんこつが落とされる。


「「いったぁ!?」」

「二人とも、喧嘩せずに仲良く!」


 下手人はお前かチェルシー。


「いわば二人は姉妹、家族! つまり皆仲良く!」

「「でもこいつは―――」」


 向かい合って指差す俺たちの間に鈍色の物体が通り過ぎ、そのまま地面にめり込む。


「分かった?」


 笑顔を浮かべながら、地面にめり込んでいた巨人の手斧を自分の肩の上に担ぎ直すチェルシー。


「「は、はい」」


 その強烈な威圧感に俺たちは頷くことしか出来なかった。


「ところで、昼のスノゥ様とか正直呼びにくいですね」


 まあ、確かに。便宜上で俺が名付けただけなのでこいつに名前ってたぶん無いし。


「本来私が眷属として生み出されたのですから、スノゥは私なのでは」

「……次その言葉をぬかしたらお前の人格ごと全力で食い散らかす」


 俺という存在を定義づけた出来事をたかが本来生まれる予定だったという理由だけで取り上げるのであれば、誰がなんと言おうと殺す。


「わ、分かったわよ」


 昼のスノゥも本気である事をしっかりと理解してくれた様子。よろしい。


「つー訳で、ファレと二人で考えてくれ。少なくとも氷の剣にネーミングセンスはなさそうだし」

「失敬な。ワシだってネーミングセンスくらいはある。そうじゃな、パンチョなんてどうじゃろう」


 よし、聞かなかったことにしよう。


「しかし、あいつが行っていた、すでに目的は達したってどういうことだ?」


 昼のスノゥとファレが捕まってここに運び込まれた。その間ファレは魔力を魔法陣に奪われ続けていた。

 ついでに俺自身も槍で貫かれた後放置だったが、たぶん魔力を分捕られていたと思う。


「どう思うよ、昼の」

「そうね……魔法陣としては得た魔力を別の場所に送るための物みたい」


 どこにと言うのは分からないけど、と注釈を入れてくる。


「……情報不足か。取りあえず移動するぞ」


 全員の了解を得てから、この地下空間を進む。


「ところでどこに向かっているんだ?」

「街の方角じゃな」


 しばらく地下道を歩くと、地上に通じる道が合ったので、そのまま外に出る。


「街に通じるトンネルを抜けた先は、火の海でした」

「お主にしては詩的だが、一体何があった!?」


 周囲を見渡すと、逃げ惑う人を追いかける魔物達の姿がある。


「あいつの言っていた準備って、これか!?」

「どうするの?」


 そんな物は決まっている。


「邪魔する奴全員なぎ倒しながら、街の外へ逃げるぞ!」

「こういうとき普通、逃げてる人を助けるとか言わないかな?」

「そういうのは自分の命を確保できてる状況じゃ無いと言えないな」


 それに、おそらくだがアリアンもとっくの昔に目的を完遂して逃げ出しているだろう。


「つまり、脱出以外考えられない。行きがけで襲われてる奴らを助けるだけで精一杯だ」


 全員の状況を纏めると、チェルシーはアリアン相手に時間稼ぎやその前の大暴れでかなり消耗しているし、ファレは魔力枯渇でぶっ倒れている。俺は俺で腹貫かれたり昼のスノゥに魔力出したりしているので、意外にカツカツである。


 たぶん、今竜化したら一瞬で終わり、役立たずが二人生産される。


「結論、全力戦闘無理。ここから逃げるので手一杯」

「世知辛いなぁ……」


 本当に世知辛い。と言うか余裕無いなぁ。


「方針は決まったのはいいんじゃが、どっちに逃げる?」


 俺にこの街の地理を聞かれても困る。どこかすら分からないんだし。と言うわけで解説よろしく。


「まず、この街には東門と南門の二つがある。北門は山だけ、西は港だから今から逃げるには向かぬ」

「スノゥ様、南に逃げましょう」


 チェルシーの提案に耳を傾ける。


「その心は?」

「ここは二週間前に目的地としていたリブラリで、ここから西にある大きな都市はエウドだから、目新しい物はないはずです」


 なるほど、ここはリブラリだったのか。観光目的に来たのに火の海状態とは俺も運が無い。


「くっそ、南に行くぞ!」


 この世界中の酒を堪能するという目的がいきなりオジャンだ。絶対に許さないぞアリアン!

 全員で南に向かって進み始めるのだった。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




 真っ黒な毛並みのオオカミモドキを切り捨てる。白いオオカミモドキは戦ったことがあったが、大差無いな。


「あ、ありがとう御座います」

「礼を言ってる暇があったらとっとと逃げろ!」


 オオカミモドキに襲われていた人を逃げるように促してこっちも南門を目指す。


「本当に切りがない! おっとごめん、大丈夫?」


 路地から飛び掛かってきたゴブリンぽい魔物をチェルシーが縦に真っ二つにする。背中に背負ったファレを気遣いながら進む。


「手を止めない! 正面から集団!」


 昼のスノゥが正面から来ている鷹っぽい魔物にアイスニードルを連射し、撃墜している。


「わーってる!」


 こっちも、足下を這ってくるスライムを切り裂き、ついでに凍らせる。


「しっかし、こういうときなんか騎士団とかそういう連中が戦うんじゃないか?」


 道すがらでも、自警団や騎士の様な連中が動いてはいたが、どうも散発的な動きというかまとまりが無い。


「ま、今考えても仕方が無いか!」


 ようやく南門が見える位置までやって来たが、何か様子がおかしい。南門からも火の手が上がっているように見える。


「おいおい、なんだありゃ?」


 南門とその城壁と同じくらい大きい人影。


「なんだ、チェルシーの親戚?」

「違う! あれ岩で出来てる!」


 火に照らされる体は岩で出来ており、そんな巨大な物体が南門自体を攻撃している。


「ああもう、面倒事の多い! この手のゴーレムってどっかに核あるんだろ!?」


 そのまま門の近くまで進むと、これ以上進めない人たちが壁を作っている。

 飛び上がってその人の壁を越え、氷の剣を構える。


「フォローよろしく!」

「誰に命令してるの! フリーズブラスター!」


 横に同じく飛び上がった昼のスノゥがゴーレムの足下を凍結させて動きを一瞬封じる。


「スカイブレイカー!」


 そこを、脳天から縦に真っ二つにする。


「おおぉ! 妖精様があの石人形を退治してくれたぞ!」


 周囲から歓声が上がるが、


「まだ!」


 人の波をかき分けて最前列にまで来たチェルシーが叫ぶ。

 その声に真っ二つにしたゴーレムがそのまま切断面を合わせるようにくっついた。


「真っ二つじゃダメか!?」


 胸のところにコアがあるって相場が決まっていると思っていたが、なかなかどうして。


「どうやってシメるか……」

「私がやる。魔力と陽動よろしく」


 そう言って、昼のスノゥが飛び立つ。


「まあいいか……やるぞ、氷の剣」

「分かった、ワシもあいつが繰り出す手段が気になる」


 仕方が無い。今回は引き立て役になろうか。氷の剣を構えて、そのまま突撃。


「突貫! と見せかけて!」


 俺の突撃に合せて振るわれたゴーレムの拳を、叩き落とすように剣を振るう。体格差の関係から受け止める様なディフレクトは出来ずともパリイは可能。

 今は何でか俺を驚異と見ているらしいので、ちょうど良い時間稼ぎが出来そうだ。


「で、俺は後何撃ほどパリイすれば良いんだ?」

「待ちなさい、今準備してるから!」


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