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スノゥウォーズ・復活のスノゥ

「で。ファレに気を取られて腹のど真ん中を石でぶち抜かれた訳か」


 封印された俺のインナースペースに、昼のスノゥが飛ばされてきた。どうやら腹を貫かれたショックで気絶した拍子に意識だけこちらに来た様子。


 心ここにあらずとぺたん座りとか女の子座りとかそういう座り方をする昼のスノゥに対して、周りを回りながら「ねぇどんな気持ち? どんな気持ち?」と全力で煽る俺。


 ヤバい、少し楽しい。


「うぅぅ……!」


 昼のスノゥはうなった! 俺にはまったくこうかがないようだ。


「あなたなら防げたっていうの!?」

「え? 一瞬だけ竜化すればあの程度なら折れるし」


 食い込んだ感触から、せいぜいワイバーンの牙位の強度なので問題無く防げる。白銀竜のはそんな事したら上と下が綺麗にお別れだが。

 あ、やべ、両脇の皮だけ残して綺麗に貫通された時思い出した。なんかお腹めっちゃスースーする。あの時は本気で死を覚悟したわ。


「まぁ、今回ので分かったが、お前竜化使えないだろ」

「なっ!? ななな、何をおっしゃるのやら!」


 完全に図星だこいつ。


「しかし何でだ? 俺の体だからしっかりと竜の因子が食い込んでがっちりと離さないはずなんだが」


 ひたすら喰って血肉に変えてを繰り返して、遺伝子という物が存在したら面白おかしく変異しているであろう肉体なのに。


「―――からよ」

「うーん? 聞こえないなぁ?」


 涙目でこっちを見上げながら、昼のスノゥが叫ぶ。


「私の物じゃないからよ!」

「私の物じゃ無いって、同じ体だろう?」


 ぜんっぜん違う! と怒鳴られる。


「あんたの魂が入り、竜の血肉を馴染ませて織り上げた体は、あんたの魂しか受け付けないの。今の体は私の核を中心に、あなたの魔力で作り上げたもう一つの体。

 分かる? 確かに供給源はあなたの体だけど、その性質までが反映される訳じゃ無いの!」


 つまり、昼のスノゥの体は俺の体をエンジンとして格納した外骨格みたいなもの。


「なるほど、動くマトリョーシカの外側か」

「なんかよくわからないけど、そのイメージ通りよ」


 確かに、エンジンが外装に影響を及ぼす事は無いな。


「まあ、ともかくこの状況をどうにかする必要があるな」


 俺が手を振ると、今現在の状況が映し出される。


 あの時、俺がアリアンと対峙した地下空間。そこの中央に俺が床に縫い止められる形で寝ている。

 すぐ近くにはアリアンやローブを纏った人が何人も居る。


「どうして自分の視界以外を見て」

「お前のエルフィ・ゼクスを一体だけ借りさせて貰った」


 あの手の奴なら視界共有に出来るだろうと思って、力を貸して貰っている。


「気付かれてないの?」

「それは大丈夫。あいつ俺の体から魔力を引き出して何かさせようとしてるから、その分この周辺に俺の魔力が満ちてる」


 偵察目的で、魔力も絞っているので、エルフィが見つかる訳が無い。


「ところで、ファレは?」

「あそこの端っこ。ご丁寧に鎖で繋がれてる」


 そこには、ぐったりした様子のファレが魔法陣に手を置いた状態で倒れている。


「ファレ!」

「待て待て、今はまだ早い」

「何でそんな―――」


 薄情なのよ、と言おうとする昼のスノゥ。残念だったが俺は冷静でもなんでもない。


「竜っていうのは自分の所有物に関してはもの凄い執着心を見せるんだよな」


 全力で暴走しそうなのを抑えているだけだ。


「お前もそうだろ? いくら取り繕おうと、俺の体と共にあったから多少は影響を受けているはずだ」

「勘違いしないで、私は友達として憤っているだけよ」


 ま、どちらも執着には変わりはしない。


「でも、待てってどういうこと?」

「もう少しで、俺のかわいいメイドが来てくれる」

「メイド?」


 そう、かわいいかわいい豪腕メイドが。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




「この、トマホーク!」


 投げられる手斧を、こちらも見もせずに避けるウサギ。ええい、私の全財産を返せ!

 それからも木や茂みを利用して回避される。途中なんか変な木もあったけど、全部叩き落として進む。


「ええい、落ち着かんかこの怪力侍従!」


 そうやってウサギを追いかけること五分ほど。開けた場所に出る。


「ええい、どこ行った!」


 この広場に出たとたん、ウサギの姿を見失った。しかし、財布は落としていったらしく、広場の中央に落ちている。


「ふぅ、良かった」

「良くないわ! まんまとこの森の術中にはまりおって!」


 あ、そういえばそういう術が掛かっているとの事だった。


「銅貨一枚を軽んじる者、銅貨に泣くって言葉、知らないの?」

「あいにく金とは無縁での」


 肉体が無ければ金とは無縁だろう。


「ところで、どうすれば出られるんだろう?」

「……ワシは今、こいつを拾うのを止めなかったのを少し後悔しておる」


 まあ、なんとかなるだろう。


「せっかくだから、今スノゥ様の位置って分かる?」

「まあ、突入したのだから、せめて感知してみる……ん?」


 おや、氷の剣が何かを感知している様子。


「チェルシー、少し足下に全力で斧を振り下ろしてくれんか?」


 言われるままに、手斧を振り下ろしてみる。すると地面全体に亀裂が走り、そのまま一メートルほど落下する。

 そしておしりを強打した。


「いたた……でも、なにこれ?」


 石造りの通路の様子で、何か薄ら寒い物を感じる。


「うむ、正面方向にスノゥの気配がする。しかし、妙じゃな……何か二重に感じるのじゃが」


 何だって良い、スノゥ様の手がかりだ。そのまま手斧を片手に持ちながら走る。


「距離的には森を抜けて、街の真ん中辺りまで来た感覚あるけど!」

「その認識で間違いないの。おおよその距離はワシも同じくらいと思っておる」


 そのまま走ると、前方に明かり。


「近いぞ!」

「わかった!」


 手斧を両手に構えたまま突入する。

 広間になっている場所には、床一面の何かの模様、そしてローブの男達に鎖に繋がれた子供。

 そして中央には幾重にも石の棘とも言うべき物で串刺しにされたスノゥ様。


「ねぇ、何してるの?」


 ローブの男達が一斉にこちらを向く。そしてそのままこちらに向けて杖を構える。


「何をしているかって、」


 いつものように巨人の手斧を取り出す。その様子に男達が火球やら何やらを放ってくる。

 それを巨人の手斧の一振りで黙らせ、


「聞いている!」


 ウォークライからの戦闘が始まる。


 一番近くに居た男の懐まで潜り込み、横薙ぎに斧を振るう。それを地面からせり出した土の壁が受け止めるが、その程度など絹糸一本で剣を防ぐような物だ。

 胴体から上下に分断する。そのままの勢いでスノゥ様の元まで駆け寄る。


「侍従服の狂戦士だと!?」


 そう叫んだ男は私の一振りを後ろに跳んで回避。


「手強い……!」

「チェルシー、そのままワシをここに落とせ。スノゥはまだ生きておる!」

「分かった、そのまま回復よろしく」


 氷の剣を背負うための紐を解き、スノゥ様の真横に落とす。冷気による自動回復である程度回復が入ることだろう。


「君は、何かな?」

「スノゥ様のバトルメイド、チェルシー」


 やりとりは、それだけで十分だった。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




「初めまして、創造主。本来生まれる予定だったあなたの眷属です」

「と言う事だから認知してやれよ、氷の剣」

「いや、訳が分からん。まず説明しろ」


 氷の剣がすぐ近くに突き立ったから、俺のインナースペースにご招待。

 外側については氷の剣の冷気という恩恵を受けて絶賛回復中。時間は取りあえずチェルシーが稼いでくれているが、あまり余裕は無い。


「その辺りの話は後でするから。今は取りあえず、俺の封印を解け。その時俺の魔力を使ってお前も表に出ろ」

「何を勝手に」

「これ以上グダグダ言っているとお前ごと封印を全部喰って暴走してやるぞ。急げ!」


 文句を言いながらも封印を解き始める昼のスノゥ。


「よし、外装の解除完了、俺が表に出ると同時にクリアドッペルで分離しろ。その時にエルフィ・ゼクスも連れて行け」


 さっきは無理矢理使役したが、正直俺とは愛称が悪い。自前の妖精要素だけで正直お腹いっぱいだ。


「さて、待たせたな、俺の剣」

「いろいろ言いたいことはあるが、お主チェルシーの教育は少し考えた方がいいぞ」


 再会していの一番に言うことがそれか。

 そんな事を考えながら、封印という枷を外して俺が外に出る。

 腹を貫く槍を引き抜き、穴が空いた箇所を氷で塞いで応急処置。後で肉をたらふく食って埋めよう。


「おはよう、スノゥ様、よく眠れた?」

「おかげさまで。それと露払いご苦労様」


 周辺にはなんか原型留めていない方々がいくつも並んでいるが、アリアンはまあ取りあえず無傷。

 チェルシーはというと、あちこちに焼け焦げ立ったり裂傷だったりと結構傷だらけだ。


「じゃ、少しそこで休んでろ。俺はちょっくら」


 氷の剣を構える。


「この男にちょいとばかし借りを返さないといけないんでな」


チェルシーが一礼し、その場から交代する。


「もう一度封印されに来たか、今度は封印と言わずにしっかりと消滅させようか」


 そのまま氷の剣を振りかぶりながら突撃。


「ふん、馬鹿の一つ覚えか!」


 放たれる炎の槍を、ステップで避けながら接近、完全にこちらの間合いに入ったところで振り下ろす。

 しかしその振り下ろした氷の剣は、


「なにっ!?」

「なんと!?」


 何も付けていない男の腕で防がれる。


「どうしたのかな? 残念ながら非力すぎる」


 追撃と言わんばかりに振るわれる手には膨大な炎が見える。瞬間、上に跳ぶと同時に炎が薙ぎ払う。


「これはどうかな?」


 天井から俺の進行方向に向かって巨大な槍が突き出してくる。身を捻ることで回避して着地。


「どんどん行くよ」


 さらに追撃で振るわれる水の円盤を氷の剣で受け止めて凍らせる。


「なんじゃこやつ、人の身でこれだけの魔力を!?」

「どういったペテンだ? 前回以上に魔力上がっているじゃねー、かっ!」


 アイスニードルを投げると同時、死角から愛すクラッシュの氷塊を飛ばす。


「フレイムゾーン」


 男が術を展開すると同時、半径一メートルに侵入した氷が一瞬で消し飛ぶ。


「膨大な熱量じゃ! お主が触れたら一瞬で消えるぞ!」

「おいおい、オーブンじゃないんだから」

「フレアウィンド」


 灼熱の風が吹いてくるのを、氷の剣に魔力を送り、冷却フィールドを作って対抗。


「全く、どこにそんな魔力隠し持っていやがった! 少しは環境のために省エネでいろよ!」


 全力で叫ぶも、熱風は止まず。当たり前だ。

 正直、アリアンが使用している魔力、こっちは氷の剣で増幅してようやく拮抗するほど大量だ。


 当然何かからくりがあるが、なかなか糸口がつかめない。


「とか言いつつもうすでに手を打っているじゃろう?」


 まあ、その通りだ。このまま粘ったとして、ジリ貧になって最終的に削り殺されるのがオチだ。


「よく分かったな」

「三年以上お主を担い手として見ていれば、衝動的に動いていたとしてもある程度の勝算をもって動いていることぐらいわかるわ」


 おっと、飛んでくる岩石を切り落とすと同時、その後ろから多量の炎が。


「これで終わりです、異端の氷妖精」


 直撃を貰ったら確かに死ねるし、炎の魔力量からして一撃貰ったら死ぬ。

 だから、袖に隠していた物をそのまま放り投げる。


「魔石!?」


 そう、夜の間に俺の魔力で作っていた魔石だ。氷の属性がめいっぱい詰まった魔石の魔力に任せて冷気の防御壁を作り、防ぐ。


「しかし一時しのぎ―――!?」


 男の表情が驚愕に染まる。


「どうした? 魔力でも急に尽きたか?」


 一瞬で踏み込んで氷の剣を振るう。今度は受け止めようとせずに少々大げさに回避する男。


「いやあ、あっちの方に意識向けさせないようにするの、大変だった」


 先ほどまでファレが居た場所、そこに彼女の姿は無く、切断された鎖だけが残っていた。

 こいつはファレの魔力を奪って戦闘に転用していた。おそらくだが、本来足下の魔法陣は何らかの儀式用だが、戦闘になったときに一部を書き換えて強化に当てていたのだろう。


「眷属の雪妖精!?」


 無論昼のスノゥの事であり、眷属では無くむしろ刺客という方が正しいか。


「まあ、細かい説明は省くわ。面倒だし」


 ファレを取り戻そうと動こうとする男に、エルフィ・ゼクスが立ちふさがる。無論わざわざ背中を晒した相手に俺が何もしないはずが無い。


 ファレを置くの通路に運び込むのと同時に、入り口前にチェルシーが斧を構えて立つ。

 これでこの男がファレを取り戻すのに、俺たち全員を突破する必要がある。


「魔法陣からの魔力ブーストに加えて今までファレに作らせてた魔石も上乗せしてただろうな」


 ファレの魔力は非常に高く、ちゃんと戦闘に転用すればかなりの力が見込まれるのは確かだ。

 しかしそれだけでは氷の剣を受け止めるには足りない。だからインパクトの瞬間だけ魔石でさらに魔力を上乗せしたのだろう。


「さて手品の種が分かった以上、俺も少々全力で行かせて貰おうか。主に人のことただの愛玩動物レベルにまで貶めたって事、しっかりと償え」

「それはお断りしたいところですね。こちらとしても目的はなんとか達成しましたので」


 竜化しようと身構えたところで、


「すみませんがお暇させて頂きます」


 男が強烈な光を放つ。


「ちぃ!」


 男の居た方向へとっさにナイフを投げるが、仕留めた感触は無く、光と共に男は姿を消していた。


2017/02/21

誤字修正。

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