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失ったもの、得たもの。

お待たせしました、第二章の開幕です。

 自身の状態を確認する。まずは周囲にチェルシーと氷の剣は無し。試しにリンク越しに会話を試みるも、非常に薄ぼんやりとした気配しか感じない。


 これはあれだ、非常に遠い場所にある感じだ。


 当然寝てたので装備はネグリジェのみ。武器も鞄も何も無い。

 そこから周囲を見渡す、石で出来た部屋であり、足下には魔法陣が書かれている。

 そして少し離れたところに四人のローブ姿の人間。

 フードで顔が隠れていて良くは見えないが、なんとなくだが黒幕はこいつらか。


「これは雪妖精ですか。珍しい物が呼び出されましたな」

「うむ、我らが求める物ではないが、それなりに使い道もあろう」


 いきなり物扱いである。


「あのさ、ここどこよ?」


 俺の発した一言が、周囲をざわめかせる。


「なんと、高位の雪妖精か!」

「おい、質問に答えろよ」


 俺を無視してなにやら話し込む男共。


「よし、ではこれは私の使い魔として従属させよう」


 ローブの男共の一人がこちらに向かってきて、俺の左腕を掴む。

 しょうがないので右手で相手の腕を掴んで握りつぶす。無論、骨ごと。


「へ? ―――ぎゃああぁああ!」


 一瞬の停滞の後、腕を押さえてのたうち回る男。


「あのさ、アポ無しでいきなり呼び出して従属させるだ? 寝ぼけてるのか?」


 俺がまだ紳士的な内に会話してくれるなら助かるんだが。


「こ、こいつ! 邪妖精か!」

「仕留めろ!」


 のたうち回る男以外が杖を一斉に構える。それと同時に彼らの周囲に炎の玉が浮かび上がる。


「よーし、手を出したのはそっちからだからな?」


 誰にする訳でも無い言い訳を行い、翅に力を込める。


「穿て、ファイヤーボール!」


 飛んでくる火球を氷の壁を作って受け止める。発生した水蒸気に紛れて、天井すれすれを飛び、圧縮雪のナイフで一番後ろに居た男の首を一閃。頸動脈から溢れる血を浴びないように二人目の男に飛び掛かる。


「この、灼熱の盾よ!」


 俺と男の間を遮るように炎の壁が立ち上る。が、そんなの関係なし。


「フリーズレイ」


 炎の壁を貫いて、向こう側に居る男を氷漬けにする。術者の息が絶え、炎の壁が消えた後、氷の彫像が現れる。それを見届けてから最後の一人の方を向く。


「ひ、ひぃいい!」

「もう一度聞くぞ? ここはどこだ?」

「ここここはっ!」


 取りあえず落ち着いて貰おうと思い、氷で剣を作って首筋に当ててやる。よく冷えて冷静になれるだろう。


「落ち着いたろ?」


 さらに暴れ出す。何でか完全にパニックになっている。


「……で、ここはどこだ?」

「ち、地下祭壇です! り、『リブラリ』の!」


 なるほど、こいつらに召喚されたわけだ。通りで氷の剣も無いし、チェルシーも近くに居ないわけだ。

 取りあえず生きている奴らをスノーバインダーで縛り上げ、ついでに猿ぐつわも噛ませておく。


 まずはここを離脱しなければいけない訳なのだが、


「ふむ、これはこれは、なかなか高位の雪妖精。しかも瞬く間に四人を戦闘不能する手腕の持ち主ですか」


 奥にある扉から豪奢なローブに身を纏った男が現れる。


「ア、アリアン様!?」

「そりゃどーも。じゃ、俺はこれで帰るから」

「まあまあ、落ち着きなさいな。せっかくこんなところまで来てくれたんだ。歓迎しないとな!」


 挨拶代わりと言わんばかりにファイヤーボールが数発飛んでくる。

 とっさに出す物にしては先ほどの男達より大きい物を出している事から、油断は出来ないと翅に力を込めて加速。


 着弾点より前に出て、アイスニードルを投げつけるように発射。それを横ステップで回避する男に向かって斬りかかる。

 男も負けておらず、手に持った杖で受け止める。


「これは重たい」


 涼しげな顔で受け止めながらそんな事を言う男。その受け止めている杖の先端が光り始める。


 後ろに飛び退くと同時に、先ほどまで居た空間を光の線でなぎ払われる。

 その離された距離を維持しようという目論見で放たれるファイヤーボールを剣で切り払う。


 これは、ちょっと手強い感じ。さっきの三下術士とかに比べると魔力の量も多いようで、油断もしていない様子。

 こちらはメインウェポンが無い状況であり、正直決定打に乏しいところ。


「……時間掛けられねぇな」


 たぶん、相手の方が対人戦闘の経験値が高いから、その経験を生かされる前になんとか決着付けないと。


「ああ、時間は掛けられないな。だが、君の負けだ」


 一瞬いぶかしんだが、足下の魔法陣が光る。


「しまっ!?」

「残念ながら、君は白痴なおもちゃになって貰うよ」


 光が、俺の視界を包んだ。




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




 ここにはわたしの全部がある。お人形も、綺麗な首飾りも、ドレスにふかふかなベッドも。

 本も山ほどあるし、ご飯もお腹いっぱい食べられる。


 でも、ここにはわたし以外の人は居ない。人形は喋らないし、首飾りがあっても鏡の中の自分にしか見せられない。


 食事を運んでくれる人は居るけど、わたしの事なんかちっとも見てくれない。


 立派な庭はあるけど、庭には、この家からは出られない。


 だって、外へ出るためのカギがないんだもん。

 家の外に出るための扉もない、そんな閉じられた世界の中、私は初めて自分を見てくれる存在と出会えた。


 ある日の朝、いつも通りに目を覚まし、食堂に向かうと大きなゆりかごが置かれていた。

 こういうプレゼントにはメッセージカードが着いていて、中に入っている物を教えてくれる。


『日頃の頑張りのお礼として、この子を送ろう』


「なんだろう、これ?」


 中をのぞき込むと、白いネグリジェを着た、水色の髪の女の子が寝ていた。


「……妖精さん?」


 背中には、白く透き通った翅が生えている。試しに触ってみると、薄く柔らかい何かの膜みたいな感じ。


「うん……」


 まぶたが震えた。目を覚ますのだろう。


「ここ、どこ?」


 妖精さんが目を開く。翠色の綺麗な目が、私を見る。


「あなたが、私のマスター?」

「え、えっと、マスターって、そのぅ」


 突然の問いかけにわたしは焦ってしまう。だって、人もだけど、妖精さんに話しかけられるのは初めてだから。


「えっと、こういうときは、そうだ!」


 すぅ、と息を吸い込む。


「友達だよ!」


 しばらく瞬きを繰り返した後、妖精さんが笑顔を浮かべる。


「じゃあ、友達! 私スノゥ。あなたは?」


 前に読んだことがある。名前とは、初めてのプレゼントで、一生を左右するほどの強い力を持っているって。


「ファーレン!」


 だから誰から貰ったか解らない、初めて貰ったプレゼントを彼女に、スノゥに伝えよう。


「ファレって呼んで?」




○ - - - - - - - ○ - - - - - - ○ - - - - - - ○




 ファレの友達として、付き添い従うように指示されている私は、ファレの遊び相手というのがもっぱらの仕事になる。

 朝はファレを起こし、一緒にご飯と食べる。私はファレから漏れ出ている魔力を食べるから本来は食事摂取は不要だけど、食べないと言うとファレが泣きそうな顔をするので一緒に食べている。


 その後は部屋の掃除だ。二階建てで、一階は食堂とリビング、二階はファレの部屋と仕事をする部屋。

 そんなに広くなく、大仰に掃除する必要も無いので軽く済ませた後、ファレの仕事が始まる。

 仕事部屋には大きな石で出来た台に、えっと、知識によると魔法陣の様な物が刻まれている。


 それにファレが手を当てる。


「あのね、ファレの体の中に、なんか二つの流れがあってね、なんていうか、体の心の中に流れてる水みたいな物を手から出すの」


 ファレの手のひらから翠色の光が出る。その光が魔法陣を満たし、刻まれた魔法陣の中央に収束していく。


「こうやっていると、体の中に溜まった心の水が、石みたいに固まるの」


 静かに翠色の光が実体を伴い、白濁した石を作る。


「これをリビングにある女神様の像の中に入れないとご飯とか持ってきてくれなくなるの」


 自分の中にある知識が、心の水が魔力であり、石が魔力を元に作られた魔石と教えてくれる。


「前に一日これを作るのを忘れたら、何も食べ物が出てこない日が何日も続いたの」


 それ以来、毎日必ず数個は作るようにしているんだ、と笑うファレ。


「それって何か、」


 おかしいんじゃ、と言おうとしたところで、口が動かなくなる。まるでその疑問自体を教えることを許さないと言わんばかりに。


「なに?」

「……ううん、何でも無い」


 何もおかしいことは無い。だって私はファレの友達として生み出された存在だもん。

 こうして今日は三個の魔石を作り、リビングの女神像の口へ魔石を放り込む。


 それが終われば、今度はファレの部屋の中で本を読んだり、お話をして過ごす。

 私がファレを飾ったり、ファレが私の服を選んでくれたりとか、そういう風に遊んだりもする。


「ねえねえスノゥはどこで生まれたの?」

「うーん、私は妖精だから、生まれるじゃなくて発生が正しいかな?」


 それに私は作られた存在だ。そう、そういう存在だ。

 でもそれだと、私は誰に作られた? 私を作った人が居ると知識が教えてくれる。


 作った人は偉大で、その人が与えてくれた知識は絶対だとある。

 じゃあ、その人が与えてくれた知識の中に無い、これは、いったい何だ?


「わぁ、スノゥ、それなぁに!?」


 そう言われて、魔力を使って無意識で作ってしまった物を見る。

 手に持っているのは、セーラー服という女子が着る制服だった。でも、この服に関しては私の創造主の知識に存在しない。


「えっと、私が作った服なんだ」


 少し大きく出来上がったそれを、ファレに着せる。

 リボンも同じように作り、金色に輝く髪の毛をツインテールにまとめ上げる。


「どうかな?」

「凄いねスノゥ! これすっごくかわいい!」


 そこまで言われると少しうれしくなる。

 ファレが回りながらプリーツスカートの動きを楽しんでいる間に少し考える。


 現段階で私の中の知識には三系統が存在する。


 一つは常識的な内容。いろんな物の名前とか、各種知識。術に関する知識もここに分類され、全体比率で四割はあるだろう。

 次に、偉大な創造主の知識。比率では一割に満たないけど、なんだかこれに従わなければいけないという感覚がある。

 最後に出所が全く解らない知識。余計な内容が多く、実生活では役に立たないだろう物であるが、半分を占める知識だ。


 偉大な創造主の知識の事を危険だというのもこの知識が訴えかけてくる。一体何が危険なのだろうか?

 創造主の言葉は絶対なのに。


「スノゥも同じの着てみない?」


 軽く頭を振り今の思考を追い出してから、ファレと同じセーラー服を作り、二人で鏡の前に立つ。なんとなく楽しかった。

 楽しければ特に疑問に思うことは無いと、創造主も教えてくれた。今はそれでいい。


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