答え合わせ
ここまで読んできてくれた方、ありがとうございます。
ここらですっきりさせたいと思いますので、最後までよろしくお願いします。
『ごめんね。こんな所に呼んじゃって』
『別にいいけど、どうした?』
『…』
『暑いからさ、教室に戻ろうぜ』
『あの!』
『ん?』
『私、ずっと前から好きなの!』
『わり『この花が!』』
『…あ、あー。この花か』
『そう、これ。この花が…、好き』
『この××××××は夏の花で、ヨーロッパや南米アメリカが原産なんだよ』
『さすが、環境委員は詳しいな』
『まあね。カズも詳しくなりなよ』
『そうだなー。せめて学校に咲いてる花の名前と花言葉は覚えようかな』
『うん。そうだね』
…。
悲しい夢を見て、また泣いていた。
今度は、覚えている。
俺はなんということをしてしまったのだろうか。
時計の針は午前2時過ぎを指していた。
椅子で寝ていたから背中が痛いが、着替えて外に出た。
行く場所は決まっている。
俺は走った。走って、走って、走って、全力で走った。
過去に戻れるんじゃないかというほどに走った。
そして俺はようやく着いた。
夢にまで出てきた学校の生垣の前に。
約束も何もしていない。
それでも、一昨日のあいつの行動を考えれば確信があった。
あいつは必ず来る。
俺が来てから十数分後。
アズは来た。
着替えてきたらしくアズも制服だった。
俺と違って歩いて来たから、案外、同じタイミングで出たのかもしれない。
病室を抜け出すならまだしも、病院を抜け出すなんて、やっぱりこいつはアズなんだと改めて思わされる。
アズは校門の手前で驚いた顔をしたが、そのまま、おそらく一昨日と同じように校門を乗り越えた。
そして俺を見ながら歩いてくる。
笑顔で、けれども泣きながら。
俺は目を逸らさずにアズを見て立っていた。
制服の男女が二人、夜明けの学校に立っていた。
「お前も制服なのか」
「うん。カズこそ制服なんだね。汗かいてるよ」
「これくらいどうってことない」
「ふーん」
「…」
「…」
「ねえ!」「あのさ!」
「ごめん」
「悪い」
「ううん。先にいいよ」
俺は一呼吸置いてから話した。
「あのさ!お前、悩みを消すなんてやめろよ」
「どうして?」
「それは、お前が嫌なことだと思うから」
「…ねえ。私が二年前に言おうとしたこと、分かったの?」
「思い出したよ」
「そっか…。私が悩みを消してもらうことは嫌?」
「ああ。嫌だ」
「…」
「もう一度、また。今度は俺から言わせてくれ」
「…うん」
「あの時はあの関係が心地よくて、変えることが恐かった。それに、お前も同じだと思ってた」
「けれどお前は、そうじゃなかった。それなのに俺は、無かったことにしてしまった。ごめん」
「…」
ここで言わなければ、また後悔する。
悲しませてしまう。
言おう。
言わなければ!
「ずっと前からアズが好きだった!今でも好きだ!」
「付き合って下さい!!」
「うん。ありがとう!」
「私も、好きだよ。花よりもカズが」
見事ハッピーエンド。
俺達はお互いに、知っていながら知らない振りをしていた関係を、ついに終わらせた。
そしてお互いに、答え合わせをした。
ラスト1話が残っていますが、実質これで読み終わりでもいいと思っています。
告白のシーンはとても大変でした。
なぜなら僕は非リア充というくくりの人間だからです。
人間としても非人間と言われるような性格です。
とにかく、これですっきりさっぱり、といきたいところですが、まだ少し残っている謎は取り除きたいと思います。
次話、最終話です。