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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
三章 目覚メルワ災厄
81/81

76話 二人の冒険者

長い間更新出来ずにいました。

久々の投稿になるので、誤字脱字が多々有ると思いますが。

そこは問答無用で仰って下さい!!

すぐに修正致しますので!!


今話も楽しんで貰えれば嬉しいです( ´・∀・`)



「...き、きゃゃゃやゃゃゃゃ!!」


突然の仲間の悲鳴に俺は駆け出していた、すでに近くに居たがノロノロと歩いていた自分に叱咤する。

周囲に魔物の気配が感じられないからと言って、気を緩めてしまった事は自分の不甲斐なさでしかない。

武器を抜き木々の抜けて仲間の前に出る、仲間の前方にいる.....全裸の男を見据える。


.....全裸?!。


あり得ない光景に立ち止まってしまう、目の前の堂々とした立ち振舞いをする全裸の男...一言で言うなら黒かった。

頭から爪先まで褐色肌、髪も所々焦げ付いていたが腰まで有るじゃないかと思う程の長さ。

髪の隙間から覗く、鋭く暗く心の臓を鷲掴みするほどの黒い瞳。

良く視れば、瞳孔が縦長であり獣の眼に近かった。

一瞬でも獣人かと思ったが、それらしい特徴は見当たらない。


右腕は肘から先が無く、片腕のみで欠損していた。

何よりも目の前の全裸の男が、人の姿を似せた魔物だと言われても。俺は納得できた。


そして全裸であるからにして、視線を少し下げるだけで見たくないモノが、見えてしまう。

俺もよりも立派な.....そんな事は無い同等だ良い勝負に指し違いない。


「リ、リスト~....」


後から掴まれ背中に顔を埋めて、今にも消え入りそうな声で俺の名前を呼ぶ。


「大丈夫だったか?、何かされたりしたのか!?」


目の前の全裸の男から視線を外さずに、後ろにいる仲間に聞く。


「ううん、何もされてないけど。.....っちゃたから.....」


これまた消え入りそうな声だが、何となく言いたい事は伝わった。

仲間はこういう下話を受け付けない程にダメな類いだと分かっている、先程の悲鳴も全裸の男のモノを見てしまったが故の悲鳴なのだろう。

原因は誰にあるかなど考えるまでもない、目の前の全裸の男だ。


「お、おいお前。それをとりあえず隠せ、ってか何で全裸なんだよ!!」


全裸の男に向けて聞く、返答次第では変態だと警戒を強めなければならない。


「.......」


しかし、全裸の男は何も喋らず、無言のままこっちに向かって歩き出した。


俺は直ぐ様叫ぶ。


「止まれ!、これ以上こっちに向かってくれば容赦はしない!!。これは警告だ、止まれ!!」


男の俺でも、無言で全裸の男が近付いてきたら過剰に反応してしまう。

額に嫌な汗が流れる、何故この男は剣を向けられてるのに無防備に近付いてくるのか。


俺には理解が出来なかった、そもそも変態の思考を理解する方が無理がある。


「.....リストも....アンも.....二人とも大きくなったね」


2mも距離が近付いた時、初めて全裸の男から声が発しられたのと同時に。

感慨深く哀愁に漂う声音に、思わず「えっ?」と間の抜けた生声が出た。

俺と仲間の名前が呼ばれたのにも、そうだし。

一度と会った事が有るのか、自分の記憶を思いだそうとするが、一向に出てこない。


「知ってる人なの?」


背中から仲間の声が掛かる、自分の名前を呼ばれたのだから俺と同じ様に考えたのだろうが。

どうやら記憶に無いらしい。


「いや、俺は知らない。アンこそ本当に覚えてないのか?」


仲間が分からないのなら俺にも分からない、俺よりも仲間の方が記憶力があるからだ。

クエストの依頼主や貴族でも、交渉や話し事は基本仲間がやる為、俺は側で黙っている事が多い。


そんな俺が、会った事が有るのか無いのか分からない変態を覚えてる訳がない。


「だよね、リストだもんね。じゃ、あの人は何で私達の事を知ってるのかな?」


分かってたなら言わないで欲しい。


「俺達が名前を呼びあってるから、それで言ってんじゃないのか?」


名前を何回も呼んでいるのだから、全裸の男に聴こえていて不思議じゃない。

それで知人でもあるかのように装っているのだから、盗賊の可能性が高いと思う。


「盗賊だと思ってるなら違うからね。本当リストって短絡的と言うか、周りを見てから状況を考えて欲しいだけど」


「今言うか!!」


後ろに目を向けて、思わず叫んでしまった。


考えていた事を当てられるのは、まだ良い。

その後の言葉は絶対に今言う事じゃないと思うが、実際自分でもそう思う節があるため、それ以上は言えなかった。

「ふふっ」と微かに笑われたのが前から聞こえた。

直ぐ様全裸の男に目を向けて睨む。


「何、笑ってんだよ?」


全く知らない奴に、まして変態に笑われてしまったのが気に入らなく凄んでしまった。

なのに、変態は特に気にする素振りもなく平然としていた。


「ごめんね、とても懐かしやり取りを見たから。つい、笑ちゃた」


そう言う全裸の男の表情は、本当に懐かしい物を見たといった優しい顔をしていた。

変態の癖にと思いながら抜いた剣を降ろした、もう事を構えるような気分じゃなくなっていた。


「あの~どうして裸なんですか?。良かったらコレでも羽織ってください」


未だに背中に隠れた仲間が全裸の男にそう言って、俺に俺の外套を渡す。

一瞬だけ、ん?、と思いながら。

マジかと思いながら、悲しくなりながら外套を全裸の男に投げた。

男も投げられた外套を受け取ると、戸惑いながらお礼を言って裸の上から羽織った。


「ごめんね、話せないの」


何故、裸でいたのかを聞くと、男は複雑そうにそう言った。

別に俺は裸の理由なんて知りたくはなかった、仲間も話してくれないのが分かると、それ以上は聞かなかった。


男が羽織った事を確認した仲間がやっと、俺の背中から隠れるのを止めて出てきた。

小声で「これで、もう大丈夫なんて」言ってるのが聞こえた、見たくないのは分かるけども。

せめて一言言ってから、俺の外套を渡す事を聞いて欲しかった。


「こんな所で何してたんですか?」


全裸だった男のアレが見えなくなった途端に、仲間が愛想の良い笑顔で話し掛ける。


「え....え~と....分かんないかな?」


返ってきた答えは、本人ですら分かっていなかった。

困り果てた様な顔付きするが、俺も仲間もどうしたものかと互いに顔を見合せた。


「と、とりあえず、この近くに村があるので。良かったら一緒に行きませんか?」


「そうだな。いつ、魔物が来るかも分からないからな。どうだ?」


轟音での音に多くの魔物は遠くに逃げたが、危険が無い訳じゃない。

時間が経てば、早くってもゴブリンが森を徘徊しだす。

男は思案するまでもなく了承した。

仲間が先頭を歩き誘導しながら、男を真ん中に後ろに俺といった順に森を歩く。


村まで歩いて3刻半の距離。

仲間が話のネタを振って男が答え、今度は男が話のネタを振って答える。

そんなやり取りが続く中、俺は男から目線を放さないでいた。

聴いてる会話から何処か懐かしいような、そんな風に感じられた....。


...........

.......

....


「冒険者様形。申し訳ないのですが、お部屋はご一緒になってしまうのですが....」


申し訳なさそうに村の村長が言う。

日はまだ昇っているが、それも数刻もしない内に暗くなってしまうと。

今晩の寝泊まりの部屋を用意してくれたのだが、男二人に女が一人。

俺は当然まだ名前を名乗らない男と一緒の部屋はごめんだ、ほんと一向に名前を教えらがねぇ。


「いえ、気になさらないで下さい。泊めてくださるだけでも、ありがたいですから」


仲間が村長の気遣いにお礼を述べる。その間、男は部屋の片隅に置かれていた木箱の中を覗いていた。

俺はそっと後ろから近付き、何を見てるのかと後ろから覗いた。


「.....あぁ、これか」


何の事もない、何処にでもある魔柔石(ミーヤ)だった。

それを何故こうも覗いていたのか、やはり男の考えは分からないと思えた。


「....部屋は二人が使って、私は外じゃないと寝れないだよね」


男は木箱を抱えて立ち上がり、何故持ったのか分からないがそう言った。


「えっ....ベットなら人数分ありますよ、外で寝なくっても良いじゃないですか?」


「えっ!!」


「なに?」


「何でもない....」


思わず驚いて声を出してしまった。その瞬間の仲間の目は中々に怖かった、今も心臓がバクバクと鳴ってるのが分かる。


「素性が分からない人と一緒だと、色々と危ないでしょう?」


「え、でも....」


仲間が止めようとするが、男が言った事は間違いじゃない。


「冒険者様を、外で寝かせるなんてとても出来ません!!」


すると、話を聞いていた村長までが男を止めようとドアの前に立ち、通さないように立つ。


「....お前らが何しようと一向に構わないが、俺達()の前に立ち塞がるなら喰うぞ」


先程までの女性ぽい口調が、凍えそうな声音共にガラリと口調が変わった。

思わず後ずさってしまった。それ程に目の前の男がさっきまでとは別人(・・・・・・・)に思えた。


「っあ....ぇ....その....っはぁはぁ」


村長の息遣いが激しくなる。男を前にして何とも言えない息苦しさが、村長の息遣いの荒さを示した。


「ぅ.....うひぁっっっっっ!!」


奇怪な声を上げながらドアを勢いよく開けて、村長は壁に当たりながら外に逃げ出した。

男はさも気にする素振りもなく、木箱を抱えて空いたドアから堂々とした歩きで出ていく。


「おい!」


俺は出ていった男の背に向けて呼び掛けるが、止まる気配が微塵もなかった。

暫くしてから、俺は開けっ放しのドアを閉めてベットにドカッと荒く座った。


「クソ、マジで何なんだよ彼奴は!」


頭を掻きながら俺は男に悪態ついてしまう。一緒の部屋で寝る事が無くなったのはいいが、どうしてか俺は男が出て行ったのが気に入らなかった。

そんな自分の気持ちに戸惑いもした。


「.....なんかさ~似てたよね」


ポフッと荒く座った俺とは違う、もう一つのベットに優しく座った仲間が唐突に言う。


「.....何が?」


何に似てるのか、言われた所でピンと来なかった。

聞き返すと仲間は「あの人」と名前が分からない男を指した、それから話の続きを喋り出した。


「どこが似てるなんか分からないけど、でも、懐かしい感じがした。シア姉~が側に居るみたいに....」


「何処が!。彼奴とシアは一欠片も似てねぇーよ!」


仲間の方を直ぐ様振り向き反射的に否定した。


「でも!!、確かにそんな感じがしたの!」


仲間も複雑そうな顔付きで反論する。

俺にも懐かしい感じがしたのは覚えている、でも、だからと言ってあの男と義姉が似てるなんて。

絶対にあり得ないと、俺は全否定した。


「......本当にしたんだもん」


ボッそと消え入りそうな声だったが、俺の耳には確りと聞こえていた。


そのまま俺達は夕食まで会話がなかった。部屋の中で飯の準備でもするかと、立ち上がった時にドアが開く。

「うぉ!」と驚いた声が出てしまった、そこにあの男が居てお盆に載せた夕食を片手に持っていた。

それだけで驚きはしない、俺が見て驚いたのは無かった筈の右腕が生えていた(・・・・・)


「え、え!、え!!.....どうしたですかそれ!!」


仲間も同様に驚き、指を指しながら恐る恐る聞く。


「ちょうとね、それよりも暖かい内にどうぞ」


さも、小さい事のように流されては、ほんのりと湯気が見える夕食を差し出された。

小さなお盆に載せられた一皿だが、そこには懐かしく昔良く食ったなと感想を抱いた。

基本は野菜屑の切れ端や少量でも肉が入ってれば上等だったが、この目の前のスープには具が沢山入っていた。

野菜屑ではなく大きく切られた具材、肉がごろリとこれもまた大きく入っている。

何て事もない料理だけど、このスープは村にとっては贅沢な一品だと言える。


「いやいや!、美味しそうだけどよ。説明してくれよ!」


そう思ったのは事実だが、腕が生えた事に比べれば驚きようが違うし何があったのかが知りたい訳である。

人は一度何かを気になれば、それが気になってしょうがない。

そう考えれば、リストもまた人の性である。


「なら、食べ終わったら考えておくね」


やはり、男は話す気が見られなかった。


「絶対!、絶対だからね!!」


それに仲間が反応しては、男から貰った具だくさんなスープに手をつけ始める。

俺も半分諦めながらも、冷めない内にとスープを食べ始めた。

スプーンに乗りきらない大きな具を一口で口に運び、直ぐ様スプーンで掬う。

それを数回繰り返して咀嚼していくと、仲間が驚くような顔付きが見て取れた。


それは俺も同じであった。


「.....美味しい」


確かに何をしたら美味しくなるのだろうかと感想を抱いたが、只それだけなら多少の驚きはあるだろうが。

そこまでじゃない、俺や仲間が驚い理由はそこじゃない。

.....一言で言うなら"懐かしい味"だった。


昔良く食べさせて貰った懐かしい味、自分達の姉にして母のような人の味と似すぎていた。


「そう、まだ沢山あるからね」


男は俺達の様子を見ていてそう言うと、部屋から出ていく。

きっとお代わり出来るように持ってくるのだろう、それは有難いと思った。

もうすでに、器に入ってるスープは後二口で終わってしまう。

それから男が持ってきてスープのお代わりは、鍋の中身を全部二人で平らげてしまった。

元々量はそれほど多くはなかったが、五人分ぐらいは合った筈だった。


「本当に美味しかったです.....」


「あんたの分まで、二人で全部食べちまってすまない」


食い終わった後の余韻に暫しの間浸っていたとき、俺と仲間は男の分まで食べていた事に今更ながら気付いた。


「あっ...あ、ん。気にしてないから大丈夫だよ、美味しそうに食べてくれて嬉しかったよ」


男の返答は本当に気にしてなかった、むしろ此方の 食べっぷりを見て笑っていた。


(笑えるだな....)リストは男が口端を吊り上げて笑ってる姿を初めて見た気がした、だが男の笑みは不器用と言うか引き攣った感じが拭えなかった。

そんな事を思いながら男にもう一度謝り感謝する。


「さてと、洗い物してくるね」


一旦会話を止めると洗い物と称して、食べ終わった食器や鍋を片しながら重ねた。


「あっ!、洗い物なら私がやるから寛いでてください!」


流石に食事を作って貰っておきながら、全部食べてしまった事に申し訳なさがあった仲間が、いち早く食器や鍋を手に持って言った。


「そ、そう。なら、お願いしようかな」


「任せてください!。こう見えて小さい頃から良く手伝ってたんで、得意なんです!」


仲間が得意気に言うのを聞きながら、俺は小さい頃と言っても五年も前の事を思い出していた。

三人(・・・)が一緒にいられた幸せだった最後の年を、姉にして母のように慕っていた人の傍らで手伝う俺と仲間の姿を。


毎日が楽しかった日々が今も鮮明に覚えていた...。


「確かになアン得意だったもんな、良く手伝ってたしな」


「まぁ〰️ね〰️。良く誉められてからね、その代わりリストは良く怒られてたしね」


笑みを見せて自分とは逆だったリストに言う。


「うっせい!、さっさと洗ってこい!!」


少し恥っばずかしかったリストは食器を手に持ったままの仲間を、多少だが言葉悪く部屋から出ていかせようとした。


「はいはい、行ってきますよ〰️だ」


仲間はぶすっとした顔付きで部屋から出ると、顔だけをドアの縁から覗かせてベーと舌を出して言う。


「子供かよ!」


「二人とも子供でしょうに.....」


男は二人のやり取りを見てそう思った。

年齢も未成年である事も考えれば、十分に子供と言えた。


「もう子供じゃねぇ~よ、二年前に成人の儀受けたから大人だ!」


男の言葉に異を唱える。

リストは15の時に、成人の儀と呼ばれる大人の仲間入りを果たしている。

儀と言ってもやる事は決まって15になる前に神官から決まった言葉を貰い、改めて誕生日を迎えれば大人となる。

それをリストは言っていた。


男は暫し黙っていると「....ぁあ、そうだったね」と、思い出したように一人納得していた。

これぐらい常識なのだが.....。


「.....そっか、もう知らない内に大人になったのね」


「...会った時から思ったんだけどよ、俺達は何処かで会ってるのか?。正直な話し貴方(アンタ)に見覚えがないだが?」


やはり気になっていた事を俺は改めて聞く。

向こうはこっちを知ってる風に話す性で、聞くに聞けない状態だった。

だって、向こうが知っていて俺や仲間が面識無いって言ったら。なんか申し訳ないと思えたが。

やはり気になっていたのは本当だし、そろそろ名前が知りたい。

分かってる事なんて見た目以上何も無い.....。


「......見覚えが無いのは事実。しかし、(俺達)が覚えている。それは、深い繋がりが数奇な運命(さだめ)として巡り合うように」


まただ、目の前の男からさっきまでの口調や雰囲気が180度一変する。

そして何を言ってるのか理解出来ない始末、そこまでして自分の事を話したくないのだろうか?。


「全然、何言ってるか分からん」


リストは顔や声音からも、心底本当に呆然と問い返した。


「理解する必要は無い..が......」


男が何かを言い掛ける途中で、部屋の窓から外を不意に見て左の方の口端が吊り上げるのを確認した。


「どうかしたか?」


俺はそう聞くと男は部屋から出て行こうとした、慌てて止めると。

男は振り向きも見ずもせずに、声だけを返してきた。


「夜は部屋から出ない方が身の為だ、もう一人にも言っておけ」


「お、おい!。それは.....」


どう言う意味だ....と続く筈だった言葉だが、男が部屋を出て行くのと同時にドアが勝手に閉まってしまった。

線を引かれた気がした、この線よりも先に進む事を拒むような....そんな気がした。


ガチャと再びドアが開くの気配を感じた。


「あれ?、あの人は何処に行ったの?」


食器洗いを終えて戻ってきた仲間が、部屋にいない男の所在を聞いてくる。


「すれ違わなかったのか?....その反応だと会ってないみたいだな」


男が出て直ぐに仲間が部屋に入ってきたのなら、会ってる筈だと思ったが。

仲間の表情からすれ違う等もなかったのが伺えた。

しかし、家の構造上部屋から出て廊下を通るが、仲間が食器洗いしてる居間を通って外に出る必要がある。

そこまでは一本道のように真っ直ぐしかない。


「出てった音はしなかっただけどな?、ちょっと外見てくるね」


「あ!、いや待て!。探しに行くのは少し待ってくれ!」


俺は仲間を呼び止めた。


「.....なに?」


呼び止められた仲間が、探しに行くのを止められたの事に不機嫌さが見えた。


そこまで....なんか悲しいなぁー。


俺は仲間にさっきまでの男との会話を仲間に話した、仲間も外を見て部屋中を動きながら悩んでいた。

外はすでに日も傾きだし空の端が暗くなっている、男の言葉に従うなら部屋から出ない方が良いってなるが、そもそも従う必要も無い訳で...どうしたものか?。


「........リスト、まさか言う通りにしたりしないでしょ?」


体の向きはそのままに、顔だけを此方に向けて言う仲間に口端を吊り上げた俺は。


「当たり前だ!、従う訳ないだろ!」


俺の言葉を聞いて、それでこそと言わんばかりの表情を見せる仲間。


「そうと、決まったら急ぐよリスト!」


「さっき出て行ったばっかだから、走って追い掛ければ追い付くはず」


そうと決まれば俺達は一直線に外に向かった。男が部屋を出てから時間はそんなに経ってはいない、なら、まだ近くにいると考え辺りを歩きながら見渡し探した。


「ダメだこっちの方は見当たらない、そっちはどうだ?」


村を歩き男の姿が視認出来ない事を、合流した仲間に告げた。


「ダメ、こっちも見当たらない。....もしかしてて村の外に出たのかな?」


仲間も俺とは違う方向を探していたが見当たらなかったようだ、そこで考えられる事を述べた。

村にいないのであれば外と、が、他の家の中にいるとも考えられるが。

見知らぬ人を中に招くような人は大概はいない、よっぽど仲が親しくなるか、何か縁が有るかじゃないとだ。

そうゆうのがなければ、大抵は村の長の所に世話になるのが通例となる。

色々と理由があったりするが、今は男の行方を探すにあたり意味が無い。


「この様な時間に外で何をなさってるのですか?、さぁ夜は冷えますのでどうぞ中にお入りください...」


声を掛けられた方に顔を向けると、村の村長が立っていた。

確かに日も完全に落ちた事で、夜の少し肌寒い寒さを感じた。


「村長さん、すみません連れを見掛けませんでしたか?」


仲間が男を見ていないかと問い掛ける。

すると、村長は間を空けてから思い出したように話し出した。


「....その方でしたら、「この辺で開けた場所は無いか」と聞かれましたので。この先にちょっとした所ありまして、その場所を教えましたら向かわれて行ってしまいました。.....一応お止めしたのですが」


村長が指す方向を見たがこの場所からは、その丘の姿は見えなかった。


「いや〰️本当に困ったものです、話し掛けても睨まれてしまいましたよ」


俺達が黙ってると村長は男とのやり取りに、苦笑しながら話してくれた。


「村長、ありがとうな。俺達もその場所に行ってみるわ」


「村長さん、ありがとうございます」


俺とは比べて丁寧にお礼をする仲間を余所に、教えてもらった方向に軽く小走りして向かう。

村の柵を越え村から完全に出ると、対した距離じゃなかったのか。

直ぐに目的の場所であろう、開けた所に着いた。

ただ、雑草が雄々しげっており太股程までに伸びていた。


その中に闇に溶け込むように男は立っていた。


「やはり来たか.....」


男の声音は低く冷淡であった。俺達に興味がないのかこっちを見もしない、が、俺は悪態つくように言葉を返す。


「なんだよ、来ちゃ行けなかったのかよ?」


「そ...うだな、来てしまった故に村人が死ぬだろうな」


後ろ向いていた男が反転すると、口からそう告げられた。

男の魅せる顔付きは嗤っていた。


「それは!、貴方が村人を殺すと言う事ですか?」


「いや、俺達()は何もしない」


仲間の問いに男は即答する。


「じゃ、何で村人が死ぬんだよ?」


普通なら妄言戯言として、一切気にしないのだが。

男の口から告げられた事には、何故かその類いには感じられなかった。

だからこそ、俺も仲間も男の言葉を疑わないが。どうして男がそう言うのか、知りたかった。


「そんなのは決まってる、お前達を殺す為に雇われた賊が村人を皆殺しにするんだよ」


男は淡々と言いきった。それに対して俺は戸惑った、仲間も同じであった。


「いやいや意味が分からねぇよ、例えそれが事実なら。何で俺達を殺す為に村の人達を殺す意味が有るんだよ!」


「そうだ...よね。全く無関係の人達が死ぬなんて可笑しい」


仲間の言う通りだ。目的は俺と仲間の死なら、関係ない村人が死ぬのは可笑しい。


そう考えた矢先、男の渇いた笑い声が一蹴して聞こえた。


「可笑しい?、意味がある?。....んなもんには何も意味も可笑しさも有る筈がない、そこに有るのは"楽しい"からこそだ」


そこで男は一度言葉を切ると、直ぐに俺や仲間が声を出す前に続ける。


「抵抗の有無があろうが殺す、金に成りそうな物は略奪する。女、子供は楽しんだ後は売るか嬲り殺すか、男、老人は例外なく皆殺しだ。お前らにそんな理由で殺された彼奴ら()の嘆きを理解できるか?」


「「こ、殺された?」」


意図して口を揃えた訳ではない、自然と俺と仲間は口を揃えて言ったような感じになっていた。

何故なら「殺された俺」と男は言った、なら目の前で立っている男は死んでいるのかと困惑した。

生きてる人のように振る舞っていたのは何だったのか、それともアンデット系の魔物なのか理解出来ない考えが、頭の中をくるくると回る。


「あぁ、分かってる。言う必要がないだろう?、分かってる.....黙れ」


「「.....」」


混乱してるこっちを余所に、男は独りでに話し出していたが。

急変する冷淡な冷たい声音に、俺と仲間は身が固まってしまった。


「....あぁ、あれって?!。そんな!....嘘...」


ハッと息を押さえた仲間が何かに気付き、後ろを振り返って驚愕した。


「燃え...ている!」


夜の空をうっすらと赤く染めながら、風に乗ってこっちまで鼻に付く燃える臭いが鼻腔に居座る。


「始まったようだ。聞こえるよな、聞こえるだろう理不尽に散って行く命の叫びが。.....感謝しなければ、腹が満たされていく事に」


男の声を無視して村に駆け付けようと、魔力を足に巡らせ魔力強化をする。

これで思いっきり全力疾走すれば、数分もしない内に村に着き村の人達を助けられると思った。


俺達()を無視してまで村に行こうするか、その偽善は褒められる行動だろうが。行かす訳がないだろう」


「リスト!!」


仲間が強く俺の名前を叫ぶ。


「避けろ!!」


短く一言俺は仲間に向けた、それと同時に互いに男の方に向かって大きく飛び退いた。

すると、さっきまで居た場所に替わるように黒い棘が地面から上に延びていた。

それは半円するように俺と仲間を半分囲う形だった、前には黒い棘、後ろには男が立ち塞がっていた。


「さぁ、ここで大人しく村人が皆死ぬまで相手しくれよ」


一切顔色を変えずにそう言ってのける男に、俺と仲間は武器を抜いた。


「「断る(ります)!!」」


「.....そうか」


男の短い言葉を最後に、俺と仲間は仕掛けようと動き出そうとした。

しかし、気付いた時には(・・・・・)何かに体を刺し貫かれていた。



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