74話 綻びの先に
只今、過去の話を直し中ですが、まだ全部は修正出来てません。
話はそれ程変更はしてませんが、文を少し増やしたり減らしたりしてます。
全部修正出来ましたら報告致します。
それでは今話もお楽しみ下さい。
地獄の門から出ると地獄には無い明るい光が満ちていた、その上空には困惑と驚愕が混じった表情をする神がいた。
何回か言葉を交わしてみたが、聞こえない俺達の名を呼ぶ。
「ーーーだったな?。今は何者でもない、ただの名も無き亡者」
テミストから刻まれた名を言わないのは、テミストの呪縛が有るから。
目の前の神を殺したくっても、手を出す事を禁じられてしまった。
なんて悲しい事だ、そのテミストは俺達の中で眠ってしまった。
「何故だ!、ーーーが地獄から出てくる?!」
叫ぶように聞いてくる神に答える義務は無いが、上から聞いてくる態度に腹が立ってしまった。
ここまで借り物の感情が表れるのはきっと、名を刻まれた影響だろうか。
俺達は自分の手首を噛み千切ると、大量の真っ黒な血が噴き出す。
神が俺達の行動にこれまた驚きを見せる、これだけでも俺達は笑えてしまう。
今から起きる事を見せたら、今度はどんな表情を見せてくれるのやら。
「黙って見てろよ」
噴き出した真っ黒な血が、転神神殿の白い床を黒く染め行きながら広がっていく。
ある程度の血溜まり場が出来ると、ヴァイスが噛み千切った手首は既に治っていた。
だが、そんな事に気づく前に血溜まりはブクブクと気泡が浮き出ると蒸気が沸き出す。
次に真っ黒な血に染まった人骨が沸き立つ、それは一体だけではなく、次々と姿を見せるとその数は爆発的に増えていき重なっていく。
ここまで掛かった時間は1秒にも満たないだろう、爆発的に増えた人骨は意思を持つように勝手に動き、近くにいる他の人骨を襲い掛かり混ざり重なっていく。
それは次第に神がいる上空の位置まで伸びた塔になる、ヴァイスは笑い声を上げながら外側に出来た螺旋階段を駆け上がっていき。
天辺に出来た人骨の骨出来た背もたれが有る座に座ると、神と同じ目線で話し掛ける。
「どうだ面白かっただろ?、こいつ等は嘗てはお前に信仰していた者達だ」
カタカタと鳴る黒い骨は頭が有る部分全てが、モルータを見詰める。
生きて嘗ては信仰していたこいつ等にとって、信仰していた神に会えるなんて感謝して欲しいぐらいだ。
「貴様ぁあぁぁぁぁ!!」
神にとって生きて信仰してくれる者は、神の存在を強める大事な者達だ。
それは生と死を司るモルータにとって変わらないが、死を司るモルータは違う死後すら信仰してくれていた者達にも、また存在を強めくれる大事な者達だ。
それを目の前のーーーが貶めた、決して許される事ではなかった。
「気に入ってくれたみたいで嬉しいなぁ~、アッハハハハ!!」
愉快痛快に面白い反応を見たヴァイス嗤う、悪意に満ちた笑みは更にモルータを激情を掻き立てる。
『やり過ぎですよ、これ以上はテミストとの楔が反応しますよヴァイス?』
ディギルの言葉で盛り上がった気分が台無しになる、ヴァイスは笑い声を止めると危険が迫ってるのに気づく。
「ったく、手を出さない代わりにこれぐらいは良いだろうに」
ヴァイスは座っていた座から飛び退くと、モルータから発しられた灰色の波動から逃れるように落下していく。
「何を独りで喋ってるか!、此処から逃げれると思っているのか?!」
モルータから見れば、ヴァイスは独り言のようにブツブツ言ってるように見えるだろうが。
ヴァイスの中にはディギルという存在がいる事など知らない、例え顔はーーーにそっくりでも目の前の奴は信者を貶めた罪人だ。
敵にすらならない矮小な存在、このまま如何なる者でも死を齎す波動の前に無意味となるだろう。
「さぁ、お前らを自由にしてやる。好きに動く良い」
落下の最中、俺達は迫り来る波動をから逃げる為に人骨共を解放してあげた。
言葉一つで塔を築いた人骨共は、自らの意思で壊れていくとモルータに向けて飛び掛かって行く。
生前は根深く信仰していた者達だ、死後すらも魂に深く刻まれた信仰は神に触れたいが為に動き出した。
「っむ!!」
モルータは眉を寄せると神の座から離れ、空中を移動して人骨から逃げる。
死の波動に触れている人骨が朽ちない事にモルータは一瞬だけ戸惑うが。
直ぐに事の解明を解くと、灰色の波動とは違う薄緑色の波動が掌から一直線に放たれる。
『っち、時間稼ぎすらならなねぇとか使えない奴等だ』
着地したヴァイスは人骨共が相手してる間に、転神神殿から脱出しようとしていた。
だが、速くも人骨共の弱点に気付いたモルータには少しだけ称賛を贈りたい気分になる。
『これ以上の魂の消費は危険だよ、速く此処から出ないと』
モルータの反応を見たいが為に造り出した人骨は、ヴァイスを形成する魂の消費は予想異常に大きく、これ以上の維持が困難になる事を危惧する。
『ってるから、速く抉じ開けろ』
死者すら死ぬ灰色の波動が効かない理由に気付いたモルータは、生の波動を人骨に浴びさせた。
すると人骨の上に筋肉が覆うと皮が生える、それは何処から見ても人だった。
「「「「モ゛ル゛ータ゛様゛ァァァァァァア゛ァ」」」」
信仰する神の名を呼び続ける人じゃない人、掠れ嗄れた声は助けを求める叫びだった。
モルータは彼等に悲しげな眼差しで見る
「今....そこから救おう」
モルータはそう言うと、慈悲深い声音で灰色の死の波動を全方位に向けて放った。
最初は効かなかった波動は彼等に触れると、一瞬にして死を二度目の死を齎してくれた。
次々と青白い揺らいだ魂が浮きながら、最後の一体まで死ぬのを見届けると。
今度はモルータの後ろに六つの輪が展開する。
「逝くがいい、輪廻の内で廻れ」
真ん中の大きな輪が回転すると、浮かぶ魂を吸い込んでいく。
全てを吸い込み終わった時、六つの輪は一つの輪に繋がると消える。
「それがテミストから奪った輪廻か、使い心地はどうだ?」
ヴァイスは皮肉を込めて言う。
六つの輪はテミストから奪った輪廻だと、眠るテミストの記憶で見て分かった。
六つの輪はそれぞれ地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の六つが有る。
それは六道輪廻と呼ばれる、どの世界にも存在する理らしい。
成る程と思う、ーーーの記憶にも六道輪廻と言う言葉はあった。
なら、吸い込まれた魂は再び地獄道に堕とされたのだろう。
そこでヴァイスは一つの疑問が浮かび、テミストの記憶から引き出す。
地獄門は輪廻で廻るまでもなく直接堕とされる装置らしく、それは強引に開いた事で使用出来ない。
だからモルータはテミストから奪った輪廻を使ったのだろう、再び俺達に使われない為にご苦労な事で。
「そんな事を聞いてどうする、もう逃げる事は出来ないぞーーー」
もう追い詰めたと思ってるのか、モルータからそう言われる。
だけど、残念。
「そうだと良いな、俺達は此処から去るけどな」
モルータが輪廻を使わなければ、俺達は終わってただろうが。
輪廻を使った時点で勝ちは決まった。
『お待たせ。何時でもイケるよ』
『なら、今すぐにだ』
ディギルに直ぐに開くよう指示を出す。
ディギルには転神神殿の一部の侵食を急かしていた、それは俺達が血を噴き出したあの瞬間から始まっていた。
ただ、それには時間が有するのだが、モルータが輪廻を使ってくれなければ成立しなかっただろう。
後は、綻びが出来てしまえば脱出は簡単だった。
そこに飛び込む事で現世の何処かに飛ばされる、待ちに待った日が来る。
「...っむ!、させるか!!」
モルータは今じゃテミストの代わりに転神神殿の主である、それが干渉されたのに気付き。
ヴァイスに向けて死の波動を一直線に放つ、ヴァイスは最後にモルータの焦りを見れて笑みを浮かべた。
神を翻弄出来ただけでも、ヴァイスとその中にいる無数の存在は嗤えた。
ヴァイスは綻びが出来た壁に飛び込む、迫っていた死の波動は綻びを通過する前に閉じた事により、無意味に終わった。
「.......」
モルータは逃がしてしまった事に、自分自身に激怒する。
現世に出てしまえば、此方から手を出せないからである。
もう一度神の領域に来ることが有れば話は別なのだが、それは無いに等しいだろう。
だからこそモルータは激怒する、アレ程の危険な存在を逃がしてしまった事に。
「....これで終わったと思うなよ」
モルータはヴァイスが逃げた綻びに向けると、声に出すことで怒りを向けた。




