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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
三章 目覚メルワ災厄
76/81

71話名も亡き者

10万Pv達成致しました!!!

ありがとうございます!

長かった目標を達成できたのが感激です、次はより高い目標を掲げて頑張る所存です。


読んでくださる読者の皆様には、改めて感謝をより一層捧げたいです!!


ありがとうございました(´ノω;`)


その光景を視る者がいるのなら、そこは地獄か或いはそれに似た何かだと口に出して言ったはず。

だが、それを生きた者に伝える事はない。

何故なら此処いる者達は死んでいるから、俗に言う「死者に口に無し」。

どうして、死んだ者が生きてる者に言葉を伝えられると思うのか。

そんなのは決まってる、都合の良い幻聴であり、一つの個が自分に向けた耳気持ちが良い言葉にしかならない。


なら、どうして地獄絵や地獄とはどの様な物かと、描かれ語られ生きる者に伝わるのか。


それは、「何となく」、「こんな感じじゃないのか」と、曖昧な感じであり、また妄想でもある。

自分がされて嫌な数々、動かなくった亡骸が無数に有ること。

普通では有り得ず、自身の精神が耐えきれずにその様な表現が出る。


それらが現世、生命が活動する世の中。


生きる者に真の意味で地獄の理解は出来ない、出来るのは神に見放され遥か下に落とされた亡者達だけであった。

例え永遠に続く贖罪が終わり、輪廻に還るまでそれは果てしない刻を過ごす事になる。


自分が何者だったのか、どんな罪を犯したのか記憶は無く。

ただ、ひたすら骨に皮を纏った姿でさ迷うしかなかった。


現世の中には必ずしも何処にでも例外が有るように、地獄にも例外が生まれる。


天高く積まれた亡者の骸に立つ亡者らしからぬ、亡者が曇天の空に目掛け無い筈の右腕を伸ばす。

地面すれすれまで伸びた黒い髪、虚ろでありながら獣の如く鋭い黒瞳。

他の亡者とは比べる間でもない例外中の例外が、此処に誕生していた。


「....」


「ーーー、そろそろ離れないと踏み潰されますね」


一つの例外が有るだけで、また違う例外が生まれる。

それらを取り除き排除しながら、神に見放された亡者共に苦痛と苦しみを与える存在がいる。


「ディギル。俺達()は何時になったら・・・を取り戻せるんだ」


曇天の空を覆い隠しかのような足裏を見上げながら、山の天辺にいる亡者がもう一人に問い掛ける。


が、すでにこの場から避難していた。

亡者は間近まで来たにも関わらず逃げない、何もせず受け入れるようにそのまま踏み潰された。

踏み潰した足は持ち上がり、曇天の空へと戻っていく。

その場にあった亡者の山は薄い紙ように平べったくなると、体は消失し天に青白い揺らめきの塊が浮かび上がる。


「戻るのは簡単さ、門を潜ればね....。けど、僕らじゃ相手あいつにはまだ指一本触れられないよ。アレさえ何とかなれば、ーーーが居る現世に還れるだけどね」


黒骨で形作られた死神が含みがある言い方で、地面にめり込んでる亡者に話し掛ける。

ディギルと呼ばれた男は、自身が踏み潰される前には逃げた筈なのに。

巨大な足が無くなった瞬間には、側に立っていた。

亡者はそれを気にする素振りを見せず、その状態で喋りだす。


「そうか、なら集めよう俺達()の糧になる罪深い魂を」


ディギルの言葉に亡者は、めり込んだ体を起き上がらせ天に浮かぶ青白い揺らめきを、自分の所まで引き寄せる。

口を開け放つと息を吸うように、次々と亡者の体に吸い込まれていく。

何十、何百、何千、何万、何億といった正確な数すら測りきれない量を、亡者は何時間も掛けて全て平らげた。


「全然こんなじゃ足りないね、もっと上質な物じゃないとダメだね。やっぱり奥に行くしかないよ、時間ならたっぷりとあるから、ーーー」


ディギルは亡者の名を呼ぶが、亡者にはノイズが走るように聴こえない。

何億の罪深い魂を亡者が得ようとも、それは水の一滴にすらならない微々たるもの。


「行こう....」


行く果てない奥に向けて亡者は歩きだす、その後ろにディギルも着いていく。


地獄に落とされて早く、一億四千二百六二日も過ごしていた。

他の亡者とは一線違う例外中の亡者、輪廻に還る期限など無く永遠にさ迷う。

此処に堕とされる前に全てを持ってかれた名も無き亡者、残されたのは記憶を持つディギルから教えられる物しかなかった。

前の名ですら認識できないもどかしさ....、何と呼ばれていたのかはハッキリと覚えていた。


...かつて呼ばれた名を"ーーー"。


ノイズが有ろうが無かろうが、亡者にとって些細な事でしかなかった。

「自分が覚えている」それだけで充分だった、後は取り戻せる日を待つしかなった。


二人が地獄の奥に辿り着いたのは、それから六万年後であった。

地獄の最下層に至るまで、自分達以外の例外な存在すら出会えた。

彼等の魂は一際上質な上に、ーーーにとっては幾分か力を満たした。

代わりにと彼等の願いを聞き入れる事を条件に、頂いた...。


「もう、此処でさえ魂は無くなってしまったね」


最下層で得られる魂を、全て亡者が平らげた事により何も居なくなってしまった。


「....あぁ、後は待つしかない」


魂を得られないのならと亡者は歩きだす、次に目指す目的地も定まらないままに。

その後ろ歩くディギルも何も言わない。ーーーに着いていく何処までも。


また、刻は幾百も幾千、幾万と終わらない時の中を歩む。

すっかりと永くなった刻を数えるのも、自然と無くなっていき。

気付けば現世に還れる門の前で()して待っていた。

泣き叫ぶ骸骨に地獄に存在する、あらゆる化物が装飾された強大で重厚そうな門。

その門を守護していた三ツ首の犬と無骨な剣を構えた巨人は、亡者の横で無惨な姿で殺されていた。


「....た.....来た!ーーー!!。門が開く時が来たんだ!!、永かった刻が報われますよーーー!!」


亡者の名を叫びながらクルクルと横で回り、大いに喜びを表すディギルに亡者は無視する。

重厚そうな門が、地獄の土を引きずりながら外開きする。


俺達()をーーーから取り戻そう、その邪魔をする奴等・・・がいるのなら....全てを壊してでも」


「僕はーーーの天恵ギフト。常に貴方と共に、何処までもきましょう」


回る事を止め、深々とオーバーに礼服するディギル。

地獄の蓋は開かれた、なら、飛び出すのも必然。

亡者は歩きだすと、静かに待ち待った現世に向けて進みだした。


評価や感想を頂けたら嬉しいです。

それを励みに頑張ります!!。

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