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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
二章 北の大陸 ハースト
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61話 旅立ち


今話は短いのでご了承下さい。

忍とリアさんが風呂に行った後、僕は自分の部屋に向かい荷物を整理してから、窓から見える太陽の位置を見て時刻を確認する。


もうすぐで昼時か。....なら食堂に行くかな。


太陽が真上から左側に位置する所を見て、目測での時間を計った。

格好も何時ものジャージらしく無い、私服に見えてしまうジャージに着替え部屋を出る。

食堂まで時間は掛からず、中に入るとクラスメイトが3人居るだけで、それ以外はメイドさん達が3人の食事を運んでいた。


「あっ、陸じゃん!。飯まだなら俺らと食べようぜ」


食堂に入ってきた僕を見て、手で空いてる席を指しながら声を掛けてきた。


「3人は相変わらず一緒なんだな、それにしても他の皆どうしたの?」


当たり障りもない事を言いながら、この場に居ないクラスメイトの事を聞く。


「あぁ、それなら買い出しに行ってるよ。本格的に旅支度してるな皆?」


「そうか?、って一也達は買い出しに行かないのか?」


一也かずや佑樹ゆうき成行なりゆきの3人を見ながら言う。


「うん?、俺らは昨日の内に終わってるぜ」


「ちなみに、飯食ったら旅立つから。今日が最後になるな」


佑樹の後を成行が言葉を紡ぎ、サラッと言った事に陸は驚きを「マジか!」と声にした。


「やっぱ、そんな反応するよな」


微笑する一也に釣られて成行も微笑していた。

そこにメイドさんが僕の食事を持ってきてくれて、お礼を言って受け取った。


「イケメンは死ねば良いのに....」


佑樹が陸に対して毒付く、そこに二人も頭を縦に頷く。


「いきなりどうした?!、って僕に向けて言わないでくれ傷付くだろ」


「うっせぇ!、メイドまでに好かれてるモテ男が何言ってんだが。モテない俺らにモテる秘訣を教えて下さい!、陸様!」


「うわ....マジかず引くわ~」


「それな、罵っていた相手に卑屈に懇願する親友とか、目にも当てられないぐらいマジ引くわ~」


陸に頭を下げモテる秘訣を乞う一也に、佑樹と成行はガタッと椅子を動かしながら物理的に距離を取った。


「あぁ!、あっ!、マジで距離を取るなよ!。冗談に決まってるだろ.....半分は」


「残りの半分は本気だったんだ....」


3人のやり取りを見て陸は笑みを浮かべ笑った。

物理的に取っていた椅子の距離は、最初の位置に戻り各々が食事しながら雑談を交わした。


本当に三人は何時も仲良しだな。


「あっ、所でさ。舞花達何処に居るか知らない?」


一度手を止めて、僕は三人に思い出したように聞いた。


「俺は知らないな?、ゆうとなりは知ってる?」


分からないと一也が言って、佑樹と成行に自分が知らない事を知ってるかと聞く。


「佐藤さん達か....多分一緒にいる筈だけど、何処に居るかは分からん?」


「いやいや、かずとゆうが知らないなら俺が知ってる筈が無いだろ.......あっ。ごめん嘘ついた、そう言えばさっき3人が一緒のとこ見たわ」


ポカーンと口から声が漏れ、思い出したかのように手を叩き成行が見たと言う。


「何処で見たの?」


僕がそう聞くと。


「訓練場に向かって歩いてる所を見たわ、見たのは1時間前ぐらいだったかな確か??」


「そうか、成行サンキューな」


「どういたしまして」


僕が御礼を言うと、成行がニカッと口端を上げて応じた。

残っていた食事の口に入れ、残さず完食しては御盆に乗った空いた食器をメイドさんに、手渡してから三人に一言言って席を立ち上がった。


「おーいー陸、俺達を見送ってくれないのかよ?。今日で最後になるんだぜ?、薄情者~」


寂しそうな声で佑樹が僕に声を掛けてきた。


「薄情者って酷い言い草だな....。それに最後に成る訳じゃないだろ?、その内にまた必ず会うだから。なんだ?、それとも男に見送られたいのか?」


軽口を言いながら僕は3人にそう言った。

今日彼等が旅立つのに堅苦しい挨拶なんてすると、それが最後に成ってしまいそうに感じた為に軽口でも言わないと何て言って良いのと考えも出来なかった。


「かっ~ー俺らの新しい旅立ちを男よりも女の子に見送って欲しいけどよ.....。俺らを奮い起たせてくれて、ドン底に居た俺らを引っ張ってくれた"陸"に見送って欲しいだよ」


椅子から立ち上がり僕と同じ目線から、真剣な眼差しを向ける一也が力強い声音で告げる。

同じように佑樹も成行も立ち上がって、一也と同様に僕に真剣な眼差しを向けた。


「陸、一也の言う通りだ。あの日陸が話してくれた事に俺達...皆が勇気を貰った、明日を視る事が出来たんだ」


「俺達の前に陸が居るから立ち上がれた、本気で本当に感謝してる。だから、陸が「騙されて欲しい」って言った時には希望に思えたよ、。だって俺達より辛かった筈なのに、全部背負うとした姿を見て『自分も前を向かないといけない』って思えたから」


初めてだったかも知れなかった、あの日僕の妄想話だったかも知れない話で。

皆が少しずつ動き出したのを見たけど、こうやってクラスメイトの仲間から本音を聴いたのわ。

だからなのか、顔を上に向けないと何かが垂れてきそうな程に嬉しくって、自分の行いを受け入れられたのが。


「....あぁ、分かったよ。女の子じゃないけど、僕で良ければ見送られせて欲しい」


グッと何かを堪えながら、上に上げた顔を下ろして3人に向き直った。


「「「頼む」」」


揃えられた3人の力強い声が耳に木霊する、その後3人は陸と同じように食事を完食してメイドにお盆を手渡した。


その足で城門を四人で通り抜けては、城下町から出る為の外壁門前に居た。

三人はお揃いの軽鎧を身に付け、一也が剣を、佑樹が弓と小振りの短剣を二振り、成行が鈍器メイスを装備していた。

近接二名の遠距離一名のパーティー、其々が中級冒険者には負けない実力を持ってる。


「じゃ、ちょうとの間だけどお別れだ」


「あぁ」


「他の皆にも「元気でな」って言って置いてくれ」


「あぁ」


「本当申し訳ないけど、やっぱり女の子に見送られた.....ぐえっ!」


ドン、ゴンと佑樹と成行が、一也の腹と頭を同時に殴った。


「取り敢えず、このバカは気にしなくって良いや」


「バカの性でグタグタに成ったけど、じゃあな陸」


「あぁ、元気でな。無茶だけはするなよ!!」


外壁門を一也を引き摺りながら通り抜け、後ろから僕が声を掛けると。

「分かってる!!」と声が返ってきながら手を振っていた。

手を振り替え返して3人の姿が遠く見えなくなるまで、その場に留まり。

暫くしてから僕は城に帰った。


「本当....最後まで3人らしかったな...」


旅立った3人に陸は最後にそう思った。


僕らから3組目の旅立ち、最初が生きてる筈の真樹、そして粋先生に彼ら3人。

皆を見送ってから僕も行こう......。


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