表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
二章 北の大陸 ハースト
64/81

59話 勇者の遊び心


短いですがご了承下さい。


「ようこそヘルズ国へ!」


外壁門を警備する兵士の爽やかな歓迎の声に、二時間の窮屈な馬車での終わりを告げてくれた。

だから僕はその席から降りて、馬車と並行しながら歩きだした。


「やっぱり最初から降りて、走った方が良かったじゃないですか?」


「ノフォホホホ。何を言うかリク殿、馬車で来ているのに走る意味が有るかの?」


自分の髭を触りながら穏やかな声音でニルギヤ様は、端から聞けば正論に聞こえる言葉を言う。


何故なら。


「いやいや。最初の方でも言ったじゃないですか、二人用の御者席に三人・・・は狭いですって」


席員数2名の御者席に、無理に一人が座った為にガチガチ窮屈になり僕、ニルギヤ様、ハリアさんの感じで座っていた。

座る前にも同じ事を言ったもの、ニルギヤ様が頑なに座らせようとしてきた。

ハリアさんすら面倒くさそうに「座れ」と言う為に、僕も根負けして三人横に座って二時間を過ごした。


落ちない為の柵が身体にめり込み、身を小さくし出来るだけ動かず迷惑にならないようにする配慮。

どうして無理して座って、心身共に疲れないといけないのか。

これもそれも元を正せば、最初に忍をカラかった自分がいけないので何も言えません....。


「ノフォホホホ。二人用として作られてはいるが、実際は窮屈であったが三人で座れたのだから良いではないかの?」


「.....まぁ、結果はどうであれ。国に着いたのですから、さっさと城に向かって上げませんか?」


ハリアさんは馬車内にいる二人を想い、ゆっくりと進む馬車の脚を勝手に速めた。

それに対して、主であるニルギヤは何も言わなかった。


「そうですね。窮屈でしたけど、会話は楽しかったので良いですけど」


確かに二時間の窮屈は心身共に疲れたが、横に並んでの三人での会話は楽しかった。

そう考えるとプラマイゼロで、どうでも良くなり気付けば城門の前に到着していた。


門の端で立つ門番の一人が気付き、此方に近寄って来た。


「失礼しますが。ダマハ御一行で宜しかったでしょうか?」


そう聞いてきたので、ニルギヤ様御一行を迎えに行っていた僕が代わりに返答する。


「此方はダマハ御一行で間違いは有りません」


さっとサラから預かった王家の懐剣門番に見せる、これは自分が王家から信頼された証で有る為に。

門番は顔を引き締めると馬車に向けて一礼してから、元の位置に戻ると敬礼して中に通してくれた。


「御待ちしておりました、ニルギヤ・タサ・ダマハ様。客間まで案内を勤めさせていただきます、メイド長メルシーで御座います」


入り口に馬車を停め、御者席から降りたニルギヤ様とハリアさんに。

サラの専属メイドであるメイド長メルシーが、名乗り上げてから深くお辞儀して出迎えた。


「ノフォホホホ。まさかメイド長自ら案内してくれるとは、手厚い歓迎に感謝じゃの」


陽気な笑声を上げながら、出迎えたメルシーを見てニルギヤは髭を触りながら言う。


「お褒めに頂き恐悦至極で御座います。立ち話を何ですから御部屋までご案内させて頂きます」


改めて深く礼をしてから、手を入口の中の方えと手を伸ばし二人の歩みを促した。

「よろしく頼む」とニルギヤ様の後ろから、メルシーに向けてハリアさんが言った。


「はい」


短く一言だけを返答し、メルシーに案内された二人は城の中えと消えていく。


その場に残った僕は御者席に座り馬の手綱を握り、拙い操作で馬小屋まで動かしていく。


「馬が賢すぎて優秀過ぎる....」


陸は手綱を握ってるいるだけで、特に指示する事もなく馬が勝手に向かってくれた事に呆然とした。

馬小屋に着くと横にある倉庫に馬車を置き、馬車と馬を切り離すと馬は勝手に馬小屋の中に行ってしまった。


「賢すぎるでしょう!」


馬が馬小屋の中で餌草を頬張ってるのを見ながら、僕はそう叫んでしまった。


「ブルヒィー」


一鳴きすると僕を見る馬、『何見てんだよ』とでも言ってそうな気がして「すみません」と謝った後倉庫に戻った。


あれ?....何で馬に謝ったの?。


倉庫に戻った後、ふとそんな事を思ったが。

馬車から出て来た二人を見て、そんな考えは消えた。


「先ずは風呂に入った方が良いよ二人とも?」


スンスンと臭いを気にしてる忍と、涙眼で俯き全身から負のオーラでも見えそうなリアさん。

此方が窮屈な思いをしてる間、車内では会話も無い二時間でも過ごしたのだろうか。


「あぁ、そのまま風呂に行ってくる、やっぱり臭いがしてそうで気分悪い」


生気の無い声は本当に気持ち悪そうに聞こえた、それは横にリアさんにも聞こえており。

見えそうな負のオーラが、忍の言葉でより認識できてしまう程醸し出していた。


「一応...生活魔法で綺麗には成ってるから、臭いは無いと思うよ忍?」


生活魔法と呼ばれる魔法。

魔法と言っておきながら、魔力さえ有れば誰でも使えるような技能と言った感じだ。

世間では使う前に自分達の手でやった方が速く、人の手の方が良いじゃないかと言われている。

賛否両論である為に使う使わないかは、人によるけど僕自身は結構使えそうと思っている。


火種ファイウズ』、『洗浄ウォシング』、『柔壌ソイル』、『微風ブリーズ』、『虫除インリぺ』、『浄化クリー』。

この六つが生活魔法であり、魔力を多く込めようが常に一定の効力しか発揮しないけど。


その中で『洗浄』、『浄化』、は重宝しそうだった。

そう思ったのも、馬車内でリアさんのアレを処理する時に非常に助かった。

外の為に洗う為の水は無く、『洗浄』でアレを洗い流し汚れを取った。

『浄化』は車内や身体に付いた臭いを消して、清潔に綺麗してくれた。


初めて使って凄いなっな最初は思ったけど、範囲が狭く掌サイズまでしか作用されなかった。

なので、終わるまでに結構な時間を使ったのは不満でしか無かったが。

まぁ、ちょうとした事なら此方の方が速く終わる事が分かった。


その他の四つは自分的には微妙であった、火種の火はマッチの火しかなく直ぐに消え。

柔壌は少し土を柔くするだけで、微風は少し風が吹くだけ。

虫除は小さな虫を払うのだが、そもそもこの世界ウェルムに小さい虫がいない。

居たとしても最小体長が30㎝という、肉食虫で使っても効果は無いと言われた。


「いや、分かってるけどよ~。それでもな、こう?....臭いがしてくるような気がしてよ?」


「それもそうだよね....。主に掛かったのは忍とリアさんだけだもんね?、僕とニルギヤ様は多少だったけど....」


「うぅ~本当にごめんなさい.....。ご迷惑かけてしまって」


消え入りそうな声で謝るリアさん。


元の原因を考えれば、僕が忍を最初にカラかった事がいけないであって。

決してリアさんが悪い訳じゃない、何なら全ての原因を忍に押し付けてしまおうか?。


「リアさんは悪くないですよ、大声出した忍がいけないですから。全く二日酔いなのに、あんな大声出さられたら迷惑でしょ謝ったの?!」


忍に押し付けてみましたが、最後口調が可笑しくなってしまった。


「いやいや、いやいや違うだろ!」


「勿論違うよ、カラかっただけだよ忍?」


「それを止めろよ!!」


相変わらず良い反応するよな忍、さて謝って風呂にいかせて上げないと。


「分かったよ忍ごめんって、だから殴ろうとしないで」


僕の顔を目掛けて拳を突きだそうする忍を、どうどうと宥め引っ込めさせた。

その後僕は二人にもう一度謝って、今度こそ風呂に行かせたのだが。

行く前に忍の取った行動が漢らしく、男の僕でさえ何か来るものがあった。


「ほら、行くぞリア。場所分からないだろう?、案内してやる」


「えっ?、えぇ!。あ、あの、そ、その!」


そう言って、忍はぐいっとローズリアの手を取って歩き出した。

負のオーラを醸し出していたのが、一気に桃色のオーラが見えてぐらいに豹変していた。

言葉すら詰まる程に手を握られた事が嬉しく、デレデレしながら忍に引っ張られていった。


その光景を見た後陸は、今度は殴られても良いからカラかう事を決めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ