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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
二章 北の大陸 ハースト
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57話 終わった種醜女

前半 忍視点


後半 ギルド職員




陸が二人を介抱してる間、俺は不快な笑みを浮かべ突っ込んでくる雌型ゴブリンを相手にしていた。

俊敏なのか一瞬でも目を逸らせば見失ってしまう程に速いが、比較的行動が単調でベノムに比べれば弱かった。

陸によって切り落とされた腕からは血を流し、片方の腕を振るって伸びた爪での大振りな攻撃。


そんな雑な攻撃を避けては、奴の懐に鉄斧をぶちかます。

俺自身けして自意識過剰って訳でも無く、"殺った"と思えた。

上半身と下半身を二つに裂き、奴の臓物を宙にてぶちまいた。

だが、奴はそれでも生きていた。

ぶちまいた臓物は元に戻るようにくっ付き、上半身と下半身も元通りとなった。

血が身体に付着し、地面にも血が有ることから夢という事もない。


奴の治癒能力が高いのか、それともスキルによる恩赦なのか。

またまた、雌型ゴブリンという人外によって特性なのか。

頭に過るがそんな物考えても致し方無かった、今動く事に複雑なものはいらない。


目の前の"敵"だけを見ていれば良い、殺す事だけを考え何をしたら死ぬかに頭を使う。


大振りな爪を避け、もう一度今度は基本的に心臓が有る胸付近に目掛け横に鉄斧を振るった。


「これで、どうだ!」


先程と同じく命を絶った筈だったが、奴は直ぐ様無かったかのように元通りになる。


心臓殺っても死なねぇとか、ゾンビみたいな奴だな。


雌型ゴブリンに対して、そう不満を唱えながら上から来る爪を避け一度距離を取る為に離れた。


さて、どうしたもんか....。

相手を倒す方法がねぇし、めちゃくちゃ細切れにすれば死ぬのか?。

あーこん時に魔法が使えれば良いだがな、才能が無いってのは辛いな。


忍は自身が持つスキルが身体系、武術系が大半であった、魔法を使う事は何故か出来ず魔法に関するスキルは習得出来なかった。

それを憂いながら、雌型ゴブリンを挽き肉ミンチにする事を決めた。


俺は100㎏はする鉄の塊である斧を豪快に振り回し、奴のもう片方の腕を斬り落とし次に両足を。

物凄い速さで治ろとする腕と両足よりも速く、空中に浮くような状態の奴を出来る限り斬って斬って、原形が無くなるまで斬った。

上から下から、右から左から、斜めから縦横無尽に風斬り音を鳴らしながら。

時間にして10秒も掛かってはいない、もう斬り潰す事も出来ないの確認して攻撃の手を止めた。


ビチャビチャドサッと地面に血と肉が落ち、流石にこれで生きてるなんて可能性は無いと考えた。

自分の鉄斧を見て落胆する、そこには忍の力と扱いに耐えきれず亀裂が入っていた。


まぁ、しかたないか、ここまで荒かったもんな結構持った方だな...。


亀裂の入った鉄斧に対して、今まで使ってきた中で長持ちした事を感心しながら。

肉塊と血を背にして鉄斧を肩に担ぎ、介抱が終わった陸が此方に歩いてきた。


「よぉ、もう終ったぞ」


「....そうみたいだね」


陸の言葉の端に感じる異様な声音、俺は何かあったのだろうかと考え訪ねる。


「随分、元気がないな何かあったのか?」


「.......雌型ゴブリンの正体が...助けた子供だったんだ...」


言うのに躊躇った陸の言葉は、間を開けてポツリと呟くように言った。


「....そうか、気を使ってくれてありがとな陸」


陸の気遣いに感謝する、きっと言えば俺が落ち込むだろうと想ってくれたんだろう。

勿論、聞いた今は化物だと思っていた奴が子供だった事に気分はどんよりし、何とも言えない感情が俺の中で渦巻いた。

姿は子供でもなくっても、子供を殺めた事えの自分の中での人情が揺らいだ。


「忍には嫌な役目させてすまない、もっと早く知らせていれば...」


「気にすんな陸。どのみち俺かお前かが殺る羽目になってたんだ、あのままにしてれば犠牲者が増えてたさ」


陸の胸に拳を軽く当て、俺はさも気にしてないような素振りをしてみた。


「ーーー分かった、ならこの話しは終わりにしよう。でも、これだけは言っておく....」


言葉を一旦切って陸は真剣な表情で真っ直ぐに俺を捉える、だから俺も真っ直ぐに陸の眼を見ながら先を待つ。


「忍にだけ背負わせないよ、僕も同じように背負うから」


「.......」


「じゃ、行こうか。あっちで皆が待ってる」


言いたい事だけ言って、無言な俺に置いて背を向けて歩きだす陸に向けて、自分でも驚くぐらい声がか細かった。


「あ、ありがとうな親友」


ふふっと前から笑い声が耳に届くと、背を向けていた陸はクルリと反転した。


「そんな所で、立ち止まってないで行くよ親友」


俺のか細い声は陸に届いていたらしい、だからその返答に少しばかし心が楽に成った気がした。


「あぁ、今行く」


俺はそう短く返し、皆と言った場所には多く冒険者が何やら熱狂していた。


........


.....


...


街ルージュに帰った冒険者達と、今回の最も活躍した功労者3名がギルドで労い宴を繰り広げてる中で。

ルー森での雌型ゴブリンの後始末を、街の治安を守る憲兵数名と、国えの詳しい報告書や今回の騒動を書き記す為の男ギルド職員一人が残っていた。


「あぁ~皆は今頃楽しんでるだよな」


ギルドでの仕事をしていた中で自分が、こんな役目をするのは分かっていたが、自分がいない宴に心動かされていた。

その為、ルージュの方を向き心の声が口に出てしまった。


「まぁ、その分特別給与が出るから良いだけどね」


自分で諦めさせる為に言葉に出しては、次々と紙に細かく書いていく。


「すみません、此所にも残骸が有るので回収お願いします」


ふと草に隠れていた白斑な腕を見つけ、近くにいた憲兵に声を掛けた。


「承知しました」


憲兵は今は安全になったルー森から、仮拠点があった場所での白斑ゴブリンと、雌型ゴブリンの肉塊を回収してギルドの解体倉庫に持っていく。

数が非常に多く、数名の憲兵では作業が終わるまで数時間は要する。

それも昼前には、多くの手伝い兼増援が来るらしい....知らないけど。


速く終わらせてご飯食べに行こう..。


男職員は昼に食べる食事の事を考え、自身の仕事を終わらせようと集中しようとすると。

それを妨げるような怒声が耳に入った、どうせ憲兵が何か言い争ってるだと無視しようとした。

自分の仕事には支障をきたす訳でも無いと踏んだ、だが言い争ってる声は段々と大きく非常に迷惑であり此方の気を乱した。


だから文句でも言って、言い争いを体裁しようとした。


本音を言えば、仕事の邪魔してんじゃね~!と怒鳴りたかった。

取り敢えず冷静を装いながら、一人に向かって憲兵3名が言い争いの図を見て。

...なんと言うか呆れてしまった、憲兵は何をしてるだと?、恥ずかしくないのかと?。

そもそも無視するなり、相手にしなければ良いのに。


「何故、殺したんですか?」


「何回言わせれば良いんですか?、殺さなければ被害が大きくなっていたんですよ!?」


「何故、殺したんですか?」


「あんた、同じことしか言えないのか!。そもそも聞く耳持ってんのか?」


「何故、殺したんですか?」


「お前いい加減にしろよ!!、大勢の死人が出たのに更に増やせって言いてぇのか!、あぁ!」


「何回も言わせるなよ、何故殺した、あの子は何者でもどんな"母"なりなかっただけなのに。何故それを、再びあの子から奪った?。それに見合うだけ答えが有るのか?」


憲兵に胸ぐらを掴まれながら、静かな口調にはハッキリとした怒気が含まれていた。

距離が離れている筈なのに酷く恐く感じた、下手な事を言えば命が無い程の悪寒。


あの憲兵達が下手な事を言わない事に願ういながら、事はあっさりと終わった。


「なら、殺した本人に聞けよ?!。さぞ、お前の望む答が聴けるだろうよ!?」


「....それは、誰なのですか?」


「シノブって名でBランク冒険者だ!、お前じゃ手も足も出ねぇよ!!」


何かを思案するような仕草を取ると、胸ぐら掴まれていながら笑いだした。


「ハハッ....そうか、そうか。その名で思い当たる人物は一人しか居ない、そうか、また彼奴か...クフッ..フフ....フハハハハハ!。やはり彼奴は"悪"なんだ!」


一人で何か結論付け高らかに笑う不気味な程に、胸ぐら掴んでいた憲兵も手を離しては距離取ってしまった。

危険だと感じたのか、はたまた変人と捉えたのかは定かでは無いが。

これ以上関わってはいけないと、この場の4名は本能が頭に訴えた。


「あぁ、すまないね君達。もう消えて良いぞ?、この子は此方で引き取るが文句は無いね?」


「「「「......」」」」


普通ならダメな筈なのに誰にも声が出ず、そいつは木箱に入った雌型ゴブリンの残骸事、袋収納メッシスで収納し突然と姿を消した。


目の前にいて姿を捉えていた筈なのに、本当に忽然と視界から消えた。


「結局、あの人何だったんだ?」


色々な事に疑問を抱きながら、当然と現れこの場を乱しまくった嵐ような存在。

傍迷惑であり恐怖と変人を色濃く残した人物、白の仮面、白の法衣らしくない服装、全身が白で統一された男。


ただ言える事は此処にいる皆、給料が消え怒られる未来が待っていることだけだった。


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