52話 種醜女
少しだけグロい表現が出てきますが、無理な方は最後付近だけ飛ばして頂いても結構です。
「二人とも、今すぐにギルドに戻ろう」
新種の可能性が高い、白の斑模様のゴブリンの亡骸を袋収納に収納して。
後方にいる、説教するローズリアと「はい」としか返事が出来ない忍に戻る事を伝える。
「待てリク殿。戻るよりも先に住みかが変わってないか、確認してからでも遅くないだろう?」
「しかし、新種だとすれば何が起こるかは分かりませんよ?。さっきのだって不意を突いた奇襲で倒しただけで、正面から殺りあっての強さは未知数ですし....?」
顎に手を当てどうするかを考える、ハリアの言も確かに間違っていない。
西ルー森としかクエストには書いてなかった、ギルドの受付嬢も口頭で詳しく説明はしてくれたが、正確な場所までは分かってないとの事だった。
で、あれば、どうするのが良いか考える。
「では、二手に別れましょう。僕と忍がこのまま住みかを探します、ハリアさんとリアさんは一旦ギルドに行って報告をお願いできますか?」
そう言って、報告するにも実物は必要だろうと閉まった新種のゴブリンの亡骸をもう一度外に出した。
「しかと承った、分かり次第戻ってこいよ」
「えぇ、分かってます」
ゴブリンの亡骸を彼も待っていた袋収納にしまい、リアさんに一言二言告げると脇に抱え去っていく。
「あれで良いのか....?」
「忍こそ良いのか?、リアさんと一緒にギルドで報告でも良いよ?」
「ば、バカお前!。いいんだよそんなのは、俺が気にしてるのは...」
陸の冗談に反応し動揺を見せるが、忍が言いたい事を渋る。
「僕の事でしょう?、それなら大丈夫だよ。戦うじゃなく偵察みたいなもんだし、何よりも戦闘面じゃ忍がいるからね心配はしてないよ」
忍が言いたかった事を代わりに陸が言う、だが、そこには忍に対しての信頼の幅を寄せていた。
「そうか」
短い一言、それだけで通じる。
それを期に僕達の会話は無くなった、西に歩きながら新種ゴブリンがいる住みかを、忍と一緒に地図と照らし合わせながら探す。
ルー森の全体の大きさはギルドから借りた地図 で確認したもの、それほど大きくは無かった。
例えるのなら東京ドーム一個半ぐらいだったと思う、その中でルージュから見て西となれば探す範囲も短い。
見回りしていたゴブリンがいるなら、それを目安に奥に行けるのだが。
あれ以来は出くわず、ゴブリンがいた痕跡などは無かった。
うん?....どうしようか、このまま西に進んでて良いのか?。
ゴブリンがいそうな場所には粗方回ったし、一度引き帰ってギルドに報告に戻るか?。
「.....ぃ....おい陸、いたゴブリンだ」
「....うん?、何処に....!」
歩きながら考え事していた陸に、忍が小声で掛け目的のゴブリンを見つけた事を教える。
忍が指す方向を見ると、白斑模様のゴブリンが3体、木の上から弓を構える姿を見て驚く。
距離は20m離れている為に、それほどハッキリとは見えないが。
弓は見た限り店に並んでそうな程の出来で、矢に付く矢じりは鉄製であり鋭く磨がれている。
弦を引き絞り、その射線上には猪型の魔物ビックボアだった。
ゆっくり歩くビックボアに、3体の新種ゴブリンは互いに目を合わせ合図する。
すると、ビックボアに向け限界まで引き絞った弦を離す。
ビックボアの背に3本の矢が刺さり、鳴き声を上げ暴れだす。
そんな事も気にせずに、木の上から新種ゴブリンは次々に矢を放ち当てる。
あっという間にビックボアの命は絶った、立つ事も出来ず体中に矢が刺さった状態で、横から重い音を上げ倒れるが。
木の上の新種ゴブリンは動かない。
1体が再び弓を構え動かないビックボアに向け、限界まで引き絞った矢を放つ。
ドスッと刺さったのを見届け、動かない事を確認し地上に降りるまで警戒を緩めない新種ゴブリン。
グギャ、グギャギャ、キャギャ、3体の独特な声を上げながら会話のような事をした。
それからはビックボアの足を縄と棒で結び、何処かに運び出そうと動き出した。
『おい、ゴブリンってあそこまで凄かったか?』
その一部始終を見終わった忍が気付かれないように小声で、自分の知らない中のゴブリンと比べ聞いてきた。
それは、当然陸も同じような事を考えた。
『新種だからとは考えにくいけど、もうしかしたら上位存在がいると考えた方が良いかもね?。けど、それも尾行すれば分かるよ』
『あぁ』
陸と忍は、3体の新種ゴブリンとの距離を維持しながら、周りにも警戒してその後を着いていった。
西から大幅にズレ、南側のルー森に入る。
そこからは西では最初以外は見なかった同種のゴブリンを多数目撃し、ゴブリンの目を掻い潜りながらビックボアを運ぶ3体のゴブリンを追った。
3体のゴブリンの目的地と、陸と忍の目的でを見つけ、そこで見た物に驚愕する。
木を伐採し開けた空間に、白斑模様の新種ゴブリンの住みかがあった。
いや、住みかと言うより拠点や村と言った大きさだ。
こんだけ大きな住みかが有るのに、どうして冒険者ギルドは気付かなかったのか、存在は知っていたが場所まで分からなかったのだろうか。
そんな考えがふと頭に過った、忍の方を見ると何かを見付けたのか更に目を大きく開いた。
僕もその方向に視線を向ける、もくもくと煙が上に行きカンカンッと鉄と鉄がぶつかる音を響かせる。
何故、ゴブリンが手入れされてる鉄剣等の武器を持っているのか、その疑問は解かれた。
新種ゴブリンは一から造り出しているのだ、その場所は稚拙なれど簡易的な加治屋であった。
それから目を良く凝らして見れば、加治屋だけではなく。
皮鎧を作っていたり、獣を飼育してたり、弓の扱い剣や槍といった武器を使用した鍛練。
とても、ゴブリンだけじゃ出来そうにない事をやっていた。
それが新種ゴブリン全員が行っていた、そしてその中で一際目立つのが中央にある石と木で出来た建物であった。
『忍。これは予想以上にヤバいかも知れない....』
『....だな、流石に街の近くにこんなのがあったら街の奴等がアブなねぇ。....!、陸彼処を見ろ!』
小声で会話をしてるのに、忍は何かを見つけ声を大きくする。
一瞬だけ気付かれると思ったが、それは杞憂に終わった。
何故なら忍が指した方向には、新種ゴブリンに捕まった男の2名の冒険者が、息も絶え絶えの状態でいた。
逃げ出せないように、手足の健を切られ動くことが出来ないよう。
それを見たゴブリン達が声を荒げながら笑い、冒険者を引き摺りながら中央の建物の前に連れていった。
その中の1体が建物のドアを荒く叩くと、一目散に遠くまで距離を取った。
1体だけではなく、全てのゴブリンが同じようにしていた。
数分ほどすると、ドアは外側に開き場所が遠い為に中を覗く事は出来なかった。
そんな暗く見える中から、スラッとした足が出て来ては姿を見せる。
ゴブリンとは違い背は大きく、体表に白斑模様が有り女性らしい胸の膨らみ、酷く歪んだ女顔。
それが、また、二人を驚愕させる。
自分達の中のゴブリン、この異世界でのゴブリンには雌はいない...存在しない筈の存在だから。
だからこそ、繁殖するのに人形の女を拐い子を産ませて繁殖させる。
それが一般の知識だと知っていたのにも関わらず、建物から出て来てのは雌だと分かってしまう容姿をしていた。
だからこそ意味が分からず、戸惑い驚愕していた。
そんな二人を他所に、建物から出てきた雌型のゴブリンは自分の前にいる、男の冒険者に近付き顔を優しく触れ。
自分の顔を近付け男の唇に自分の唇を合わせる、それは人の世界で言うキス、接吻、口付けではなかった。
意識がある2名の男の冒険者は、自分が何をされ何を見せられてるのかと、恐怖が押し寄せていた。
或いはその後の光景を見ずに、死んでいればと後悔したのかも知れない。
僕達も危険を承知で助けに行くべきだった、目の前の光景と目に映った物の状況が飲め込めず、動けなかった。
雌型のゴブリンはそっと唇を離すと、された男は自分の唇の感触と口の中の異物感に嘔吐した。
だが、自分の身体の内側から何か這い出る感触に更に嘔吐する。
動けない体はビクビクと痙攣し、目は白目を向き口からは黄色掛かった泡を吹き一際激しい痙攣を起こした。
それを気にバキッバキッとグチャグチャと音が鳴り出し、男の腹が内から裂けた。
「「「「「オギャアァァァァァァァ」」」」」
異形な鳴き声をしながら腹から出てきたのは、白斑模様の小さなゴブリンだった。
雌型はそれに満足し、残った男の方にも唇を近付ける。
「...やだ..嫌だ!....あん...死に....方は!!」
最後まで言いきれず男の唇は塞がれる、そして唇が離れれば同じ様に嘔吐しだし、同じ末路を迎えた。
僕達は暫く茫然とし、この場の危険差を身に染めて気付かれないように後にし冒険者ギルドに向かった。
きっと僕と忍は同じ事を決意し、無惨な死に方した二人に...それよりも多く犠牲になった彼等の為に仇を取ると決めた。
感想、意見、指摘、ブックマーク等頂ければ今後の糧に頑張らせていただきます。




