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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
二章 北の大陸 ハースト
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50話 ダマハの裏




忍はテーブルの上の二つの代物を眺めた後、気だるそうな眼は鋭く尖り僕に声を掛けた。


「もう、黙ってる必要はないだよな?」


「今は忍の事だから、忍の好きにしたら良いよ」


「そうか、なら後の事は任せる」


任せると言われ僕は頷く、自分の行動での後の収拾を。


「ニルギヤって言ったか貴方あんた?、俺はよぉ礼を期待して貴方の孫を助けた訳じゃねぇだよ?。なのによ魔斧を貰っても嬉しいとは思えないのによ、更には払った金すら上乗せで来るってよ.....俺を舐めてんのか?あぁ?」


今にも殴り掛かるじゃないかと見せる忍、その鋭い眼光からは怒気が現れニルギヤ只一人を睨み付けるが。

その余波は周りにも肌で感じられていた、その為サンシチ、ローズリアは冷や汗が吹き出てしまう。

そんな中で陽気な笑みを崩さず微動だにもしないニルギヤと、自分の護衛対象に何もせず無反応なハリア。


「はて?、舐めてるとは如何に?。儂はシノブ殿を一切舐めておらず寧ろ感謝しか御座いません?、その気持ちの表れとして魔斧血の糧ブラッドブレットをシノブ殿にお譲りたく差し出し、価値が無い物を買わせた御詫びとして元々の財に色を乗せてお返して何が悪いのですか?」


ニルギヤの言も正論として正しい、孫の命を救って貰い価値が無い物を買って貰った。

それに対しての、感謝の対価と言っても良かった。

だからこそ、忍が怒ってる事に不思議でしか無かった。


「詫びなら言葉と態度だけで充分なんだよ、だからこそ物なんか貰っても金が戻ってきても、ちっとも喜ぶ筈が無いって言ってんだよ!!」


「ふむ.....成る程、シノブ殿の御気持ち想いは分かりました。物を贈る事はどうやらシノブ殿に取っては無粋のようですな、でしたら、リアは処罰しなければならない」


「「なぁ!」」


ニルギヤは忍に物を贈る事が意味が無いのだと分かれば、隣に居るローズリアを処罰を言い放つ。

その事に陸と忍は驚くが、サンシチは差ほど驚かなかったが憂いては顔を下に向けた。

ローズリアに至っては、忍が断りを入れた時点で覚悟が決まっていた。


「何を驚かれているのですか?、リアが正式に処罰されるのは当然でございましょう?。商談代表の泣き姿を見られ、商品を駄目にしあまつさえ"価値が無い物"を売ったのですから、この数だけ『ダマハ商会』の顔に泥を塗った。当然今後先商人として売り買いが出来なくなり、タサ・ダマハの姓を名乗る事も一切の接触を禁じる事になる」


「それは、何がなんでもやり過ぎでは?。忍は只言葉がアレですけど、魔斧とお金は受け取ることが出来ないと言っただけじゃないですか?」


何故忍ぶ断りを入れただけで、ローズリアが其処までの処罰されなければ成らない。


そう陸は問う。


「それは間違っておられますリク様。リアお嬢様が名乗ってる姓である『ダマハ』は、商業都市を束ねるニルギヤ・タサ・ダマハ様と同じなのです。普通であればニルギヤ様も其処まで致しません、ですが『ダマハ』である以上常に多くの商人の手本としなければいけないのですよ?。まして代表の失態である泣き姿と無価値な物を売ったは、あっては成らない事なのです。それを無くす為にシノブ様には、破格の品と色を乗せた財を返す事で他の商人達に、眼に見えるように『ダマハ』は誠意を見せなくってはなりません」


『ダマハ』の名は商業都市を束ねるだけでは無く、商人達の頂きに居る為に失態には相応の誠意を見せなければならなかった。

少しでも隙を見せれば、欲深い商人達により座を奪われる口実となり狙われる。


そうならない為に忍に感謝の対価として聖級セイクである魔斧血のブラッドブレットと元々の金貨56枚に加えて50枚上乗せしたのを進呈したが、断れるとは思っていなかった。


それでは誠意を見せる事が出来ないのであれば、失態の原因である自分の孫ローズリアを苦肉にも処罰し、忍と商人達に誠意を見せなければならなかった。


だが、当然そんな事は忍が容認出来る訳が無かった。


「ざけんな!、この腐れ爺ぃが!。自分の孫に其処までするかよ普通?!、他の奴等が何だよ!、俺が許したらそれで良いだろうがよ!!」


「そうですな....シノブ殿にはリアを救ってくれた事には誠に感謝します、ですが家の問題に足を踏み入れたくはないですな。シノブ殿には感謝の言葉と態度は見せましたからな?、これ以上青年ワッパには何も出来ない大人しくしとれ」


「.....っ!」


陽気な笑みを崩さないニルギヤの最後の言葉には、ベノム・クロウラーと変わらない威圧を感じ忍は何も言い返す事が出来なかった。

陸も同様にニルギヤの威圧を感じた、levelが例え327となっても、ペナルティによりステータスが元に戻っていても気押されていただろう威圧。

陸と忍の二人にしか向けられてない威圧、他の三人には何も悟らせる事もない技術。


魔斧血の糧を愛用していたと言うだけあって、戦いの経験が少ない二人には明らかな強者であった。


「....分かりました。では、これは忍にでは無く僕に下さい。勿論タダとは言いません、此方も異世界の知識を教えますよ。その方が互いに良いでは?」


「ふむ、勇者方の世界の知識ですか.....。あまり興味は無いの、それが使えるかどうかすら分からない以上、此方に何の得も無いしの...何が良いのか分かりませんな。ノフォホホ」


自身の髭を撫でながら、興味が無さそうにそう答えるニルギヤ。

そんな仕草とほんの少しの眼の変わりようを見逃さなかった陸は、この瞬間を逃さす事はしない。


忍もローズリアもサンシチもハリアも、二人の会話を邪魔せずに息を飲んで静かに見守る。


「確かに此方の知識を教えた所で、ニルギヤ様が得する事は無いですね。僕達の知識はそれを理解できてこそ生かす事が出来る、それをいくら口から説明した所で理解は出来ない」


「成る程の、生かせる事で発揮するか...。なら、此方は生かす事が出来ない知識を教えられた所で意味が無いのでは?」


ニルギヤの言もその通りであった、異世界ウェルムより発達した文明を持つ地球の知識を教えた所で理解できなければ意味が無い。

この世界で唯一誰にでも出来るとすれば"料理"であった、食べ方や作り方等、醤油、酢、味噌、マヨネーズ等有名な調味料に至っては味の幅を大きく広げた食文明。

現に、ヘルズ国には勇者達が教えた料理は人気が出ていた。


「実は僕達の中には商人に成りたいと言う人達が居ます、勿論知識を活用でき発揮で出来ます。今後の次第では『ダマハ』にも、引けを取らない程大きくなると思いますよ?」


「ほぉ~それはダマハを、敵に回すと解釈して宜しいですかな?」


髭を撫でる手を止め、冗談を言うかのように訪ねる。


「嫌だな~、敵に回すなんて冗談も良い所ですよ。只、『ダマハ』商会よりも有名になるかも知れないって可能性の話ですよ...可能性の話し」


ニルギヤの冗談だと取り、陸は勇者組の近い将来そうなる可能性の話をしただけなのだった、あくまでも可能性の話を。


ノフォホホ、何処が可能性の話しかの。

儂と同じで笑みの裏側は、どんな風に考えておるのやら....。

これだから商談とは楽しくってしょがない、この先どう儂を楽しませてくれるのやら。


正面に座る陸の笑みを見ながら、ニルギヤは内心そう呟く。

顔は笑っていようが、その瞳は至って真面目であり敵に回すのでは無く暗に『ダマハ』を越えていくと言ってるかのようにも聞こえた。


「そうであったか、敵に回るのでは無く内(ダマハ商会)よりも有名になるか、ノフォホホ」


「えぇ、そうですよ有名になる可能性の話しですから、ですからこそ何人か見習いとして育て欲しいですよ?」


「......」


次の言葉に思わずニルギヤも驚いた、知識を有すり活用出来るからこそ強みと言える者達を平然と差し出したのだから。

それも、ダマハ商会で商人として育て、ダマハ商会で実績と経験を積ませようとする豪胆な考えは素直に感心した。


「成る程成る程、実に此方は得するように出来てるおるが一方で同様に損をする仕組みとは恐れ入ったのう。ノフォホホ、が、ちと詰めが甘いがこれ等はリク殿に差し上げようかの。儂を楽しました御礼としての、後リアの処罰も撤回しよう」


「よろしいのですかお祖父様?」


撤回と聞きローズリアが敬称では無く愛称で訪ねる、その表情は安堵が半分不安が半分といった感じだった。


「よいよい。儂に向かってきたのは同郷・・・は二人目だ、やはり久方に挑んで来る者達は儂の血を騒がせる。ノフォホホ」


そう上機嫌で髭を撫でながら、陸と忍を見るニルギヤ。


その言葉の意味を二人は気付きはしなかった。


「ふぅ~やれやれ、一体どうなるやらと思いましたよ。今一度、お二方の認識を改める良い機会となりました」


流れた汗を青色のハンカチで拭いながら、サンシチは陸と忍の印象を改める。


「それほど大した事はしてないですよ、でも、お互いに助かりましたから。品を貰らい『ダマハ』は誠意をみせられて、僕達の姓でリアさんに被害がいかなくって良かったですよ」


「ノフォホホ。リク殿となら何時でも面白き商談が出来そうだの、....それにシノブ殿には不快な思いをさせて申し訳ない。御詫びとして....今夜の食事は一緒にどうかの?」


改めて忍に言葉と態度で謝罪し、髭を撫でながら少し考える素振りをしてから忍が断らない物を選んだ。


「.........それなら、行く」


内の残った不完全燃焼の異物、その行き場が無くなり忍は自分の軽率差を嘆いていた。


「ノフォホホ。それは良かった、では、鐘の音が7つ程鳴った時が頃合いかの?。リアに案内させる為に、暫しの間は側に居させて置いてくれ」


「分かりました。では、自分達は一回退室します。また、後程お会いしましょうニルギヤ様」


19時から20時として予定し鐘の音が7つとする、食事の場所はローズリアが案内する事に決まり。

陸は貰った魔斧と一応金貨が入った麻袋を袋収納メッシスにしまい、忍と共に一回部屋から退室した。

サンシチが窓から二人が店から出るのを確認した後、ニルギヤに報告した。

ニルギヤは孫のローズリアに食事場所を伝え、二人の後を追わせる。


念の為に傭兵ハリアにローズリアの護衛を任せ、ハリアもまた後を追い部屋から出ていった。


部屋に残されたのは、ニルギヤとサンシチのみと成り声を掛ける。


「私が嘘を付く必要性があったのですか?」


「ノフォホホ、サンシチは『ダマハ』をそう言う風に思っておったとは驚いたの」


陽気に髭を撫でながら、サンシチが語ったダマハを思い出していた。

商業都市を束ねるからと言って、自分の商会が他の商人達の手本になる?。

そんなバカな話は無い、商人は自分達に実りが有るのならばどんな手も使う。

それはダマハも例外ではない、自分が上に行くのに邪魔な商会を潰した事もあった。

利用できる物は何でも利用する、貴族とのコネ、王族との繋がり、名の有る冒険者。


そんな中でニルギヤ・タサ・ダマハは、群を抜き逸脱していた。

自分の商人としてのルールを徹底的守り抜き、それを守ってきたお陰で此処まで来れたのだから。


自分の商人とは誰よりも欲深く、何処までもしぶとく残り、常に上を目指し金と名声を欲する。

貴族の欲深さより、王族の欲深さより、商人はより欲深い。

が、只それだけに過ぎない。

無闇に殺生はしない、それは自分の客が居なくなるだけで何も産まない。

必要と有れば、その手段は必要な時に毎回取る。


自分を危険には晒さない、それは今後の金も名声を産まないから。

得るべき物を得て、死んだら元も無いから。


何処にも属さない、常に中立を保ちどちらにも手を貸す。

常に両者に物資を与え、自分の有能性を目の当たりにさせる。


それだけニルギヤは自分ルールを厳守していた、"自分を売り込む"敬語、笑顔、挨拶は二の次で他の商人達にはそう伝えていた。


「といっても、ニルギヤ様はこれ以上は話してくれたりはしな無さそうなので。私は下に降りて仕事に戻りますよ」


「そうか。儂も、もう暫くしたら行くとするかの」


何も話してはくれないニルギヤを何時もだと考えながら、席を立ち上がり部屋から退室していって


一人残り二ヶ月前の出来事を思い出していた、突然何処から現れた全身を白で統一した男。

顔を白の仮面で隠し服装は白の法衣を自分なりに弄ったのか、腰から下前面に一つの切れ込みが入り動きやすさを重視していた。

その隙間からは白いズボンと、昔見た刀と呼ばれる武器を所持していた。

そんな全身白の男は、自分の名を告げ商談を持ち掛けてきた。


『初めましてニルギヤ殿、私は決して怪しい者じゃございません。あぁ、真樹とお呼び下さいね』


白い人物は、作り笑いが見て分かる程に嘘臭い人物といった印象を受けた。

そんなマサキと名乗った人物の話は、実に血を騒がせ面白き一時となった。


ニルギヤは持ち掛けられた商談を、入念に準備し自分なりに得になるようにした。


そして孫のローズリアを使い、異世界から来た者達との繋がりを手にした。


そもそも孫のローズリアに商才は皆無であり、商人気質では無い事をニルギヤは見抜いていた。

商団を任せ、使えもしない雇い護衛を宛がったのもこの為であった。


同郷であっても、マサキの方が面白かったのう...。


次回から何時もの更新日を日曜の23時から、月曜の23時に変更させて頂きます。


誠に勝手ながら一身上の都合により、更新日を変更させて貰います。


詳しい事は活動掲示板に載せておきます。

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