47話 眠れる彼女
食堂にて陸が話した話が皆を立ち上がらせた、彼等が導きだした答えがこの先の未来を作った。
だが一人、半年の時間を置いてけぼりにされ。
その間に起きた出来事など梅雨も知らず、ふかふかなベットの上で眠る少女。
窓から射し込まれる日の光が、部屋を全体的に照らす。
眠れる少女は、蕾が花を咲かすがの如く瞼が開く。
最初に映る両眼は石畳の天井である、暫しの間その状態が続いた後、起き上がろうとするが身体が動く事は無かった。
「..........っ.....」
口を開いて声を出そうとしても、声は出なかったそこで初めて分かる。
喉が口が身体が"水"を欲しってるんだと、でも、水を口に運ぶにも手は動かない身体は動けない。
彼女が眠ってる間、医療班の治癒師による癒魔法で生命の維持はされていた。
そんな彼等でも日々衰える筋肉を維持する事は出来ない、いや、彼等には出来ない事の方が多いのだ。
だから、彼女の身体が動けないのは日々衰えた筋肉よるものだった。
そんなのは彼女に取って差ほど驚くような物じゃなかった、自分の状態を知った彼女は与えられた力を使う。
死する生者に癒しを。
声は出なくっても、掠れた声で心から使うと念じれば、それだけで彼女に与えられた天恵は発動する。
彼女の身体を薄い光が包むと、発動した力は痩せ細った筋肉を満足に動く事が出来ない身体を癒し。
前のような動く事が出来る身体えと元通りになる、薄い光が収まればその事を意味する。
彼女は先程動かなかった身体を動かし、半身起き上がらせ近くの台に乗っかっていた、ガラス製のコップだけを取り。
自身が持つスキル『水魔法』を使用する、コップに向け指先から水を生成し並々までに注ぐ。
彼女が行った魔法は、誰もが行える簡単な手法であった、魔力で空気中の水分を集めただけの事であった。
空気中に水分が有る、その原理を知っているのは異世界から来た彼等だけだ。
空気中の水分を使えば魔力消費を雀の涙ほどで済むに対して、魔力を水に変える事は魔力消費はそれだけロスが多い。
それがこの世界からすれば、なんとなく出来るからやっているだけ。
魔力で水に変わっている、魔法とは魔力を使う事でそれが出来る、だから詳しく説明を求めても、そう答えるのが世界だ。
そんな誰もが扱える魔法を使って注いだ水を、ゆっくり口に運びゆっくりと身体を満たして上げる。
一杯めを飲み干すと、また直ぐ様水を注ぎ今度はゴクゴクと喉を鳴らしながら流し込む。
運ぶまでに少量だが水を溢しても、口の端から垂らそうとも彼女は気にしない。
死する生者に癒しをは身体を治す事に特化するが、空腹、渇きは癒す事は出来ない。
だから彼女が水を欲するのは仕方い事であった、空腹も有るが今は優先するべき事は水であった。
三杯も水を飲んで彼女の渇きは消えた、水を飲んだ事で多少は空腹も紛れるが、それは一時的に過ぎない。
「....あ...あぁああ...うっん..うん」
喉の渇き口の乾燥が今、掠れた声は消え彼女本来の優しい声音が彼女以外誰も居ない部屋に響く。
久しぶり声に彼女は、自分の声がこんな感じなのかと疑念する。
それから彼女は下半身をベッドから下ろし、立ち上がる。
その時に電流の流れみたいのを感じたが、少し部屋を歩けば電流は消え普通に歩けていて。
例え身体が前のようになっても、彼女は半年も眠り必要最低限の生命を活動させていた脳でも。
久しぶりに送る筋肉えの信号、送られてくる信号は久方な新鮮があった。
だが、それも直ぐには終わった、寝ぼけていた脳は目覚め直ぐ様自分の仕事に取り掛かった。
それから彼女は部屋を出て、肌に感じる風、眼に映る光景に久しぶりに感じてしまう現象に悩まされながら。
空腹を満たそうと食堂に向かう、その道中で出会う驚嘆した態度と眼を向ける人達を見るが。
何に驚いてるのかが分からなかったが、そんな人達は無視して歩く。
枯れた葉が散らばっている中庭を通り、彼女は食堂が近付いてると確信する。
空腹の身には堪らない美味しい匂いが、彼女の鼻が感じ取った。
食堂の扉を手に触れ、中から聞こえる何処か懐かしい声と食器の音が耳に捉える。
そして扉を開け、動く足で一歩を踏み出し中に入る。
無音が場を制する。
食堂ではそれまで、賑わっていた会話や料理を食べる食器の音が響き。
メイド達が彼等の世話を喜びながら仕事をして、次々と運ぶ暖かい出来立ての料理を運ぶ姿があった。
それらは誰が最初かは分からない。
食堂の扉が開き誰かが入ってきたのを、横目で確認した時だった。
口に運ぶ途中の料理を床に落とし、入ってきた人物を見て手が目が呼吸が一瞬止まる。
それを見た何人かが、また同じようになる連鎖が始まった。
誰も動かない、声を出そうと声が震えるだけで終わる。
食堂に入ってきた彼女は、そんな光景を気にもせず誰も座っていない奥にテーブルまで移動し座る。
そこは彼女の指定席だった、正確にはその付近がになるが。
座った彼女は待つ、例え空腹でも愛しい彼が来るまで。
自分が先に食べる事をしない、愛しい彼と一緒に食べるのだから。
...............
.........
....
あれから僕達は少し話し合って、今後の動きついて考え何をするかを各自で決めていった。
真樹を探すのは僕と舞花だけで、葵と忍は咲音が目覚めたら後から合流といった形になった。
忍は「流石に、二人だけじゃ心配だからな」と言って、残る事を決めていたらしい。
後は自分達の知識で、作れそうな料理や道具を作って商人や料理人になって。
あっちこっちで拠点を作って、真樹の情報を集めたり僕達の支援をするそうだ。
それは、あくまでも行った先の拠点周辺の情報まで。
何処かの山や森、人が踏み入れない所での場所は死のリスクが大きい為僕が皆にそうお願いした。
それに納得しない人少数居たが、なんとか説得して承諾してくれた。
その全てが20分の話し合いのよって終わり、好きな席に座って食堂に入ってきたメイド達により食事が運ばれ、友達同士で集まって食べ始めた。
本当に皆の表情が明るく、明日に向けて歩き始めた。
そんな中で、舞花の正面に座っていた葵の手が止まり。
手にしていたフォークを落とす、テーブルに当たり床に落ちる頃には金属の音と、フォークに刺さっていた小さく切られた肉がベチャと音を立てた。
葵は椅子から勢いよく立ち上がり、信じられない物を見たのと嬉そうな混ぜた表情を浮かべた。
葵の視線を追って僕や皆が、食堂の入り口を見る。
静寂が訪れる。
何も動く事が出来ない、本当に皆が歩き始めた今日に、これ程嬉しい出来事はなかった。
僕よりも、ずっと側にいた葵や舞花はもっと嬉しい筈だ。
半年間も眠っていて、こんな日に目覚めた"咲音"は良い日だと言えた。
咲音が足を踏み入れ食堂を歩く、方向としては僕達の所に来ていた。
葵が手を伸ばして咲音に触れようとしたが、咲音は目にも触れずにすれ違い奥に席に座った。
食堂の奥は何時も真樹が食事する場所であって、その正面に何時も咲音が居座っていた。
一方的に話し掛ける咲音に、真樹は相槌を打って相手していった。
「えっ......」
横を通られた葵は思わず声が漏れた、咲音の行動は自分にとって思わない程の驚嘆だった為に。
それも、たまたま視界に入らなかっただけだと考え、直ぐに気を取り直して咲音の元に向かった。
僕、舞花、忍も葵に続いて向かう。
他の皆も咲音自身だと分かれば、こぞっては来なかったが遠目から心配そうに見ていた。
「咲!。目が覚めたのね!、良かった....本当に心配したんだから...」
座ってる咲音に詰め寄り、両手で抱きしめ涙声ながらそう言った。
「咲音ちゃん良かったよ~!、あのまま寝たっきりで起きてこないじゃ心配だったんだから~!」
舞花も葵と同様に、涙声ながら明るく振る舞いながら二人を見守る。
「元気そうで良かったぜ、にしても?。確か...もっと細かったような気がするだか?」
咲音の手や腕を見た忍が、前に見たのと形容が違っている事に気付く。
そう言われて初めて陸、葵、舞花が気付く。
その変化は一番に葵が気付かない訳が無かったが、咲音が起きた事に歓喜した為に気付かなかった。
「今はそんなのは良いの、こうして目を覚ましてくれたんだから!」
「おぉ...それも、そうだな。目を覚ましてくれただけでも嬉しいのにな」
今だけは、葵にとって咲音の事以外どうでも良かった。
身体の事は後から知れば良いのだから、忍も無粋だと思いながら今だけは一緒に喜ぶ。
「咲音....目を覚まして良かったよ。色々話さないといけない事が多いけど、今一番に話さないといけない事があるんだ」
陸は再会を喜びながら、今一番に伝えるべき事を告げようとする。
それは陸が話そうとするが、葵がその事に気付き代わりに話す。
それも、そうか。
僕よりは葵の方が良いよね、葵...本当に嬉しそうだな.....
「そうよ咲!、真樹が生きてる!。死んだと思っていた真樹が生きてるのよ!」
「.........」
この話をすれば、とても信じて貰えないと思った。
だから咲音が無言のまま、表情が変わらないのは本当に信じてなくって呆れてるのかと思った。
自分を元気づける為の嘘だと、それでも真樹が生きてる可能性の話を葵は続ける。
それでも、咲音の表情が変わらない。
僕は咲音の眼を視た、何も色も無い日本人特有の黒目。
誰?みたいな表情、それは僕達の話を聞いてないないような本当に誰といった感じだった。
僕達は咲音が目を覚ました事に浮かれ過ぎていた、だから咲音の異変に気付いたのは彼女の言葉だった。
「貴方達は誰ですか?、真樹って人は誰なんですか?」
彼女は僕達に関する記憶が無くなっていた、それはまた僕達に襲い掛かる鎖だった。
やっと目覚めた咲音!、しかし彼女の身に何が起きてるのか。
今後の陸達はどうなるのか?。
作者も先が分かっていません(/o\)




