45話 受け入れて②
視線が一身に浴びる中で陸は、皆瀬を近くの席に座らせて。
自分は皆から確実に見える位置に移動し、近くのメイド達に退室をお願いすると。
メイド達は快く承諾し、全員食堂から出ていった。
最後の一人まで見届け陸は、おもむろに口を開き食堂に残った皆に向けて言葉を発する。
「僕の呼び掛けに応じて、集まってくれてありがとう。....皆を集めたのには話さなきゃいけない事が有るからなんだ、真樹が亡くなってから今日まで、皆が辛い日々を送ったと思う」
皆に聞こえる声量で話し、"真樹の死"という単語を聞き皆ビクッと反応した。
陸がまだ続きを話そうとして、それに声で割って入る人物がいた。
「そんな事はどうでもいいだよ!、古里は生きてるだよな!?。それを今まで知っていて、僕達に黙ってたんだよな!」
皆瀬が部屋で籠り誰の声にも反応しなかった為に、陸が皆瀬だけには先に話をしていた。
それが、この場で皆瀬が非難気味に言った。
真樹が生きてる?、場がザワつきだし各々が陸に向かい言葉を投げ掛けたり、近くに居る者達で話し合った。
「どう言う事なんだ!」
「本当に生きてるの?!」
「どうせ、嘘に決まってる」
「変に期待させないで欲しい....」
「元気付ける為に、人の死を利用しないで!」
「谷風君に....は、私達の気持ち..なん...か分か.....らないよ」
最後の言葉にも、他の言葉にも、配慮が著しく掛ける発言であった為に、陸よりも速く三人が動き出した。
「ちょっと?、今のは流石に酷いじゃない?。陸も同じくらい辛いに決まってるでしょう!?」
「お前らの気持ちも分かるがよ、山田が言った事も信じられないかも知れないし。最後まで陸の話を聞いてからでも遅くねぇだろ?」
「りっくんの気も知らないのに、皆好き勝手言わないで!」
自分達の言葉にどれだけ冷静が無かったのか、三人の言葉に皆沈黙する。
葵、忍、舞花の三人の言葉を聞いて、陸は胸がジンと暖かくなる。
葵、忍、舞花、ありがとう.....。
「本題を切り出す前に、山田が言ったように真樹は生きてるかも知れない。あくまでも、その可能性が高いってぐらいだ、だから確実に生きてるって保証は今は持ち合わせてない。そこは、自分達で信じるか信じないかは考えて欲しい」
陸自身は真樹が生きてると信じてるが、あえて、こういう言い方をする。
勿論、皆も真樹が生きてる確証なんか無いと考えてる。
遺体が消えたのだって、不死者化して自分から歩きだし消えた事が一番に考えられた。
街の中で不死者報告は無かったが、冒険者や聖職者によって討伐もされたもあり得たが、勿論報告は無い。
そこで有力な力説があったのは、あの日は太陽の日の光もあって不死者系統は、上位であれば活動もあり得るが。
死んで間も無く動き出す不死者は、下級の位置に有るゾンビになる。
その特徴として、夜に活動し暗闇を好み、日の光または、聖なる光に弱く当たれば灰と化す。
それらの条件に当たるのか、城付近に風で舞ったが少しだけ灰の痕跡が報告されていた。
「陸はどうやって?、真樹が生きてると信じたのかしら?。勘じゃないわよね?、それに値する何かを見た或いは知ったのよね?」
陸の揺るがない自信を見て、葵が的確に突いた質問する。
陸は葵に感嘆する、冷静に努めながら皆が疑問に思う事を聞くのだから。
だからこそ、まず、自分が知ってる事を話さなければならない。
真樹が死ぬ前日まで、自分と粋先生が元王様のガースに頼まれた任務を行っていた。
それは、各周辺の村で魔族の姿を見たという確認だった。
その中で最後に立ち寄ったオゲタ村で、魔族であるベノムに出会い戦い大怪我をおった事を。
その村での最後に、村長のヒサの占いよりも予言を聞いて自分達は帰って来たが、帰ってきた頃には全てが終わった後であった事を。
その時に抱いた感情が、どれ程の絶望的で虚しく悔しく自分が情けなかったか....。
「勇者を召喚した国、罪を犯した青年は悪意の刃で悲惨な死を遂げ生涯の幕を降ろすだろう。これが僕が聞かされた予言だった、最初は占いだと思ったさ、けど聞いてる内に確証は無かったが『急いで帰らなきゃ』って思えた....」
最初は、この事を知っているのは数人しか居なかったが。
初めて聞かれたクラスの皆は、陸もまた、自分達と同じでそれ以上に辛いだと知った。
だから、誰も何も言えなかった。
今はただ黙って、まだ話をしてる陸の声に耳を澄ます。
「それから半年も経って、魔国と和平した頃にふとっ、思い出した。また村にヒサさんに、この先をどうするべきか予言して貰おうと、けど、ヒサさんは最後の力を振り絞って二通の手紙を残して他界してしまった.....」
「一つ良いかしら?。占いを予言と信じたのはこの際どうでもいいわ、村長ヒサさんの占いは魔法とかスキルとか天恵って事でいいの?」
葵はヒサの占いや予言の方法が、ウェルムで存在する魔法やスキルや天恵によるものなのかを聞く。
自分達が知らない未知成る領域、魔法、スキル、天恵、これらの使用によって導かれた内容なのか葵は疑問に思い陸に問うった。
陸は首を横に振り否定する。
「いいや、違うよ。神巫女と呼ばれる三種の特別な存在と呼ばれる、一人だったと思う....」
知らない単語が出て来て皆キョトンとした表情をする、陸も最初聞いた時はそんな感じであった。
今の陸にはスキル『教導』が有る為に、皆が理解できるように話しをし、それらが一体どの様な存在でどんな"力"を持ってるか説明した。
「神による御告げか、先の未来を視た事なのかは僕には分からない。けど、ヒサさんが最後を振り絞って残した二通の手紙は一つは孫に宛てたのと、もう一つが最初に聞いた予言の続きが書かれていた」
陸は腰に下げていた袋収納から、貰ってきた予言が綴られた手紙を取り出した。
「これには、続きとしてこう書かれている」
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勇者を召喚された国、罪を犯した青年は悪意の刃で悲惨な死を遂げ生涯の幕を降ろすだろう。
だが、それは終わりでは無い。
青年は己が犯した罪を償う為に、人と獣の二つに別ち一つを地の底に落とし。
もう一つは死の淵から目覚め、罪を償おうと世に羽ばたく。
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「これが手紙には書かれてる、青年が誰を指すのか?。まだ、理解できてない部分も有るけど、真樹は生きてる。こんなじゃ曖昧でダメかもしれない、それでも僕は探しに行くつもりだ、帰る為の手段も探しながら....」
こんな言葉じゃ、皆は納得出来ないかも知れない。
それでも今だけは、受け入れて考えて前に進んで欲しい。




