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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
二章 北の大陸 ハースト
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44話 逃げない①


王墓から帰って来た二人は、アイに言われた言葉が其々違った意味として捉えていた。


「アイちゃんが言った事、何も間違って無かったね....。舞達がもっとフルっちを気に掛けてれば、いち速く王様の計画を知ってれば!、こんな事にはならなかったのに!。....舞達は何を間違えたの?!、何処で道を踏み外したの?!、もう家に帰りたいよ......」


舞花にはスイ先生の言葉の呪いの鎖と、王墓でのアイの言葉がまたしても呪いの鎖として絡み付く。

表情は暗く苦しく歪ませ、呼吸は荒く乱れ初め自身の声が震え早口になっていた。

異世界(此方)に来て弱音を吐いた事は何回かあったが、此処に来て舞花は理不尽な出来事が相次ぎ、心の許容範囲を越え口から溢れだす。


あの時、自分が違う行動をしていれば。


あの時、真樹に言葉を掛けてれば。


あの時、常に皆で側にいて一人にしなければ。


違った結果が合ったじゃないのか、そうなってれば皆が引き籠る事も無く、咲音が昏睡する事も無かったじゃないのか。

考え出せば次から次えと渦巻き、自身の心に重く乗し掛かる。


「舞花!。落ち着いて、過ぎた事を後から言っても、もう変える事は出来ないんだ。綺麗事を並べて自分に言い訳をしても、僕達がしてきた事は変わることはないんだよ!。受け入れて、前に進まないといけないだ」


陸は舞花の肩を掴み、そう言った。

自分も綺麗事を言ってるのかも知れない、いや、言ってるんだと分かっている。

それでも、今の舞花を見てるのが辛かった。


「........あ、うん。そ、そうだね、りっくんの言う通りだね受け入れないとダメだね。....もう大丈夫だから、食堂行こっか?」


「あぁ」


舞花の姿を見て何処に大丈夫の要素が有るのか、陸は小さく声を出して返答した。


陸は食堂に向かって歩く舞花の後ろ姿を見詰め、王墓で会ったアイの言葉と舞花の言葉(想い)を聞き決意した。

自分では、もう、受け止めて前に進んでると思っていたが。

本当は自分にも綺麗事や言い訳をして逃げてたんだと、だから、森奥で出会ったグリューンに意思を貫き通せなかっただと。

聖剣ルクスすら、失望させ嘲笑ってしまった。


「....舞花。先に行って待っててくれ、やらなきゃいけない事が出来た」


歩いていた舞花との距離が、自分の位置から出来続けていたが。

陸は大声を出すつもりは無かったが、舞花からしたら充分に大きくかった。


「えっ?、やらなきゃいけないって、どうしたのりっくん?」


「いいから、食堂で僕が来るまで待ってて欲しい!。絶対に、何処にも行かないで待っててね!」


陸は念を押してまで舞花にお願いし、自分は来た道を戻り自分達が宛てられた部屋えと向かっていく。


「あっ、りっくん........」


突然の事であった舞花は、その場で陸の姿を見ながら言われた通りに食堂に向かう。


廊下を走る陸の胸の内には、自分の出来る限りの事をし手紙・・・・について話そうと決めた。


僕が....綺麗事でも言い訳でも何でも良い。

終わらせないとダメなんだ、皆を解放する!。



...........


.......


....


その日、食堂にて珍しい事が起きた。

勇者の世話をするメイド達は、久し振りの仕事に歓喜した。

自分達は勇者の世話を仰せ遣ったメイドであり、仕事がなければ城の掃除をするのだが。

それは、城に在住するメイドの人数は多くほんの数時間で終わってしまい。

空いた時間はする事が無く、暇で暇でしょうがなかった。

本来なら、勇者の部屋の掃除、食堂での食事の準備等、例を上げるならまだ有るが。

その大半は勇者に関係してる為に、数人の勇者以外は部屋に籠ってからは仕事は無かった。


でも、今は違う。


食堂には今日も何時もの数人の勇者達だけだったのに、それが次から次えと部屋に籠っていた勇者達が食堂に入ってきていたのだった。

食堂にいたメイドも、廊下を歩いていたメイドも数人の勇者達も驚いていた。

直ぐに自分達の業務を実行する、メイド達で情報を共有し円滑に対応していた。


『『『『『忙しいって楽しい~!』』』』』


メイド達の心の声には、忙しくなった事での感謝があった。


今現在、食堂にいる勇者の人数は半分は達するがどれも暗い表情をしていた。

また一人と、食堂に入ってきては空いてる席に座り静かに待つ。


同じく食堂で先に待っていた舞花は、葵と忍が一緒に入ってきたのを見ては同じテーブルに呼び、皆が部屋から出てきた理由を聞いて驚嘆した。


「舞花、陸から何か聞いてないの?」


「うぅん、舞も何も聞いてないよ?。りっくんが食堂に来るまで、何処にも行かないでって言われたぐらいだよ?」


「そう、舞花にも話してないって事は陸の独断なのね」


「それにしちゃ、陸も良く説得出来たな。俺らが何を言っても、聞く耳持たなかったのによ?」


忍は初めの頃の事を思い出しながら、今と比べ微笑する。


「あの時は皆、心身共に疲弊してたでしょう。忍ぶなんか天恵ギフト使って1日中ベットの上だったんだから」


「本当それな、一日じゃなく最掛かってたかもな。天恵ギフトを使いこなせなかったら、下手して意識無くなって暴れまわってたかもな」


「笑い事じゃないよ、そうなったら舞達がしのっちをボコボコにしないとないけないだから」


「まぁまぁ、そうならなかったんだから良いじゃねぇか」


「どんだけお気楽なのよ忍は...。それよりも26人も集まったわね、陸全員に呼び掛けて何をするつもりなのかしら?」


会話をしてる間に食堂に来た人数を数えた、32人中、先生も入れれば33だが。

親友である咲音はベッドの上で眠り、先生は何処かに消え、真樹は死去してる為に人数は28人しかいない。

残す所二人は、まだ来ていなかった。


「そんなの本人が来れば直ぐに分かるだろうよ、気長に飯食いながら待とうぜ」


そう言って、呼び出した本人を気長に待つと決めた忍は、近くのメイドに3人分の料理を運んで貰うとしたら。


「舞はいいから、二人は先に食べてて良いよ。りっくんと食べる約束してるからね」


舞花は断りを入れ二人に先に食べるよう言う、二人も「分かった」の一つ返事をし、メイドが運んだ料理を口にしていく。

他のクラスの皆も料理を口にしてるが、大半は少量しか食べてなかった。


それから30分程して、27人目である一人が食堂に足を踏み入れ、三人を見つけると物凄い形相で向かっていた。


「おい!。お前らも知っていて、今まで黙ってたのかよ!」


ドンッとテーブルを叩き、三人を見ながら言った。


突然の事に三人は呆然とするが、久しぶりに顔をみせた山田皆瀬に忍は何よりもイラついた。


「部屋から出てきてよ、顔を見せたらと思ったらいきなりなんだよ、俺らが何を知ってたって?」


「....あ....ぁ...」


席から立ち上がった忍を見て皆瀬は震える、自分よりも背が高く。

あの時の出来事が過去フラッシュバックする、片手に騎士の頭を掴み着実に歩みよる忍。

その拳が自分の顔に迫りくる恐怖、それが今の皆瀬に起きていた。

植え付けられた恐怖トラウマとなり、目の前に忍が立つだけで皆瀬は固まり思考が止まりかけ始める。


こうなる事が分かっていたのに、何で近寄ったのか.....


「あぁ?、なんだよ何言ってるか分からないだろ?、ハッキリと喋れよ」


「あぁぁぁぁぁぁあぁあぁぁ」


恐怖から逃げようと、皆瀬は食堂から出ようと走り出した。

その騒ぎ見ていたクラスの皆は、『どうでもいい』と傍観していた。

メイド達も何事かと思いながら、止めに入るべきか思案する。


「おい!、山田!」


食堂から走っていた皆瀬は前を殆ど見ずにいた、だから前に人がいる事など知らずに、そのままのスピードで突っ込み。


気付けば自分が床に尻を付け倒れていた。


「山田?、大丈夫か立てるか?」


ぶつかった本人は、皆瀬の名を呼びながら手を差し出し立たせる。


食堂のクラス全員が、自分達を呼んだ人物を見た。


「皆、揃ってるね」


呼び掛けた本人陸は、食堂にいる皆を見てそう言った。


新しくなった仕事が忙しくって、なかなか小説に手がいけなくって泣けてきた(ToT)



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