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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
二章 北の大陸 ハースト
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43話 墓


サラの自室で楽しい時間は過ぎ、現在の時刻は16時となった。

お茶会は終わりを告げ、各々が帰りの準備を始め席から立ち上がる。


「それじゃ、私は咲の所に戻るわ。サラ、メルシーお茶御馳走さまね、舞花も陸もじゃあね」


「なら、俺もそろそろ帰るとするか。明日からまたクエストにいかないと行けねぇからな、そうだ陸!、明日暇ならクエスト手伝ってくれ」


「じゃあね葵、しのっち~」


「考えておくよ忍、それじゃ、また明日な」


「アオイ様、シノブ様。今日は大変楽しかったです、また宜しければ誘って下さいね」


「えぇ、もちろんよサラ」


少しだけ会話を交わしてから部屋から出て行く、残った四人は二人を部屋から出るまで見送った。


「僕も帰るとするかな、...舞花はどうする?」


「うん?、舞も帰るから途中まで一緒に行こうりっくん」


「マイカ様。リク様。本日は楽しい一時でした、また、何時でも遊びに来てくださいね」


「もちだよサラっち、今度は舞も美味しい物持ってくるからね」


「それは楽しみにしますが、此方もとびっきり美味しい物用意して待ってますね」


また、何時の日にか開くお茶会に向け。

互いに美味しい物を用意する事を決めるが、断然サラの方が有利だと思った陸がいたが、それを口に出す事は無かった。


地球での菓子を作れれば良いのだが、舞花の家事スキルを知っている為に希望は無く。

料理が出来る地球こっちのクラスの誰かか、城にいる料理人の人達に作り方を教え作って貰うなんてのも考え付いたが。

生憎の陸は作り方等は知らないし、異世界の食材も何を使って良いのかさえ分からなかった。


「...あぁ、サラも国の事で忙しいかも知れないけど。僕に出来る事が有れば何時でも言ってくれ、その時は協力するから」


「はい。その時は是非ともお力添えをお願いしますね」


それを最後に陸と舞花は部屋から出ていき、サラもメルシーも最後まで扉が閉まるまで見送った。

部屋に残った二人は自分達の時間が終わると同時に、入れ替わるように仕事に戻る。

メルシーがテーブルの上の空いたカップや、菓子を乗せていた皿を台車に片付け、テーブルを綺麗に紙の束を上に置く。

サラも椅子に座りながら紙の束を手に取り、中を拝見していき仕事に取り掛かる。


テーブルの上に置かれた紙の束、サラが政務室から出ていった後で大臣や文官達が考え討論した結果の束。

後は最後に国の王であるサラが王印を押せば、それに沿って業務が行われる。


サラも簡単には印を押せば、早く書類から解放されるだろうが、サラは一字一句読み可笑しな所が無いか不備は無いかを確認していくと同時に。

政務室で行われた事も頭に叩き込み、次の会議でスムーズに進行する為に把握していく。

そんな中で時間と同時に書類の束が終わり、大臣マリスから渡されたダマハからの書状と、暗部団長ワンからの報告書を順次見ていく。


まず、先に商業都市ダマハの商人達を纏め上げるニルギヤ・タサ・ダマハ本人の書状を開き、中を読むとサラは笑みを浮かべた。


ニルギヤ様たら急なんですから、それにシノブ様が助けた商人がそうだったんですね....。


書状には商業都市ダマハから、今ヘルズ国に向けてニルギヤ本人が乗ってる一団が向かっている旨と、軽い世間話と父であるガースについて書かれていた。


「メルシー。マリスに3日後ダマハからニルギヤ様とその一団がヘルズ国に来ると、伝言を頼めるかしら?」


「はい。畏まりました、マリス様に御伝えしておきます」


サラの為に、お茶会に使った茶葉とは違う品種を使って淹れたカップを、そっとテーブルに置き。

最敬礼してサラの命令を聞き、部屋を出る前にもう一度礼をしてから素早くマリスが居る場所に向かう。


書状を元に戻してテーブルに置き、今度は1からの報告書を目に通していくと。

笑みだった表情は真剣な表情を通り越して、険しく驚嘆していく。


「.....そんなバカな話が有るものですか!」


報告書をテーブルに叩き付けた衝撃で、メルシーが入れたカップを倒し中身を盛大にぶち撒ける。

それほど1からの報告書は、ヘルズ国と魔国サーヒスに雷を落とす程重大だった。


暫しの沈黙の後サラは叩き付けた報告書を手にし、魔国の使者であるベノムの元に駆け出していた。


.........


......


....


サラが自室から出た後の同時刻、陸と舞花は城の廊下を歩いていた。


「今日の夜ご飯なにかな~♪」


「さっきまで、あんなにお菓子食べてたのに、もうご飯の事を考えてるの?」


「お菓子とご飯は別だからね、それに、りっくんと一緒に食べるのも久し振りだね」


「.....そ、そうだね、僕も舞花と食べるのを楽しみだよ」


舞花の言葉を聞いた陸は内心歓喜で満ち溢れた、周りに誰も居なければ声を大にして喜びのダンスでもしただろう。

それを必死に我慢し、心を自制して極めて普通に返答してみせた。


「そっか、りっくんも舞と同じだね。そう思うとご飯が待ち遠しなぁ~~」


そう、言いながら歩く舞花。


「後二時間の辛抱だよ舞花、それまではお腹空かして待たないと。でも、食べ過ぎたら太ちゃうかも知れないね」


「あっ!、りっくん女の子にそんなの事言ちゃいけないだよ!!。それに舞は運動してるから太りません!、それに~将来は身長が高くってボン キュ ボンのナイスバディーになるだから」


「ごめんごめん冗談だから、例えどんな舞花になっても僕は今 目の前に映ってる・・・・・・舞花だけが好きだよ」


陸の言葉を聞いた舞花は憤慨しながら将来の姿を語り、陸は苦笑しながら謝罪を口にしさらっと想い告げてみたが。


「りっくんは直ぐにそう言う事言うだから~、そう言うのは、ちゃんと好きな人に言わないとダメだよ」


「.......」


舞花は全く気付かず寧ろ気遣うようにダメ出しする、陸もこればっかりは無言になってしまった。


「あれ?、りっくんどうしたの?。何か怖い顔してるよ?、...わぁ、いきなり何?...おぉ.わぁあ揺....れ...る...」


無性にムカついた陸は、舞花の頭を両手で激しく振る。

ぐわんぐわん揺れる頭に舞花も困惑しながら、制止の声を掛け続けた...。


「うぅ~、頭がクラクラするよ~。...酷いよりっくん、舞間違ったこと言ってないのに」


数分か揺らされ続けた頭は髪が乱れており、手で髪を直しながら舞花は陸に文句を足らす。


酷いのは舞花の方だよ、忍も葵もサラも察してるのにどうして気付かないかな?!。

別に、僕自身隠すつもりは無いけど。

こうもあからさまなのに、本当にね....もう!。

あっ、でも、此処は直球に伝えないとダメかな?。


心の内で陸は文句を吐き、自身の葛藤を撒き散らしていた。


「りっくん無視なの?、おーい無視ですか?。りっくんりっくん!!」


陸の心の私情の事も知らずに、声を掛け続け無視されてるようになった舞花。

それが廊下の別れ道まで続き、その事を知った陸は不機嫌の舞花に謝り許しを貰った。


「帰って来たばっかなのに、また何処か行くの?」


「あぁ、王墓に寄ってから部屋に戻るつもりだよ。だから、舞花は先に部屋に帰ってて良いよ?」


そう気遣う口調で言うと、一瞬だけ表情が強張りながら舞花は口を開いた、


「.....ううん、舞も一緒に行く」


「なら、一緒に行こっか」


舞花の返答を聞いた陸は、短くそう言って城から出る廊下の方を二人で歩いた。


.......


.....


...


過去の王族達が埋葬されてる王墓、そこは王族だけとは限らず国に取っての偉人すらも眠る場所。

その為城壁の内側に有り、最も日の光が当たる東に位置していた。

また、墓を掘り起こす、死者の冒涜、汚す等をさせない為に、墓守兼兵士数人が交代しながら見回りしていた。


兵士達も自分達の役割が、どれだけ重大なのかを知りそれに就けた事を誇りさえしていた。

その為今日も、近付いてくる者達の素性を念入りに確認する。

安心し大丈夫だと確認が取れれば、王墓に通し何も起こらせないように監視する。


「リク様とマイカ様ですね。確認が取れましたのでどうぞ、念の為遠くから一人付く事に成りますのでご了承下さい」


「分かりました」


王墓までに来ていた二人は、入口付近で立っていた居た兵士にそう言われた。


立ち入る事を了承され、敷地に足を踏み入れ目的の場所まで歩く。

その後ろを遠くから付き添うように違う兵士が監視する、その事を分かっている為に二人も気にしなかった。


「あれ?、先客が居るみたいだね」


目的の場所である墓、最も端に有り日が刺さらない場所に誰がいる事を舞花が見つける。


「そうみたいだね、あの子は確か.....アイだったかなマリスさん所のメイドさん?」


小さなメイド服を来た子供姿を見た陸が、自身の記憶から一致する人物を探しだし声にする。


陸と舞花の話し声に気付き、墓を手入れしていたアイが手を止め此方を向きお辞儀する。

陸も舞花もそれに釣られ、不格好だったがお辞儀返してからアイに近付き声を掛けた。


「こんばんわ、君も真樹の墓参りかな?」


「こんば...んわかな今は?、アイちゃんで間違いなかったよね?」


「.........リク様。この方の墓は誰も世話をしないので、私が綺麗にしておりましたので、墓参りとは違っております。それとマイカ様、アイで間違いはございませんので、アイと呼び捨て下さいませ」


無表情で無機質な声音で淡々と話し、両目は閉じておりながら、目が合ってるような印象を抱だく陸と舞花。


「そっか、真樹の墓を綺麗にしてくれてたのか、代わりにお礼を言わせて欲しい、ありがとう」


「いえ。貴殿方勇者様にお礼を言われる筋はございません、私が、したくってしてるだけですので。......それに、いえ、何でもありません」


無機質な声音でありながら、何処かトゲが有るような言い方をするアイ。

最後に何かを言い掛けたが、口を閉ざしその先を言わなかった。


「綺麗にしてるなら舞達も手伝うよ、途中までみたいだからね。ダメかな?」


真樹の墓の手入れが、途中までなのを見て舞花が提案するが。


「結構です」


ハッキリとした拒絶の意思で断り、舞花は困った表情を浮かべる。


「そんな言い方はしなくっても良いじゃないかな?、舞花は...」


「ううん、良いの。気に障っちゃたならごめんね、アイちゃんの仕事を取るつもりは無いってのだけは分かって欲しいな?」


陸はアイの言葉に何かを言い掛けるが、間を割って舞花が制止させアイに。


「勘違いなさらないで下さい。貴殿方"勇者"様に、一切この方の墓に触れて欲しくは有りません。見ての通りこの方の墓は、一日中隅っこで日の光も夜の月の光も当たらない場所で。誰にも綺麗にされず、何も無いように扱われる始末です」


「そ、それは...」


舞花が言わんとした事をアイが代わりに言う。


「女王様が場所を決めた事で有り、勇者様方が決めた事では有りません。ですが、一緒に来た筈の仲間だったこの方をこの場所に追いやったは、貴殿方"勇者"です。...最初の一回以降、この方に会いに来た人達は居ませんでした、触れたくもなく見たくもないように逃げたのですから」


真樹がこんな隅っこにで光すら当たらない場所に墓を建てたのは、サラが決めた事でもあった。

真樹は被害者であったのに、彼の行動によって関係ない者達が死んでしまったのも有り。

僕達はそれを理解して何も言わず、此処に墓を建て最初だけしか墓参りをしなかった。


だから、アイの言葉に反論出来ず何も言えなかった。


「此処は貴殿方"勇者"が来て良い場所じゃ有りません、お帰り下さい」


無表情でありながら、その声音には無機質では無く敵意が困った怒気が含まれていた。


「....分かった、邪魔してすまなかった。行こう舞花」


「うん.....」


アイの言葉に従い、僕と舞花は来た道を戻っていた。



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