40話 気分転換
「あ~ーもう!。気分変えに美味しい物でも食べに行くよ葵!、反論も拒否も聞きません~!」
勢い良く椅子から立ち上がり、反対側に居る葵の手を掴む。
「急に何どうしたの?、てか、咲を置いて行くわけ無いでしょう!。聞こえてるの舞花?!」
「聞こえません~!。それに、ちょうとぐらいなら咲音も許してくれるよ。それに何時か目を覚ました時にさ、咲音に色んな話をして上げたいじゃ!」
「....そうね、分かったわ」
子供の駄々っ子のように葵の言葉を無視し、扉を開けて二人で出て行く。
葵も舞花が聞いてくれないと分かったら、無駄な抵抗を止め渋々着いていく。
寝ている咲音には少しだけ罪悪感も芽生えるが、舞花の言葉にも一理あった。
彼女が目覚めた時に、それまで何が起きたのか楽しかった事や変わった事も、話して上げたいと思う所はあった。
そう思えば後ろを歩くじゃなく舞花の横を歩く、舞花も葵も互いに顔を見合せ微笑んだ。
「二人だけでも良いけど、人数は多い方が良いわね?」
「そうだね誰誘う?、しのっちなら訓練場にいるけど?」
「たまには忍も誘って上げましょうか、どうせ今は休憩してる筈だから」
「じゃ、早速行こう!」
食べに行く人数増やそうと、ベノムにボロ負けした忍を誘いに行くと決め足を訓練所に向け歩き出す。
それから十分程歩き訓練所着くと、中から金属がぶつかり合う音が響いていた。
音の発信源は訓練所の広場であり、二人の男が戦っていた。
舞花と葵はそれには目を向けず、お目当ての人物を見つけ歩み寄る。
「おーい~しのっち!。今日もボロ負けだったね」
舞花はいたずらっ子のような笑みを浮かべ、今日の結果を大声で叫んだ。
「おいおい、いきなり何だ。人が気にしてる所を塩を塗るみたい真似する奴は!、....って、舞花かよ!。...後葵も居るのか」
体の至るとこに痣が有り、擦り傷や多少血が出ていて医療班の人に治療中の忍は。
後ろから掛けられた声にキレ気味に振り向き、声の人物を見て直ぐに呆れ気味に驚いた。
「その言い方だと、私はついでなのかしら忍?」
「いやいや、お前が咲音から離れるなんて珍しいだろ?。普段一日の半分は付きっきりだろ」
忍の言う通りに、葵は寝てる咲音の世話を献身的にしていた。
暖かいお湯で濡れた布で体を拭いて上げたり、部屋は常に清潔に心掛け掃除したり等で、一日の半分は常に咲音と共にいた。
そんな葵が咲音から離れ、訓練所に来ていた事には珍しいと驚いていた。
「まぁ、そうね。でも、一日ぐらい離れていても平気よ、咲はそんなじゃ怒ったりはしないわ」
「その辺は知らんが、葵が言うならそんなだろうな。......所で、お前ら何か用事でもあんの?」
微笑しながらふと思い出したように、二人に向けて言葉を掛ける。
舞花も葵も、自分達が何しに来たのかを思い出し用件を伝える。
「そうそう、今から美味しい物食べに行こうって誘いに来たの。しのっち今休憩中でしょ?、ベノムさんにボロ負けして」
「誘いに来たってのに、舞花はアレか人の傷口をいちいち抉らないといけないのか?!」
「冗談だよ。それに、しのっち良いリアクションするから遂...ね」
「舞花も忍をいちいちからかわないの、話が進まないでしょう。それで、忍どうなの?、行けるかしら?」
ピクピクと眉端を動かし舞花を睨み付けるが、当の本人は笑いながら謝罪し。
葵によって舞花を注意しては、忍に大丈夫なのかと聞く。
「行けるかって言われてもな.....」
と、治療してくれてる医療班の男性を横目で確認する。
三人の会話に耳を傾けながら一生懸命治療する男性は、顔を上げて癒魔法での治療を止める。
「忍様。治療の方は終わりましたが、予想以上に体えの負担が大きく、この後の手合わせは困難かと思われます。ですが、御出掛けでしたら問題なく過ごせますよ」
「う~ん~?、.....そうだな今日は止めておくか。何時もありがとうな、また、頼むな」
そう言う医療班の男性に言われ、傷だらけだった忍を見ると綺麗さっぱり治っていて。
忍も自分の身体に不具合がないか一つずつ確認し、まだ、戦えそうな気はしたが普段から世話に成っている為に素直に聞き礼を言うと。
男性も素直に頷き、邪魔者は去るかのように颯爽とお暇する。
男性が行ったのを見届け、忍は誘いを受ける胸を伝える。
「その前に忍は着替えて来た方が良いわ、着替え終わったら城門前で合流ね」
「分かった、なるべく早く済ます」
「絶対だよ!、遅れたらしのっちの奢りね~」
「ざけんな舞花!、そんなに金は無いから。せめて、安いのな、高いのは無理だからな」
舞花の言いに忍はふざけるなと言うが、怒ってる訳じゃない事を知っている為に、それ程気にしてはいない。
寧ろ素直じゃなく根は真面目で優しいし、此処の男の人達も忍の事を慕っていた。
舞花も葵も|彼の(忍)事は好意的に思っている、友人として仲間として。
「おぉ~、流石しのっち漢だね」
「....忍、それは遅れる前提なのかしら?」
「まぁ、そうなるか?。今日はもう戦えないからな、一回風呂入って汗とか流したいし....」
「「なるほど」」
二人は納得する、言われてみれば確かに汗の臭いざ忍の方からした。
「おい!、お前ら。鼻摘まんで下がるなよ、普通に傷付くだろ!」
「忍。冗談に決まってるでしょ、それよりも、速く風呂に行って汗流しておいで臭うから?」
「そうだよ~。しのっちが汗臭いな、なんて思ってないよ?」
「なら、普通に口に出すなよお前ら....。話してるだけで傷付くってどうよ?、まぁ、いいや、とりあえず風呂に行ってくる、後で合流な~」
二人と話してるだけで精神的に疲れてきた忍は、半分諦めと決め出口に向かって歩きだす。
「行ってら~」
歩く忍の背に向け舞花は声を掛ける、忍は見向きもせず手を上げてヒラヒラさせる。
忍が見えなくなった所で、二人はこの後どうするかと話し合う。
正確には、散々二人に揶揄われた忍が風呂で汗を流してる時間まで何をしていようか、だった。
先に待ち合わせ場所である城門前で待つか、このまま訓練所の中央で今も戦ってる二人を見るか。
.........悩んだ結果、このまま此処でベノムとギースの戦いを見る事にした。
どちらも身に付ける装備は、訓練で使われる刃を潰した剣である。
激しく扱われたり、強い一撃を受けたすれば普通なら折れるなり壊れるの普通だった。
だが、二人共剣に魔力を覆わせており、武器強化をしていた。
切れない筈の剣で地面を壁を容易く切り裂く、それほど魔力の"質"が高く魔力操作が上であった。
「うひゃー、やっぱ凄いねスキルも天恵無しで!」
「そうね、純粋に剣術と体術だけの勝負だからね」
舞花と葵は二人の戦いを見て素直に尊敬する。
戦う前のルールとして、ただ純粋な"武"を見たいとなり、スキル、天恵の使用を禁止にしていた。
男二人は本音を言うなら、全力でスキルも天恵も使い殺り会ってみたい嘆いていた。
勿論、そんな事はサラが断固拒否し「絶対にダメです!!」と二人に言い聞かせていた。
「サラっちも良く言えたよね、舞じゃ無理だよ....だって怖いだよね二人共」
「舞花と違って、サラの方が肝が据わってるのよ。まぁ、気持ちは分からなくもないけどね」
ブルッと震えながら、中央の二人を遠い目で見詰める舞花に。
葵もその気持ちが分かっていた、普段なら頼れるギースと、ベノムは知り合ったばっかで分からないが、一つだけ言えるとしたら。
少しでも戦いになると、全身から放たれる殺意が恐ろしかった。
アレは、赤子に毛が這えた程度の自分達とは違い、確実に殺す事が出来る程の物だった。
そんな印象を来た頃に全員抱いてしまった、その中で舞花だけは気軽に呼ぶ事を出来ないでいた。
「でしょ!。それにサラっちは......、ねぇサラっちも誘いに行こうか?」
何かを言い掛ける途中で、少しだけ考え事をしてから舞花は提案する。
それを聞いた葵は、はぁ?みたいな顔をし唖然とする。
「いきなり何?。誘うにしても無理でしょう、魔族と和平して今はかなり忙しいじゃない?」
「まだ、無理って決まった訳じゃないんだから!。多分?、サラっちも息抜きが欲しいって思ってるよ!」
「多分なのね....。まぁ、良いけど、今日は舞花の好きにしたら良いわ...誘うにしても」
自分も誘われた側として、取り敢えず舞花の好きなように任せる事にし。
結局、少しだけしか此処には居られなかったが、席にから立ち上がり出口に向かい歩きだす。
「うん、そうするね。葵...ありがとう」
前を歩いていた舞花に、振り向き様にお礼を言われ、笑みを浮かべる事で返答し。
舞花の横に立ち一緒に歩き、サラが居そうな場所に向かった。
訓練場では、二人が居なくなってから二時間後にギースの敗けで決着がついた。
今話も読んで頂き、ありがとうございます。
突然ながら、3月の1ヶ月程の更新を休載させて頂きます。
誠に勝手ながら、読んでくださる皆様には御迷惑御掛けして申し訳ございません。
理由と致しまして、車の免許合宿に行って参ります。
詳しくは、活動報告の方に載せて頂きます。
更新が出来るようになりましたら、一気に更新させて貰います!!。




