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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
二章 北の大陸 ハースト
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34話 アンは甘 リストは厳


オゲタ村から少しだけ離れた広間に三人はいた、リストだけに教える筈が「私も」と、アンが参加した為だった。


「いいか?、リスト。アンも参加する事になったからって、浮かれないようにね」


「おうよ、まかせておけ!」


あーダメぽいっなリストは.....。


一応気が散らせないように注意するが、隣にいるアンを意識過ぎて挙動が変になっていた。


「じゃ、リストは魔力纏い使用禁止で、身体に丸太を背負って走り込みね。丸太はそこに用意してあるから、さぁひたすら走っておいで」


「げぇ!、マジかよ....。リクもうしかして怒ってる?!、謝るから丸太は無しにしてくれ」


陸が指差す方を見たリストは、魔力纏い無しの素じゃ無理だと声が出てしまう。

自分の背よりも大きく太い丸太が置かれ、横に身体に巻き付ける為のロープまで用意されていた。

リストは陸が朝の事を根に持ってると考え、確かにアレは悪いかな~と少しだけ考えもしたが。

陸ならこれしきの事で怒る事は無いと考え付き、いざ実行しても怒られる事は無かった。


「うん?、そんな事じゃ怒んないから安心しなよ。魔力纒いならアレは持てるけど、元々の身体能力が高ければ高い程より大きく作用されるだよ。簡単に言えば、今よりも魔力纏いが強くなるってことだよ」


陸の説明を聞いたリストは俄然とやる気を出していた。


「うぉぉぉぉやってやるぜ!、リク背負うの手伝ってくれ!」


「はいはい、分かったよ」


リストより高く太い丸太を背にくくりつけては、具合を見ながら良い感じに調整する。


『.....バカスト単純』


ボソッと呟いたアンに、人差し指を口に当てシっ~とポーズを取り内緒にさせる。


「じゃ、走っておいで」


「おう!、行ってくる!」


気合いが籠った返事をしては、丸太を背負ったリストは地面をガリガリと削りながらゆっくりと進んでいく。

そんなリストの後ろを姿を確認して、陸はアンの方えと向き合う。


「リストは暫くはあのままだから、此方は此方で始めようか」


「よ、よろしくお願いします....」


「さてと....アンはどうして急に教わりに来たの?、これはリストが冒険者に成る為の修行だよ?。昨日はあんなに否定していた事なんだよ、それをアンから「参加したい」なんて昨日とは真逆の言動だよ?」


質問されたアンは「う~ん」と唸りながら考えだし、ゆっくりと口を開いて話してくれた。


「....いつかリストは村を出て行くつもりなの、ううん、絶対に村から出る。そん時ね自分だけ村に残って、いつの日にかリストが死んだ事を知ったら後悔するだ..きっと....。だから、そうならないようにね、リストと一緒に強くなってどんな時でも一緒に居たいの。本当なら村で一緒に畑仕事したり、子供と幸せな家庭も築きたい。私にとってリストは居場所で、大切な人なの...」


その言葉に含まれる想い、一人のリストを考え大事にするからこその言動。


村を出るね....、リストが出るとは思わないだけどな?。

アンを守りたいからこそ僕に教えを乞うだから、冒険者はあくまでも、照れ隠しの方便みたいなもんだし。

幼馴染みだからこそ分かるって奴かな?、それなら僕がアンに出来る事をしないとな。


「アンの気持ちは分かったよ、それなら最初は基本から始めようか。じゃ、まずは魔力が何かは分かる?」


「魔力ですか?、当って無くってはいけない存在です全てにおいて。魔法を行使するのにも、日常的にもです」


「あっ、うん、それで正解だよ。それじゃ魔力を感じる事は出来る?、出来ないなら少しだけ手を貸して貰って良いかな?」


「.......手をですか?、魔力は感じられないですけど?」


と言いながら、片手を少しだけ前に恐る恐るっと言った感じで差し出してくれた。

リストとは違い細いが確りした手に、ほんの少し指先に触れる事を了承して貰い。

リストにやったように魔力を流す、僕の白銀の色の魔力がアンを覆っていく。


「す...ごく....暖かくって優しい....」


身体を覆う魔力を少しずつ感じたアンは、僕の魔力に対してそう感想を述べた。

これだけ魔力を流せば大丈夫だと判断し、指先から離して終わらせる。


リストと同じ事言ってるよ、やっぱり二人は通じあってるだね。


「どうかな?、魔力を感じられそう?」


「あっ、はい!。うっすらですが、モヤモヤした何かを感じます、これが魔力ですか?」


「そうだよ、そのモヤモヤしたものが魔力だよ。次に、今感じてる魔力を一つに集めるように意識すると、こんな感じになるから。ゆっくりで良いから、やってみて」


アンに手本となるように、僕自身の身体を一回見えるように魔力で覆い。

それを一点に集めるように動かして行く、そうして指に集まったのを見せると。

それを、真似するようにアンの身体に滲み出すように魔力が出てきた、リストと同じ赤い色をしていた。

それを波打つように徐々に動きだし、アンの小さな手に集まった。


「.....出来た!、リクさん出来ました!。....あっ.....」


「初めてにしては良く出来てたけど、集中が途切れると今みたいに消えちゃうからね。だから、アンは少しずつで良いから慣れていかないとね」


手に集まった魔力の塊に喜んだアンだったが、集中が途切れてしまい、集まった魔力は霧散してしまった。

その事に少しだけ悲しそうな表情が見えたが、陸の言葉を聞き寄り一層励む頑張ると決めた。


「じゃ、今のが出来るとどうなるのかと言うと。......おっ、これが丁度良いかな?」


リストの走り込み・・・・・為に、追加で用意していた丸太を二本を持ち上げてみる。


「魔力纏いって言って、主に身体強化や武器強化が出来るだよ。因みにリストは、まだ完璧じゃないけど二つとも出来るよ」


「むっ!、リストが出来るなら私でも出来るもん!」


「うん、アンならきっと出来るけど、その分頑張らないとね」


陸の挑発する言いにアンも対抗心を燃やし、袋収納メッシスから鉄のナイフとホルンベアの毛皮を取り出す。


「これは昨日狩ったホルンベアの毛皮で、鉄で出来たナイフじゃ切れない.....こんな感じでね」


言葉で説明するように、ホルンベアの鉄以上の硬さにナイフの刃が通らなかった。

アンは陸の言葉や動きを見逃さないよう、一心に聞いていた。


「じゃ次に、先程と違い魔力を身体に纏うじゃなく。ナイフ鋭く覆うようにすると....ほら、綺麗に切れたでしょう?。これが武器強化だよ、アンには今からコレをやってもらうよ」


「はい!」


良い返事だな~、リストもこんぐらいの良い返事だったしな....。


そんな事を思いながらアンに、毛皮とナイフを渡す。

小さい手にナイフを握って、先程の感覚を思い出すように魔力がゆっくりと動き。

肩、腕、手、ナイフと集まっていく、覆う事は出来てるが不安定ではあった。

覆った魔力のナイフで、空いていた手で持ったホルンベアの毛皮に触れ引いていく。

ただの鉄のナイフじゃ切れなかった毛皮が、少しずつだが鋸のように切れていく。

引いては押して引いては押して、最後まで刃が通り切れた毛皮が地面に落ちた。


「みてみて!、出来た!、私でも出来たよ!!」


と、満面な笑みで喜んでいた。

教えてる側として僕も素直に喜び、次にどう良くなるのかを丁寧に教えた。

勿論、リストの時はあんまり丁寧には教えて無かった気がするが、それは、まぁ、アンは女の子ですから......。


そんなこんなで二時間程繰り返し練習し、アンはゆっくりとだが着実に上達していた。

速さで言うならリストよりは劣ってしまうが、それでも普通よりは速かった。

アンも才能が有るのか知れない、リストは戦闘能力が高いがその分知識は劣る。

その点、アンは教養が有るのか言葉使いと言い、礼儀正しさがある。

リストが足りたい部分をアンが補い、アンが足りたい部分をリストが補う。

二人が互いに支えあってる間は、危険に陥っていても二人で切り抜けられる可能性がある。

いや、そうであって欲しい.....。


そう切実に願うのみであった。


「リ....リク~!....アン~!.....走り終わった.....ぜ.....」


丸太を背負って二時間走り込んで来たリストが、よろよろとふらつきながら歩いてきた。

今にも倒れそうだった為、足に魔力を瞬間的に纏い飛び出して体を支える。


「お疲れリスト、魔力纏い無しで良く頑張ったね」


「.......お...うよ....辛かっ..たぜ..」


「少しだけ休憩したら、今度は丸太を三本にして行ってみようか?」


「........」


一本だけでも辛かったのに、休憩を挟んだら今度は三本と聞かされたリストは言葉を失ってしまった。


「......冗談だよリスト、そんなに真に受けないでいいから」


「そ、そうだよな。てっきり本気かと思ったぜ」


乾いた笑い声が出てしまうリストと共に、アンの元に行き昼休憩をする事にした。

そこで昼から陸がいない事を告げるが、二人には其々がしないといけない事を言っておく。


「じゃ、二人ともシアに言っておいてね。後、リスト絶対にサボらないで頑張れよ」


「分かりました。リクさんが帰ってくる頃には、もっと上達しておきます!」


「なぁ?、本当に丸太三本でやんないとダメか?」


健気にやる気を表すアンと対照的に、やる気が失い掛けてるリストは丸太と陸を交互に見ていた。


「アンは頑張るのは良いけど、魔力切れを起こさないように気を付けること。リスト...魔力纏い使って良いから、自分の限界が何処までなのか知る必要がある。もし、この二日間で僕の合格を貰えたらご褒美が待ってるからね...」


二人に向け言葉を残し、陸の合格基準が何処までかは教えないが、最後まで頑張ればご褒美を約束する。


「合格が貰えるように頑張ります!!」

「ご褒美って、何をくれるんだ?!」


「それは、....内緒だよ、とっても良い物って事だけは教えておく」


と、言って。

二人が何かを言うのを感じながら、背を向け森に向かって走り出す。

森の奥にいる"竜"、フォレストヴァージャドラゴンのグリューンに会いに行く為に。




一ヶ月に四話しか更新しないのは、遅い分類に入るだと思いますが。

ストックも有るには有りますがそれでも、心細いぐらいの数話しかないですよね(´д`|||)。


それでも、一生懸命に頑張ってますので宜しく御願いします。

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