33話 相思相愛?
「リク今日はありがとうな!、アンに会ってくる~!。それと、明日から二日間お願いします!」
緑竜のグリューンから貰った緑鱗を手にしてリストは、手を振りながらアンの元に向かった。
僕も振り返して別れ、村長ヒサ兼シアの木家に歩き出した。
グリューンから別れてから、森に入ってから時間の半分でオゲタ村に帰ってこれた。
道中魔物等に出逢わず、もうしかしたらグリューンが何かしてくれてたのかも知れない。
そしてグリューンの過去を聞いて、僕が知らない単語を言っていた。
忌神子姫....災厄を齎す者、字面にすれば良い意味はしないし。
それほどの不吉な異名、最後にグリューンが言った"異世界の勇者"何故知ってるのか。
けど、考えられるとしたら『鑑定』と言うスキルが使われステータスを見られた可能性。
なら、グリューンは最初から僕が何者で強さも知っていたって事で。
負ける事も無いと分かった上で声を掛けた、......いや、違うなグリューンはそんな事はしない。
ほんの少し一緒に居て言葉を交わして、グリューンは絶対にそんな事はしない、寧ろ何処までも優しく人一倍厳しい竜だ。
「リクさん?、家の前でブツブツ言ってどうしたんですか?」
「はぁ?.....あっ、シア。少し考え事してました」
リストと別れてから考え事をしていた陸は、ブツくさと小言を言いながら家まで歩いていた。
その姿は村の人達に変な眼で見られていたが、陸が知る故は無かった。
家から出てきたシアは、窓の外に居た陸を見て出てきていた。
その様子を開けぱっなしなったドアから、ひょっこりと此方を見る少女がいた。
「それよりも、リストと一緒に森の奥に行ったんですよね?!。怪我とか大丈夫なんですよね?、あ、もちろんリクさんが怪我をするなんて思ってないですよ!」
「リストならアンに会いに行ってくるって、先程別れました。何処も怪我はしてなかったので大丈夫です」
陸の言葉を聞いて心底安心したのか、軽く息を吐いては怒を帯びた表情をして。
後ろから覗く少女の方を振り向き、手を招き入れるように手振りして口を開く。
「アン!、此方に来てちゃんと謝りなさい!」
「.....はぃ」
顔をだけを覗かせていた少女アンは、赤く頬を染め目は泣きじゃくったのか赤く腫れていた。
足取りもトボトボと元気もなく、顔を俯かせていた。
「...リクさん、自分の我儘の性で御迷惑御掛けしてすみませんでした....」
そう言ってアンは僕に頭下げて謝った、一体何の事を言ってるのかは直ぐに検討はついてた。
「もうしかして?、リストに頼んだ花の事を言ってるの?。それなら僕もリストも怒ってないから大丈夫だよ、寧ろリストはアンの為に頑張ってたよ」
許す代わりにと、リストに森の奥で自生してる花を取ってきて欲しいと頼んだこと事態が、嘘だったって事になる。
実際12~13才の子供が森の奥まで行ける訳もなく、もうしかしたら昔に聞いた事だったり、本で知っていた可能性も考慮に入れ否定する訳もいかず。
結果としてリストを鍛えながら森の奥まで探しに行っていき、それのお陰でフォレストヴァージャドラゴンのグリューンにも会えたのだった。
「リクさん気付いてたんですか?、森の奥に花が咲いてないって?」
「一応万が一にもと考えていたんですが、実際一本だけ生えてましたよ。其所で竜のグリューンに会ってリストと二人で話し込んでました」
微笑しながら森の奥で逢った事を話した、陸の口から語られた"竜"を聞きシア、アンは開いた口が閉じず絶句してしまった。
「「.....」」
それを見た陸も「しまった」と思わず言葉が出てしまった、二人を心配させる事を言ってしまった事に.....。
「けして悪い竜じゃないんですよ!、温厚で優しく人一倍厳しい竜なんですよ。僕もリストも説教されちゃましたから.....」
「リクさん?、此処じゃなんですから中で詳しく説明して貰えますか?」
シアの言葉にアンは何回も力強く頷き、二人して陸の手を掴み家の中に引っ張って行く。
「分かりました....」
陸はただ一言二人に向けて発し、家の中に入っていった。
...........
.......
....
劣化する前にホルンベアの肉や果実等、袋収納に入っていた食材を渡してから森に入ってからの話をした。
二人は渋々納得はしていたが、シアだけは不服そうで怒こっているような顔をしていた。
アンはリストに起きた事を聞く度に、小さな身体を震わせ心配していた。
特に、ホルンベアと竜に出会った時話しをする中で声まで出て本気で心配していた。
「と、これで森に入ってから全部です」
「先程も言いましたがリクさんが怪我するなんては思ってはいません。リストも怪我せず無事に帰って来たので良かったんです、これもバカな事を仕出かしたアンが悪いですから。ですが、リクさんでも勝てない竜に遭遇して、しかも温厚で優しい竜だったからまだしも、好戦的な竜だったらどうしてたんですが?!。リストを守りながら戦うなんて出来ず、二人してあの世に逝きたかっですか!」
「.....」
シアの言葉は正論過ぎて聞く耳が痛かった、あの時寝てる竜がグリューンだったから良かったんだ。
それが違う竜だったら、二人してあの世に飛びだって逝たかもしれない。
それもこれも、確認を怠った自分がいけなかった。
「シアの言う通りですね、危険に晒さなくっても良かったリストを危険に追いやったのも僕です.....」
「それは違うぜ!」
ドンとドアを勢い良く開けて中にズカズカと入ってくる、話の件の人物リストだった。
「俺が頼んで森の奥まで行ったんだ。それにグリューンに見付かったのも、俺が枝を踏んで音を立てたの悪かったし。リクはそんな俺を背に隠すように身を呈して庇ってくれてたんだ!」
リストは自分が起こした出来事を悔いながら話し、そんな俺を必死に守ってくれてたんだと、シアとアンに聞かせる。
「....リスト良い事言ってるのに、何で泣いてるの貴方は?」
「......バカスト」
二人の言う通りに勢い良く入って語ったリストだが、その純粋な瞳は濡れ頬には涙の後が残されていた。
「ばっ、バカ言ってんじゃねぇ泣いてなんか無いし!、これは....井戸の水を被っただけだし!」
素直じゃないなぁ~。
「あっそ、まぁそんなのは良いからリストも座りなさい」
「あっそって.....分かりました座ります~!、座れば良いだろう!」
シアに適当にあしらわれて、投げ槍な態度を取りながら陸の横に座り、アンと眼が合い笑い掛けるが、当の本人は直ぐに逸らして下を向いてしまった。
そんなの態度にリストはショックを受け、陸に純粋な眼差しを向け助けを求めた。
「ほら、渡す物が有るでしょう」
陸の言葉を聞きアンを探していた目的を思い出し、グリューンから貰った綺麗な緑鱗をアンの前に差し出す。
「アン、ごめんな。花は見付けたんだけどな、大事な物だって言ってから貰ってこれなかったんだ。けどな、代わりにってこれを貰ったんだ、でも次は必ず違う花を見付けてくるから!。だから許して欲しい....な....ダメか?」
下を向いていたアンはリストの声に耳を傾け、前に出された緑鱗に手を取って大事そうに抱きしめた。
「ううん、私も....リストに言わないといけないの....。リストを困らせたかったから嘘を付いてたの、森の奥って言えば簡単には行けないって思ったから....ごめんなさい。そして....」
「うん?」
アンはテーブルに身を乗り出し、リストの耳元に口を近付かせ言葉の続きを言う。
『...そんな、リストが大好き』
アンはリストだけに聴こえる小声で、想いを告げてリストの頬っぺに軽くキスをした。
リストも突然の言葉と同時に、頬っぺに感じた柔らかい感触に遅れながら気付き。
頭から湯気が出る程の煙が吹き出した化のような、顔を赤く染め上げ椅子を後ろにひっくり返し気絶してしまった。
どうやら理解が追い付けず思考停止してしまった。
そんな二人を横から見ていて陸とシアは、むず痒さ感じながら驚嘆していた。
二人が互いに"好き"同志なのは、アンの想い切った行動には度肝う抜いてしまった。
「はぁ~~取り敢えずリストは奥に寝かせてきます、アン起きるまで看病して上げなさい」
重い溜息をしては固まったままのリストを脇に抱える、その動作にはまるでリストの重さは感じられず軽々持ち上げていた。
「......」
看病を頼まれたアンは、先程の自分の大胆な行動に赤面しながら頷いていた。
奥のベットに寝かせる為に、リストを脇抱えたシアは歩き。
その後ろ赤面のアンが着いて行く、一人残された陸はと言うと....。
取り敢えず明日は問答無用で厳しくしよう。
徹底的に厳しく鍛えようと、そんな大人げない事を考えていた。
僕も舞花にされたいなんて一切考えてはいないけど、将来的に先の未来の僕に任せる事にした...頑張れ僕。
「一人で笑って、どうしたんですか?」
ベットに寝かせてきたシアが戻ってきては、椅子に座ったまま頬を緩めていた陸の姿を見て声を掛ける。
「いや、遅かれ早かれ二人は繋がるって思ってたけど。まさか、こうも早いとは思ってなかったですよ」
「産まれた時から一緒でしたし、村での唯一の子供達ですからね。あっ、そうだったリクさんにはまだ言いたい事が有りますからね」
リストと介入で途切れた話しの続きをすると、座っていた椅子に座り直した。
まだ解放されないと諦め陸は素直に頷き、説教の続きが始まった。
それから三十分程でシアのお怒りは静まり、陸は床で横になり寝ていた。
否、頭には見て分かる程のタンコブが出来ていた、言いたい事が言い終わり最後にこれで許しますと言って。
拳を握って陸の頭に勢い良く降り下ろした、シアが村一番の怪力だと分かっていても、鍛えて強くなってる自分なら大丈夫だと安心して。
その行為を甘んじて受け入れたのが間違いだった、受けた後で分かったのは改心一撃だった。
改めて僕は知らない所で、上には上がいるんだと思い知らされた。
当の本人は「夕食の準備をしないと」と言って台所に立ち、四人分の食事を作っていた。
渡した食材も前からあった者を使い、シアは次々と下拵えや味付け等を済ましていく。
昼にご馳走になった時にも思ったが、やっぱりシアは慣れてるだけあって手際が良いな。
横になりながらそんなの感想を抱き、よろよろと起き上がり椅子に座り治すが。
頭はテーブルに附せたままにした、ズキズキと痛むタンコブに袋収納から取り出したヒール草を煎じた物を布に着けては。
手で抑えながらタンコブの場所に貼り、痛みを柔らかせた。
元々は回復ポーションの原料になる物らしく、ヒール草だけども簡易の痛み止めになる。
それを今回は陸は使用して痛みは引かせていた。
......うん?、大分痛く無くなってきたかな?。
「そんなに痛かったですか?」
殆ど終わらせ手が空いたシアがそう訪ねてきた。
「.....これは、ホルンベアとの戦いで痛めた所にやってるだけですから。知らない内の怪我してたみたいで.....」
間を取って有りそうで無い話をすると、シアは「そうなんですか?」と頭を傾げる。
「私に取って軽めに叩いたので、これで痛がったら大袈裟だなって思ったんですよ。リクさんも戦うのは良いですけど、怪我とかには気を付けて下さいね」
本人は至って普通にそう言ったが、陸は冷汗が出てきたが平然と態度には出さないでいた。
あれで軽め..か...全力だったら終わってたのかな....。
陸に取ってアレは改心の一撃だったのに、シアに取っては軽めの部分に入り。
全力の一撃がどんだけなのか気にもなったが、今だけは何も言わず笑顔を浮かべる。
上手く笑えてるのかな?......。
「もうすぐで出来ますから、二人呼んで来てもらって良いですか?」
「了解....」
ヒール草の痛み止め布を取り、二人がいる部屋に向かいご飯が出来た事を告げると仲良く二人して部屋から出てきた。
ただ、ほんのりと赤い頬何処かもじもじとした動き、互いに関係が変わり初々しい態度をしていた。
「もう、大丈夫なのかリスト?」
「お、おう...もう大丈夫だぜリク!」
「そうか.....」
「......」
もどかしい空気を感じながら三人は食事の準備を始める、シアが作った料理が次々とテーブルに運んでは並べていく。
陸の隣をシアが座り、その対面にリストとアンが座る。
食事の準備が終わり恒例の食事の挨拶すると、リストとアンは不思議そうにしていた。
シアは知っていたので僕と同様に「頂きます」を言い、改めて二人にも説明すると早速再度やってくれた。
その後は楽しい食事を四人で過ごし、雑談を交わして皆で笑いあう有意義な一日となり。
リストとアンは其々の家に帰り、また明日の朝に来ると言って別れた。
「リクさんのお陰で良い一日になりました、...二日間だけですがリストをお願いします」
二人を見送りながらシアがそう言い、僕はただ頷きだけで了承した。
二人して食べた食器等を片付け、シアに案内された部屋で自分の身体の汚れを取る為に。
暖めた水を桶を使い身体を拭っては綺麗にしてから、今日の出来事を振り返りながらベットの中で眠りについた.....。
............
........
......
「リク!、起きろーー!」
「グヘッ.......!」
ベッドの中でグッスリ寝ていた陸の腹に、リストが飛び乗り強制的に起こされる。
「こら!、バカスト。リクさんに何してるのよ!」
「いたっ!」
腹の上に乗ってるリストの背を叩き注意するアン、それよりも速く退いて欲しいと思う陸だった。
「ふ、二人共お...はよう。朝から速いねどうしたの?」
朝日が登り始めた外を覗きながらそう言うと、リストは朝から満面な笑みを浮かべ、
「リク!、修行だ!。今日から二日間教えてくれるだろ?!」
腹の上で跳び跳ね、その衝撃が諸に陸に襲い掛かる中。
両手てでリストの脇を掴み、横に降ろしてベットから上半身だけを起き上がる。
「朝から元気が良いなリストは....、朝ご飯食べたら始めるか」
「朝ごはんなら食べたぜ!」
いや、僕が食べてないだけどな.....。
「バカスト!、リクさんが食べてないでしょう!」
アンが僕の心の声を代弁して、リストの頭を叩き突っ込んでいた。
「まぁまぁ、リストは家の手伝いとか大丈夫なのか?。昨日は畑の手伝いしてたんだよね?」
「あ?、それなら大丈夫だぜ。全部、起きてから直ぐに終わらせてきたよ!」
胸を張って自信満々に言うリストに、僕はチラッと横目でアンを見ると呆れながら頷いていた。
「リクさん。リストは本気で終わらせてます、普段からそうしてくれたら良いのに.....」
「だってさリスト....どうするの?」
「き、気が向いたらな.....。さぁーてとリクが食べ終わるまで、俺は魔力纏いの練習してくる!」
と、ドアから出て部屋から逃げていった。
「リクさん。朝からリストが御迷惑お掛けしました、私もこれで失礼します」
アンも丁寧にそう言って部屋から出ていった、一人残された僕は日が登った陽光を浴びながら。
背一杯背伸びして気分をスッキリし、身支度を済ませ部屋から出た。
お腹を空かせる良い匂いに気付き、それに釣られて歩くと、シアが朝食の準備をしていた。
「おはようシア、朝から美味しそうだね」
「おはようございますリクさん、もうすぐで出来ますから。それと、朝から凄かったですね」
朝から賑やかな声を聞いていたシアは、微笑しながら朝食を作っていた。
「あんな起こされた方は初めてですよ、後で仕返ししますけどね」
「まぁ~それは怖いですね、リストも悪気は無かったと思うから優しくして下さいね」
「....ハッハハハ善処します」
少し話しながら二人して朝食の準備を終える、
「「頂きます」」
と、言って朝食に手を着けて食べていく。
パンを千切っては口に放り込み、野菜が沢山入ったスープを一口飲む。
味も良く瞬まに完食し、お代わりを頂き朝から腹一杯になった。
「ごちそうさま、美味しかったよシア」
「どういたしまして、フフっ....二人共も待つ事が出来ないみたい」
シアの視線の先を見ると窓から覗く二人の顔があった、「見つかった」と聞こえ頭を引っ込める二人。
見つかったって、何も怒られる訳じゃないだが?。
「本当に待てないみたい等で、そろそろ行ってきますね」
「はい、いってらしゃい」
ドアに手を掛けてシアに声を掛けると、そう返ってきた。
こうして、オゲタ村での二日間が始まる。




