28話 手紙
魔国サーヒスの和平条約を結んだ記念すべき日から、一週間の時間を費やしヘルズ軍は自国に帰っていた。
門をくぐり抜けると、家の窓や道端に民が大勢いた。
花弁や歓声が舞い、外に出征していた兵士達が帰って来た事に凱旋していた。
ただ、今回の魔国との会合を民達は知らない事に兵士達は心を痛め、歩を城に向けて進める。
これも事前にサラは兵士達に伝えていた、もし、民に会合の事を伝え成立しなかった時を考えて。
サラは民には伏せていた、そして魔国との会合は上手くいき数日の内には国中に報せるつもりでいる。
「....それでも、民を欺いた事には変わりはありませんね」
王族が乗ってると分かる程の豪華な馬車の中、サラは窓から見える自国の民衆に呟いていた。
「良いのではないのか、変に期待させるよりは結果を知らせ大事な人達が帰ってくる。その過程が何であれこの者達の笑顔を見られる、これもサラの王としての決断がそうさせたのだ」
馬車に相席していたもう一人が、サラに向けて言葉を紡ぐ。
「そうですね、民の笑顔を見られるならこの判断も間違ってはないのかも知れませんね....」
サラはもう一度窓から見える民衆の表情を見て、自分が決断した判断がこの結果を導いたのだと頭で理解し受け入れた。
それ以降、馬車での会話は無くゆっくりと大通りを進む。
城門をくぐり抜け城の入ると馬車は止まり、扉をノックする音がなる。
「サラ様、御城にお着きしました」
扉越しに御礼を言うと、馬車の回りを固めていた騎士の一人が扉を開ける。
サラは中にいる一人に声を掛ける。
「では、ベノム参りましょうか」
「サラ、宜しく頼む」
サラが先に降りると、其処を待っていたかのように騎士達が並び出迎えてくれた。
その中を一人の男が鎧に身を包み此方に向かってくる、それはヘルズ国の騎士団長ギース・スプレイだった。
サラの前まで来ると最敬礼を取り、数秒してから頭を上げる。
「女王陛下。この度はおめでとうございます、魔国と和平条約を」
「流石ですねギース、もうお耳に入ってるのですか?」
「いえ違います、こうして陛下と兵士達が無事なのがその証拠です。......それで陛下、後ろの御仁は?」
ギースは国まで無事に戻ってきた知り、魔国との和平条約が結べたのだと悟った。
そもそも破談など考えず、必ず成立すると思っていた。
女王陛下の後ろ佇んでいる魔族を見て、何者なのかと暗に含まれていた。
「この方は魔国サーヒスの十将の一人、ベノムクロウラーです。この度は友好関係を築く為に、国まで来ていただきました」
サラは手でベノムを指して、どういった人物なのか紹介する。
ギースはそれを聞き、ベノムの前まで歩き手を差し述べる。
「ベノム・クロウラー殿。今日はようこそヘルズ国え、自分は騎士団長ギース・スプレイだ。国に滞在してる間は宜しく頼みます」
「サラから聞いたと思うが、我はベノム・クロウラー。この度は世話になるな、ギース・スプレイ。それとベノムと呼んでくれ」
差し出された手を握り返して離す、そしてギースはニヤと笑みを浮かべた。
「なら俺の事もギースで良いぜ、それでよ話が変わるだけどよ一度手合わせ出来ないか?」
ギースは魔国サーヒス十将の噂を耳にしていた、そしてベノム・クロウラーと言う名も。
それが目の前にいて、今すぐにその噂の強さを知りたかった。
「......良かろう、一度だけ手合わせをお願いしよう」
ベノムはギースの瞳を見て了承する、強者を求める姿勢を気に入って。
だが、その会話を聞いていたサラは待ったを掛ける。
「ギース!、一体何を言ってるのですか!。今回、ベノムは魔国の使者として来てるですよ?!。ベノムもそうです!、やる事を終えてからそうゆう事をしてください!」
「だ、そうだなギース。時間が出来たら我から向かう」
「了解だベノム、俺は基本的に訓練場に居るから待ってるぜ」
ギースとベノム軽く拳を合わせる、その光景をサラは冷えた眼差しで見ていた。
これだから殿方は.....。
そんな男だけしか分からない友情に、サラはそんな感想しか抱けなかった。
「それで....ギース、私が留守の間に何か変わった事は有りますか?」
「そんな眼で見ないで下さい陛下。留守の間は特に変わった事は御座いません、前国王も大人しく部屋で籠っており。勇者様方も特に御座いません」
先程とまでの素の口調を正し、留守の間の報告を聞く。
「それではギース、長旅で疲れている皆に英気を休ませる為に酒や食事を与えてください。それと、ベノムを客間までご案内して上げて殿方同士の方が宜しいでしょうから....」
「確かに拝命慎んでお受け致します」
騎士団長ギース・スプレイとして、女王陛下に最敬礼する。
「じゃ、この場を任せました。私は自室に一度戻ります、何かあったら報せてください」
それだけを言ってサラは早足で城の自室に向かう、その背中をギースとベノムは見送っていた。
「どうよ、アレが内のお姫さんよ。この半年で王様ぽっくなちゃって....」
ギースは暖かな眼差しで、城の中に消えていったサラを見てベノムに問い掛けていた。
「良き王に恵まれたな、民を想い民と共に歩む王なら国は平和であろう」
ベノムはサラの気性と器を知り、王らしくない王で有りそれ故に民には慕われていると感じた。
その事をそのままギースに伝えると、ギースは笑みを浮かべ「そうかそうか」と喜びを露にする。
「じゃ、とりあえずはベノムを客間まで案内するか。その後どうよ一緒に?、今日は特にもうやることないだろう?」
クイッと何かを口元で傾ける動作をし、ベノム薄く笑い断った。
「残念ながらこの後はやる事が沢山だ、またの機会に楽しみにしとく」
「そうか....なら良いさ、後手合わせ件忘れるなよ?」
「分かっている、時間が出来たら訓練場に向かおう」
ギースは短く返事し近くに居た騎士達に英気を養う件を伝え、自分はベノムと共に城に入り客間まで案内する。
...................
............
.....
サラ達が国に着く1日前、陸は道中の途中で一人だけ別れると森の中を颯爽と駆け抜けていた。
目的の場所まで正規の道ルートで行けば四日は掛かる所を、森を突っ切る事で大幅に時間を省略出来ていた。
それでも森を抜けきるのに二日は掛かってしまうので、何処かで野宿する事にはなってしまう。
「グギャグャーーー!」
森を駆け抜ける中、緑肌の醜悪な顔をしたゴブリンと呼ばれる魔物。
自分の方に向かってくる影に気付き声を上げようとしたが、陸は走り際に聖剣ルクスを抜きゴブリンの首を落とし絶命させる。
聖剣ルクスに着いた血を綺麗に抜くって、その場に残る亡骸から魔石と呼ばれる、魔力が固まったビー玉サイズの塊を取り出し。
初級魔法『ファイヤーボール 』をぶつける、当たった瞬間から直ぐ様燃え上がり。
森に燃え移る等が完全に無いのを確認してから、陸は再び駆け出す。
一匹って所を見るとハグれかな?、もしかしたら巣でも有るといけないし。
有るだったら討伐しとかないとな、見つけ次第討伐対象だしね....。
陸は進行方向を変え万が一にもと考え、ゴブリンが好みそうな場所を探しだす。
湿気でジメジメしたり、隠れる場所が多い岩肌や洞窟等の付近で姿を発見される。
そんな情報を思い出しながら、付近の森で洞窟や隠れる場所等を探していくが。
姿や声もしない事から、一匹だけのハグれゴブリンだと分かり。
目的地えと足を向け駆け出す、ステータスのお陰か疲れは感じ無いが喉の渇きはあった。
それも結構な時間を走ってるのか、太陽の傾きで現に夕刻だと分かった。
山での活動も半年前の体たらくを身に染めてから、山での動き方や野宿が出来るようにサバイバル術を身に着けた。
その経験を生かして川を見つけ、そこから少しした見通しが良さそうな場所を陣取り。
夜を明かす為の野宿の準備を初める、枯れ枝を広い集め一ヶ所に纏めて。
腰に着けていた袋収納から今晩の晩飯となる、取れ立て野兎の肉と香草に野菜を少しを取り出す。
下拵えとして肉の臭みを香草で取り除き、野菜も食べやすいように一口サイズにし何本か作る。
それを順番に太めの枝を刺し串刺し風にし、集めた枯れ枝に火力を弱めた火魔法で点火する。
火が当たりそうな位置で串刺しにした奴を固定して、焼き上がるまで丁寧に当てる場所を変えて焼いていく。
焼いてる間に先程見つけた川から汲んだ水を、渇いた喉に一気に流し込んでいく。
「.....うっ..んっ.....ぷはっ~ーー生き返る~!、そろそろ良さそうかな?」
喉から胃に入っていく冷たい水の感触を感じながら、肉に刷り込ませた香草を良い匂いに鼻腔が反応する。
程よく焼けた串焼き風を手に取り、口に目一杯頬張る。
「ほっ..ほ....熱っ..つっ...!!」
焼きやても有り口の中で冷ましてから噛むと、舌に広がる肉汁と肉の弾力、見た目は人参のような野菜がほんのり甘く。
絶妙にマッチし瞬く間に串焼き風は無くなっていき、水を飲み次の串焼き風に手を伸ばし、息でふぅふぅと吹き掛けて冷ましてから口に含み。
食べ終わる頃には辺りは静けさを増し、木を背に腰掛け聖剣ルクスを抱き瞼を下ろす。
視覚情報を防ぐ事で鮮明に音を聞き分け、土と森特有の匂いを感じ。
周りに魔物など危険も無く、何か有れば直ぐに起きれるように浅く眠るつもりで意識を手放す。
人が睡眠を意識を持ってコントロールできる筈が無く、出来るとしたら長年の経験と訓練によって出来るだろう。
が、一人で野宿する陸がこうして眠りにつくのも、聖剣ルクスが有る為に安心してる事も点あった。
近くに何かが迫れば聖剣ルクスは、陸を呼び起こし眠りから強制的に覚ます。
聖剣ルクスのお陰で陸は、一人での野宿が可能であり、普通なら一人での野宿は危険極まりない。
気配を消すのが上手い魔物や、人を襲うのが生業の盗賊であれば一人など格好の獲物でもある。
陸にとって聖剣ルクスは相棒であり、自分の中での無くてはならない存在をしていた。
その日は何事もなく太陽が登り、森が日に照らされていく。
寝ている顔にも日は当たり、陸はうっすらと瞼を上げて暫くは呆然としていた。
その状態から数秒してから意識がハッキリとし、抱いていた聖剣ルクスを片手に持ち、軽く背伸びし気分を変える。
また、今日も森を駆ける為に陸は川に行き、冷たい水で顔を洗い飲み水を水袋に入れ袋収納に収納する。
最後に昨日使った焚き火の燃えカスを地面に埋め、目的地となる方角を確認して駆け出す。
朝飯は木に実ってた何かの果物を一つを見つけ、それを走りながら食べる。
林檎のように赤く、みずみずしくってさっぱりとした物だった。
果実を一つ胃に納めてからは、魔物には遭遇せず昼前には森を抜けていた。
目的地であった小さな村を眼で捉えて、駆けていた足を止めて歩き出す。
意外と速く着いたな....。
予定していたのより速く着いた事に、じゃかだが驚きながら入り口から村の中に入っていく。
村の中央の井戸で、水を汲んでいる知人を見つけ声を掛ける。
「お久しぶりですねシア、元気にしてましたか?」
「はい?、ってリクさん!...えっ?..ど、どうして....きゃ!....」
手入れが行き届いた茶髪の二本のオサゲ、大人しそうか雰囲気を持って意外と力持ちな少女。
半年前に少しだけ世話になった、オゲタ村の村長の孫シア。
声を掛けれた少女は声の主を見て、その場から飛び退き様に足を滑らせ井戸に落ちようとしていた。
陸は直ぐ様に落ちようとしてるシアの手を掴み、自分の方に引き寄せるが。
それが抱き着いた形となってしまった、陸はその事を気にせず少女の顔を覗き込む。
「......ふぅ~大丈夫ですかシア?、怪我とか無いですか?」
「.......」
声を掛けるが反応は無く、シアは顔を真っ赤しては陸の顔をまじまじと見詰めていた。
「シア?、顔が赤いようですが具合が悪いですか?!」
「い、いいえ!、だ、大丈夫です。....助けてくれて....あ、ありがとうございます」
体が密着していた事にシアは気付き、直ぐ様距離を取ってから乱れた服装を正し。
助けてくれた陸に感謝の念を伝えると、陸は申し訳なさそうにしていた。
「感謝されるような事じゃないよ、それも僕が急に声を掛けた姓でこうなったわけだし。此方が謝らないといけないから.....」
「それは違います!。私が驚いて足を滑らせたのいけないのであって、リクさんの姓じゃないですよ。鈍臭い私が全部いけないですよ!」
「それこそ違いますよ!。井戸でシアの姿を見つけて声を掛けた、元々の始まりが元凶だから僕がいけないです!」
「「.......」」
どちらにも非が有ると主張し合い、どちらも譲る気配も無く二人は無言となり笑い出す。
「....ふふっ、止めましょうかこんなで言い合いになってもしょうがないですから」
「そうだね、....それよりもシアは元気そうで良かったよ」
「最後にあったのは半年前ですもんね。見ての通り元気に過ごしてますし、人見知りもあんまりしなくなりましたね。村の人達も、元気にやってますよ。それで...リクさんは今日はどうしたんですか?」
シアは近々あった事を報告すると、陸がオゲタ村に居る事に疑念を抱いた。
「村長のヒサさんに用が合って、ヒサさんと少しだけ話せるかな?」
陸がオゲタ村の村長ヒサの事を訪ねると、明るかったシアの表情に影が差す。
暫くの沈黙の後、シアは意を決心したのか顔を上げて口を開く。
「.....リクさんに渡したい物が有るので、一緒に家まで来て貰えますか?」
真剣な表情に陸は頷き、渡したい物が有ると言う事で家まで後ろを着いて行くと。
村の中で一つだけ大きさが違う木家に近付くと、シアは扉を開けて中に入っていく。
陸はこの家に見覚えがあった、ベノムとの戦いとは呼ばない児戯に負けて意識を失った後。
この家で怪我の看病してもらった場所だった。
中からシアが手招きするので、陸は小声で失礼しますと声を掛けてから中に入室する。
「今から取ってくるので、椅子に座って待っててください」
そのままシアは奥に消えていき、陸は言われた通りに椅子に座り待つ事にした。
奥からガサゴソと何かを開ける音をしてから、奥に消えたシアが手に何かを持って戻ってくる。
「お待たせしました。これは、お婆ちゃんがリクさんに宛てた物だと思います?」
綺麗に蝋栓された手紙をテーブルに置き。陸はシアの曖昧な言いに違和感を感じた。
「思う?」
「はい、リクさんが来る二週間前に息を引き取りました、その前日にお婆ちゃんは、二通の手紙を私に渡して「近い内にわしゃを訪ねる者が来たら、蝋栓された手紙を渡してくれ」と言ってました。そして今日、お婆ちゃんの遺言通りに訪ね来たのがリクさんなんです」
村長ヒサが亡くなった事を聞いた陸は、僅かに体が揺れ掛けるのを堪えた。
一回だけしか会ってない知人でも、その時に世話になった数は知れず陸は悲しくもあった。
「...そ、そうですか....ヒサさんは亡くなってしまったんですね。後でお墓参りに行っても良いですか?」
「後で案内しますね。きっと、お婆ちゃんも喜んでくれると思いますから....」
話して間にお婆ちゃんとの想い出を振り返り、そう、涙ぐみながら笑顔でシアは言った。
陸はシアが落ち着くまで静かに見守り、シアはその事に気付き慌てて涙眼を手で抜くった。
「もう、大丈夫ですから......」
少し弱々し声だったが、陸はシアの言を信じて話の続きをする。
「ヒサさんの遺言通りに最初に訪ねたのが僕だから、この手紙は僕宛だって思ったって事ですよね?」
「そうですね?、二通の一つはリクさんで間違えはないと思います」
「二通のもう一つは誰なんですか?」
「最後の一つは誰に宛てたのかは分からないです、見て貰えれば速いですね.....」
二通目も持っていたのか、シアは懐から赤い斑模様が点々と出来てる開封済みの手紙を取り出し。
綺麗な蝋栓された手紙の横にそっと置く。
「これって.....」
陸は赤い斑模様が何なのかを瞬時に知った、シアもそれが何なのかを分かっていた。
「ご想像通りです、これはお婆ちゃんの血で書かれてます」
陸は赤い斑模様の手紙を手に取り、開封された紙を開き書かれた文面を見て驚愕する。
村長ヒサの血で書かれた文面には、ただ短くこう書かれていた、
『お救いくだされ....どうかお救いくだされ』
先の分からない危機に怯えた内容、切実な願いで自身の血で書かれた文面。
誰に宛てたのかさえ分からない内容、陸はそれを丁寧にしまいテーブルに置いた。
そして同時に蝋栓された手紙には、何を書かれているのか不安さえ思った。
重い溜息をついて、陸は何故ヒサさんがコレを書いたのかを疑問に思った。
ただ、考えられるとしたら占いと称した予言。
けど、あの時ヒサは、何を話したのか覚えてないと言っていた。
「一つ聞いても良いですか?、ヒサさんの占いは自分じゃ知る事が出来ないですよね?」
突然の質問にシアは慌てたが、直ぐに平静を取り戻して知っている事を話す。
「お婆ちゃんの占いは一人じゃ出来ませんが、出来ない訳じゃないんですよ?。占った結果を覚えてないだけで、やろうとすれば出来た筈です?」
シアの話を聞いて陸は、自分が考えていた事があってる事に結論付けた。
事前に誰かが訪ねてくる事や、赤い手紙の内容からして第三者がその場にいたと言うことに。
占い終わった後に第三者の口から、結果を聞きヒサは二通の手紙を書いたって事になる。
ただ、何故血で書いたのかは本人しか知り得ず陸には分かる筈がなかった。
「シア。ヒサさんは占いの結果で二通を書き、だけど、その場にはもう一人占いの結果を知っている人物がいたって事になりますよね?」
「その線は私も考えましたが、お婆ちゃんが生きてた二週間前までは、村の人達は近づいてないですよ誰一人も?」
誰かが嘘を付いてる可能性も有るし、秘密にしてくれって約束された人がいたかも知れない?。
「嘘を付いてる人とか、秘密にってされた人とかは居なかった?」
シアは首を横に降って否定する。
「四ヶ月前からお婆ちゃんは、寝床に寝たっきりなって。四六時中私が面倒を見てましたから、その間は本当に誰も来てないですよ」
それを聞いて陸は振り出しに戻って考え出す。
じゃ、どうやってヒサさんは占いの結果を知ったんだ?。
四ヶ月前から寝床で寝たっきりで、四六時中もシアが付きっきりで世話もしていて。
その間、誰一人来訪者はいなく、シアの眼を盗んでこっそり近付く何て考えられるし.....。
陸は考えが纏まらず頭を掻き、息を吐き出し蝋栓された手紙を視界に捉えた。
手を伸ばして蝋栓された手紙を手に取っては、今だに答えが出ない考えを一時的に置いて、手紙を読もうとしていた。
読む前にシアに一言断りを入れると、顔を縦に頷き了承した。
短刀を取り出して蝋栓された手紙の隙間入れ、綺麗に外して中に入ってる紙を取り出し開くと二枚入っていた。
一枚目の紙に書かれた文面を視ていくと、答えが出なかった事に答えが手紙には書かれていた。
そして、同時にヒサが亡くった原因も分かってしまった。
それをシアに渡すと、食い入るように眺め信じられないと言った表情をし。
大粒の涙をポロポロと流しては、一枚目の紙を大事そうに抱える。
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これを読んでいるって事は、わしゃは既に亡くなっている筈じゃ。
寝床で寝たっきりのわしゃが、どうやって知ったのか考えているだろうと思うが。
残り少ない寿命を使う事で、わしゃ一人でも知る事が出来るのだよ。
だが、その結果として残り少ない寿命が尽き眠るように息を引き取るじゃろう。
そんな老い先短いわしゃは、少しでも先の事を占う事にした。
村の事や、初めて会った純粋で芯がある青年をな。
それを最後の力を振り絞って手紙に納めた、少しでも力に慣れればわしゃは本望じゃが。
一つだけ悔いが有るとすれば、可愛い孫娘シアを残して逝ってしまうことじゃな。
わしゃの血で書かれた手紙は、離見離さず大事に持たせて上げて欲しい。
それは何時の日か、必ず魔の手から守ってくれる日が来るじゃろう。
シアよ元気に過ごして送れ、嫁いで幸せに生きて送れ。
コレが、最後にわしゃから言える最後の言葉となろう。
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と、一枚目には長々と書かれていた。
残された寿命を使って占い、それによって知った結果を書く前に。
息を引き取る前に、最後の後悔としてシアに宛てられた内容だった。
赤い斑模様の手紙は、有る意味御守りとしてシアに持たせるとも書かれていたが。
何故、その事をシアに伝えてなかったのかを疑念に思った。
そして、二枚目には占いの結果が記されているのだと思い。
二枚目に眼を通していく、ただ、それは陸の事を書かれていたが信じられない内容だった。
ヒサの占いの結果は陸自身が身を持って知っているが、これは他のクラスメイト達にも知る必要があるが。
「....そんな」
弱細くそんな声が漏れていた、手にしていた二枚目を床に落とし。
顔に手を当てて伝えるべきか悩んだ、死んだ友の遺体が消えた事にはあの日皆が驚いたが。
二枚目の占いが事実なら、喜ぶべきだろうけど陸一人では答えなんか出なかった.....。




