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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
一章 始まりと絶望
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26話 運命の別れ道



座ったままに威厳に満ち、高貴と表して良いのか迷うが自分よりも遥か高みにひと達。


ハッハハハ.....本で読んだ神様だよ...、今頃になって紹介とか遅すぎるでしょう...。


乾いた笑い声を内心でしながら、どうせ心の声は聴かれてると思いながら、ひれ伏した状態でもう一度顔を上げた。


「あの~?、質問をしても宜しいでしょうか?....ウッ...」


手を挙げながら真樹は恐る恐る声を出したが、また勝手に喋った事にテミストが一睨みする。

その事に真樹は、思わず声が出て挙げた手を下げた。


「テミスト~そう睨まないの~、資格者も知りたいだから説明する義務が有るじゃなぃ~」


右隣のビキが自身の爪を見ながら、テミストを宥めて真樹の考えを読み取る、それは他の四柱も同様だった。


「.....ビキの言う通りだな、で、真樹は何が知りたい」


「父さん...百年前の勇者古里 初が、何故?、俺を転神神殿に行けと言ったのか御存知ですか?!」


真樹はあの日父さんに行けと言われた、理由を聞く前に逝ってしまい聞く事が叶わなくなった。

テミストが答えようと口を開き掛けたが、それよりも速くモルータが答えた。


「それに着いては儂が答えよう、テミストすまんが此処は儂に譲ってくれかのぅ」


「構わん好きにしろ」


テミストは短く返答してから、椅子に深く座り直した。

その動作は人に近く、真樹は不思議に思うが今はモルータの話しに耳を傾ける。

そして、モルータの話しを聞き終わり真樹は頭の中で整理していた。


元々は父さんが転神神殿に来る予定だったが、ヘルズ国で勇者召喚されていた息子に出会ったが。

その時には助からない致命傷を追い、自分の死期を悟り、魔王殺しの勇者の血を真樹に譲ったと。

神殿での目的だった"転神"についても聴かされた、それは異世界人が現世で生きた神に生まれ変わるだと。


「それで、生まれ変わってどうなるですか?」


人から神に生まれ変わる、真樹には理解できなかった。

それなら異世界ウェルムは、此処にいる五柱の他にまだ沢山とはいかないが、異世界人は神になってる筈だ。

だけど、それはヘルズ国でも分かったが、創造神メッセと五柱以外の神の名前は一切聞いてない。


「生まれ変わった資格得し者は、現世で五柱の役割の補助をする。例えば儂の死と生なら、死者の霊を導いたり、新しい命として赤子として誕生する。その案内が転神した者達の役割と言った感じかのぅ」


うん?.......要は今もウェルムじゃ目に見えないだけで、転神した資格者が大勢いて。

五柱の役割の補助していて、そうなると得と言うか何も感じられないだけど?。


内心で思った事を神であるモルータは読み取り、「確かにそうだじゃのぅ」と言って真樹を肯定する。


「ウェルムじゃ、生きて元の世界に帰る方法が無いのだよ(・・・・・)。だが、此処じゃない世界に行けるとしたらどうじゃ」


「此処じゃない世界....それって自分が居た世界に帰れるって事ですか!、でも帰っても人の目に映らないじゃ意味が無いじゃ....」


転神すれば元の世界に帰れる事に希望を持つが、姿を見せたい人達には見えない事に落胆する。

モルータが言った帰れる方法が無い事に、真樹は一つの疑問が生まれた。


「今は生きて帰れないのですか?。百年前父さんは、母さんと俺を元の世界に帰したと日記にあったんですが?」


真樹のその発言に、五柱の顔を歪ませた最もテミストが一番に恐ろしかった。

テミストを見た瞬間に、真樹は死んでる身なのに更に死を覚悟した。


「真樹よ夢で儂が言った言葉を覚えてるか、あの時は言えなかったが。それは可笑しな話なのだよ、我等が主神創造神メッセ様は、世界ウェルム御作りになってから。五柱と生命を作っては、今も世界の中心で眠って居られるのだよ.....」


「眠ってる筈の創造神メッセ様が、百年前に父さんの前に出てくる筈が無いって事ですか....嘘ですよね?。....日記には創造神メッセに会えたと書いてました、それで母さんと俺が帰る代わりに父さんは、創造神メッセから条件を突き付けられて残ったですよ?!」


夢で語ってくれなかった事に、真樹はどうして良いのか分からなかった。

モルータも他の四柱も嘘は言ってなかった、それは雰囲気で悟れた。


「それが可笑しいのだよ。創造神メッセ様が元の世界に帰す事が出来るのなら、一人を残して帰す必要は無い。あの方は慈悲深く、理不尽に召喚された異世界人なら条件を突き付けるなどしないで送り届けてくれる。それほどお優しいひとなのだよ」


テミストが熱く主神である創造神メッセを語る、その事に他の四柱は頷き『その通り』だと言う。

ただ、神が語る内容に真樹は怒りが湧いてきて、それほど慈悲深く優しい神なら.....。


「.....なら、異世界人を召喚する必要があるんだよ!。自分達の世界の問題を、何故関係無い人達が解決しないといけないだよ!。お前ら神は一体何をしてたんだよ!、役割さえ全うすればそれで良いのかよ!......」


「真樹!!」


止めようが無い怒りを口に出して、モルータの声で真樹は我に返る。

自分が五柱の前で、とんでもない事を口走った事に、慌てて五柱を見回すと。

モルータを除いた四柱が冷めた眼差しで、真樹を静かに睨んでいた。


「ちょーとー調子に乗りすぎじゃないかしら、罰を与えようかなぁ~」


「今回ばかしはビキに賛成だよ、罰を与えるべきだよ」


「資格得し者でも限度がある、我等さえ異世界人の召喚を止めようとしてるが。自身の罪すら認めない者が、他者を責める資格が有るのか」


三柱は真樹の身勝手な言動に、焦燥、怒り、哀れみ三神三様だった。


「出過ぎた事を言いまして、皆様を不快にさせてすみませんでした!!」


真樹は自分でも分かるほど神を怒らせたと、ひれ伏した格好を即座に止め。

日本式の誠意が込めらた謝り方をした、正座をした状態から腰を曲げ頭を下げる。

その時に両手を前で少しクロスさせる、この時重要なのが頭を地面に着けず、少し浮かせる事が大事だったと。

本で読んだ正式な土下座のやり方だと、記憶していた真樹はその通りに行動した。

それで許してもらえるかは別として、真樹は心の中でも繰り返し謝罪をしていた。


「儂からも頼む、真樹を今回だけは許してくれかのぅ。この通り心から反省しておる、だから怒りを沈めてくれんかのぅ」


モルータも真樹を許させる為に、三柱に頭を下げた。

三柱はそれに沈黙で返し、真ん中の居座ってるテミストを見る。


「「「......」」」


「たかだか人如きが、我等を語る事等知る事も出来る筈がない。それよりも転神を終わらせ、主神の名を語った愚者を探す事が優先だ」


「「「「はーい(分かったよ、御意、うむ)」」」」


テミストの刺の有る言い方に、土下座中の真樹は眉をしかめるだけで特に何も思わなかった。

此処で愚痴でも思うだけで、五柱に聴かれるのは分かっていた。


「それでは、罪臭を取り除く為に古里 真樹を二つに別つ。まず手始めに眠れ」


二つに別つって何だよ?、そう言えば善と悪って言ってたけどどうゆう意....?。


テミストが喋ってる最中に、真樹は疑問に思った事を考えてる途中で意識が無くなった。

土下座のまま目が閉じて形が崩れる、テミストが指をクイっと上に向けると。

真樹の身体が宙に浮き出し、座ってる五柱の元まで上がってくる。


「審判と輪廻司るテミストが命じる、この者を古里 真樹を悪と善に別つ。その内に眠る魂よ我が声を聞き姿を見せよ」


真樹の身体が白と黒の二色に包まれ、激しく震わせてから白と黒の二つになる。

白い方が直ぐにでも消えそうなぐらい弱く、逆に黒は強く存在感を出していた。


「やっぱりね、善の方がこのままじゃ消滅だよ。自身の悪すら、認めず受け入れないなら当たり前だよね」


「それでも~これ程の悪は、ここ数千年見たことが無いじゃないかな~」


「これは転神せず、もう一度人として生まれさせた方が良いな」


「真樹よ.....お主の身にこれ程の物を宿していたのか、すまぬ....気付いてやれず....すまない...」


四柱は二つに別れた真樹の悪と善を見て、瞬時な理解した善は今にも消滅し、己が身に抱えた罪も消され真樹とゆう存在は跡形もなく消える。

友の子供であり自分の子でもある真樹に、モルータは嘆いていた何も出来なかった事に。


ただ、テミストだけは違った、一つの魂を二つに別けたが。

善は確かに今にも消えそうだが、悪がそんな善を永続させていた。


(....この者の悪は他とは違う、これは存在その物が....許されない。それに、これは....)


みな良く聞け、役割を行使して悪から善に全てを譲渡させろ」


テミストの突然の事に四柱は驚愕する、それは善を助けると言ってるのだから。


「直ぐに始める。死と生を司るモルータの名に命じる、悪から溢れる生命力を善に....」


テミストの言を聴いて、嘆いていたモルータは即座に動き役割を行使して、命の源を善の魂に譲渡させた。

他の三柱も渋々と言った形で、悪の魂から善の魂に譲渡させていく。


「美醜と四季が司るビキが命じる、悪に刻まれてる美しく醜い記憶を称号を善に....」


「母海と父地を司るマルナが命じる、悪に相応しくない名を精神を善に....」


「英霊と闘焔を司るグゥが命じる、悪が身に付けた力を感情を善に....」


四柱がそれぞれの役割を行使して、悪が宿してる、生命力、記憶、名、精神、力、感情を全てを消えかけてる善に注ぎ込まれていく。

徐々に強く存在していた悪は黒色が薄くなり、燃え尽きた灰色と化した。

逆に善は存在感が増しって行く、一際輝きだし心臓のように脈動する。

呼吸を繰り返すよう何度も、辺りを照らしていく。


「審判と輪廻を司るテミストが命じる、眠りから目覚め人の形を取れ」


灰色の悪と光白の善の魂は、ゆっくりと地に着き人の姿を取る。

服装は同じ顔も同じだけど違うのは、横たわったまま動く事も無い人。

最初に見た時とは違い、生気に満ちて表情をし身に纏ってる雰囲気が変わったいた。

その者はゆっくりと立ち上がり、優雅に上にいる偉大な御方達に礼をする。


「ありがとうございます。何か腫れ物が取れた気分で清々しい程に気持ちが良いです、それで私は一体何をされたんでしょうか?」


「善と悪に別け、悪以外の全てを善に移した。そして此処からが本番だ、古里 真樹の転神を始める」


「口を挟む形で本当にすみませんが、転神は待って頂けませんか?」


テミストが善の真樹に転神を始めようとしたが、それを真樹は口を挟む形で止める。


「どうしたのじゃ真樹よ、転神を止める程の急用か」


「はい、モルータ様。私の中に合った筈の悪が仕出かした罪を、私は償ってからじゃないと転神に至れません。なので節続けですが、償う為に蘇らせて貰えないでしょうか?」


善の真樹は自分の中に合った悪が、死ぬ前に犯した罪を償う為に蘇る事を進言する。

それを聴いた五柱は、小声で話し合い結論する。


「良かろう、しかし、それは転神を棄権する事になるが良いか」


「はい、それでも構いません」


真っ直ぐに見下げてるテミストに、真樹は視線を外す事もなく凝視する。


「.....また、此処に来るには一から資格を集める事になり。それは長く苦行となる、途中で命を落とせば今度こそ何も無いが良いのか」


テミストは真樹を脅すような言い方をする、何故なら血の資格は永き時を生きねば成らないから。


「それでも、お願いします。自分が犯した罪を最後まで償いたいです!!」


「どうだみな、古里 真樹を生き返らせる事に賛成の者は挙手を、反対ならそのままで結構だ」


「「「「.....」」」」


「満場一致で、古里 真樹は転神の資格を剥奪し、その代わりに最後の生を与え現世に生き還らせる」


テミスト以外の四柱は、全員手を挙げて真樹の提案を許可した。


「なら行け。道なら用意してある、それを進めばお主は身体が有る場所で、目が覚めるだろう」


テミストは真樹の方を見ず、今も動かない人を見ていた。


「真樹よ。これは初から預かった天恵ギフトじゃ、今、お主に渡そう.....。しかし、これだけは覚えておくのだ、どんな場所でもお主を見守っておる...」


「これが.....父さんから預かってた物....、モルータ様ありがとうございます」


モルータの手から放たれた光、真樹の元まで降りてきて胸に吸い込まれる。

真樹は胸に入ってきた光に、胸を触りながら嬉しそうに想い絞めていた。


その後真樹は後ろに扉がある事に気付き、いつの間にか出来ていた新しい人生の扉。

真樹はもう一度上の御方達に頭を下げた。


「我が儘を言ってしまい申し訳ございません。そして御忠告をしてくださり、ありがとうございます」


そう言って深く長い御辞儀をしてから、真樹は扉に手を掛け出て行く。

その場に残された五柱と、何も無くなった人の形を取った悪だった()が残された。


「それで~テミスト~、それはどうすんの~ー」


爪を見ながら下に有る者を指し問い掛ける、テミストは顎を触りながら答える。


「抜け殻だが悪だ、なら罪人は裁かなければならない。......"地獄の門"」


人の形をした抜け殻の下から、亡者が集った門が現れ内側に開き始める。

完全に開き終わると無数の手が伸び、抜け殻を包み込むように掴み引きずり込む。

奈落の底えと消えていき、門は閉まり消えていく。


「何時見ても凄いのぅ、どれ程の罪人がいるのやら」


「それでも、あの抜け殻には驚いたよ。あんな状態になっても消滅しないだから」


「テミスト。聞かせて貰おうか、あの魂は何だったのだ」


「.....分からん、あの悪は存在その物が危険としか言えん。古里 真樹の産まれながらの体質か、世界を渡った時の障害か、神の悪戯か....だが、それも全てを善に移った」


間のある言い方をし、『神』の部分でーーーに視線をずらす。

その視線に気付けたのは、視られていたーーーだけだった。


「ふーんー。じゃ、これで"転神"は終わったのよね。自分の場所に帰るわ~」


「マルナも帰って寝るよ、じゃ次に会うのは何時かな」


やる事を終えた、ビキ、マルナの二柱は立ち上がって消える。


「我も英霊を迎えに帰す、何時かまた合間見えよう去らばだ」


「儂も帰るとするかのぅ、真樹を見守らないとなぁ」


二柱に続きグゥ、モルータ、も立ち上がり消える。

転神神殿の管理者であるテミストは、視ていた神の席を見続けていた。


「お前は一体何をしようとしてる"ーーー"、主神の名を語り、魂さえ弄び...哀れな真樹よ、信ずる()を間違えたな」


静かな怒りがテミストを覆っていた、五柱の中に創造神メッセの名を語った神がいた事に。

そして、哀れにも弄ばれた真樹に少しばかりの同情をしていた




この話で一章は終わります、数話は閑話になりますが。

それが終わると二章に突入します。

m(__)m

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