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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
一章 始まりと絶望
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25話 五柱

真樹は真っ白な道をひたすら歩きながら、何も無く何に気を付けなければならいのかを、考えながら視点を前に固定していた。


モルータ様も何に気を付けるのかとか、教えてくれても良かったのに。

こんな白い場所で真っ直ぐって言われても、何時間ぐらい歩けば良いのやら.....。


「.....はぁ~」


内心で思った事に思わず溜息が出てしまう、白い道はずっと続き終わりは有るのかさえ思う程に。

横目を降らずに、何時間も前を向き続けるのは退屈で苦痛でしかない。

それでも真樹は歩く、父さんが最後に言った神殿がここであり。

何故、父さんは自分に行けと言ったのか、真樹が知りたい答えは全部この先に有ると信じて.....。


それにしても、忌神子姫タブシビルセスの血なんか俺は取って無い筈なんだけどな?。

マラムは魔化アパリでユッカの天恵ギフトで意識が戻った訳で、絶対に忌神子姫じゃ無いし。

それなら俺は、知らない間に手に入れてたって事か?。

何処でだ?、魔王殺しの勇者の血は...父さんから、王族の血はクズ(ガース)から。

なら最後の忌神子姫の血は、一体何処で手に入れたんだろうか?。

神巫女メディウム魔化アパリ忌神子姫タブシビルセスどれも女性にしか生まれない?。

今までで会った女性だと、メイド長のアテラ、クズの娘のサラ、スターリックのスタラ、大臣専属メイドのアイ、封印されているマラム・ユッカ、多く接触したのは5人だけで?。

もっと挙げるとすれば、サラ専属メイドのメルシーとか?、勇者達を世話するメイドとか数えれば切りが無い....よ..な?。


浮かび上がった疑問に真樹は、深く長考していたがふいに掠れた声が聞こえ歩みを止める。

聞こえた声に耳を澄ませて、静かにしても先程聞こえた声は無く、『考えすぎって、幻聴が聞こえたか』と苦笑して歩を進める。


数分してから真樹はまた足を止める、先程聞こえた掠れた声がハッキリと聞こえた。


(お前は....同類だ....抗えない運命さだめが....待ってる...)


掠れ声は、何かを見つけて喜んでいるにも聞こえた。


「それは、どうゆう意味だ!?」


言われた内容に真樹は、直ぐ様声を出し問い返していた。


(殺す悦びを....お前は知っている....それは...もう抗えない...少しずつ蝕み...お前では....無く..な...る)


「お..ぃ....!」


声がする方に振り向こうと真樹は、モルータの言葉を思い出し振り向くのを止めた。


.....成る程な、コレに気を付けろとモルータ様は言ったのか。

言われてなかったなら振り向いてるところだったな、モルータ様に感謝だな......。


神モルータに感謝しながら真樹は再び歩き出す、掠れた声が振り向かせる罠だと分かれば、後は無視すれば良いのだと思いながら.....。

真っ直ぐ続く白い道に視線を固定するが、掠れた声は今も語り掛けていた。


(初めて人を殺した...肉の感触...固い骨の感触....溢れる血....全てが手に伝わる....楽しかった...殺すのは...自分の手で刈り取る命....自分の性で死んでいった命....生きる為に喰らった....暴食)


はぁ?.....。


真樹は掠れた声が、何を言ってるのかを理解できず頭に?が浮かんでいた。

聞きたくないと思うが、耳には掠れた声の言葉が届きどうしても聞いてしまう。

それでも真樹は無視を決め、我関せずの精神で歩く。


((自分の都合で....他者に....理想を...思想を...感情を...押し付けた....振り回した...他者の想いを....砕き...壊し...踏み潰した.....傲慢))


掠れた声に合わせて何処か弱々しい声が重なる、それは真樹に両耳に捉える。

無言を続け歩く真樹に、声は止める素振り無く語り掛ける。


(((何かを変える力もなく.....無力な自分....周りは自分よりも優れてる....戦える力...大切な人を守る力....何も出来ない自分.....嫉妬)))


掠れた声と弱々しい声に続いて、喜びを現してるような元気で明るい声が混じっていた。

三つの声は真樹に語り掛ける、無視を決め込んだ真樹は歩を止めて...また歩き出す。


((((奪った....想人を..家族を....愛した人を...夢も希望も...想い出も....何もかも奪い取った....強奪...意地汚く生きようとした....強欲))))


掠れた声、弱々しい声、喜びの声、そこに4つめの声が重なる。

悲しく何処までも哀しい声が、ひしひしと伝わってきた。

四つの声を聞いた真樹は足を止め、自分の思考を振り払うように頭を横に振り歩き出す。

そして四つの声にまた違う声が重なる、女性の声で声を荒げていた。


(((((美しい女達....極上で上玉....御目に掛からない流麗で可憐な女達...視姦し...発情し....手の届かない高み....それでも渇望する.....色欲)))))


.....黙れ。


((((((生きる事を望んだ....抗った...他者の願いに踊らされ....意思を破棄した...なのに結果は.....死だ...愚者で....屑で...道を踏み外す....怠惰))))))


六つめの声が重なる、熱く諦める事を知らない声で熱血さを感じられた。


黙れ、黙れ。黙れ、黙れ。


(((((((感情に身を任せ...破滅し....心を奮わせ...器は崩壊し...他者を蔑み...激情し...憎み怨み..非道をして..独り善がりの愚か者....憤怒)))))))


七つめの声が重なる、優しく赤子を和やかせる声だった。


「黙れぇぇえぇぇぇぇぇぇ!、そんな言葉で俺は惑わされない!。今すぐ消えろ不快な声を止めろ!......ハァ...ハァハァ...」


七つ声を言葉を聞いて真樹は、前を向きながら叫ぶ。

不音で不快な七つ声に、怒声を上げて怒鳴り散らし言い終った時には肩で息をしていた。

自分を振り向かせる為に惑わす罠、一つずつ声が増える度に表情を歪ませていた真樹は、無視を貫く事が出来なかった。


『眼を逸らすな....受け入れろ...』


掠れた声、弱々しい声、喜びの声、悲しみの声、荒げる声、熱血の声、優しい声。

その七つの声が一つに纏まり、真樹に言葉を投げ掛ける。


「何を受け入れろと言うだよ!、訳の分からない事を言ってんじゃねえよ!」


『お前は知ってる.....逃げるな....認めろ...』


消えろ、消えろ。消えろ、消えろ。


真樹は声をから逃げるように走り出した、速くもっと速くと言い聞かせって全力で走る。

七つの声が聞こえなくなるまで駆ける、それでも後ろから追い掛けるように声は囁く。


『言うのは簡単...心の底から認めてない.....矛盾を繰り返してる......弱虫...半端者..』


黙れよ俺は.....。


『父さんが死ぬぐらいなら.....真樹が死ねば良かったのに...どうして生きてる....価値がないお前が消えろ.....何時までも逃げてばっかの...クズ野郎...』


違う違う聞きたくない、俺は、俺は.....。


真樹は七つの声が何なのかを理解したが、それを受け入れず心が否定する。

認めてしまえば自分の本性《・・・》が分かってしまう、散々声に出したり思ったりで本当は、受けれいてないだと自分で認識してしまう。


真樹は一心不乱な走る、白い道を真っ直ぐに七つの声はそんな真樹を、嘲笑うように愉快に笑っていた。

それから何時間も走った、声を荒げた時とは違い息が切れる事もなく体力が無くならなかった。

道の最後まで来たのか光輝く扉が佇んでいた、真樹は躊躇せずに開け中に踏み入れる。


『....裏切り者嘘つき偽善者....地獄で待ってる』


扉に入る前に七つの声は、平坦な声で言い放ち真樹を見送った。

また、直ぐに会える事を知ってるかのように。

そんなのは真樹に取って御免蒙る(ごめんこうむ)、何処までも否定し七つ声と境界線を引く。


扉に踏み入った真樹は、五つの高く聳え立つ壇の上に椅子が有り、そこに座る五柱が居た。

見上げて見ようとするが、後ろから差し掛かる後光によって、暗いシルエットが出来ていた。


「よくぞ参ったな資格得し者よ、これより"転神"に至るかを見定める」


五つの真ん中の一柱が立ち上がり静かに語り掛ける、真樹は無意識にひれ伏してしまった。


あれ?....何で俺は伏しってるだ?。


「今回の資格者は古里 真樹、百年前の勇者の子で異世界からの来訪者。三つの血を集め"死"によってここに導かれた、この者を"転神"にするべきか意を聞こう」


語り掛けて一柱は、ひれ伏してる真樹の事を簡潔に説明し"転神"にするかを他の四柱に聞く。


「そうねぇー.....良いじゃないかしら、何か面白そうですしね~」


真ん中の一柱から右隣の一柱が、自分の爪を見ながら賛成する。


「反対だ、罪臭を漂せてる奴を同神に迎える否だ」


一番左の一柱がひれ伏してる真樹を、侮蔑の眼差しで見ながら反対の意見を言う。


「"記憶の泡"、"罪の廻廊"でのこの子、向き合おうともせず逃げてばっかだったから反対だよ」


真ん中の左隣の一柱は、黒い泡や白い道での真樹見て反対に賛成だった。


「儂は賛成だ、同神として迎えるべきだと思うのだかな?」


一番右の一柱が賛成に意を唱える、四柱の意を聞いた真ん中の一柱は顎に手を当てながら、考えを纏める。

その中でひれ伏したままの真樹は、五柱の容姿や声が分からず困惑していた。

声は全てが同じで、知らない用語出て来て何がどうなってるのか分からなかった。


「賛成が二、反対が二と同数と成ってしまったな。皆の意は良く分かった、それでは結果を伝える面を上げよ」


真ん中の一柱の声に従い、ひれ伏していた真樹はゆっくりと顔を上げる。


「資格得し者 古里 真樹は、"転神"と化し我等と同じ神となる。みなもそれで良いな?」


真ん中の一柱が結果を伝えると、反対だった二柱が立ち上がり一柱に意を唱える。


「戯れ言なら止めよ、罪臭を漂う者を同神として迎えるのは否だ」


「同じ神なんて嫌だよ、受け入れもしない向き合おうともしない奴を、"転神"にするのは反対だよ」


「グゥとマルナの言いたい事は理解できる、それなら分けてしまえば良い(・・・・・・・)。善と悪にな....」


後光によって見える黒いシルエットは、見えなくても不適な笑みを溢していた。


「えぇーそれだと、弱い方が消滅しちゃうんだよ。まぁそれでも良いだけどね」


「それが、テミストの判決なら従おう」


「それでは、今から二つに別つ.....」


「あの?!」


テミストと呼ばれた一柱と、グゥ、マルナの二柱の会話に声が重なる。

自分を置き去りにして、何も説明せずひれ伏した格好で見上げた状態なのに。

五柱の神は勝手に話しを進めていた、そんな事に真樹は恐る恐る声を出していた。


「誰が口を出して良いと言った」


「ぇ....その....あっ...説明を...してくれたら嬉しい...なって思っ...ただけで..す...」


黒いシルエットに浮かぶ瞳が、冷たく真樹を貫き身を震わせ萎縮してしまう。

小さな声なのに威厳に満ち、途中で邪魔された事に不快だと言いたげだった。


「まぁまぁ良いではないかテミスト、真樹も突然の事で追い付けないのだよ」


「そうよーテミスト、まだ名すら言ってないだから~した方が良いでしょ~」


右の二柱が間に口を挟み真樹を庇う、テミストと呼ばれた一柱は静かに頷きパチンっと指を鳴らす。

後光によって黒いシルエットが消え、神の姿が現れる。


「創造神メッセに与えられた、"審判と輪廻を司るテミスト"この場の四柱を纏め転神神殿の管理者だ」


先程から纏めていた一柱は、審判と輪廻を司る神テミスト。

一つに纏まった白い頭髪、白く見透かされる程の瞳、きっちりとした外套を羽織って堂々とした態度を取っていた。


「次は私ね~創造神メッセに与えられた、"美醜と四季を司るビキ"」


美醜と四季を司る神ビキ、創造神メッセから与えられた役割のように。

桃色の頭髪で髪で出来た二つの輪が特徴で、桃色の瞳、胸元が開けたドレス似た服装で。

色合いが四季を表してるのか、鮮やかさがあった。


「創造神メッセに与えられた、"母海と父地を司るマルナ"だよ」


テミストの左隣に座ってる一柱、母海と父地を司る神マルナ。

灰色の髪でツインテール、灰色の瞳、子供の容姿だった。

身長と合ってないダボっとした服装で、袖が余ってるのか手や足が出てない。


「創造神メッセに与えられた、"死と生を司るモルータ"じゃ。真樹よ混乱してるかもしれんが、もう少しの辛抱じゃ」


一番右側に座っていた、死と生を司る神モルータ様がいた。

半骨半生の姿だけだ、見上げる真樹に優しく声を掛ける。


「創造神メッセに与えられた、"英霊と闘焔を司るグゥ"」


モルータと対面する位置にいる一柱、英霊と闘焔を司る神グゥ。

燃えるような真っ赤な頭髪で、一本一本が逆立だっていた、赤い瞳。

上半身は裸で身体に走る無数の刺青、下半身は動きやすさがある服装。


『我等五柱は、創造神メッセから託された世界ウェルムを管理する者』


五柱全てが名乗り上げて御決まりの台詞を言う、今さらだが遅すぎると真樹は内心で思いながら。


見上げていた顔を下げて、真樹は再度ひれ伏した。


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