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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
一章 始まりと絶望
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23話 矛盾の男

少しは更新が遅れましたが、楽しんで読んでくれれば嬉しいです。

一問一答が始まる前、一人の兵士は先程会った真樹の事を考えていた。


「マサキ・フルサトか....、ど~こかで聞いた事が有るんだよな....?。思い出さないって事は、対したことじゃないな。それよりも旦那に何て言い訳したもんか.....はぁ~」


憂鬱だと言わんばかりに、深い溜息を吐き出してはトボトボと歩いていた。


「まぁ良いか....、言わなければバレる筈が無いからな。さて....仕事に戻りますか、.....失礼する!」


バンっと勢い良く開かれる両扉、不格好な石で積み上げられた建物に入っていく。

そこは、真樹に道中トラウマを植え付ける原因ともなった武器庫だった。


「いきなり何だ?!、もう少し静かに入れ!。それでも兵士か!」


武器を手入れ中に、勢い良く開かれた音にビックリしては、入ってきた兵士に怒声を上げる。


「大変失礼致しました!。急で申し訳ございませんが、此方に森から入手した刀が有ると聞きまして御貸し頂きたい!」


「あぁ?、アレは俺が陛下からお預かりしている物だ。それをただの兵士に渡せってか?、冗談なら今の内に許してやるから消えな....」


武器番のマスノエは、兵士の用事が紫柄の袋又は無名の刀に有ると分かり。

存外に兵士を追い払う仕草を取ってから、手入れ途中の武器の続きを始める。

何も聞かないと言った態度を取り、兵士の方を見向きもしなかった。


「御気持ちは分かりますが、此方も陛下からの御命令であります。その証拠に此方をどうぞ!」


懐から出した巻紙をマスノエの前に差し出す、それをマスノエは手に取り目を見開き驚愕する。


「こ、これは!。陛下の王紋!」


渡された巻紙には、確かに王族だけが使える王紋で蝋封されていた。

近くにあった小剣で綺麗に取り外し、巻紙を丁寧に開いていく。


「.......」


じっくりと目を通し、内容に齟齬が無いか確認してから、巻紙に緑火を着けて燃やし始める。


「この火が何かは分かるよな?」


「緑火ですよね?、特殊な付与が施され偽物なら黒くなり、本物なら白となる偽装が不可能な代物です」


「そうだ....、もしコレが陛下を偽った物なら黒くなるが......本物みたいだな」


緑火の説明を聞きながら、燃えていく緑火が白い火と成ったのを見て本物だと確認した。


「では、お預かりしても宜しいですか?」


「あぁ、直ぐに持ってくる。少しだけ待ってくれ」


手紙の内容通りに従い、奥の棚に大事に閉まってる魔刀を取りに行く為に奥えと消える。


当然の結果だな.....、あのお方の力なら朝飯前ってな。


兵士はマスノエの行動や手紙の偽装、全ては予想通りの結果に納得する。

それから数分待つこと、奥から魔刀が入った紫柄の袋大事そうに抱えたマスノエが来る。


「待たせたな、コレが陛下からお預かりしてる魔刀だ。良いか絶対に鞘から抜くなよ、取扱いには気を付けてくれ......」


「はい!、承知しました。......あの?、離して貰って良いですか?」


「あっ!、これはすまなねぇなー.....」


差し出された魔刀を兵士が、受け取り持って行こうとしたが。

名残惜しそうに魔刀を離さず、何時までも握り締めていたマスノエがいた。

兵士に言われ自分が何をやってるのか気づき、直ぐ様に手を離しては、後ろに振り向き鼻を啜る音が聞こえてきた。


「.........」


兵士は無言で武器庫から出て行く、今も中からは啜る音が響いていたが気にせずに去っていく。

それから人目が無い場所に隠れ、丸い水晶を懐出しては魔力を流す。


「あーぁ、もしもし聴こえてますか旦那?」


水晶に向かって声を出しては、旦那と呼ばれる人物に呼び掛ける。


『ヨウか....』


「そうですよ、あのヨウです。.....あれ旦那?、なんか良い事でもあったんですか?」


水晶から聴こえてきた陽気な声に、兵士に変装していたヨウは何か合ったのかと思っていた。


『分かるか?、数日前に久方の愉快な者に出会った....ククッ』


ほぇ~旦那がこんなに褒めるとか、中々の強者だったのか。


「魔族最強のベノム・クロウラが認めた方を、自分も一目拝見したいですな~」


ベノム・クロウラは、水晶の向こう側でその時の事を思い出して笑っていた。


『.....ヨウ、最強は我が父上に決まってる。全魔族を束ね統率し、導くお姿は我の自慢な父上だ...』


「待ってくれ旦那!、あのお方は例外に決まってるだろ!。それを除けば次に最強はベノム・クロウラだって話しだろ?」


ヨウはまだ話し続けるベノムに、待ったを掛け話しを中断させる。


『む?....そう言う事か、なら当たり前だな....我は次の王に成るのだからな』


ヨウはベノムの気を反らす事に成功した事に、安堵し一息つく。


危なかった.....、旦那が父親好きだったのすっかり忘れてたぜ。

まぁ尊敬する気持ちは分かるが、アレと比べると旦那はな.....。


『どうしたヨウ?』


突然黙ってしまったヨウに、ベノムの声が届き思考を引き戻し「何でもない」と声を掛ける。


「要件を忘れていましたぜ、例の魔刀ですが回収完了ですぜ」


内心で思った事を感ずかれる前にヨウは、水晶で呼び出した案件を思い出し報告した。


『そうか..."怨刀 罰"を回収出来たか、なら後は言われた通りにやってくれ』


「了解だ旦那、じゃ終わりましたら帰りますんでーーーー」


『........』


「また...か....、旦那の悪い所だな。ふぅ~、それじゃやりますかね.....」


ベノム・クロウラの悪い部分が垣間見え、ヨウは何時もの事だと割り切っては浅い息を吐く。

魔族である自分が来た理由を全うする為に、ヨウは紫柄の袋に入れられてる"怨刀 罰"を取り出す。

紫柄の袋で遮断されていた、膨大な魔力が溢れ出す。


「こいつは.....すげやぁー.....」


自分の魔力の何倍もある魔力に、ヨウは自然と声が出ていた。

紅黒い柄を始め、少し楠んだ緋色の鞘が外気に晒されていた。

ヨウは真っ直ぐに"怨刀 罰"を鞘ごと地面に突き刺し、自分の武器エモノを手に持ち横に構え力を貯める動作に入る。

形状は戦槌と言った打撃系武器だった、溜めが終ったのか勢い良く横に振りかざし、"怨刀 罰"と衝突する。


「魔族の恥が.....碎けろ...」


冷たく言い放つ言葉には、何処か怨めしく憎んでいるような感情が籠っていた。

"怨刀 罰"の緋色の鞘からビキビキと音を立て、ヨウに戦槌がめり込んでいく。

ヒビが徐々に全体に広がって行くのを、ヨウの双眸で捉えより一層力を込め振り抜く。

バリッピキッと盛大な音が鳴り、怨刀 罰が木っ端微塵に砕け散る。

魔刀に籠められていた、膨大な魔力も本体が砕け散るの同時に霧散して消えていく。


「....これで、同胞も報われるよな....」


顔を天に向けて、この場にいない人達に向けて静かに祈っていた"安からに眠れ"と....。


100年前多くの同胞が無差別に殺され、幼い子供も女も老人も多くの命を奪って来た"怨刀 罰"。

特に特殊な力も無く、良く切れるだけの刀が一人の魔族の怨念一つで変わり。

その刀に魂が宿り、美しかった波紋は歪み刀身は同族の血で赤く染まり魔刀えと生まれ変わった。

それからと言うもの、手にした者達を操りただ殺すだけの人形に化していた。

魔刀えと変わってから、強大な力を持った勇者達に阻まれ、手も足も刃すら出せずに力を削られ。

最後の足掻きとして、その場から逃げ出す事に成功したが最後まで力が続かず、ヘルズ国の森林の最奥で力尽いた。


それから100年間も、大地から魔力を吸い上げた膨大な魔力に引き寄せられた魔物によって。

"怨刀 罰"の姿を発見され、ヘルズ国に持ち帰られた情報を手入れ魔族であるヨウが潜入していた。


砕け散った"怨刀 罰"を見て、ヨウは自分の仕事が終わり体を伸ばして気持ちを切り替える。


「うぅーーとっ、帰ったら報告しないとな...。あっ....伝言頼まれていたんだった、めんどだけど探すか....モテモテのイケメンをな....」


戦槌を持っていた袋収納メッシスに収納し、その場から歩き人目が着かないように去っていく。

真樹から教えられた人物の特徴を思い出しながら、それに合った人を探す為に城えと向かう。


『キ....消エヌ.....殺スマデハ消エヌ.....』


砕け散った筈破片が、互いを引き寄せていく一つ....また一つと元に戻ろうとして。


..............


.......


....



「じゃ、始めようか?。最初の質問はどっちからやりたい?、俺はどっちでも良いけど?」


一石二鳥一問一答の最初の質問を、どっちからやるかと三人に聞く。

三人は顔を見合わせながら頷き、代表として一人が口を開く。


「なら、最初は此方から質問させて貰うわ」


「じゃ、最初の質問は誰からかな?」


宮田の言いに真樹は、城門近くの壁にもたれ掛かりながら三人の顔を見回す。


「最初は私からで良いかな?、マサキ君?」


小さく手を上げながら了承を得ようと、真樹に戸惑いながら聞くが無表情で見つめ。


「好きにすれば」


あまりにも人としてあり得ない態度を取る真樹に、八重は体を強張らせて口を閉じてしまう。

葵が真樹に突っ掛かろうと一歩踏み出そうとしたが、それを横にいた舞花が止め顔を横に振り咲音の方え向く。

葵もそれに釣られ、咲音の方に向き自分の行動を恥じってしまうーーー必死な親友の姿を見て。


それでも何が起こってるのか知りたい一心で、ーーーーーー違う、真樹の身に起きてる事を知る為に意を決して声を出す。


「....玉座の間で、騎士が何かしよう動いてたけど。それはマサキ君と関係が有る?」


玉座の間で、真樹が洗脳した騎士の動きを一部始終見ていた咲音は、何処か認めなくないと心が拒否反応するがそれを抑え込み聞く。


関係が有る...か....。


「その質問に関しては、八重自身が答えを出してるけど。まぁ良いか....質問の答えだけど、関係が有る所じゃないねモロだよドップリとね」


真樹は浅い所か深いと答え、八重の表情は暗く成ってしまう。


「どうゆう「一人一問だから、八重の番は終ったよ」.....ッ!」


続けて質問しようとする八重に、真樹は口を挟み遮る。


「さぁ、次の質問者は誰かな?」


気を取り直して、まだ質問をしてない二人を見る。


「咲の続きを引き継ぐわ、貴方と騎士はどうゆう関係なのかしら?」


「あ~ちゃん.....」


咲音の肩に触れながら一歩前に出ては、続けて2個め質問を変わりに葵が質問する。


「どうって....初対面だけど?」


「はっ?!、初対面が見ず知らず奴に手を貸す訳が無いでしょ!」


ごもっともだけど、初対面は初対面だから答えたのに.....。

信じて貰えないのは辛タンです。


内心でバカな事を考えながら、信じられないと驚く葵に真樹は取り敢えず笑顔を浮かべる。


「まぁまぁ、気になるなら次の番に質問しな。最後は佐藤だね?、何を質問するのかな?」


何か言いたそうな表情をしては、一睨みしては口を閉ざし舞花と変わる。


「う~ん、そうだね~?。この人達を殺ったのは本当にフルっちで良いの?」


「......そ、そうだね。二人を殺したのは俺だ、騎士の名前は知らないが、そっちの執事は誰かは分かるだろ?」


答えるまでの間、真樹は騎士に対して後ろめたさを感じながら右腕を動かし執事サイルを指す。


「サイルさんだよね?、王様専属の執事の....」


「そう、執事のサイルで元暗部団長の幽影のサイル.......」


「「「ーーーー!」」」


不穏な事実に三人は驚愕し、真樹とサイルを交互に見ながら困惑していた。


「さて、これで三人の質問が終ったね。次は俺の番だよ?、此処まで三つの質問に嘘で答えてないからね.....」


「待ってよフルっち!、それだけじゃ分からないよ!」


自分の番に成り質問をしようとするが、舞花が持ったを掛ける。


「待たないよ。........俺が聞きたいのは、普段お前らの訓練はあんなに激しいのか?」


「えっ?.....、どうゆう意味なの?」


今の状況とは関係無い質問に、三人は呆然してしまう。

意味が分からず舞花は聞き直す、真樹は少し溜息を吐き出し説明し出す。


「宮田、俺が訓練を観に行ったのは覚えてるか?」


「えっ、え....覚えているわ。メイド長アテラと一緒に見ていたわよね?」


急に話しを振られた葵は、その日の事を思い出しながら誰と居たのかまで鮮明に思い出す。


「今まで一回しか訓練に出てなかったし、その時は基礎体力や力の確認だけだった。それがあの日見た訓練は、眼を疑う程狂ってた。二名ずつ戦闘し、互いに殺す為の一手を繰り出し腕切り落としたり。魔法で貫いたり焼いたり、1ヶ月前まで普通だった奴等が友に刃を剥ける光景にだ!!。お前らは何時もあんな事をやってるのか?」


あの日見た光景を思い出しては、怒りや哀しみが込み上がり声が荒いでしまう。

真樹の話しを三人は聞いて、そらぞれ違う感情が籠められた言葉が発しられる。


「それは、しょうがないよフルっち。皆だって生きる為に必死なんだから!、それに怪我しても咲音が居る限り死ぬ事なんて無いよ!?」


しょうがない?、しょうがないで刃を友に向けるのか.......。


「確かにマサキ君の言う通りだけど、皆で帰るには出来る事をしないとダメなんだよ.....。この先....大切な人を守るには....ね...」


大切な人を守るのに、嫌な事を受け入れろと?。


「真樹....ここは日本じゃないわ、何時死ぬのか分からないし、身近な人が死ぬ事だって有るわ。変わらない人間なんていないわよ、環境に適応して明日を生きる為の本能よ....」


やりたくない事を受け入れる現実、平和な日本じゃない事実、死が身近な世界。

それを乗り越える為に決断をして、人としての常識が覆される非常識な毎日。

それに適応したのが今の状態、ただ明日を生きる為に元いた世界に帰る為に。


もう......いいや、俺が馬鹿だったんだ.....。

此処には俺の知ってる友はいないだな、俺だけが人の道を踏み外したのか.....。


「......フッ....フフッ....、アッハハハハハハハ。これで俺の質問は終わりだよ終わり、もう此処に期待するのも馬鹿馬鹿しいしな....。さぁー、まだ聞きたい事が有るだろ?、今なら何でも答えるよ」


笑いが込み上げ、盛大に自分の思考に嗤ってしまう。

皆は考え決断して、この世界で適応した世界の住人に成ったのに。

真樹は取り残され人道の道を踏み外し、外道を歩んでしまった人の皮を被った人として。


「「「......」」」


三人は真樹が自暴自棄に見え無言を貫いていた、今の身体の状態に加えて、狂ったように笑う真樹に惨痛に感じてしまう。


「アレ?、質問しないの?。まだ気になる事が有るでしょう?」


「もう大丈夫だから.....、今、傷とか怪我を治してあげるからね...」


真樹の言葉を無視しては、動く事が出来ない真樹に近付き左横に座る、手をかざして彼女の天恵ギフト"死する生者に癒しをデッド・リビングヒーリング"を使用する。

普通なら治る筈が無い両足の健や左腕が、ぐにゃぐにゃと肉が生え何も無かったかのように消える。


「おいおい良いのか?、治したら逃げるかもしれないだぞ?」


咲音の突然の行動に真樹は困惑しながら、動けるようになった身体の感触を感じる。

真樹にとっては都合が良いのだが、会った時に治療をしようとした咲音を葵は手でそれを止めていた。

葵や咲音の方を交互に視線だけを動かし、何か動きが無いのか様子見していた。


「ねぇ、マサキ君.....何でも一つだけお願い事を聞くって約束覚えてる?」


「あぁ?、覚えてるけど.....?」


それは城下町に行く直前、咲音以外の名前を下だ呼ぶ事に怒り不機嫌になった時だ。

彼女の機嫌を直す為に、真樹は一つだけ言う事を聞くと約束していた。


何故今になってそんな事を言うのか、真樹には理解が出来なかった。


「本当ならねマサキ君と二人で、で...デートをする為に使いたかったんだ....。でも、それを此処で使わせて....」


恥ずかしかったのか、デートの部分で顔が紅くなりながら約束を使いたいと言葉にする。


「........」


真樹は無言を貫き、この先咲音が何を言うのかを心して聞く体制に入る。

そうしなければ彼女に失礼だと感じていた、紅い顔をしながら日本人特有の黒瞳に、"想い"が宿っていた。


「マサキ君が何に怒り哀しんでるのかは、私じゃ理解できないかも知れない。けどね、一人で抱え込まないで私達を巻き込んで欲しいの!。だってそうしないと、マサキ君は一人で今も傷ついて泣いてる..か...ら....」


真樹の左手を握った彼女は、握る手に力を込めながら想いをぶつける。

それは何処までも純粋で、好きな人を想う乙女のように儚く綺麗な滴を流してる彼女に。

真樹は黒の手甲を着けてる右手で、彼女の頬を伝う滴を拭い取る。


「ま、マサキ君?」


黒の手甲越しに触れる冷たい右手を感じて、頬を紅く紅く染め嬉しそうに表情を崩す彼女。

冷たくっても好いてる人が、触れてくれてる事実に今は満足していた。

真樹は顔を咲音の耳まで近づけ、口を開き彼女だけにしか聴こえないように語りかける。

それを外野から見てる二人は、今までの険悪と言った雰囲気が消えニヤついた顔をしては小声で話し合っていた。


『凄い幸せそうな顔をしてるよ?』


『えぇ、これで咲が幸せになるなら今回の事は許してあげる...わ.....』


『アレ葵?....、泣くほど嬉しいんだ~。あんなにフルっちに怒ってたのに、許すんだ~』


咲音の幸せそうな表情を見て、葵は自分のように嬉しくなり涙が出ていた。

それを面白がった舞花は、カラかい気味に話す。


『な、泣いてなんか無いわ!、これは目にゴミが入っただけよ。......別に全部を許す訳じゃないわ、少しだけ許してあげようかなって思っただけよ!』


『はいはい、そう言う事にしておいてあげる。それじゃ、私達もお仲間に入りに行きますか....』


否定する葵に舞花は適当に返答する、『素直になれば良いのに』と思うがそれは口に出さずに。

二人だけの世界に入ってる所に、カラかう積もりで行く気満々な所を止められる。


『待って、もう少しだけ二人きりっにしてあげて......』


はぁ~と嘆息づいては、葵に頷きだけを返して二人を見守る側で待機する。


だが、ドラマや小説、漫画にアニメといったラブコメのような展開は起こらなかった。

上手く行く筈がなかった、現実はもっと悲惨で残酷で無慈悲だった。

二人の小声話しが終わるのと同時に、座ってる咲音を真樹は突き飛ばして距離を取る。


耳元で囁かれた言葉に気を取られ、咲音は押された事だ抵抗も出来ず後ろに倒れてしまう。


「........ど、どうしてなの....」


遠くなるような意識の中、直ぐに思考が戻り立ち上がってる彼を見上げる。

下から覗く顔には暗く、身震いする程冷たい眼差しが向けられていた。


「「咲!(咲音!)」」


二人を見ていた葵に舞花は、真樹の行動に声を荒げ飛び出そうと一歩を踏み出すが。


「止まれ.....、動けばどうなるか分からないぞ.....」


真樹の声が届き二人は止まる、鬼の形相をした二人は咲音の首から伸びる黒い線(・・・・)が目に映る。


「何これ.....」


自分の首に巻き付いてる何かに気付いたのか、そっと触れて伸びてる根元を見付ける、それは真樹の右腕から伸びた黒の手甲だった。

真樹は立ち上がってから、直ぐに右腕に魔力を流して咲音の首に魔柔石ミーヤを巻き付けさせていた。


「お前も動くなよ死にたくなければな、このまま殺す事も可能だからな」


そう言って魔力を流し、咲音の綺麗な顔に向けて小さな黒い針が伸びる。


「どうしてなの!。お願いだから....正気に戻ってよ....ウッ..ウ...」


目の前の出来事に泣き出し慟哭してしまう、咲音の姿を見て葵の周りに赤く燃える剣、水が固まった剣、風が渦巻いてる剣、鋭く尖った剣が浮かんでいた。

シロと呼ばれた白妖が噛み千切る程の牙を剥き出し、白く気持ち良さそうな毛が逆立ち真樹を見据える。

舞花もシロと同様の姿に成っていた、歯を剥き出し手から鋭い爪が延びていた。

その姿は獣人と似た形容していた、真樹でも分かる程の殺気が二人から発しっていた。


二人は同時に天恵ギフトを発動していた、訓練で培った経験で直ぐ様に攻撃が出来るようにしていた。

葵の周りに浮かんでいるのは"躍りし剣舞(ダンシグ・ソード)"で出した属性だった。

自由に動かせる剣が4つそれも属性付きで、幅広い程の優位性が有る。

舞花は"集う意思の共鳴アセンブル・レゾナンス"の効果に寄り、自分が使役している魔獣と似た力が宿っていた。


これが二人の天恵《力》か、本当に何も持っていない俺とは違うな。


真樹は二人の天恵ギフトを見て、皮肉を込めて自分と比べていた。

このまま何かされれば、真樹には気付く事も出来ずに終わるのをサイルの時と同じ感覚に陥ってた。


だけど今回は違う、二人に取って大事な親友が人質と成っているからだ。

迂闊に手を出せずにいると考えるが、訓練の時を考えれば躊躇無く攻撃してくる可能性が大だった。


「動くなと言ったろ?、直ぐに力を解けよ?」


そう言って咲音の方に視線を向けて二人に促す、それが効いたのか二人は天恵ギフトを解くいていく。

属性の剣は霧散して消え、獣人だった舞花は人に戻って憤慨の眼差しで睨み付ける。


「もし、咲に指一本でも触れたら許さないから」


淡々と告げる言葉には、冷たく怒りが宿っていた。


「フルっちは咲音をこれ以上傷付けるなら、私....絶対に許さない....」


怒りで震える口で真樹に言葉をぶつける、二人は眼を逸らさずただ一点を睨んでいた。

真樹はそれを正面から浴びるが、一歩も引かず動けるようになった左腕で、細く柔らかい右腕を掴み咲音を立たせる。


「何もしなければ、此方も何もしない。だから、そこで大人しくしてろ、いいな?!」


それだけを告げ、真樹は城門を背に動く足を動かして慎重に歩いて行く。

正面を葵や舞花に向けて、動きが無いように注意して、咲音の腕を引っ張り歩かせる。


「ねぇ、マサキ君....私ねマサキ君に殺されるなら、それでも良いよ....。だってーーーだから.....」


掴んでいた腕を振り程いた咲音は、ローズ・ピンクのローブの内から短剣を取り出し、自分に向かって突き刺すーーーーー。


が、それは届く事が無かった、寸での所で真樹が程かれた左手で短剣の刃を素手で掴んでいた。


握る力が強いのか、自分で手を切り赤い血が刀身をから柄に伝わり咲音の手に流れていく。


「ふざけんな、大好きって言っておいて自分の手で死のうとしやがって!」


突き刺す前に咲音は「大好き」って伝え、自身の手で命を絶とうとした。

真樹に殺されても良いと言っておきながら、自分の手で死のうとした事に真樹は激情する。


咲音の首に巻き付いてた魔柔石ミーヤを解錠して、咲音の頬を全力で叩いた。


バシンッーーー音を立て咲音の頬は赤く腫れる。


「お前が死ねば、そいつらが悲しむだろう!!。少しは後に残された奴の気持ちを考えろ!、此方側わ俺一人で充分だ!」


腫れた頬を抑えながら咲音は、うしろを振り返り血の気が引いた親友の姿を見て胸が苦しく成っていた。


「あっ.....ッ..ご、ごめんなさい....」




田舎は自然が豊かで良かったですが、更新する為のネットが繋がらないのは痛かったです。


更新が遅くなってすみませんでした、今話も読んでくださりありがとうございます。

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