17話 思惑
玉座の間に入ってくる、ガースと勇者連中が勢揃いだった。
咲音、葵、舞花、忍、四人ともう一人もちゃんとその中に居た。
ある程度の距離を取った状態で歩を止めて、不適な笑みしながら口を開いていく。
「先程の会話も、お主が取った行動も全て此処にいる者達がしかと聞き見た....。残念だ娘のサラを救ってくれた命の恩人なのに、まさか一週間前の襲撃の黒幕だったとは.....」
笑みを継続しながら、悲しそうな素振りと声をしながら、そう言ってのける。
ガースの後ろに勇者連中には、国の王が本気で悲しんでるように見えて一切口を挟まず黙っていた。
だが、そんな事よりも真樹は焦燥感に駆られるがそれと同時にガースの言に違和感を感じていた。
全てって事は、クズ野郎の会話も聞いてたんだよな?。
なのにコイツらの態度は何なんだ......。
「ねぇ...、マサキ君。本当は違うだよね?、何か事情があったんだよね?」
ガースの前と一歩踏み出して、事実を認めたくないと否定するように問い掛けてくる。
それに対して真樹は歪みきった表情を戻し、微笑みながら一歩踏み出した人物に向ける。
「八重さん何を聞いて何を見たかは知りませんが、私を信じてくれないのですか?」
ローズ・ピンクのローブ纏い、隙間から見える私服が微かに覗かせていた。
「......っ!」
少し前まで下で呼んでくれた人が、今、他人行儀で接しられた事に言葉が詰まってしまう。
信じたくないと視線を震わせては、近くまで来ていたネイビー・ブルーのシャツと肌にピッタリとしたパンツした、見た目的には大人の女性と言った葵が肩に手を乗せて落ち着かせていた。
それから一通り落ち着いてから、葵は顔を此方に向けて目付きを鋭くして睨んでいた。
「どう言うことかしら真樹....、貴方はさくに何をしたか分かってるの?!」
誰の目からでも分かる程憤慨してると、それでも真樹は微笑みを崩さず視線を逸らす事もしなかった。
「宮田さん今のを見ていましたか?、私は何も八重さんにしてない筈ですが?」
「いい加減にしないよ!!」
「....ぶっ.....?」
真樹の発言に怒りの形相をして、今にも殴り出そうと歩み始めるが。
それよりも速く動き、真樹は横面を殴り飛ばし手に持っていた父さんの片手剣を床に落とす。
盛大な音をしながら殴った人物は、怒りよりも哀れみの目をして床に転がった真樹を見下していた。
「なぁ~古里、男なら女を泣かせるような真似をするなよな。それだけは、やっちゃダメだろう?」
「....ざがまぎが」
赤を基調とした服装と体格の良い坂巻忍が、上から見下していた。
横面に拳の跡が残り、口内は切れて血が出てくるが上手く喋る事は出来なかった。
それから、ゆっくりと立ち上がり殴った男と正面から対面する。
「マサキ君!。傷有る者に癒しを"キュア"!」
咲音が癒魔法"キュア"を手から飛ばして、真樹の顔の傷を治していく。
顔から痛みが無くなり、咲音の方に顔を向ける。
「ありがとうございます、八重さん」
「.....どうし....てな...の」
お礼を言うが、あり得ないと表情をして目尻に涙を浮かべていた。
何かを期待していた咲音は、目尻に涙を浮かべていたの見た忍が真樹の胸ぐらを左手で掴み、残った右手で何度も殴打する。
「この....バカ野郎が!!」
威力が乗った拳を顔面に浴びせる、その威力から鼻は折れ歯は折れ顔を陥没させる。
顔中を流血で真っ赤にし、殴る拳も血で赤く染まる。
その光景に勇者連中は目に逸らし始める、葵は忍に止めるように声を掛けるが。
忍は聞き耳を持たず行為を繰り返していく、最初の内は呻き声をしながら手足で抵抗していた。
真樹も三発目で動きを止めて、一切動く事が無かった。
それでも目尻に涙を浮かべていた咲音は、忍が殴る度に癒魔法を真樹に掛けては治癒していた。
酷い事されたのに、それでも懸命に魔法を掛ける姿を見た忍は、これが最後の一発だと言うように大きく振りかぶり殴る。
殴るのと同時に胸ぐらを掴んでいた左手を離し、真樹は後ろの方に吹っ飛ぶ。
その光景を見ては歓喜していた人物がいた、自分で作る状況よりも良い方向に行ってると歓喜していた。
直ぐに気を引き締めては、表情を哀しみに暮れてる顔を作り口を開く。
「あれじゃ、意識は無いだろう....。サクネ殿の癒魔法で致命傷では無いだろうが、念の為に 医務室に運び様子見しよう。まだ、聞きたい事がマサキ殿に有るからな....勇者様方もそれで宜しいですか?」
ガースの言いに、勇者連中はヒソヒソと話してから頷き出す。
その光景が当たり前となったのを確認してから、玉座の間に数十人の騎士を入れて真樹を連行するように命令する、「はっ!」臣下の礼をしてから。
3名の騎士が意識が無い真樹に近づき、腕を掴み動けないように後ろで組むながら移動する。
オレンジと白が合わさったワンピースを来た、少女が三人の所まで近寄り声を発する。
「何でフルっちは、あんな事になちゃたのかな.....」
グッタリとした真樹が、ずるずると引きずられながら連行されるのを見て舞花は悲しげに呟いた。
「そんなの知るかよ!。ただ、言えるのはアイツは男じゃねぇって事だ」
男じゃない真樹を冷たく吐き捨て、玉座の間から出ようと歩き出す。
「待ちなさい忍、貴方のさっきのは何なの!」
「あぁ!」
去ろうとした忍を呼び止め、真樹に行った行為を批判する。
それに対して苛立ちが募っていた忍は、呼び止めた葵に向けてドスの効いた声を出し睨む。
「さくが治癒しなければ、真樹は死んでいたのよ忍の手で!。一発殴れば充分だったでしょう?!」
殺せる程の威力で殴った事を叱咤する、一発だけで意識を刈り取ったのに。
声を掛けて止めてと言ったのに、それでも制止せずに何度も殴打した事に葵は激怒する。
「古里は死んで当たり前の事をしたんだぞ!、一週間前の襲撃で関係の無い人達が多く死んだんだぞ!。それを思えば一発じゃ足りねえょ.....、それにお前も映像で見てただろう、手にしてた剣で刺したのを?!」
「えぇ、確かに見たは。それでも本人の口から聞いてないでしょ?、何故したのか?、一週間前に何があったのか?。疑問に思わなかったの忍は?」
二人が互いの思いをぶつけ熱弁し、舞花はどうにかしようと二人を交互に見ては慌てていた。
それは唐突に終わる、二人の間に入った咲音の声によって。
「二人ともいい加減にしてよ!!、ここで言い争いしても何も解決なんてしないだから!」
「「さく(八重).....ごめんなさい(すまなかった)」」
バツ悪そうな顔して咲音の方に向き、二人して頭を下げる。
「こっちこそ、いきなり声を荒げちゃってごめんね」
「咲音ちゃんが謝る必要ないよ、脳筋と堅物娘がいけないだから....」
「舞花誰が堅物娘だって?」
「そっか俺は脳筋なのか佐藤?」
舞花の発言に青筋浮かべた二人が近寄り、舞花は熱が消え変わりに冷たさが背中をなぞる。
「ち、違うよ!。そう言う意味で言ったんじゃないよ!」
必死に弁明するが、二人は逃がさないように板挟みし無言で追い詰めていく。
そんな三人のやり取りを見た咲音は、「フフフッフフッ」の声を押し殺して笑っていった。
そんな四人の所に、一人の騎士が歩み寄ってくる。
「勇者様方、そちらの剣を回収させて貰っても宜しいですか?」
床に落ちてる剣を指し示す、真樹が忍に殴られた際に落とした片手剣。
「は、はい大丈夫です?」
「感謝致します!」
感謝の礼を送り、床に落ちてる剣を拾い上げその場から離れていき。
グッタリして意識が無い、真樹の手に握られせて、勇者連中ーーー否一人の男の方に向かって行く。
それから真樹に握らせた剣を、もう一度確認しようとして振り向くが。
握っていた剣がいつの間にか無くなり、見間違いかと自信の目を疑っては、ちゃんと渡していたのを見たのを確信して騎士の方に向き直す。
その間に真樹を連行する騎士は、扉開けて玉座の間から退室する。
そんな行為をした騎士に嫌な予感を抱いた咲音は、直ぐさま騎士の元に向かい「あの」と声を掛けていた。
「どうかしましたか?、勇者様?」
誠意持って対応する騎士だが、何処か暗く何も映ってない瞳を見て確信するーーー普通じゃない。
「今、何をしようとしてましたか?」
目の前の騎士に、油断などしないように身構えながら。
皆の所で何をやろうとしたのか、問いただす。
「重罪人を連れて、玉座の間から退室しようと扉に向かっていましたが?」
「嘘を言わないないで!、拾った剣をマサキ君に何で握らせてたよね?!。今、貴方が言ったじゅ、重罪人に剣を普通は渡しますか?。何でそんな事をしたんですか?!」
咲音の大声に周囲にいた、勇者達が騎士と咲音の方を向く中で。
その事に気づかずに騎士の発言や、先程の見ていた行動とは違う事を指摘する。
真樹の事を重罪人と言う事に、心を痛め不可解な行動をした騎士を精一杯睨む。
騎士は咲音から言われた矛盾に、目を不気味に動かし糸が切れた人形のように、プッツリとその場に音を立てながら倒れる。
その音に周囲の者達が一斉に振り向き、なにが起きたのか確認していく。
倒れたと騎士を見て、違う騎士が駆け足で近寄り体を揺すりながら声を掛けていた。
「おい!、大丈夫か!。アルコ!、返事しろ!」
「どうだ?、原因は分かったか?」
「陛下!。体には異変はありませんので、何らかの魔法が原因かと.....」
倒れた騎士アルコに何があったのかを、近くまで来ていたガースに告げる。
それを聞いたガースは驚愕し、その大元の原因である人物を探すがすでに玉座の間からいなくなっていた。
「今すぐにマサキ殿を探しにいけ!」
「「「「「はっ!」」」」」
真樹を連れた騎士二人を除き、玉座の間にいた全騎士が後を追いかけようとするがーーーー。
いくら引いても開かなかったーーーー。
「陛下!。扉が何かに塞がれて開きません!」
ガチャガチャと取っ手を引っ張り、一人の騎士が叫ぶ。
「壊しても良い!、なんとしても後を追え!。けして国外に逃がすな!」
「今そんな事すれば!、此処にいる皆が危ない!......」
ガースの怒声が響き、騎士達は後を追う為に外を出る壁、扉を壊していく。
そんな事をすれば、怪我人が出る事が分かった人物は声を上げ止めさせようとするが。
それでも止まらず騎士達は、自信の持てる威力 の数多の魔法が、扉や壁にぶつかりド派手な爆音上げ砂煙が部屋全体に舞う。
「きゃ!」
「ゴホッゴホゴホッ!」
「何も見えねぇぞ!」
勇者組の男達、女達は突然の事に驚きながら、各々発してた。
見えなくなっていた砂煙が無くなり、玉座の間を隔てた壁や扉は粉々になり。
そこを騎士達が跨ぎ、陛下の命に従って真樹の行方を探し捉えに行く。
騎士達が行ったのを確認したガースは、懐から鈴を取り出し二~三回振り口を開いていく。
「何用ですか?、陛下。」
何処からともなく出現し、呼び出した主に頭を下げて用件を聞く。
「逃げたマサキを探し殺せ、もう生かす理由は無い」
冷たく怒りを宿した瞳で、執事服のサイルを見つめては冷酷に殺しの命令を告げる。
主の命令を聞いた執事は、口角を鋭く上げて笑って再び頭を下げてから消える。
消えた事を確認するまでも無く、後ろを振り向かず今も騒いでる勇者連中の方に向かい国を開いていく。
「勇者様方!。お怪我は無かったか?、このような手段を取ってしまいすまない。しかし、今は一刻も争う事態が起きてる!。先程倒れた騎士は、マサキ殿が原因の為に起きた事態であります。意識を失った振りをして、この場から逃げたと思われます。ですので、勇者様方のお力を捜索に使ってほしい、是非ともお願いする!」
饒舌に話し始めたガースに、今も蒸せたり怪我をしてないか確認し会う等をしていたの止め。
ほんの数分で起きた事態の事を説明し、上手く逃亡した真樹を探す為に協力をお願いしていた。
話を聞いて一番に名乗り上げたのが、「男じゃねぇ」と真樹に憤慨していた忍だった。
「あぁ、探すのに協力してやる。見つけ出して仕出かした罪の分殴り飛ばしてやる!」
忍につれられて他の勇者組も声に出して、捜索する事を肯定していく。
その光景を見ていた三人は、互いに顔を見やってどうするか目線で話し合い、三人の意見が重なり頷く。
「私達も探して、ここまで仕出かした事には一発殴らないと気がすまないわ」
「しのっちにも殴られるのに、葵まで殴ったら流石のフルっちもお気の毒だね......」
「殴るのは良くないよ?!、ちゃんと話しを聞かないと何があったのかも知らないといけないだから!」
三人の乙女は、一人は渇を入れる為に、一人は真樹に起きる身に心配し、一人は何故そうなったのかを知る為に。
それぞれの決意を胸に、逃亡した真樹を捜索しに乗り出し。
粉々になった壁や扉の残骸を避けて、勇者組は通路えと足踏み出し後を追いかけて行くが。
ガースと一人の男が玉座の間に留まっていた。
「良いか、洗脳した奴等を使って他も焚き付かせてマサキを殺すように仕向けろ」
「あーいよ~。じゃ、自分も行きますね~」
気の無い返事で返答し、他の勇者同様で玉座の間から出て行く。
「お主は....ここまで読んでいたのか...、恐ろしい男だ....生かして置けば余の災厄になる....」
男の後ろ姿を見ながら、ガースは顔を掌で覆い考える、ただ、ひたすらに考える。
何が最善で何処から狂ったのか、当初の目的を忘れ振り掛かる火の粉を払う為に、幾つもの策を用意し。
確実に生きの根を止める為に、持てる権力を全て使い排除に望む。
ただ、ガースは大きな思い違いをしていた。
真樹が起こした行動は、『まぐれ』の産物だと知らない。




