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人生初の異世界で~俺だけ何も貰えなかった~  作者: 氷鬼
一章 始まりと絶望
17/81

16話 白銀


今日は谷風 陸の話を書かせて貰いました。

少し更新時間が過ぎてしまいましたが、楽しんで読んで貰えたら嬉しいです。(о´∀`о)



真樹とガース・ヘルズが会う2日前に遡る。



整備された道を馬車が通っていく、派手でも無く所々汚れた外装をしていた。

その馬車の車内に、日本から召喚された勇者とだらしなく脚を開き腹出しては掻いてる女性が乗っていた。

白銀の鎧を身に纏い、傍らに白銀の鞘に収まった聖剣があった。


「粋先生!。起きてください、もうすぐで村に着きますよ」


寝息をしてる女性、望月粋もちづきすいに声を掛けて起こそうとする。


「....うん?...後...少しだ...け....」


そう言って再び眠りにつき、寝息を立て眠っていく。


「本当にもうすぐで着きますから、起きてくださいよ」


「........」


それでも諦めず再度声を掛けるが、返事は無く村に着いてからでも良いかと考え起こす事を諦める。

馬車の揺れで揺れる凶悪な胸が目の端で見える、直ぐに視線を外し窓から見える景色に目を向ける。


何でこの人はこんなに不用心なんだ?、それにこんな格好はどう見てもオッサンだよな....。

皆は元気にしてるかな?、舞花は何時も通りにしてそう.....。


外の景色を見ながら、同じ空間にいる先生や一緒に召喚されたクラス。

それと自身の想い人を考えるが、心配は事は無いと考える。

道を進む馬車の回りは、森で延々と緑と茶色時々に動物に魔物が見えた。


鳥や兎それに目を凝らして見れば、奥の方に鹿か猪に似た何かが見える。

角が生えたり巨体だったり、目が変わっていたり日本に居た頃なら可笑しいとバカ話だったが。


ファンタジー世界なんだよな~ここって.....。


苦笑しながら、自分が持ってる常識が通じない世界だと頭の隅で割り振っていた。

色々な考え事をしていたが、それは不意に終わる馬車がゆっくりと速さを落とし、完全に止まってから御者の声が届く。


「勇者殿、村に着きました」


「ありがとうございます、デザさん。.....ほら粋先生、もう着いたので起きてください!」


御者に扮した城の兵士デザにお礼を言って、今も眠り続けてる先生の肌が晒してる肩を揺らして起こす。

もちろん肩を揺らしてる最中は、とっても目のやり場に困る胸が小刻みに揺れていた。

視線がそっちに向かないように、しっかりと目を壁に向けていた。


「......着いたのか?、.....ふうぁーあ.....」


やっと起きてはまだ眠たそうな目を擦り、大きな欠伸をしては少しの間放心してから。

背伸びをして意識を完全に覚ましていた、それから寝ていた時に乱れた服装を正しては、窓の外を覗く。

灰色の肩が出てる長袖で、少し黒色の短パンを着ていた。

肌の露出が多い服装なのに、どうしても魅力を感じられなかった。


「じゃ、行きますか最後のお仕事に。.....おい行くぞ谷風?」


何で先生が着る服は.....、こうもダメなんだろうか...。


気合いを入れてから馬車から降りて、降りてこない谷風陸たにかぜりくに声を掛けるが。

陸は先生の服装を見ては深い溜息吐き出してから、自分もを馬車から降りて行く。


「粋先生、その格好で出ないで下さい。ほら、これを来て下さい」


車内掛けていた白の外套を手渡し、受け取った先生は渋々と着ていく。


「誰もこんなの見ても、私は何とも思わないぞ?」


刺激的な格好を見られても平気だと言う先生に、流石の陸も呆れの目を向ける。


「そう思ってるのは粋先生だけです、それにあの格好じゃ襲ってくださいと言ってるもんです」


「何だ?、谷風は襲うとしたのか....変態だな。私のクラスに変態が居たとか、何処で教育を間違えたのやら.....」


肩を竦めては陸を変態と呼び、それを聞いた陸はまたかと溜息が出てしまう。


「僕が変態なら粋先生も変態になります、てか上は良いとして下は長ズボンでも穿いてください。大人なんだから、もう少しは節度ある格好をするべきです。それと何時も言ってますが不用心過ぎます!」


少し溜まっていた物を吐き出し、外見だけ女性ぽさっが有るが、肝心な中身を捨ててしまった先生にダメ出しをする。

聞いていた先生は耳を押さえながら、「聞こえません」と声を出しては聞こえない振りをしていた。

そのやり取りを馬車の上から見ていた、兵士のデザはまたかと呆れながら走っていた馬を愛でていた。


「.......、すみませんがデザさん自分達は村長に会ってきますね」


とりあえず先生を無視して、馬を愛でてるデザに爽やかな笑顔を浮かべては一言伝えて村の中に進んでいく。


「自分は此処で待ってますので、お気をつけて行って下さい」


大きめな声で進んでいく陸に声を掛けて、馬車の上でまったりし出していた。


「陸め私を置いて一人で行くとは、中々良い度胸してるな....」


陸に置いて行かれた事に、青筋を浮かべては先に行った陸の後を追いかけていく。


................


.........


.....


「オゲタ村の村長さんですね?、初めましてヘルズ国から来ました陸です」


オゲタ村の住人に村長の居場所を聞き、年老いた老婆が椅子に座ってるのを見つけては。

側まで近寄ってから、愛想の良い自己紹介をしていた。


「そうですな、わしゃがオゲタ村の村長ヒサだぁ。わざわざヘルズ国からよぅ~来ましたぁ、旅のお疲れがありましょう夜には宴をやらせて貰いますからぁ、それまでゆっくりして行って下さいぁ」


「お気遣いありがとうございます。しかし、直ぐに用事が終われば国に戻らないと行けないので。宴は大丈夫ですので、少しお話を聞かせては貰えませんか?」


道中の疲れを気遣われて夜に宴やると言われ、陸はやんわりと断り。

国から頼まれた依頼を果たす為に、オゲタ村や近隣の村に訪れては。

来た理由を告げては、村長ヒサに近頃の変わった事は無いかと聞いていた。


「変わった事ですかぁ.......、そうですなぁ~近頃は森の動物や魔物が活発化してますなぁ。それに角が生えた人を見たと大人連中から聞いてますな?」


「どの辺で見たかは分かりますか?、角が生えた人って?」


「それなら山の奥に有る、洞窟付近で見たと言ってましたなぁ。もし行かれるなら案内に誰か着けまがぁ?」


「.....お願いしても良いですか?」


一泊間を開けてから、村長ヒサの提案に乗りヒサは頷きながら快く了承してくれた。


「準備が出来ましたらぁ、村の中央に井戸に来て下さやぁ。そこに案内人を立たせておきますのでぁ」


「分かりました、準備が出来ましたら中央の井戸にですね?。それじゃ、準備しないと行けないのでお暇させて貰います....」


ヒサにお礼を言ってから、その場から踵を返し来た道を戻っていく。

準備と言う物が殆ど無く、そのまま井戸に行こうとしてその視線の先にいる人物に気付く。


「あの人はまたやってるのか....」


最早何も言えない現状に呆れながら、その人の元えと歩いていく。

その人物は何かに腰掛けては、手にしてる酒を口に運んでは幸せそうな顔をしていた。

その飲みぷりっに、回りに居たオゲタ村の男連中が歓声を上げては。

それに釣られて男共が、次々と酒を口運んで賑わっていた。


「まだ日が出てる内から飲んでるとは、良い御身分ですね粋先生?」


声を掛けられ手にしていた酒を落とし、ゆっくりと顔を向けては、表情を強張らせてから蒼白になっていく。


「ち、違うだ!。こ、これは....そう!水なんだ!」


「水だけでこんなにも盛り上がれるとは、余程美味しいでしょう.....。まさか先生が酒を飲んでる訳じゃないですよね?」


非常に穏やかな声音で、先生に微笑みながら問い掛ける。

バツ悪そうな表情をしては、額からは汗が出始めていた。


「もちろんじゃないか谷風!、先生が酒の誘惑に負ける訳が無いだろ?」


慌てて陸の言う事に肯定しては、言い訳を並べ立てる。


「そのセリフは他の村でも聞きましたよ?、別に飲んじゃ悪いとか言う訳じゃないですよ。せめてやる事が終わってから飲んで下さい、分かりましたか粋先生?」


「.......はい」


弱々しい声で返事をしては、顔を俯かせていた。

粋先生の反省を見ては、これで充分かと考え「次からは気をつけて下さいね」と許していた。


「それじゃ粋先生、村の井戸に行きますよ?」


「井戸?、何で?」


いきなり井戸に行こう言われれば、疑問に思い問い掛けてしまうだろう。

それが分かっていた陸は直ぐに、理由を言う為に口を開く。


「他の村でも同様で、オゲタ村でも角が生えた人を見てるらしいです、そこで見た場所に案内をしてくれる人が待ってるですよ」


「あー成る程な.....。じゃやっぱり魔族が近くまで来てるだな」


陸の説明で納得しては、その角が生えた人の正体を告げた。

言葉で返答しないで、顎を軽く引いて肯定した。


「じゃ、私は馬車に戻って大人しく寝てるよ。戦闘方面じゃ役に立たないからな....」


「いやいや、寝ないで自分の仕事をしてくださいよ」


自嘲気味に言うが、どう見てもだらけってたい思惑が陸には直ぐに分かった。

先生しか出来ない事をお願いするが、嫌そうな表情しては腕を前で組み凶悪な胸が強調される。

そこに目が行かないように、必死に意思の力で目を固定していた。


「身勝手な国の為に、天恵ギフトは使わない、谷風....もう一度考え直してほしい?」


確固たる意志の目が真っ直ぐに、陸の目を貫くように見つめる。

酒を飲んでいた人物じゃなく、教師として今目の前に立っている事。

何を考え直すのか分かっている、それでも譲れない信念が陸にもあった。


「粋先生....、先生の考える事は身に染みて分かります。それでも、皆を守るには今は国に保護されるのが一番なんです。それは粋先生も理解してる筈ですよね?」


陸の答えを聞いては眉端をピクリと動かし、静かに口を開き始める。

どこか遠い場所を見てるかのように......。


「保護か....谷風は優しいな、実際は逃がさないように国に人質を取られてる状態なのに。まぁ良いさ、どんな結果になろうとも、それを選んだのは君達だ私からは何も言えない....。じゃ私は大人しく待ってるよ」


「あぁ....うん...」


何も言い返せなかった、粋先生が言った事は間違ってない正論だとも。

それでも、あの日言った事はには偽りは無かった......。


「どうすれば良かったですか.....」


心を鋭利な言葉の刃で深く抉られ、自身の胸を押さえながら何から我慢する。

痛みと捉えられるし悔しさにも感じる、悲しみ、怒り、羞恥、始めての経験に戸惑ってしまう。


そのまま立ち尽くすが答えは出て来なかった、一回そこで区切りを着けては、深呼吸して気分を落ち着かせる。


「ふぅ~~すぅ~~ふぅ~~すぅ~~。よし!、今は目の前の事に集中!」


頬を二~三回叩き渇を入れては、待ち人がいる井戸に向かう為に歩きだす。

って言ってもそれほど遠くじゃない、寧ろ今いる場所からなら近場だ。

歩いて5分の近場、自分の今のステータスなら軽く走れば1分もしないで辿り着いてしまう。

それほど、今の自分が日本に居た頃とは規格外だと自覚してる。


それから、きっちり5分歩いてオゲタ村の中央の井戸に来た。

そこで待っていただろ、同い年ぐらいの少女が此方に気付き近寄ってくる。

美人と言う訳じゃないが、大人しそうな雰囲気で二本のオサゲが目に入る、手入れが行き届いてて茶髪が印象的だった。


「あ、あの!。り、リクさんで良かったですか?」


緊張してるのか、元々なのか分からないが落ち着きが無かった。

今も手をワタワタしては、小さい声で「どうしよう~」と慌てていた。

その姿に陸は微笑していた。


「初めまして、ヘルズ国から来ました陸です。案内の方お願いしますね」


「は、はい!。せ、精一杯頑張ります!」


両拳を前に出して、やる気を出しては意気込んでいた。


「それで....えっと?....」


「あぁ!、す、すみません。ま、まだ、い、言ってなかっですね。お、お婆ちゃんから頼まれたシアです!」


陸が少女の名前を言い淀んでいた所に気付き、物凄く深く頭を下げて謝り、自分の名前を告げる。


「そんな、慌てて言わなくっても良いですよシア」


「すうーーーはぁ~。すみません昔からの癖で、初めての人だと、どうしても上手く話せないです.....」


名一杯空気を吸っては吐いて、ゆっくりとした口調で話し始める。


「シアは人見知りなんだね、それは時間の問題だからゆっくり慣らして行こう。じゃ案内の方をお願いしても良いですか?」


優しくシアが緊張しないように話し、魔族を見た場所えの案内をお願いする。


「わ、分かりました。直ぐに案内します!」


「そんなに意気込まなくっても良いですから....」


やる気を見せるシアに、陸は微笑みながら見つめ。

「こっちです」と先を歩く彼女の後ろに続いていく、村の入口に出る前に場所にいる御者のデザさんに軽く説明してから森に入ってく。


途中で猪型の魔物に出会ったが、怪我もせずに倒せた。

真っ直ぐに突っ込んでくるのに合わせて、聖剣で縦に一刀両断して断った。

それを素早く解体したシアに、陸は感心しながら見ていた。

皮、肉、骨、牙と分けては背負っていた鞄に閉まっていく。


「帰りでも良かったじゃないのか?、行きにそんなに持ってたら疲れるじゃ?。それに意外と力が有るんだね....」


鞄が元の体積よりもパンパンに膨れ上がり、二十倍になり。

それを軽々しいく背負うのだから、シアの筋力には驚きが隠せなかった。


「こう見えて村で一番の力持ちですから!。それに、このままにしとくと勿体無いので皆と一緒に食べます」


胸を張りながら自慢しながら、肉塊になった猪に近づき小声で感謝の念を捧げていた。


「疲れてたら言ってね?、順番で持った方が体力的にも良いから」


「ご心配は無用です、こんなんじゃ疲れませんから」


シアの力強い言葉を聞いては、肩を竦めて再度シアに対しての印象が変わっていた。


人見知りで何かと小動物にも感じられ、今は力持ちだと知り頼もしく頼りになると思っていた。


「まだまだ道は長いですから、途中途中で休憩しながら行きましょう」


「リクさん、お気遣いありがとうございます」


持ちきれなかった猪を土に埋めてから、再び森の中を進んでいく。

途中、樹の根に足をとられて転倒したりするハプニングがあったが。

それまで、二人とも怪我は無く魔族を見たと言う洞窟まで来れた。


「ハァ....ハァ...。ここが...そうで...すか?」


息を切らしながら、そう問い掛けてシアは頷きだけで返事をする。

訓練や基礎鍛練は欠かさずこなしてきたが、山歩きはやはり慣れなかった。

ちょっと斜面で足が取られたり、整備された道を歩くのとは違い。

普段使わない筋肉を使ったのが原因だろう、自分もりも速く動き背中に重い物を背負っていのに。

息切れもせずに平然としては、軽々しい足取りで行ってしまうシアに尊敬の眼差しで見ていた。


「そうですよ、中には入らないでこの辺を彷徨いては消えたらしいです。洞窟の中は特に何も無かった筈です?」


洞窟の方を見ながら説明するのに釣られて、陸も息を整えてから洞窟の方を見る。

外見は何処にでも有りそうな洞窟だった、薄暗く奥が続いてて中から動物の鳴き声が微かに聞こえた。


「じゃ、ちょっと中に入って様子を見てきますので。シアは此処で待っててくれるか?、何か有れば大声で叫んでくれれば直ぐに駆けつけるから」


「待ってく....だ..、」


言いたい事だけ言っては、シアの言葉を聞かずに洞窟えと行ってしまう。


一人残されたシアは、近くにあった切り株に腰掛けて戻って来るのを待つ。

少し不満そうな顔して......。





特に変わった所は無いな?、石も普通だし有るとしたら苔とキノコだけか....。

魔族は一体此処で何をしてたのかな?、どの村でも同じ内容が上がってるもんな。

生物が活性化する、角が生えた人、今ヘルズ国周辺で何かが起きようとしてるだよな。

やっぱりあの話しは本当なんだろな.....、魔族が国境まで来てるって。


「はぁ~ー。近い内に戦争が来るのか....」


これまで記憶と知ってきて知識から出た結論、その事に気分が悪くなり深い悲息を吐いてしまう。

戦争が起きれば必ず戦場に駆り出される事に、命の危険性が増す事に、悲痛な表情になっては回避する方法を模索する。


「今の内に何か出来る事しないとな、考えてても拉致が明かないからな。戻ったらガースさんに言わないとな....」


ヘルズ国に戻ってからガースと話し合いをする事を考える、自分一人じゃ出来ない事は充分に理解してる。

どうしても国の王の意見を聞かなければいけない、自分が知らない情報を必ず知っていると考える。


「.......!」


考え事を中断させて、直ぐ後ろに飛び退く。

何かが此方に向かって飛んで来たのを音を、耳に捉えては地面に刺さるのを確認する。

見てる間周りからも来ないかと、身構えながら警戒する。


地面に刺さった短刀を目の端で確認し、飛んで来た方を目を凝らす。


徐々にシルエットが浮かび上がる、人と対して変わらない姿だが。

一点だけが人間には無い物があった、角が生えていた....。


「魔族!」


目の前にいる角が生えた人間、薄暗い中でつり上がった、金色の双眸が光ながら此方を覗いていた。

その魔族から感じる圧倒的な強者の気配、短刀を投げられだだけなのに。

身体が動く事が出来なかった、じわりと汗が垂れ目を逸らす事も瞬き1つも出来なかった。

一挙一動見逃せば、首に突き立てられた"死"が迫るのを感じて.....。


「ほぅ~。我の前で口が動くか。良かろう動く事を許可しよう(・・・・・・・・)逃げてみせよ」


唐突な言葉に動く事が出来なかった、身体の呪縛が解かれ動けるようになった。

獲物を見つけたと言わんばかりに、金色の双眸が輝き魔族から発しる気配が一際強くなる。

ただ、今分かる事はこの場から逃げる事だけ。

意識と身体が目的が一致して、来た道を全力で駆ける自信のステータスとスキルを駆使して。


アイツはダメだ!、実力が違い過ぎる今の僕じゃ絶対に敵わない!。

速くシアと合流して山を降らないと!。


「ほぅ~、中々の速さだ。だが、それじゃ追い付いてしまうな?」


けして大声で話した訳じゃないのに、洞窟を駆ける後ろから確かにそう聞こえた。

それも出口まで直ぐ目の前に迫っていた、更にスピード乗せて突っ切り、太陽の日で照らされた外に出ては周りを見渡し。

切り株に腰掛けてるシアを見つけ、側まで駆ける速くしなければ追い付かれてしまうと。


「きゃ!。リクさん!、この格好は恥ずかしいです!。.......中で何かあったんですか?」


荷物をその場に残しては、シアをお姫様抱っこして来た森を降っていく。

陸の必死な形相に、冗談でやってる訳じゃないと知り何があったのか問い掛けてくる。


「説明は後でします!、今は逃げる事だけを考えてください!」


「はい!」


二つ返事で頷き、振り落とされないように陸の身体えと体重を預けしがみつく。

木々の合間を縫っては避けて、再び出くわした猪型の魔物の上を跨ぎ、目にも止まらない速さで駆けていく。

それでも、後ろから感じる怖気が一向に無くならない。

一歩 一歩確実に近付いて来るのが分かる、金色の瞳が今も狙ってる。


「リクさん!、あっちの方に行って下さい!」


声を荒げては、行く方向とは逆に指を指して道を示す。

それに頷きで返しては、スピードを落とさずに方向転換して進む。

進む内に木の数が減っていき、一本も生えてはない広場に出てきた。


「何だ?、逃げるのは終わりか?。つまらん奴だな....」


ふんと鼻を鳴らしては、陸達を見ながら評価下げていた。

声と同時に大きく飛び退き、正面から対面してしまう。

洞窟の時とは違い、明るい太陽の下に魔族の容姿がハッキリとした。


頭から禍々しい程の黒い角が生え、サイズが不揃いな紫の髪。

何処までも貫く金色の双眸、服装は深青で動きやすさが特徴的なだった。

身体の内から迸る強者の気配、それを正面から諸に受けて気圧されてしまう。

継続中だった、お姫様抱っこのシアも同じなのか腕から震えが感じる。


「死ぬ前に何か言い残す事は有るか?、有るなら聞いてやるぞ?」


「....あ、貴方は何者なんですか....」


必死に喉から出せた言葉、声音は震えが表れ魔族の金色の瞳から目が離せなかった。


「ふむ。震えてはいるが、そこらな雑魚では無いようだな。我からしたら雑魚に等しいがな、名が知りたいなら楽しませろ」


何も無い空間に手を突き出し、何も無かった場所から亀裂が走り手を一気に引き抜く。

その手に握られてた大剣があった、自信の身長を優に越えた三メートル程の大剣。

刀身は毒々しい程の濃い紫をして、真ん中に黒い線が脈動していた。


「死ぬ前に教えてやる、我が愛刀"無毒ベネノサ"」


魔族の愛刀"無毒ベネノサ"を、軽く振ってはブンッと音がなり剣風が舞う。

それを軽々しい数回振っては構える、その度に剣風が陸達に届く。


「さぁ、剣を手に取れ。それまでは待ってやる」


陸が戦える状態じゃないと知っては、"無毒ベネノサ"を肩に担ぐような姿勢で待っていた。

逃げられる雰囲気でも無く、抱っこしていたシアを降ろし「遠くまで逃げて」とシアの背中を押して後ろえと逃がす。


見えなくなるまで見届けてから、腰に下げていた聖剣の柄を握り、ゆっくりと引き抜いていく。

白銀の刀身が表れて辺りを輝かせる、光を反射して眩しく神秘的な一面となった。


「抜けて良かった....」


聖剣が抜けた事に安堵する、抜ける時と抜けない時があり。

聖剣には意志があり、殆どが気まぐれに近かった。


「準備が出来たな?、それでは行くぞ....」


「ーーーーーー!」


魔族が言う終わると駆け出していた、ベネノサが届く範囲に一瞬で近づき降り下ろされる。

聖剣で受け止めようとしたが、直ぐに思考を変えて横に大きく飛ぶが。

読まれていたのか、降り下ろす起動途中に入っていたベネノサを、陸が避けた横えと軌道に変わって迫る。


ベネノサと陸の間に聖剣を割り込ませて、正面からぶつかる。

聖剣から手に伝わる衝撃を我慢して、その場に留まろうと踏ん張る。

力負けして後ろにぶっ飛ぶ、木々にぶつかりへし折っていく。

数十メートル行った辺りで止まり、力無く地面を転がる。


「ゴフッ......、強すぎる....」


口から出る血を拭っては、今ので再認識する1つの油断で死だと......。


「反撃しなければ死ぬだけだぞ?、それとも一緒にいた小娘でも殺せば本気になるのか?」


「そ、そんな事はさせない!」


目の前の魔族の暴挙を止める為に、天恵ギフトが発動する、黒髪だった髪が白銀に変わっていき。

黒目が銀色の双眸に変貌する、その変化をただ傍観していた魔族は関心してしまう。


「ほぅ~、天恵ギフト持ちか。実に素晴らしいな、これなら楽しめそうだ」


嬉々として戦闘が楽しめると、頬を緩ませてベネノサを構え直す。


「絶対に誰も死なせない!、行くよ"ルクス"力を貸してくれ」


全身が白銀一色となった陸が、聖剣に語り掛けると呼応するように刀身を震わせる。


魔族が距離を詰め、ベネノサの猛威が振るわれるが。

それよりも速く陸がその場から消える、白銀の閃光が走り"聖剣ルクス"が魔族の横えと斬り掛かる。

それに気付くが一瞬避けるのに出遅れ、脇に軽く貰ってしまう。


その脇に出来たな傷を見ては、魔族の口元がつり上がり笑みを作る。


「久方の傷だ....。素晴らしい、お前名は何と言う?」


「.....陸、谷風陸だ」


戦っていた敵の名を知り、忘れないようにその名を繰り返していた。


「リク、確かに覚えた。我の名は"ベノム・クロウラ"、その名をしかと覚えておけ」


魔族ベノム・クロウラ、陸もまた忘れないように復唱して頭に焼き込む。


「では、互いに死力尽くし戦いあうぞ。どちらか死ぬまで....な...」


「それはお断りです!」


同時に駆け出し両者の剣がぶつかり合う、その余波で周りの木が折れ地面を抉り。

互いに小さな傷を着けながら、一撃 一撃に全力を乗せ放ち合う。

だが、それも時間ともに徐々に陸が不利になっていく。

天恵ギフトの使用時間が迫り、白銀の髪が少しずつ黒に戻っていく。


「どうした?、先程から力が落ちてるぞ。本気で来ないなら死ね」


.....流石に、このままじゃジリ貧だな。

信念有る者に力(ビリーフ・フォース)も時間の問題だし、何よりベノム・クロウラにはまだ実力隠してるだよな...。


今までのやり取りで陸が、戦闘経験が少ないのはバレていた。

攻撃の後の隙を見つけても、そこを突かないでまるで楽しんでるようにも感じられた。


「次の攻撃に全てを乗せます!」


「ほぅ~、次でケリをつけるのか良いだろう。我も次に掛けるとしよう」


互いに武器を構え直し、静かに力を込めていく。

全身の筋肉に血を巡らせ、全てを逃さないように目を凝らし。

木々から落ちる葉を合図として、同時に駆け出し両者が雄叫びを上げながらぶつかり合う。


「うぉぉぉぉぉおおおお!、ベノム!」


「最後まで!、楽しませろぉぉぉぉぉリク!」


全力の一閃見舞い、両者が立ったまま時が流れ。

手から剣を落とし音を立てながら、崩れ落ちていく。


「素晴らしかったぞリク、この先強くなるのが楽しみだ今は生かして置いてやる....」


愛刀"無毒ベネノサ"を手ごと、亀裂が入った空間にしまい。

陸をその場に残しながら、森の奥えと消えてしまう。


ベノム・クロウラが去るのと同時に、此方に向かってくる人物がいるが。

天恵ギフトの使用と、最後の一撃で段々と意識が遠くなっていく。


「.....さん!」


必死な声を最後に意識を手放してしまう。


「リクさん!、目を開けてください!」


............


.......


.....



「....ここは何処だ?、それにアイツは!

。....うっ!」


「目が覚めたかぁ、身体中ボロボロなんじゃい。急に動き出せば傷が開くわいぁ」


目が覚めて見知らぬ天井を見ては、意識がハッキリとし出し。

魔族の男ベノム・クロウラを思い出し、横になっていた体を起き上がらせ。

身体に走る痛みに呻きを漏らし、声を掛けられそっちの方を向く。


「ヒサさんが、ここまで運んだんですか?」


声の主、オゲタ村の村長ヒサが居た、陸の問いに首を横に振って否定して。


「ここまで運んだのはぁ、孫のシアじゃよ。凄く心配していたからぁ、後で顔をでも見せると良いぁ」


「そうですか、シアが運んでくれたんですか。それよりも魔族は居ませんでしたか!」


「話しによると、シアが見たのはリク殿だけだった言ってましたぁ。今日はお疲れだぁ、そのまま横になってると良い。お連れやシアに目覚めたと伝えてくるぁ」


「あっ、すみませんがお願いします...」


頷きで返してはドアから出ていき、腕で目を隠し最後に見た光景を思い出す。

生きてたのは正直に嬉しいが、最後まで実力を隠されたまま相手をされ。

全力の一撃を手で止められた事に、ショックが隠せなかった。

何を思ったのか生かされ、あれ程の強者に遊ばれた事実が悔しかった。

信念有る者に力(ビリーフ・フォース)を使っても、殆ど何も出来なかった。


起きた事実と与えらた屈辱と無力感に、目尻な涙が溢れだす。


「......悔しい、これじゃ誰も守る事が出来ない.....」


心の内で自信を叱咤し、この日を忘れないと心に誓いながら。

再び眠りに着く.....。






その次の朝、まだ身体は痛いが起き上がり外に出る。

村の井戸まで歩き、水を汲み顔を洗っては水に映る自分を見る。


「情けない面だな....」


顔を中に無数の傷が有り、目が真っ赤に腫れたいた。


「リクさん!、もう大丈夫何ですか!?」


後ろから声を掛けられ振り向く、二つのオサゲをしていて両肩に担いでる大きな水瓶。

その筋力には驚きながら、苦笑してしまう。

シアは何故笑われたのか分からず、水瓶を担いだまま慌ててしまう。


「シアが昨日倒れた僕を運んだんだよね?、傷の手当てもありがとう」


「い、いいえ!。私は特に何もしてないですから!」


頬を赤く染めて慌てるシアに、愛くるしさがあった。


「シアが運んでくれなかったなら、あのままどうなっていたか...。そう思うと感謝が絶えないよ、だからもう一度言わせて。シアありがとう」


傷なんかないように、爽やかな笑顔を浮かべるその笑顔をに落ちない女性はいないだろ。

案の定シアは、顔を湯気が出る程に真っ赤に染めて、目を回しながら何時も以上に慌ててしまう。

原因が自分だと分かってない陸は、首を傾げシアを心配になってしまう。


「あっ、す、すみません!。私はこれで失礼します!!」


居たたまれなくなり、水瓶を担いだまま速足で去って行ってしまう。

シアの態度に何かしたのかと、心配になり後を追いかけようとするが。

身体の痛みで立ち止まってしまう、その場に座り込んで物思いに耽ってしまう。


「怪我して寝てるって聞いたけど、まさか女の子を落としていたのか...たらしめっ」


そんな悪態をしながら、近づいてくる先生を見て何処か安堵してしてしまう。


「随分な言い方ですね粋先生、これでも怪我人ですよ?」


先生に軽口で返しては、昨日あった事を話した。


「そうか、魔族と戦闘したのか....」


「はっ?、ちょ、粋先生?!」


突然抱きつかれた事に驚き、離れようと肩に触れるとそこから震えが伝わってくる。


「戦うなとは言わないが、あまり無茶をしないでくれ!。倒れたと聞いた時は、死んだじゃないかって心配したんだぞ!」


涙声で必死に訴えって来る先生を見て、慘痛してしまう自分が倒れたと聞いた先生の気持ちを知り。

自然と嬉しくなるのと同時に、強くなる事を強く決意する。


「ご心配を掛けました、だから泣き止んでください粋先生?」


「ば、バカ。泣いてなんか無い!、そ、それと村長さんが呼んでいたからさっさと行け!」


目を擦りながら言う先生を見て、先程の気持ちが消え微笑んでしまう。


「分かりました、ちょっとヒサさんの所に行って来ます」


「あぁ、分かった。あまり無理はするなよ?、傷が開くかもしれないからな?」


「分かってますよ粋先生....」


泣いてる先生を置いていき、村長宅えと向かっていく。

やはり怪我のせいか、歩くのが辛いが呼び出した本人を見つけ。

明るく挨拶をしてから家の中にお邪魔する。


「よう来たなぁ、大分怪我も良くなったかなのぅ?」


「はい。一晩寝ましたら良くなりなりました、それで何か僕に用が有ると聞いて来ました?」


「なに、孫を助けて貰ったお礼になぁ。リク殿を占ってみようとしただけじゃなぁ、どうだやってみるかぁ?」


「占いですか?、じゃお願いします」


「すまんがぁ、右手を貸して貰えるか?」


椅子に促されて座り、言われた通りに右手をヒサの前に出す。

大事に触るかのように両手で包み込み、目を閉じてから何かブツブツと呟き出した。

邪魔しないように静かに見守り、暫くしてから手を離して目を開ける。

ただ、占う前と変わり今は目の焦点が合わないように震え、ゆっくりと口が開き始める。


「勇者を召喚した国、罪を犯した青年は悪意の刃で悲惨な死を遂げ生涯の幕を降ろすだろう.......」


「.........?」


村長ヒサの口調じゃない、まるで機械が喋ったかのような無機質な声音。

焦点が合わなかった瞳が、徐々に合うように戻り始める。


「今のが占い何ですか?、その、何て言うか.....」


自分が知ってる占いとは、違う事に困惑してしまう。

内容が曖昧な証言じゃなく、明確内容だったこれに当て嵌まる言葉が有るとしたら予言.......。


「すまんのう、何を話したかは覚えてないじゃぁ。ただ、言える事それは何時起きるのかは分からぬ」


「ヒサさん、すみませんが自分は今から国帰ります。短い間でしたがお世話になりました......」


ヒサの占い内容がどうしても、頭から離れなくヒサに世話になった事を礼を言っては飛び出すように家から出て行く。

自分が寝ていた家に寄り、荷物を回収してから馬車の方に向かっていく。

心がザワついてて落ち着かなかった、嫌な予感がして冷や汗が出てしまう。


馬車には御者のデザ馬を世話していて、車内に粋先生が居た。


「おぉ~、リク殿!。御無事で何よりです、倒れたと聞いた時には心配しました!」


「すみません、デザさん会話を楽しみたいですが今すぐにヘルズ国に向かってください!」


「はっ、えっ?。わ、分かりました、直ぐに支度をしますのでお待ちを!」


突然の事に驚愕するが、直ぐに出発が出来るように準備していく。

それから車内に乗り込み、先生にヘルズ国に戻る事を告げるが占いの事は黙って置くことにした。

陸の表情が酷く顔色が悪かったが、先生は何も言わないで納得してくれた。



それから出発の準備が完了して、馬をヘルズ国に向けて駆けていく。



次は真樹の話しに戻りますので。

宜しくお願いしますm(__)m。

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