15話 王と勇者
松明で照らされた四角い空間、床は真っ赤に染まってる中で。
横たわってる人物は、意識を取り戻した瞬間に蒸せながら吐き出してしまう。
「ゴホッ...うっ..おぅえ.....ハァハァ...」
口から入り気管や胃に、侵食していた血が体内から出てくる。
それに目にも入ったのか異物感が合った、手で目を擦り拭っていく。
ある程度目が見え初めていき、視界に入った黒髪の幼い子供マラムを見ては憤慨してしまう。
「まだ、話しは終わってないだろ!。それに勝手に終わらせるなよ.....、まだ話したい事があったのに.......」
マラムの中にいる、ユッカに向けてぶつけてしまう。
最初は勢いは合ったが段々弱々しくなり、最後は呟くような声音だった。
「これを抜けば封印が解けるんだろ.....、それがダメだったらどうするだよ....」
マラムの胸に刺さってる"封印の短刀"を抜けば解けると考えるが、本当に解けるのか不安になってしまう。
「.......それでも」
ほんの少しの希望を抱き、胸に刺さってる"封印の短刀"の柄を掴む。
最初に触った時と同じ現象が起きる、体から何かが抜けていく感じを真樹は感じ取る。
「これが、魔力を吸われてる感じなのか....」
抜けていく正体はユッカから聞いていた為に、それほど驚くことはないが。
脱力感の中で更に手に力を加えて、全力で引き抜きに掛かるが。
"封印の短刀"が青白い光に覆われていき、掴んでいた手に痛みが走る。
「....ッ...。何が起きてるだよ?」
痛みで柄から手を離してしまい、再度掴みに行くがバチッと音を立てて青白い光に阻まれてしまう。
青白い光は次第に大きく広がっていく、マラムの体を包み真樹を弾いていく。
「これ以上.....近づけねぇ....」
唯一の出入り口まで押し返されてしまい、四角い空間に入る事が出来なくなってしまった....。
中に入ろうと手を伸ばし触れるが、バチッと音を立て痛みが指先に走る。
結界と呼ぶべき障壁に拒絶され、来るなと言われてる気がした。
「何で...だ..よ...、俺は諦めない絶対にだ!」
そんな事実を受け入れず障壁に触れる、バチバチッと鳴り痛みが手から腕えと痛みが来る。
一瞬の痛みでは無く激痛として、歯を食い縛り痛みに我慢する。
何故そこまでするのかは真樹自身にも分からない、初めて会った姉妹の記憶を見て体験をしただけなのに。
それでも、こんな場所に置いては行けなかった。
地下深く暗闇の中一人で、幼い子供をほっとけなかった.....。
「...うっ....まだまだぁぁぁ!」
青白い障壁に触れてる手の感覚が無くなり、激痛だけが真樹を襲う。
障壁が一際光を発しては、激しい音ともに衝撃で真樹をぶっ飛ばす。
「....えっ?....」
威力は絶大で、何時間も歩いた通路を素の声出して吹っ飛びながら通過していく。
その威力も段々と弱々しくなり、最後は階段下で止まった。
時間で言うなら40秒だろう、それほどの速さで真樹は吹っ飛んでいた。
「......痛くない?」
衝撃をもろに受けた筈なのに、身体に痛みがなく止まった衝撃もなかった。
「ユッカが守ってくれたのか?」
何故そう思ったのか分からないが、頭に出た答えはユッカだと告げた。
いや、そうで合って欲しい妄想だと言っても良い。
「まさかな...都合が良すぎるか、ハッハハ...」
バカな考えを捨て小さな笑い声を上げて、暗闇の中でゆっくりと壁を伝って立ち上がる。
「良く分かった、俺じゃ解けないのが。....しょうがないか、クズに聞きに行くか」
ユッカに言われた通りに封印をは解けないと知るが、そこで諦める訳じゃなくガースに聞き出す事にした。
"催眠歪み"なら容易に聞き出す事は簡単な為に、腰に着けてる袋収納から魔柔石を取り出そうとしたが一向に出てこなかった。
アレ?、もうしかして魔柔石無くなった?。
最後の奴は何処にやった?、......マラムの所か意識が無くなった時に落としたのか。
やらかしたな、最後の灯りを落とすとか....。
まぁ階段を踏み外さないように、慎重に行くしかないか....慣れるより感じろだな。
灯りが無くっても壁を伝いながら、階段を登っていく。
一段一段を確かに、足の裏から感じて踏み締めていく。
............
........
.....
二時間ぐらい階段を登って行っていき、先がない行き止まりに突き当たる。
やっぱり開いてないか.....、もう一度"王族の証"に魔力流すか?。
袋収納から王族の証を取り出し、右手に嵌めて魔力を流していく。
感触としては成功した、赤い光が灯り中に刻まれた術式が宙に展開していく。
幾重にも重なった魔方陣は暗闇を照らしていく、眩しい程ではなく直接目で捉えていた。
その普段見慣れない光景は何処となく美しかった...。
今更だかファンタジーって凄すぎるな......。
内心で今見てる光景に感激する、宙に浮かんでいた魔方陣が割れて灯りが無くなり再び暗闇が襲う。
目の前の壁が上に上がっていく音を聞きながら、下の方に出来た隙間から光が漏れ出していく。
壁が完全に上がったの確認するが、魔方陣とは違い暗闇の中に居た真樹には眩しく腕で目を庇ってしまう。
天窓から射し込む暖かい光が、『玉座の間』部屋全体に広がっていた。
最後に分かっていた時間は鐘音が九つの19時だった、何時かは分からないが朝を迎えていた。
目を庇いながら部屋に踏み歩いて行く、天井にシャンデリア派手な扉まで続く赤い絨毯。
どれも最後に見た時とは変わっていなかったが、玉座の端に見える人の腕があった。
「随分と......待ちわびたマサキ殿」
渋い声に何処か怒気を帯びてるような声音、その声が誰なのか真樹には直ぐに分かったが。
それよりも何故、ここにいるのか疑念に駆られてしまう。
「のぅ~マサキ殿.....、お主はどうやって知ったんだ?。余にはそれが考え浮かなかった、無知な余に教えてはくれないか?」
見ずもせずに喋るが、その喋り方は不自然な程不気味にも感じられた。
「....いや、それよりも此処で何をしてるのですかガース陛下」
僅かに動揺が声に出てしまったが、玉座に座ってるヘルズ国の王ガース・ヘルズに問い掛ける。
「それは、マサキ殿が一番に理解してる筈だか?」
やっぱりなのか....、ここまでで極力人は避けてきた筈なのに......。
誰かに見られていた?、騎士は洗脳していたのに?。
「成る程.....、ガース陛下がいる理由は分かりました。どうやって此処にいると知ったんですか?」
「良いでしょう教えて上げます、暗部の者がマサキ殿を監視していた、今までの行動をな」
ガースの口から語られる言葉に真樹は内心で驚愕する、今までの行動を監視されていた事に。
なんとか感情が出ないように堪えて、物凄い速さで頭を回転させる。
何処まで見られてるんだ......、洗脳する時も見られていたのか?。
リックやスタラの会話も聞かれていたのか?、なら計画も全部知ってると考えた方が良いか?。
いや、それよりも何処まで知ってるのか、聞き出さないと.....。
「今までの行動を監視していたのですか?、なんとまぁ~信用されてなかったですね。それとも勇者一人一人を監視してるのですか?」
嫌味含めた言い合いを言うが、玉座に座ってるガースはピクリとも動く事もなかった。
「いいや、監視を着けていたのはマサキ殿だけだ。それだけお主の行動に不可解な点が多く見つかった、一週間前の賊の襲撃もお主が手引きしたのか?」
「フッ....。賊と繋がってるなら、あの日サラ様を助けたりはしませんよ」
ガースの発言に鼻で笑いながら、賊の仲間じゃないと否定する。
今は襲撃した賊"スレイヤー"とは繋がってるが、一週間前の襲撃の時点では繋がってはいない、
本当なら繋がっていたかった、そうすれば父さんと.......。
今はそんな事を考える時じゃない、後悔するなら後だ今は目の前のクズに集中しないと!。
ズレかけた思考を消してガースの方に向き合う。
「それこそ作戦じゃなかったのか王女の気を引く為に?、作戦は上手くいったなサラの気を引けてそれもう大成功だ.....」
こいつは何を言ってるんだ?、そこまで俺を賊の仲間にしたいのか?。
冷静に事の対象をしようとするが、ガースの身勝手な言いに苛立ちを覚え始める。
「違うと行ってるじゃないですか、ヘルズ国の王は耳がお悪いですか?」
明らかに一国の王に対する言動じゃないのに、座ったまま動く気配もなく気にしてないような素振りにも見えた。
その事に真樹は疑問を抱くが、それよりもガースに対しての苛立ちが勝ってしまってる。
「それは王に対して侮辱じゃないか、不敬罪として死刑になっても可笑しくないぞ?」
「ここまで知ってる奴を生かす必要は無い癖に、何が不敬罪に死刑だよ!。こんな不毛な言い合い止めて、本題に入ったらどうだ私欲のクズ野郎」
着けていた仮面が剥がれ落ちるかのように、丁寧な口調が荒く粗暴になっていた。
「.....それがお主の本性か?」
声を聞けば驚いてるのか、座ったまま確認してくる。
それに対して真樹は、開き直るような態度を取りながら「だったら何だ?」と冷たく言い返す。
「まぁ良い、今更知っても何かが変わる事は無い。お主を捕らえれば全てが分かる....」
気にした素振りも無く、捕まえて聞き出すと意志が声に籠っていた。
「なら捕らえる前によ聞きたい事が有るんだよ、マラムの封印を解く方法を教えろ」
「マラム?.....、あぁ~化物の事かそんな名前だっーーーー」
「マラムは化物じゃねぇ!。あの子は普通の子供だ、直ぐに撤回しろ!!」
ガースの途中までの言葉を遮るように、真樹の怒号が重なり怒りで顔を歪ませて玉座に座ってるクズ野郎を睨む。
「何だ化物に情でも沸いたのか?、国をいくつも滅ばせる存在を化物以外で何て言えば良い?。まだゴブリンの方が可愛げが有るぞ?、あぁ....何て醜い化物なんだろうな?.....」
人をバカにしてるのか、嘲笑の声で笑いながらマラムの事を化物呼ばわりする。
その事に真樹の形相は益々怒りと憎悪で歪ませる、何時の間にか袋収納から父さんの片手剣を取り出し握っていた。
「それ以上......、口を開いたら殺すぞ」
明らかな殺意が籠った声で、クズ野郎が座ってる玉座の近くまで歩んでいた。
剣を真っ直ぐに裏側から指し貫く位置まで、その手で三人目となるがそれでも殺る為に.....。
「フン...、化物を化物と呼んで何が悪い?。もうしかして惚れてるのか?、あんな化物を好いとるとか変態なのか?。おっと、口を開いたら殺すだっけ?、やる度胸も無く勇者の中で最弱なお主が?。何と面白い冗談か、クッフフッ....アッハハハハ....」
マラムや真樹を罵倒し、何の冗談と豪快な笑い声を上げる。
「もう良い....死ね....」
黒の双眸から光が失い、玉座に座ってるクズ野郎に裏側から片手剣で貫く。
木を貫き柔らかい生地を進み、座ってるクズ野郎の腹から剣の先が見え始める。
貫かれたのに痛みで声も出ず、その場から動く気配もしなかった。
後ろから見えた腕にも変化は無かった事に気づき、剣を抜いては前に回り込みクズ野郎を見る。
「こ、これは!」
座っていたクズ野郎を見て、真樹は驚きを口に出してしまう。
何故気付かなかった!、今までにも変だと気付けただろ!。
動かなかったんじゃない、人形の腕じゃ動ける訳がなかったんだ......。
玉座に座っていたのがガースだと思っていたが、実際は精巧に作られた人形の腕だけだった。
「殺ってしまったな、これで言い逃れは出来ないぞマサキ殿?」
玉座にあった水晶が声の出所なのか、点滅と同時にクズ野郎の声が届く。
「そう言う事か....、嵌めやがったなクズ野郎!!」
「気付くのが遅かったなぁ~、これでお主を殺す手筈が整ったぞ......」
それが最後に水晶の点滅は消え縦に半分と割れる。
クソっ!、やらかした直ぐに此処を離れないと.....。
唯一の出入り口に向かって走り出す、派手な扉まで半分と切った所で足を止める。
勝手に両扉が開き始めて行き、隙間から見える人物を睨むが後ろに居た連中を視界に収めるのと同時に驚愕してしまう。
「何で.....お前らがいるだよ.....?」
先頭を歩くガースに続き後ろを歩いて来るのは、一緒に異世界ウェルムに召喚された勇者達だった。
クズ野郎と目が合い、不適な笑みを浮かべて此方を見ていた。




