12話 忌み者
あらすじが、大きく異なっていたので。
修正しました、旧あらすじ読んでいた方は。
大変失礼しました、このような事が無いように気を付けます。
壁一面に本が並べられ奥に机、手前にはソファーとテーブルがある。
本は魔族に関する物ばっかりで、机には各方面の領主に出す指示書だ。
優雅に茶を飲み、読み途中の本を開き読んでいく。
もう一口飲もうと手を伸ばすが、掴みきれず床に落として割ってしまう。
はぁ~またやってしまったか、これじゃアイに怒られてしまう。
内心でそんな事を思い、割れた破片を広い濡れた床に生活魔法"クリーン"かける。
すると濡れた床はみるみるに乾いていき、元の状態に戻っていく。
破片は証拠隠滅出来ない為に、廊下で待機してる専属メイドを呼ぶ。
ドアをノックして部屋に入ってくる、金髪で長い髪を後ろで結って両目を瞑ってる子供。
「お呼びですかマリス様」
その声は感情が籠ってない無機質な声、子供の声だが何かが違う感じがする?。
「アイ、すまないが。またやってしまった」
「分かりました、すぐに片付けます」
短いやり取りだかそれだけで通じる、長い間を一緒に居た為に互いに通じる。
割れたカップの破片を小さい箒で集め、袋に入れて片付ける。
「ありがとう、アイ」
「これが仕事ですので。それと、追加の案件です」
使える主に書類を渡して、違うカップに茶を注ぎドアの前まで移動する。
「破片を捨ててきますので、失礼しますマリス様」
「あぁ、また何か有れば呼ぶよアイ」
部屋から出ていく専属メイド"アイ"を笑顔で見送る、何時もと変わらない子供を。
「....相変わらずか」
ポツリと呟き、感情が出なくなった理由を何時も考える。
一体何が原因なんだアイ、どうして話してくれない?。
二人だけの家族なんだから、昔みたいに笑ってくれアイ...。
部屋の主、ヘルズ国の大臣マリス・アルミナ。
赤髪の短髪で小さい頃、生まれ持った魔力の高さにその地の領主子爵アルミナ家に引き取れた。
ツルガ村の本当の両親から、金で買い取った...。
だが、そんな事を恨んではいない、寧ろどうでも良かった明日が生きられれば、それで良かったと思ってる。
そんな日々を数年過ごして、近くの国境で魔族と人間との戦争が起きた。
それは日に日に戦火を増していくばかり、近い内にここも巻き込まれる事は分かっていた。
当時10才の少女は嫌な予感を感じて、ツルガ村えと馬に股がって向かっていく。
その馬はアルミナ家で一番の暴君で手を煩っていたが、それを操る少女は颯爽と駆けていく。
ツルガ村と屋敷はそんなに遠い訳じゃなかった、一時間ぐらいで村に着いて、少女の目には天まで昇る赤い火を捉えた。
燃えてる村を見て少女は察した。
もう巻き込まれたのね....、せめて両親の死に様でも見て帰ろう。
あまりにも冷徹で、自分を売った親の死に様を見る為に馬から降りて。
燃えてる村えと歩いていく、今も近くで戦争をしてるのに。
火が回ってる村を歩き周りを見渡す、肉の焦げる匂い、真っ黒な炭と化した死体、今もゴウッと燃えている家。
だが、少女は気づかなかった今後ろから迫ってる脅威に。
脅威はゆっくりと腕をあげてる、少女に向かってその剣を降り下げる。
少女は気づかなかった、今降り下ろされた刃を庇った女性を。
その女性が倒れた音に後ろを振り返って、ここで初めて知った脅威に。
自分を庇ったろう女性を見て驚愕する、数年越し久しぶりに見た。
「ママ...」
庇った女性は少女の母だった、肩から胸えと伸びてる剣傷そこから血が溢れる。
「ごめ...ん..なさ..い..マリス..」
少女の頬を血で濡れた手で触りながら、その呟きが最後の言葉となって力尽きた。
少女はただただ唖然としていた、見えてなかった一瞬の出来事に声すら出なかった。
その行為をした者を見上げる、頭から角らしき物を生やしていた。
つり上がった目が少女を睨み、興味が無くなったのか何処かえと去っていく。
一体どうして庇ったの?、意味が分からない?。
私を貴族に売ったのにどうしてなの?、分からない分からない分からない分からない。
そんな疑問が少女の心を埋めていく、だが少女は知る事が無かった。
母だった女性がどんな思いで、娘を庇った事を女性は後悔していた。
金に目が眩み娘を売ってしまった事を、危険が迫ってる子供が一目で娘だと分かり身を挺して庇った。
こんな事で許されるとは思ってない、それでも謝りたかった....。
それから少女は歩いた、ひたすらに歩いた...答えが見出だせず。
何処から声が聞こえて導かれるように歩いてく、着いた先には泣きじゃくる赤子がいた。
その赤子の親だと思う者が、腹に見える剣傷は母だった女性と同じだった。
傷は深く血が流れてる、その量からして死んでると分かる。
赤子の側まで寄って抱き抱えかる。
「アイ...に..、触..らな..いで..」
「ーーーー!」
急に発しられた声に驚く、死んでいたと思った赤子の母が口を開いた事に。
「お..願い..しま..す..。アイに..だけ.は..触ら..な.いで..」
「ーー赤ちゃんには何もしない!、だから安心して!」
赤子の母親に安心させるように言う、それを聞いた母親は静かに笑って逝ってしまった。
「貴方に神の祝福がありますように。安心して寝てください赤ちゃん...アイを守ります」
ーーーーアイを抱えて屋敷に帰ってきた、アルミナ家はアイに良い顔せず邪魔者として扱った。
少女はアイを自分の妹として接していく、本当の姉妹のように。
二人で笑ったり、泣いたり、怒ったり、悲しんだり、だけどアイが6才になった頃。
アイは感情を表に出さなくなり、両目を瞑ったままになった。
いくら聞いても答えてくれなかった、....それからのアイは周りの者達に不気味だ悪魔だと囁かれていた。
もちろん私は怒った、そのような事を言う者達に。
それでもアイは気にしないで、メイドとしての仕事をしていた。
ここまで思い出しても、アイがあんな風になった原因が分からない?。
有るとすれば6才の時、ほぼ毎日居たのに変化に気づけなかったのか....。
家族としても姉としてもダメだな.....。
「失礼する。礼の件について報告に来た」
どこともなく現れて低い声が、マリスの耳に届き思考を現実に引き戻す。
小さい頃のアイとの思い出を、中断され少しムッとした顔で低い声の主を見る。
黒を基調とした服装で、頭をすっぽり覆うフードをしてる。
それで前が見るのかと思うぐらいに、顔が見えなかった。
そして礼の件って事で直ぐに思い付く、自分が頼んだ案件の報告をこの者"暗部"が来たことを。
「報告を聞こう」
頷いて、口は見えないが口が開く感じをして、一つも逃さぬよう耳を傾ける。
「例の御仁は、特に何も無かったです。ただ不可解な点が多く見られます」
不可解な点?、眉を寄せて話の先を促す。
「はい。今朝、陛下と謁見をしていた時間が7時で、部屋から出てきた時間が8時なのです...」
「ん?、特に問題がないと思うが?」
「その時点では、特に問題はございません。ですが時々魔力の流れを感知致しました、それも人に向かってです」
何故そんな事をする?、フルサトにどんなメリットがある?。
人に向かって魔力を....、可能性が有るとすれば魔装飾品か...?
暗部の言葉を自分なりに考え、真樹の行動に憶測を立てるが。
周りからしか話しを聞いていない為に、真樹の人間性の正確差が欠ける。
「謁見内容は聞けたか?」
「いえ、部屋の前でサイル様が居ましたので。近付く事が出来ませんでした」
「王直轄暗部団長"幽影"サイルか...」
「我ら暗部はサイル様には敵いません、あの方は別格です」
奴の強さは知ってる、刈る姿を見せずに敵を屠る姿から付いた二つ名。
陛下が最も信頼してる懐刀だけあって、国の裏の内情は知ってるっと来た...。
「今の団長はどうしてる?」
「サイル様が表に行ってから、団長も表で活動するようになりました。ですので今の暗部は、ナンバー2を元に動いてます」
ナンバー2か、暗部にも序列が合ったのか?。
「そうか。陛下に謁見内容を聞いておく、暗部は引き続き監視しろ。その都度何か有れば報告に来い」
「御意に」
現れた時と同じで消えていく暗部、部屋に残ったマリス・アルミナ大臣として考える。
真樹の行動を、ヘルズ国に取って損得を考える。
一体何をしようとするのか?、陛下と何を話したか。
考えても答えがまだ出ず、陛下と話しをする為に立ち上がり部屋から出ていく。
..................
.............
.......
武器庫を後にして、王座の間に向かって行く途中でトッペと隣に同僚の兵士の姿が見えて。
来た道と逆側に走って逃げてきました、....だって気付かれれば地獄が待ってるですよ!。
それに隣に居た兵士の顔が蒼白になってました、ずっと同じ会話が続いているのが分かる。
哀れな誰か知らない兵士よ、安らかに眠ってください...。
屍は拾わないので安心してね、近くにトッペもいそうだから行きたくないです...。
心の中で兵士に合掌して存外に扱う、短い時間で植え付けられたトッペ恐怖症...。
真樹にとっては一大事な程にトッペが恐い、その姿を見ただけで汗が溢れる。
悪い人じゃ無いのは分かってるだけどさぁー、話がね....同じ話しばっかだし違う内容だったら。
もう少し楽しく笑えるだよな...、此方の話しは聞かないし~。
トッペの不満を内心で愚痴り、だらだらと歩いていく。
窓から差す夕日が長い廊下を彩っていく、静かで人が一人もいない空間に。
鼻唄を交えながら、ふっと思い出して袋収納から義手の説明書を取り出す。
「まだ読んでなかったな~」
小声で呟き説明書を読んでいく、読んでいく内にどんどんと頭が混がらがる。
口頭でも適当だったのに、説明書が雑すぎません?。
でも、伝えたい事は分かったから良かったけど。
義手の構造がこんなに凄いとは...、それに死ぬ可能性が高いのも...。
簡単に説明すると、失われた部位の神経回路を義手の擬似神経と繋がる時に生じる痛みと。
擬似神経を、自身の魔力と馴染ませるのにも痛みが生じる。
その二つの痛みが想像を絶する程で、運が良ければ気絶で済むんだけど。
そんなのはごく稀で殆どが死んでしまうらしい、幾度の実験で分かった事実。
実験対象は、人間よりも丈夫な魔物で行った。
成功例はまだ一回しかない、で、魔力を流しながら失ったな部位をイメージして。
少しずつ義手の形を整いていく、成功すれば固定を付与する必要もない。
金属が魔柔石だったのには驚いた、血液と同じで魔力も義手を通って体を循環する為に元に戻る事が無いだそうだ。
マスノエから貰った義手は、まだ未完成で成功してもイメージした事がそのまま反映されてしまう。
完成すればそんな事は、起きないと書いていた。
完成しないと使用者は困ってしまう、例えばの話なのだが。
ふと、女性の胸を見てしまいそれを頭の中で思い出し想像するとしよう?。
魔力がそれに乗っ取って義手が形を変えたら、どうだろうか...一瞬で変態が出来てしまうだろう?。
そうならない為に、今は試行錯誤してるって書いてました。
これじゃ貰っても使う事は出来ないね。
まぁ、完成するまで待つしか無いか...。
「難しい顔して、お困りですか?」
「うひゃ!」
唐突に後ろから声をかけられ、奇声を上げて飛び退いてから後ろを振り返る。
そこに居たのは....「子供?」、心の声が出てしまった。
金髪で長い髪を後ろで結ってる子供、何故か両目を瞑っていた。
「はい。子供ですが何か」
子供の声だか無機質な声だった、小学上級生だろうか身長的に?。
「特に何も無いかな?、それとも迷子?」
「迷子では御座いません。この通り専属メイドして働かせて貰っています」
そう言う子供は白と黒を基調とした、メイド服の裾をつまみ上げ御辞儀する。
「...専属メイド?」
「はい。ヘルズ国の大臣マリス・アルミナ様に、使えさせて貰っています」
そんな需要な事を言って良いのか?、子供だから分からないのか?。
言葉遣いは俺より上手いし、子供に負けてるよ俺....。
「大丈夫何ですか?、そんな事を言って?」
「言っても大丈夫ですのでご安心ください、それに大臣の専属メイドなら下手な手出しも出来ませんので」
めちゃ頭が良い!、子供だと思ってすんません!。
ん?.....少し待って、大臣マリス・アルミナって計画に携わってる一人じゃ!。
「マリス・アルミナ様の事を、聞かせて頂きませんか?」
「私がお話し出来る事は御座いません|
丁寧に言ってもダメか~、内情とかを聞かれると思ったのかな?。
ここまできっぱりと言われてしまった、こう言う輩は多いだろうな?。
「俺が聞きたいのは、性格とか普段はどういった人なのか国の内情とか興味無いです」
ストレートに言うのが良いよね、その方が印象が良いってテレビで言っていた気がする?。
それにしても顔の表情が変わらないし、声も変わらない。
先程から感情を表れない子供が、不思議だと内心で思っていた。
考える素振りもしない子供、見た目は愛くるしいかった。
「聡明で実力もあり、国の政治は一人でこなす方です。普段は本をお読みになられます」
「教えて頂き、ありがとうございます」
「....少し変わった方ですね」
「変わってますか?」
「大抵の人達は、私から国の内情やマリス様と繋がりを持ちたい人達ばっかだったので」
子供からそんな事を言われて、真樹にはどうでも良かった。
繋がりを持ちたいとか、国の内情とかクズ達の思惑を知った今は。
「そうなんですか?、私にはどうでも良かったので...」
「国がお嫌いなのですね」
真樹は驚く、子供に思っていた事を当てられたのが。
それと同時に子供が不気味に思えた、これ以上読まれたくないと。
無意識に後ろに一歩下がって、身を構えてしまった事を。
「不気味に感じられましたか....」
真樹は自分がした事を後悔した、目の前の子供が悲しいそうな顔をしていたが。
気のせいだと思える程、直ぐに表情を戻した子供を見てしまった事を。
こんな小さい子供に、何やってるだよ俺!。
この子は何もやっていないだろ!、俺のバカ野郎!。
心を読んできた人を知ってるだろう!。
自分自身を叱咤して、目の前の子供に向かって深く頭を下げて謝る。
「思ってる事を当てられ、目の前の子供に不気味だと思ってしまった事をそんな風に見てしまってすみません....」
心から謝罪した、こんな小さい子を傷つけた事を。
今も自分を叱咤し罵り、自分が行った愚かな行為を攻め続けた。
「メイドに、頭を下げるのはお辞めください。周りの人達にも、言われていましたので気にしてないです」
気にしてないですと、言う目の前の子供が一瞬しか見れなかった悲しい表情を。
「それでも、君を悲しませた」
「...謝って頂きましたので、これ以上の不毛な言い合いは止めませんか」
これ以上続ければ、この子に迷惑をかけてしまう。
「....そうですね。それにまだ名乗って無かったですね。勇者召喚された一人、マサキ・フルサトです」
「先程申しましたが、大臣マリス・アルミナ様の専属メイド"アイ"です」
遅すぎた自己紹介を互いにして、目の前の人物が誰なのかを知った。
目の前の子供がアイ、目の前の青年がマサキ・フルサト。
「それで、勇者であるフルサト様はここで何をしてるのですか」
「勇者はいらないので、真樹だけで良いですよ。そうですね~、目的の場所に向かってる途中ですね?」
「分かりましたマサキ様。それで目的の場所と言うのは」
さて、どうしようか?。
適当に言ってもバレるだろうし?、何て言うようか?。
ん?、今気付いたけどアイが持ってるのって、何かの破片かな?
「その手に持ってるのって、何かの破片ですか?」
「マリス様が割ってしまった、カップを片付ける途中でした」
その途中で俺と会ったのか、仕事の邪魔してすみません。
違うかアイから声をかけて来たんだよな?。
「成る程、じゃ直ぐに行った方が良いじゃないですか?。大臣の専属メイドなら仕事とか一杯なんじゃ?」
「その心配は御座いません、マリス様一人で大抵の事は出来ます。私の主な仕事は茶を入れたり、掃除や身の回りの事をするだけですから」
雑用ばっかだ....、どんだけ大臣は凄いんだよ。
一人で大抵の事が出来るとか、なら勇者召喚するなよ。
「以外と少ないですね?」
「ただ側に、置きたい為に与えられた役割ですから。それに私も一緒に居たかったので....」
「...それはどう意味ですか?」
「家族です」
疑問に思い聞いてみたが、その一言が真樹に届き納得してしまった。
「....家族ですか。最後まで一緒にいて上げてください、その方が幸せだから...」
家族...か、大臣マリス・アルミナは家族がいるのに。
どうして勇者召喚や、非道な計画を実行できるんだよ。
本当にこの国はクズばっかだ、それでも善人はいる。
モルータ、リック、スタラ、トッペ、マスノエ、そして目の前のアイ。
六人だけが、俺の目と耳で見て聞いた。
「そんな、悲しそうな顔をしないで下さい。必ず元の世界に帰れますので、どうか希望を捨てないで」
無機質な声なのに、その言葉に籠められた想いを感じた。
真樹は微笑して、アイの頭に手を置き豪快に撫でるが。
そんなに嫌そうな感じはしなかった、止める気配もなくそのまま豪快に撫でられるアイ。
「ありがとう、アイの言葉で元気が出ました」
「そうですか、それで撫でるのに意味はありましたか」
今も撫でられながら真樹に聞くが、真樹は撫でる手を止めない。
今、辞めれば真正面からアイを見る事が出来ない気がした。
元の世界に帰る手段が一つしか無いのに、それも不可能に近かった。
創造神メッセに会う事が、広いウェルムを歩き会うまで生きてる確証は無いと真樹には分かっていた。
だから、励ましてくれたアイに自分を見られたくなかった。
自分でも分かるぐらい、今酷い顔してる気がした。
「そんなのは決まってるじゃ、アイが可愛いからだよ」
適当にはぐらかしって、アイの頭を今度は優しく撫でる。
ボサボサになった髪を解かしながら、アイの口が開く。
「御世辞でも嬉しいです、それにマサキ様はこの目の事を聞かないのですね」
「そうだね、さっきから気になってはいたよ?。でも、無理に聞く必要もないでしょ?」
大分気持ちが落ち着き、アイの頭から手を離す。
撫でられていた頭を触りながら、少し名残惜しそうにしていた。
最初は無反応だったけど、よく見れば子供らしい反応してるな~。
ただ、感情が表に出づらいだけで、ちゃんと笑ったり、悲しかったり、怒ったり、泣いてたりする子供だ。
そう見るとアイは可愛いな、母さんだったら抱き締めてそう。
一人で苦笑してから、もう一度アイを見る金髪で長い髪を後ろで結って。
今まで見てきた白と黒のメイド服を着て、小学上級生の愛くるしい子供を。
「一人で悲しんだり笑ったりっと、忙しそうですねマサキ様は」
声もよ~く聞けば、どんな感情で言ったのか分かる。
今のは笑ってる感じだろうか?、最後の部分でトーンが少し上がっていた。
「そんなに面白かったですか?」
「ーーーー!、話を戻してもよろしいですかマサキ様」
今のは....驚いたのかな?、体が震えたのが分かったし。
「あ、はい。お願いします」
「マサキ様が目に興味が有るけど、聞かないってのは分かりました。そこでもう一度お聞きします、目を瞑ってる理由を知りたいですか」
アイの言動を耳で良く聞いて、アイがどんな風に思って言ったのかを。
表情の変化もないか良く見て、答えを導きだす自分の言葉で。
「本音を言えば知りたいです、ですが今日初めて会った人に話せる内容じゃないってのも分かります。だから話してくれる日を待ちます、お互いに良く知った時を」
アイの瞑ってる目を見ながら、真樹なりの答えを出した。
それを聞いてアイが、どんな風に感じてどう解釈するのか。
真樹は静かに待つ、アイの体が震えてるのを目で確認して。
「......」
「......」
「......」
「......」
沈黙を破るかのように、アイの声が耳に届く。
「ありがとうございます。マサキ様の気持ちを知れて嬉しかったです、ですが話すなら最初に、言わなきゃいけない人がいます。その後でも大丈夫ですか」
声を震えながら話すアイ、その声にはハッキリとした感情が入ってる。
今までよりも、見ても聞いても分かるぐらいに表に出ていた。
「うん、大丈夫だよ。今の気持ちを家族に聞かせて上げて、その後はお互いに知って色んな話しをしようね...」
「はい。必ずですよ約束です」
それに頷いて小指を出して、約束しようとするが首を傾げたアイは出された小指を見つめる。
「元いた世界の約束をする時のお呪いだよ、お互いに小指を結んで約束するだよ」
アイの手を掴み、無理矢理に小指を結ぶ。
手を掴まれたアイは少し戸惑っていたが、なすがままに受け入れて指切りをする。
「嘘ついた~ら針千本の~ます、指きった。これで見えない糸が結ばれたよ」
「これで良いですか...、なんだか不思議です...」
結んだ小指を見つめて、頬を紅くしたアイ。
それを見てニヤニヤする真樹、あまりにも可愛い仕草が見えて考える。
おれにも妹がいたら、こんな感じで楽しく過ごせたかな?。
母さんと父さんに俺と妹、母さんに似た妹はさぞ可愛くって美人なんだろうな~。
でも、それは叶わない夢なんだよね.....。
自分の家族に妹を入れた家族図を考えて、楽しくなるがそれも一瞬で崩れ落ちる。
もう叶わないと分かっているから...。
「カップの破片は此方で片付けて置くから、今の気持ちを大切な人に伝えに行っておいで。感情を隠す必要はもう無いでしょう?、これからは自由に生きて」
「はい!」
アイから破片を貰い、駆け出そうとするアイを止める。
「何ですか?」
「少しだけ待って」
今にも走り出そうとするアイを止めて、袋収納から魔柔石を取り出して魔力を流して形を作っていく。
発光しながら魔柔石は形や色が変わっていく、出来たのは紫の花だった。
それを髪留めにしてアイに渡す、受け取ったアイはまじまじと眺める。
「勿忘草って言う花でね、小ぶりで可愛らしいだよ。アイに似合うと思うから、出会った記念にあげます」
パァーと輝く笑みを浮かべ、自分の髪を結ってる髪留めを外して。
勿忘草の髪留めで、綺麗な金髪を一本に結んでいく。
金髪から見える、紫色の勿忘草がアイに良く似合っている。
「....どうですか?」
クルっとその場で回り、モジモジしながら感想を聞いてくる。
「凄く可愛いですよ」
笑顔をそう答える、会った時と今のギャップにドキッとしてアイを凝視してしまった。
褒められたアイは子供らしい反応をして、喜びを表している。
「ありがとうございます、マサキ様!」
「お礼はいいから速く行っておいで」
「では、先に失礼します」
一礼して廊下を走っていく、どんどん姿は遠ざかっていき見えなくなってしまった。
アイが見えなくなるまで見送っていた、完全に見えなくなった所で自分も歩く。
「また、いつか会おうね...」
誰もいなくなった廊下に、ポツリと響く悲しげな声が。
..............
..........
......
少女は走る、それほど速くないが自分では一番速いと感じて。
青年の言葉で後ろを押され、大切な人に今の気持ちを伝える為に。
今まで感情を出せば大切な人に、迷惑を懸けると思って。
自分は足手まといで周りから忌み嫌われてる、だから一挙一動に気をつけていた。
暴言や暴力を言われたり与えられていた、その度に泣いたり怒ったりすれば。
マリスお姉ちゃんを悲しませて、色んな人達と争いを産んで溝が出来てしまう。
今後のマリスお姉ちゃんに、障害を作ってしまう。
それならと、自分が我慢すれば良いだと言い聞かせた。
そんな日々が続き、いつの間にか感情を表に出す事が出来なくなっていた。
人形の用に言われた事をやり、声も無機質と化していた。
でも、それは突然に崩れ落ちた。
廊下でしわを寄せながら、難しい顔した青年が声をかけて驚く姿は少し笑ってしまった。
少しお話しをして、青年は一歩後退り距離を取ってしまった。
またやっちゃた...何で言わなくっても良い事を言っちゃうかな。
私を気味悪ってる警戒心剥き出しで睨んでくる、ごめんなさい....そんなつもりは無かったの!。
心の中で反省するが、それが声に出てしまった。
少女はその事に直ぐに気づき、いつも通りの表情に戻すが。
それも直ぐに剥がれ落ちそうになる、だって青年が頭を深く下げて謝ったから。
色んな暴言を言われて、あからさまに体で態度を示した人達もいた。
けど、少女に取って初めての出来事だった。
謝れることなんて、物心ついてから一度も無かった。
マリス姉さんを除いて、目の前の青年が心から言って謝ってるのが目に見えて分かった。
この人は...今までで会った人達と全然違う...。
少女は青年に、閉ざしていた心の壁を少しずつ開いていく。
勇者マサキ・フルサト...、素敵な名前...。
それに愛称で呼んで良いなんて、少し恥ずかしいです!。
でも勇者って呼ばれるのが嫌いみたい、物凄く嫌そうな顔する?。
真樹の言動から、彼の感情を読み取っていき。
少しでも真樹を知る為に、耳を傾け聞いていく。
目的の場所?、どこですかと聞いても話しをはぐらかされてしまった。
聞かれたくないみたい?、無理に聞く必要も無いよね。
そんな事よりも、家族に何かあったのかな?。
少女は考える、真樹が家族に過剰に反応した事を。
それも直ぐに考えは至った、彼は召喚されて来たのだから家族と離ればなれになってしまった事を。
あぁ、それじゃ家族に一生会えないなんて...。
そんなの辛すぎます、ここで私が出来る事なんて無いけど...。
少しでも元気になってくれるなら!。
「そんな、悲しそうな顔をしないで下さい。必ず元の世界に帰れますので、どうか希望を捨てないで」
私にはこれしか出来ませんが、元気を出して下さい。
真樹の手が少女の頭に置かれ、豪快に撫で始める。
マサキ様の手で、今撫でられてます!。
少し荒っぽいけど、嫌じゃないです...。
で、でもお顔が見えません~。
少しは元気になったみたいだけど?、何で撫でてくれたのか?
少女は真樹に聞く、意味はあるのかと...。
真樹の言葉が、少女の耳に入り内心で喜びを表す。
か、可愛い...エヘヘヘ~可愛いからって~。
今度は優しく撫でられて、気持ちいいです~~。
それに御世辞でも嬉しいな~~、もう一回言ってくれないかな?。
ーーーーーあっ!、もう終わりなの?。
もっと撫でられたかったな...。
撫でられるのが終わってしまって、少女は名残惜しそうに頭を触っていた。
まだマサキ様の温もりがある...、大きな手の温もりが...。
ーーーマサキ様は目の事を聞かないのかな?、不思議だって感じないのかな?。
少女は聞いてみたが、真樹の口からは『興味はあるけど、無理には聞かない』って。
また嬉しさが込み上げてきた、この人は私が嫌がる事もしない無理に聞こうともしない。
本当に初めてな事をくれる、真樹の顔を見つめる。
コロコロと表情を変える真樹を見て、笑ってしまうあまりにも忙しく表情を変えるから。
「一人で悲しんだり笑ったりっと、忙しそうですね...マサキ様は」
独り言で言ったつもりが、大きく出てしまった。
真樹は聞かれたと思い返答する。
「そんなに面白かったですか?」
そう聞かれて驚愕してしまう、今の今ままで何時も通りにしていたはずなのに。
自分の心境を言い当てられてしまって、話しを戻す方に促し。
もう一度マサキ様に問ういてみたが、返って来た返答は更に驚かせてくれました。
「本音を言えば知りたいです、ですが今日初めて会った人に話せる内容じゃないってのも分かります。だから話してくれる日を待ちます、お互いに良く知った時を」
マサキ様はずっと待っていてくれる...、お互いを良く知った後でも良いって...。
本当はそんなに興味がなく、聞ければ良いぐらいかなって思われても。
それでも良い!、マサキ様には聞いて欲しい!。
でも、その前にマリスお姉ちゃんに言わないと。
少女が黙考してる間、真樹は音立てず少女の返答を静かに待つ。
そして少女は自分の考えを纏め、真樹に向けて口を開く。
「ありがとうございます。マサキ様の気持ちを知れて嬉しかったです、ですが話すなら最初に、言わなきゃいけない人がいます。その後でも大丈夫ですか」
声が震えてしまった、何故か分からないけど震えてしまった。
自分の気持ちが本音が、久しぶり声として出た事が。
少女の心の壁に亀裂が入っていく、もうすぐで崩れる一歩手前までに。
「うん、大丈夫だよ。今の気持ちを家族に聞かせて上げて、その後はお互いに知って色んな話しをしようね...」
その一言が止めの一撃となり壁が崩れていく、少女は感じていた今自分に起きてる事を。
マサキ様は分かってるだ...、伝えたい人が誰かなのか。
伝えてくるよ、今の気持ちと今までの事を!。
その後は、色んなお話しをしようね....。
真樹が出した小指を見つめ、首を傾げてしまう。
"指切り"と言うお呪いを教えて貰い、約束をする小指から伝わる温もりと、二人だけの約束に嬉しくなってしまう。
その後、破片はマサキ様が片付けてくれると言うので。
心からお願いして、マリスお姉ちゃんの元に駆け出そうとして止められる。
マサキ様は袋から鉱石を取り出し、魔力流していき形が変わっていった。
あれって魔柔石だよね?、何をしてるのかな?。
作業が終わるまで真樹の手を見ていく、直ぐにでも走って行きたかったけど。
それから魔柔石が花の形になっていた?、綺麗な紫色でちいさな花だった。
それを加工して私の手に持たせてくれた、『記念にあげる』って髪留めに加工してくださいました。
ワスレナグサ?、マサキ様が似合うって言ってくれた....。
今着けたら喜んでくれるかな?。
今つけてる髪留めを外し、マサキ様がくれたワスレナグサの髪留めを着けて。
その場で回って感想を聞いてみたした、マサキ様の顔が見れないぐらい熱かったです。
「凄く可愛いですよ」
可愛いって褒めてくれた!、エヘヘヘ.....。
大事にしないと!、無くしたりなんか出来ない。
一生の宝物...、マサキ様と繋がる想い出の品。
お礼を言って、マサキ様に向けて一礼して。
長い廊下を走っていく、もう感情を隠す必要がない。
これからを自由に生きて、真樹とどんな会話をするか考えてマリスお姉ちゃんに会いに行く。
少女の髪に煌めく紫色の花の、勿忘草が少女を際立たせる。
だが、少女は知らない。
少女に襲い掛かる悲劇を、約束が守られなかった事をその日に少女は知る。
何とか面白くなるように頑張ってます!。
何処かで誤字や意味が違うっていたら教えて下さい。
今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m




