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タイフーンレイディ

「ねぇねぇ、その本て、どんな本なの?私読んでみたいな」

「これ?」

 僕は、持っている本を指差した。

「それ以外にないでしょ。ちょっとあっち座ろうよ」

 彼女は、またしても僕のブレザーの袖をひっぱって窓際にある机と椅子まで僕を連行した。

 僕らは、椅子に腰掛けると彼女は僕から本を奪った。

 彼女は、表紙を見て言った。

「なんか、カオスだね」

 僕は、カオスという言葉の意味はよくわかっていなかった。僕の中でのカオスは、時々テレビゲームをやっていると敵キャラが喋ったりするくらいの理解だった。

 表紙には、無数のじゃがいもが描かれている。喜怒哀楽。表情豊かに青い背景をバックに描かれるじゃがいもは、確かになんだかゾッとするような絵だ。


 彼女は、しばらく僕を無視して本に夢中になっていた。表紙の絶望感とは違い、彼女は内容に没入していた。

「これ、おもしろいよ」

 彼女は言った。

「確かに、低学年向け。挿絵ばっかりだし、文字も少ない。だって、もう読んじゃったしさ。でも、なんだろう。子供でもわかるように、経済について描かれているような気がするの」

 僕は彼女の言った言葉に耳を疑った。さっきは、確かにパラパラと差を眺めただけだった。今思えば、インパクトある絵の部分だけ僕は読んでいた。それが幸いしたのか不思議な感想を持ったのだけれど。

「確かに、あんまり考えたことなかったわね。ポテトチップスってだいたい150円くらいで売ってるじゃん。たまに300円くらいするのもあったけれどさ。周りもだいたい150円だから150円てつけているんだと思ってた」

「ちょ、ちょっと待てよ。僕、それ読んでないんだけど」

 僕は、彼女がペラペラとしゃべっているのを止めた。

「あ、ごめんごめん。つい面白かったもんだからね」

 彼女は、両手を合わせて僕に謝ってきた。僕は、「まぁいいけど」と言って許してあげた。

 僕は、図書コーナーの柱にかけられていた時計を見た。あまり気づかなかったけれど、時間的にはもう16時を過ぎていた。

「あ、いけない。うち門限17時なんだった!」

 彼女は、思い出したかのように学生カバンを勢い良く掴んだ。

「ごめん、私先帰るね!今日はありがとう。また明日学校で!」

 そういうと彼女は、ローファーの裏側を見せながら走って帰っていった。僕は、あまりの勢いの良さに「じゃあね」という言葉を言い損ねたことに気がついた。僕は、また明日「おはよう」から始めれば良いやと納得した。

 僕は、学生カバンを持った。そして、だいぶ昔から財布に入れっぱなしになっていた図書コーナーの貸し出しカードを、財布から取り出した。机の上に置いてあるジャガイモのを本を右手で取って受付に歩いて行った。

「すいません。これ、貸してください」

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