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染まる

「染谷くん」

「そうだよ」

「なんか、珍しい名前だね」

「まぁ、珍しいかもしれない」

 小学校の高学年になるとなぜだか、女子たちは男子たちと気軽に話さなくなる。二人きりになるとなんだか、ちょっと大人の表情を見せる。これが、色気というものなのかと僕は子供ながらにアホな妄想をしたことを思い出した。

 でも、彼女からはあまりそのような雰囲気は感じなかった。多分、そういう風なことはあまり考えないのだと思う。恋愛感情なんて、千差万別。僕もそんな一人だ。特に好意とか感じだことはない。

 要するに僕は、中学デビューに成功した。女の子の友達を作れるか作れないかは結構中学校生活に影響するって、何かの雑誌で読んだ気がしたから、多分成功したと言えるだろう。


 僕は、入学式を終えて1年5組に向かった。桜坂さんは、知り合いの女の子とどこかに行ってしまったので、僕は一人で教室に向かった。

 教室には、半分以上の生徒が居た。知っている人がいるせいか、みんな固まって話している人たちが多かった。僕は、小学校から仲がよかった若本を見つけた。

「おーお、わかちゃん。元気?中学生になりましたなー」

 わかちゃんは、外を見ていたからびっくりして僕の方をみた。

「なんだ、染谷か。元気だよ。中学生だねー」

 わかちゃんはなんだか元気がなかった。

「元気なさそうだけど」

「違う。緊張してるんだよ」

 どうして緊張しているのかわからなかった。でも、その緊張はほぐさないといけないと思ったから、僕は彼の肩をゆすった。

「ま、いずれにせよ同じクラスだ。よろしくね」

 彼は、「おう」と小さく返事をして僕は自分の席に座った。

 小学校の頃につかっていた椅子と机にそっくりではあったが、やはり少し大きくなっていた。相変わらず、この席に何人いや何十人という人が座ってきたというような年季の入りようだった。この椅子はいったいどれくらいもつのだろうか。そして、こんなにもずっと使っているのだからこの椅子を作っている業者は儲からないのではないかと僕は少々心配になった。

 僕は、座って見て辺りを見回した。

 教室の窓からは大きな桜の木が見えていた。4月は毎日がピンク色の景色が窓に広がっているかと思うとちょっと僕は、嬉しい気持ちになった。そして、この景色は一生忘れないのだろうと思った。黒板は、まっくろだったし、掲示板にはまだ何も貼っていない。教室の後ろには、ドア付きのロッカーが置いてあった。(小学校は、ドアは付いていなくて、四角い穴が何十個とあいた棚が置いてあるだけだったから新鮮だった。よくその棚の上に登って遊んだ余計な記憶も蘇った)

 僕は大きく息を吸った。

 楽しくも辛い中学3年間が始まったのだった。


 

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