その名は桜
「助手にならないか?」
「へ?」
占いの店「扉」に入ってきた女性の目を見た店主八卦は出会って数秒でそう告げた。女性は動揺している。占いにきていきなりそう言われたのだから仕方ない。
「君は占いに向いている!俺と同じ目をしている!俺が君の才能を引き出し、立派な占い師にしてみせる!!」
興奮気味に八卦はそう伝えた。自分と同じ占い師としての才能を持つものを始めてみて、その才能を強く感じた。しかし、女性はすごく怯えているような驚いているような表情をしている。逃げるような感じでそのまま女性は出て行った。
「・・・やっちまったなぁ・・・また来ないかなぁ・・・」
「何だったんだろうあの人。入ってすぐにあんなこと言い出して・・・ほんとにあの人占い師なのかな?」
女性の名は桜。高校二年生。卒業したら仕事のために大学で学ぼうと考え、占いの扉に行ったのだがいきなり占いの才能がどうのと言われてしまった。あの人はいつもああなのか。誰にでもあんな風に言うのだろうかと少し気になったがそれよりも占いの才能のほうが気になっていた。
次の日
学校に向かう途中に友達の花に会った。
「さっくら~!おはよ!昨日どうだった?あの扉に行ったんでしょ!?」
「花、おはよ~。うん、そうなんだけどさ・・・」
「なんて言われたの?」
「店に入った途端に占いの才能がある!って言われて・・・あの店大丈夫なのかな?」
「あの店で仕事を占うと絶対っていうしほんとなんじゃない?ちゃんと話を聞いてみるべきだよ!」
「そういわれても占いなんてやったこともないんだよ?絶対危ない人だよあの人」
「でも扉の店主勧める仕事はうまくいくっていうしもう一回行ってみたら?」
「でもなぁ・・・・」
私は時々考える。高校生になって勉強をして、将来を考える。高校に行った理由はただ単にみんなが行っているから。高校に行かないと職場探しに不利だから。そんな単純な理由だった。正直こんなの覚えてどうなるんだって思っている。将来この学んだ時間は無駄になるんじゃないかと思った。そんな時、教師ならば、この学んだことをそのまま活かせる、そう考えたのだ。だからあの店の占いでもきっと教師が良いと言われると思ったが占い師が良いとすぐに言われた。占い師なんて人にいい感じのことをいって安心させたり、良くないことを言って何かを売りつけるだけじゃないか。私はそう思いながらも花に勧められて行くことにしたのだ。
さらに翌日
「あのぅ」
「お!来てくれたんだね!嬉しいよ!」
いきなり握手をされる。まるで待っていたかのようにお茶と座布団が用意してある。
「それで、助手になってくれるのかい?」
「いえ、私はほんとは教師になりたいんです。どうして占い師なんですか?学校で学んだことを無駄にはしたくないんです。」
「君はまじめだねぇ。名前はなんて言うの?」
「さ、桜です。」
「うん。いい名前だ。桜といえば以前庭師を勧めた女の人がいてね。その人はずっと農業をやりたがっていたんだけど野菜が苦手だったそうで、自分には向いてないんじゃないかって相談に来たんだ。僕はその人は農業に向いてると思ったんだけど、目を見て、彼女は畑よりも気を愛しているんじゃないかと思ったんだ。そして庭師を紹介したらうまくいったって言ってお花見に連れて行ってもらって、そこで見た桜がきれいで今も覚えているんだ。そしたら彼女がこう―――」
「それ長いですか?」
「長いよ」
「そんなことより、何で占い師なんですか!?占い師なんて」
「占い師だって勉強が必要だし、人によってはそれを活かしに活かしてそういうことをしている人だっている。」
「・・・数学とかも活用してるんですか?」
「ああしてるとも。なんか知人には取り憑いてる悪霊が数学が嫌いだの何だのって言って方程式やら何やらを見せ付けて追い払ったとか何とか。」
「嘘っぽい・・・」
「安心を売る仕事でもあるからね。それでも向こうは感謝してくれたみたいだよ。」
ますます嘘っぽく聞こえる。この人は信用できるのだろうか。顔は悪くないのだけど、知人とやらは存在するのだろうか。こんな人だし友達とかもいないんじゃないだろうか。そんなことを思ったとき。
こな~~~ゆき~~~~ねぇ♪
「あ、電話だ。」
何で着メロがそれなのだ。それは人それぞれだから良いのだけど。
「おお!ちょうど良いところに!わかった。今すぐいく!」
携帯を切ってすぐに私の手をつかんだ。
「さっき言った占い師兼霊媒師の友達が来てるんだ!会いに行こう!」
そう言って私の返答も聞かずに私を連れて行った。この人はほんとに大丈夫なのだろうか。
心配である。