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白星の聖剣♚黒星の瞳  作者: 東雲 滉那
二章 ウォンサナ
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巫女の言葉

 近くから夢とは違うかん高い声が聞こえた。あの少女の声は穏やかで聞いていて心地よいが、この声は嵐のようである。

「…ウォンサナ、起きて」 マトラの声が耳元でガンガン響き、ウォンサナは眉を寄せた。

「…煩い。静かにしろ、マトラ」

 微かな吐息のような声にマトラは悲鳴をあげた。そして村長を呼んだ。

 …なぜ村長がいる。

 うっすらと目を開けると見慣れない高い天井が見えた。重い体を両腕で支え、ウォンサナは体を持ち上げた。上半身だけ服が脱がされ、傷口に包帯が巻かれている。いつもは結んでいる髪もほどかれていた。

 ウォンサナは近づいてきた老人に、座ったまま頭を下げた。

「色々と迷惑をおかけして申し訳ございません」

 村長はその言葉に深く頷いた。

「やはり傷は深かったですか」

 ウォンサナは傷口を包帯の上から触れた。痛くも痒くもなかい。不思議に思い村長を見ると、老人は静かに言った。

「そのことで話がある。マトラ、部屋から出なさい」 マトラは名残惜しそうにウォンサナを見ると部屋から出ていった。村長はそれを確認するとウォンサナに向かい合った。

「ウォンサナ、"白導師"の昔話は知っているな。腕に剣の刺青をした100年前の剣豪だ」

 誰でも知っている有名な昔話だ。白導師が隣国との戦で勝利をもたらした英雄であるというものだ。

「はい」

 村長は長嘆息をもらす。「今年の春節で、ザッカの大神殿に住まう大巫女様が御神託を下された。"白導師"が甦るという…そして全国の市町村長にお触れを出した」

 さすがにウォンサナは苛苛してきた。だから何だというのだろう。

「……ウォンサナ。お前さんは"白導師"の生まれ変わりよ。そう、腕の傷が物語っている」

 そう言われても、今一ピンとこなかった。

「生まれ変わりですか。今までそんなこと何もなかったのに、突然なんなのですか。生活は今までと変わらないでしょうに」

 村長は目を閉じて、ウォンサナの言い分を聞いていた。

「そう言うのはもっともな話。だがな、王都に出立しなければならんのよ」

「…何をおっしゃっているのですか。ここから王都まで歩いて、のべ2ヶ月少しかかりますよ。それに王都に到着するまでに追い剥ぎや野犬に襲われたら、生きては…」

 村長がウォンサナの言葉を遮った。

「知っておるよ。もっとも儂は戻れとは言ってはおらん。王都に骨を埋める覚悟で行ってこい。それが村に貢献する唯一の道だ」

 ウォンサナは押し黙る。誰も文句は言わないのだろう。文句を言うのはおそらくウォンサナのみだ。

「…ということは、嫁を見つけるのも王都でですか」ここは重要な点だ。村にいれば、村の女をめとればいいが、王都だといい女を探すのに大変だろう。

 ウォンサナが真剣に考えているのを尻目に、村長は呵呵一笑した。

「そうなるであろうな。北部とは違う美女がたくさんおるぞ。……費用は儂持ちだ。無駄遣いするなよ」

 決定事項だった。もう何を言っても無駄だった。父親は反対しまい。村長第一主義なのだから。ウォンサナは諦めて、小さく息を吐くと言った。

「行って参ります」と。

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