オルシャの剣
謝ると皆快く赦してくれた。ゼンは剣が気になるのか、ティルカが謝っている間もずっと剣の方に目を向けていた。
「どこに行ったのかと思っていたわ」
シェーラがティルカを抱きしめて言った。
「シェーラ、ティルカが座れないだろう」とテスターが注意する。しぶしぶティルカから離れたシェーラは自分の席に腰を下ろし、目を輝かせた。
「剣を見てもいいかしら」 ティルカがその剣を渡すと皆は視線をそちらに向けた。剣は明るいランプの下で見ると、小口が技巧の凝ったもので、龍が彫られている。
「…でも、鞘から抜けないのね」
シェーラが残念そうに刀をティルカに返す。
「抜けるよ。…ほら」
ティルカが手にかけるとするりと刀身が現れた。
黒光りした刀身がランプの光に反射して怪しく煌めく。ガタリと音がした。ティルカが怪訝そうに顔をあげると、座長が目を見開いていた。
「"オルシャの剣"だ。…どこで見つけた」
どこでって…とティルカは不思議ながらにも答えた。
「トッサ街道の近くの雑木林です」
座長は黙ったままだ。そこで、ティルカは気にしないことにした。
「それにしても綺麗だな」と刀身を撫でると、とても冷えていて気持ちよい。
「舞台が楽しみです」
ティルカが破顔すると、座長はひきつった笑みを浮かべ、「あぁ…」と返事を返した。