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白星の聖剣♚黒星の瞳  作者: 東雲 滉那
四章 神官府
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レンウィン

女の見る先には、先程とは雰囲気を一変させたウォンサナが立っていた。

「レンウィン殿下」と少し低めの女声が響く。その声に彼は唇を歪ませた。

「アッシーラの記憶を持つ…今の大巫女はなんという名だ」

ウォンサナ…いやレンウィンは大巫女の顎に長い指をかけた。彼女は彼の後ろに立つイサナの気配が動くのに気付き、

「イサナ…動くな」と鋭く叫ぶ。密かに暗器を忍ばせていたイサナは動きを止めた。

「ほぅ…そなた。我が血筋の者か」

レンウィンは今気がついたとでもいうように、イサナを流し見た。

「イサナ…、逆らうな」

大巫女の言葉に、イサナは唇を一文字に結び、

「第二皇子イサナ・イーグと申します」と言った。

「傍系…スワラ家の顔つきだな。トラースによく似ている」

家名を言い当てられ、イサナは微かに頭を垂れた。

「わたくしは以前ツルーシュと呼ばれておりました」大巫女はレンウィンに声をかけ、イサナから視線を避けさせた。

 この独特の雰囲気にイサナをさらすのは少し酷だ。さすがはハノーダ王朝最盛期の皇子であっただけのことはある。ウォンサナの美麗な容姿と重なって王族の風格がより一層際立った。

「ツルーシュ…白薔薇か。では訊こう。なぜ、聖水を使って俺を起こした」

冷たい顔の下で、微かな怒気を含んだそれにツルーシュは怯むことなく答える。

「レンウィン殿下はティルカ殿をどうなさるおつもりですか。…チェーサ殿の生まれ変わりである彼女に」

レンウィンはツルーシュの顎にかけた指を解いた。

「俺はチェーサの魂を持つ者を愛したいが、この体…ウォンサナはまだ俺と同化していない。こいつが娘を愛すれば同化できよう。それまではこいつと俺との共存だろうな」

「共存…ウォンサナ殿は殿下の生まれ変わりではないのですか」

レンウィンはツルーシュを無言のうちに見つめるとため息をついた。

「俺の魂は死ぬ間際に2つに分割された。ひとつは術のために、もうひとつは剣の力を吸収するために。

 術のために使われた魂は冥界に赴き、後にトゥーラ…"白導師"トゥーラとして生まれ変わった。

……俺は剣の力を吸収したほうだ。実質は生まれ変わった訳ではないのだろう。ただ、こいつがトゥーラの生まれ変わりであるというのもまた事実。

 俺は目が覚めたら、こいつの中にいた。要するに覚醒したのだろうな」

ウォンサナはふぁ…と欠伸をした。

「俺を呼び出すと、この体に負担がかかる。もう呼ぶな…」

「申し訳ございません」

レンウィンは再度欠伸をすると、イサナの方を振り向いた。

「兄上の色を持つ男が近くまで来ている。あの娘を出すな。泣く羽目になるぞ」

イサナは深刻な表情をして頷いた。

「…ウォンサナと替わる。俺のことは言うな。自分で気付かせる」

レンウィンは瞳を閉じた。

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