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白星の聖剣♚黒星の瞳  作者: 東雲 滉那
三章 武術大会
11/25

始まり

「ティルカ?…なにガチガチに固まっているんだ」

ゼンの声がして、ティルカは顔をあげた。

「初めての武術大会なんだから緊張くらいします」

初戦で三人に当たらなかっただけマシだ…とは思っても言えない。ゼンとは準決勝で当たるし、他の二人とは決勝戦で当たるかもしれないのだから、あまり関係ない。参加している人数が多いのだから、準決勝まで残ることはないだろう。 日程は、一日目は1~3回戦、二日目が準決勝・決勝戦だ。

「ティルカ!優勝したら、賞金3000カランと副賞で髪飾りですって。勝ってきてね」

シェーラがティルカを呼び止めて言う。それを聞きつけたラフィは呆れ顔で言った。

「おい…髪飾りはオマケで副賞は高級料亭"珊珠屋"の1000カラン券だろ」

「煩いわね…あなたは怪我しなければいいの」

「なっ…」

 ふたりの微笑ましい言い合いに、ティルカは苦笑いを浮かべる。そして「頑張るよ」と言うと、ラフィと共に選手控え室に入っていった。

「ティルカ…、勝てるかしら」

 シェーラはシンザにもらした。シンザはティルカが消えた先を見て言った。

「あの剣でなら誰にも負けないだろう……いや、ひとりだけ…」

シンザはそれきり黙ってしまった。シェーラは首を傾げると、そのまま闘技場で席取りをしているルルーとテイラーのもとへ向かう。シンザはもう一度控え室の扉を見ると踵を返し、シェーラの後を追った。彼の横顔がいつもに増して厳しいことを疑問に思う者は誰ひとりとしていなかった。


扉をくぐったティルカはその空気に一歩足を退かせた。この殺伐とした空気はなぜか身に覚えがあった。 ゼンに連れられ、ティルカは空いた長椅子に腰かける。

「ティルカの出番は…もうすぐだな。…どうした?」 剣が熱い。

ティルカは無理やり笑顔をつくった。

「…なんでもない」

剣が熱を帯びていた。波打つような熱気が手のひらに伝わってくる。自分の鼓動がいつもより大きく感じられた。

「ティルカ、次の次だぞ。闘技場に出ろよ」

ゼンに背を押され、よろめきながら一歩を踏み出した。


ウォンサナの初戦は開始から二番手だった。

王都に着いてから今日までの1ヶ月間、彼はヤンザ老人の知人に剣の基礎を教わったが、身にならなかった。それよりも、チェーサに似た少女の方が気になった。一座の舞台は結局見れなかったが、武術大会には出ないのだろうか。

「二試合目。クリョ・リンハ対ウォンサナ・ゼーラ」 1ヶ月間、ずっとこの剣に触れてきた。雪のような見た目に似合わない鋭い切れ味。

ウォンサナはゆっくりと瞼を閉じた。

最近不思議に思うことがある。自分はなんなのだろう。1ヶ月で、一度も触れたことさえない剣を自在に操れるまでになった。

――おかしい。

あり得ないことだ。そんなことが可能なら、幼子でも剣を操れることになる。「始め!」と武官の声がして、ウォンサナはカッと目を見開いた。

肩幅の広い女戦士が躍りかかってきた。

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