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祈り
体中が冷えきっていた。
十年間いる牢の記憶は外界の記憶を喰らい、今では朧気に残るのみである。王に仕える前の幼い頃の記憶――あの時、彼の元にいることを決意していたら、彼が死ぬことはなく、自分も彼と共に一生を過ごしていたかもしれない。
あの頃の愚かな私と私の思いを聞き届けてくれたあの人。もう戻らない平和な日日を思い返して慈しむ。
あんな間違いはもう決してしたくはない。
今さら言ってももう遅い。あの人はすでにこの世になく、この体も売女と違わぬ卑しい身の上。
だが、私は近いうちにあの人の元へ逝く。この極寒ではこの体は耐えられまい。あぁ…あぁ…、ファランの女神よ。
この罪深き女を清らかな冥土へとお連れください。
そして女神様の御慈悲で、私のせいで王族から追放されたあの方ともう一度共に歩ませてくださいませ。
愛と冥界の神よ…