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魔術師と配達人  作者: 夕闇 夜桜
第三章、魔術師バトル
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第三ー二話:開幕、魔術師バトル


 バサリと紺色の裾が長いーー膝よりやや上まであるーージャケットを羽織る。

 魔術師協会本部が定めた制服のようなもので、長いこと協会の協会(ツイン)にいたルイナたちにとっては久しぶりの、つい最近、協会の協会(ツイン)に来た頼人にとっては数日ぶりの着用となる協会本部の制服である(なお、ツインは配達業務以外ーーツインの建物内にいる場合ーーは私服可なので、配達業務が無い者は、基本的に私服である)。

 ただ、ルイナたちのように、数年前に来た者や成長期前(といっても十歳ぐらい)にツインに来た面々だと、制服が体に合わず、本部の魔術師として出場するルイナ、ルイシア、玖蘭の三人は揃って制服を新調することになったのだ。


「やっぱり、慣れないなぁ」


 色や表面から完全に新品であることが丸分かりである。

 最初、新調する前に誰かから借りられないのかと考えたのだが、本部の者が自分たちのようなツインの者たちへ貸し出してくれないのではないか、というのと、ルイナとしては仮にも異性であるルカたちに「制服を貸してくれ」と言えるはずもなく、ルイシアは『持ちかけバトル』で対戦した桜を訪ねたが、怯えたまま「まさか、あのときのことを良いことに、せびりに来たの!?」と言われたため、「違うから」とは否定しながらも、彼女の体格などから制服は無理だろうと判断し(その際、「やっぱりいいや」と言えば、「何か失礼なことを言われた気がします」と背後で呟かれたのを、ルイシアは知らない)、玖蘭は玖蘭で、「本部の連中から借りたとしても合わないだろうし、そもそも借りる気はない」と清々しいくらいにきっぱりと告げていたという理由がある。なお、頼人は頼人で分かると思うが、つい最近来た彼が新調する必要は皆無である。

 そして、現在の季節は夏なので、制服はもちろん半袖仕様であり、冬用には長袖仕様である(冬用も念のためと新調した)。


「よし!」


 だが、そんなことを気にしていても仕方がないので、ルイナは軽く両頬を叩き、『魔術師バトル』へ気合いを入れる。

 そんな時だった。


「ルーイーナー……って、何で今避けた?」


 魔術師バトルに備え、制服の微妙な調整と気分を整えていたルイナは、横から飛んできた兄・ルカを躱す。


「何の用? 勝手に出場申請書に名前を書いた人」

「あ、やっぱり怒ってる?」


 飛びかかってきた理由を聞くルイナだが、その言い方にはどこかトゲがあり、ルカもやっぱり怒っていたか、と納得する。


「俺も、銀と一緒に反論したんだけどね。結局は上に逆らえないからさ」


 逆らえば、協会にいられなくなる可能性は高まる。

 ルカとしては、いくら協会の協会(ツイン)にいるからといって、ルイナたちだけを残すわけにはいかないため、少しでも協会に残れるのなら、こちらが不利になったとしても仕方がない。


「まあ、それよりもーー何で俺を仲間に入れなかった?」


 どうやら、ルイナたちが魔術師バトルに出場する事を聞きつけたらしい。


「は? いや、単にパワーバランスだよ。兄さんや銀先輩たちいれたら、パワーバランス悪いじゃん」


 ツインから参加とはいえ、ルイナたちは表向き協会本部のメンバーだ。そんな本部連中の実力を知る者たちが銀たち、本部所属の者を見れば、確実に選手たちのパワーバランスは傾き、協会に有利となる(ルイナたちは『持ちかけバトル』で銀たち本部所属の者に勝利している上、実力もあるため、どちらにしろ銀たちが入ってもパワーバランスは傾くのだが)。

 それに、参加したければ名前を記入すれば良かったのだ。書いた本人が記入しなかったということは、最初から出場する気が無かったのか、パワーバランスを理解した上で記入しなかったのだろう。

 では、何の目的でルカが「仲間に入れなかった」と言ってきたのか。理由としては実に単純で、チームリーダーを務めるルイナをリラックスさせるためだ。

 もちろん、ルイナは気づいてない。


「ルイナ、全員揃った……よ?」


 何言ってるの、とルカに目を向けていたルイナに、語尾が疑問系になりながらもルイシアが全員揃ったから会場に向かうと言いに来る。


「ん、分かった」


 頷くと、ルイナはルカにそれじゃあ、と告げて去っていく。

 ルカの姿を見たルイシアも頭を軽く下げて去ろうとしたのだが、途中で立ち止まり、ルカの元へと戻る。


「ルイナのことだから渡してないんでしょうがーー」


 そう言いながら、ルイシアはルカにあるものを渡す。


「これって……」


 驚くルカに、ルイシアは言う。


「試合会場の応援座席指定チケットですよ」


 しかも、一番良い席です、と付け加える。


「せめて、予選ぐらい生で見てあげてください」


 審判なのではなく、観客としてルイナたちの試合を見る。


「ありがとうな、ルイシア」


 去っていくルイシアの後ろ姿を見ながら、ルカは礼を言うのだった。


   ☆★☆   


 パンパンと弾幕が鳴り、花火が上がる。


「うわぁ、凄い歓声と人の数」

「だが、出場する奴らも凄そうだぞ? 強そうな奴ばかりだ」


 会場内の一角にある選手控え室へ集まった参加者たちにルイナたちは目を向け、そう話し合う。

 中には屈強そうな男に、いかにも怪しげな者や踊り子のような女など、魔術師や魔導師には見えない者もいる。


(さすがに、来てない、よな)


 簡単に全体を見渡すが、これだけの人だ。目的の人物がいるかどうかなんて分からない。


「ん……?」


 こん、と足下に何か当たったことに気づいたルイナは、その当たったものを拾う。


「ボール?」

「どうしたの?」


 首を傾げるルイナに、ルイシアが尋ねるが、奥から七~八歳ぐらいの少年がやってくる。


「あ、それ。お姉ちゃんたちが拾ってくれたんだ!」

「君の?」

「うん!」


 元気よく返事する少年に、ルイナとルイシアは何故か不審感を覚えつつも、ボールを返す。


「はい。次は落とさないようにね」

「うん、拾ってくれてありがとう!」


 ルイナからボールを受け取り、少年は礼を言うと、去っていった。


「ルイナ」

「うん……」


 この場にいたということは、彼も出場者の一人なのだろう。

 もし叶うのなら、彼とは対戦したくはない。手加減するしないではない。一番厄介そうな相手だからだ。


「まあ、気にしても仕方ない」


 そして、選手入場で会場に入ると、『魔術師バトル』の開会式が始まった。


『ついにやってきました、魔術師バトル! 司会進行は前回大会同様にこの俺、ラハールが行わさせてもらいます!』


 観客席から歓声が湧く。


『まず最初に、ルール説明だ!』


 ルールは簡単。

 参加者から本選に進む者を決めるために、個人戦と団体戦、それぞれ予選が行われる(ルイナたちは団体戦)。

 予選を勝ち抜いた者たちだけが、本選に進むことが出来る。

 場における草原や街という各フィールドはコンピューター(のようなもの)により、ランダムに決められる。

 もちろん、どのフィールドになったとしても、殺しだけは厳禁であり、瀕死になるまで追い込むか死亡者が出た時点で、(死亡者が出たチームの)相手チームは失格、状況次第では出場権の剥奪ということもある。

 召喚魔法の使い手は、相手を殺すほどの使い魔または召喚獣の召喚を禁ずる(召喚された場合については、状況次第での判断となる)。


 大まかなルール説明はこのぐらいだろう。


『ルールは理解してもらえただろうか? では、この場に集まりし魔術師魔導師諸君! その実力を惜しむことなく発揮し、優勝を目指してくれ! それじゃあ行くぜ?』


 ラハールはニヤリと笑みを浮かべ、大きな声で告げた。


『『魔術師バトル』の開始(スタート)だ!』




【面々の制服姿を見た友人たちとのある会話】


友人「玖蘭、イメチェン?」

玖蘭「違う」

友人「似合わなくはないんだけど……ねぇ?」

友人「うん。何か違和感があるんだよね」

玖蘭「……お前ら……」

ルイシア「はいはい、玖蘭行くよー」


 そして、玖蘭はルイシアに連れられて、待ち合わせ場所に行くのでした


   ☆★☆   


読了、ありがとうございます


誤字脱字報告、お願いします



ついに開幕しました『魔術師バトル』



次回はルイナたちの初陣です



それでは、また次回



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