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adventure children  作者: 綾御前©
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一話 会うは別れの始まり

一話 会うは別れの始まり



シディア ???にて


「シディア!」

女の子らしい、可愛い声であたしの名を呼ぶ。

「おい、シディア!しっかりしろ!」

今度は、さっきとは対照的で、男らしい、しっかりとした声。

近くに落ちているのは、大きな牙。巨大なドラゴン級の牙だ。

ところで、なんで、腕から血が出てるの?

なんで?

あたし、なんかしたっけ…。

記憶をたどってみる。



『シディア、あいつがクエストのドラゴン、【ギガントファングドラゴン】だよ。』

『ギガントは巨大な、ファングは牙。その名の通り、あのモンスターは巨大な牙で攻撃してくる。気をつけろよ。』


【グルルァァァァ!!!!!!!!!!!!!】

『うわあああ!』

『バッシュ、大丈夫!?』

『あっ、シディア!危ない!!』

『え?』

【グルアア!!!!!!!!】

『ああああああ!!!!!!!!』



ああ、そうか。

あたしたちはクエスト中で、危険なモンスターと戦ってて、そしたらあたしは噛まれて。重傷ってワケか。

「くあっ…!」

痛い。じんじんする。左腕が、やばい。表現はできないけれど、とにかく痛い。

「シディアぁ!!」

大きな瞳を、さらに大きく開けてあたしを見つめるこの子は、あたしの幼馴染。シスル・ランダリオ。

「うう…見てらんねぇよ…うっ…」

そっぽを向いた、赤い髪の男の子の顔からは、きらりと光るものが落ちている。まともなとこもあるこいつは、バッシュ・クラーゾナ。

「にゃ…ふにゃあああ…」

にゃんにゃん言ってるこいつは、ホルマ・サーナ。ぴこぴこと動く猫耳が愛らしい。

最後に紹介(?)するのは、キレた頭脳を生かすモテモテ、シャープ・ダンダード。

「シディア…」

お、普段はこんなうつむいたりして悲しまないのに。めっずらしいなあ、明日は雨がふるぞ(笑)。なんてこと考えてる間も、左腕はまだまだ痛い。

「シディア、お前…」

そう言いながら、シャープは横たわるあたしの体を抱き寄せた。

――お前は、そんなクズだったか?お前はそんな弱かったか?――

「ちょ、シャープ!やめて!」

むっ。

「そんなワケ、な…い…か……ぁ…」

そんなワケないから。

そう言いたかったけれど、なめらかに言えなかった。

そう、あたしは、死んだのだ。このタイミングで。

…でも、ないから、の「ら」はしっかり言いたかったな。

視界がぼやけ、ついに真っ暗になった。



シディア 冥界にて


気が付いたら、暗い、暗い、謎の世界にあたしはいた。

謎というのは、この世ではありえない物があるから、勝手にあたしが決めただけである。

なぜって?

木が逆さまに生えてる。

つまり、根が空を見ている状態。

滝も逆さまに流れてる。

下から上へ流れている。

謎と言わずになんというの?

……ね、謎でしょ?

「……」

改めて、あたしが辺りをきょろきょろしてると、横をふわりと何かが通り抜けていった。

目を見開いてそれを見ていると、その何かは視線を感じたのか、振り向いた。

それは、人だった。

「ようこそ、冥界へ…フフッ」

妖しく光る緑色の瞳や、しっとりとした緑髪は幼馴染みのシスルに似ていた。

「あなたはなぜここに来たのでしょう……ッフフフ…」

斜め上を見上げながら、急に問いかけた。

眉をぴくぴくさせるあたしは、急に問いかけられた。

「はえっ??」

あまりにも急だったので、変な声が出てしまった。自分でもびっくり。

「えーと…それはあたしが死んだから?」

あたふたとしながらも問いに答える。

「フフフ、まあ、合格。」

じっとあたしを見つめる人は、目がぎろりと鋭くなった。

「合格者には、私の名を教えてあげる。フフ」

――シー・クィーン――

頭の中で響いてきた。声は前に居る人の声。

「聞こえました?」

相変わらず鋭い目でこちらを見ている。

あたしの空耳ではなかったようだ。

「その様子なら、私の考えでは聞こえたということになりますが、いいかしら…?」

鋭い眼を細くし、ほほ笑むシー・クィーン。

あたしは、わからないことだらけで頭がこんがらがってる。

「フフフ、合格。では、今からシャルーのところへ飛ばすとしますか…」

あたし、飛ばされるのね…。へ~…。

…飛ばす!?

「飛ばすって…どうゆうこと?!その前にここは?!あなたは何者なの?!ねぇ、答えてょっ…?!」

「質問は一気にしないこと」

人差指で口を押さえられた。妙な気持ちだけど…まあ、いいか。

「一つ目の質問の答え。飛ばすとは、私の魔法である人物のいる場所へ移動させること」

「…わかった。バズーカとかだと思った…」

「二つ目の質問の答え。ここは、大きく言えば冥界。具体的にいうと、死んだ者が天国へいくか、地獄にいくか決める門」

「まあ、そんな感じだとは思ってたけど…うん…」

「最後の質問の答え。私は…フフ、フフフ、ダメ。教えられない」

「ええっ、何で!!」

シー・クィーンはうつむき、少し間を空けてから、答えた。

「それを知ったら、私もあなたもむなしくなる」

柔らかくほほ笑んで、右手を突き出すシー・クィーン。

その手からは、赤い紅い光が輝いていた。



シディア 冥界、クライシス・フォールズにて


「起きろ」


「起きろっつってんだろーが、このブス」


ブス?


あたしは目覚めた。今度の場所はお城の一室みたいな感じ。そして目の前にいるのは…

「あんた…誰」

「よお、起きたかブス。俺はシャルー。ブス、お前は?」

「…ブスねぇ…フッフフフ…ブスブスブスブス、言うなぁああ!!!!!!!!!!!」

牙剥き出しのあたしの頭を、軽く叩く、一人称「俺」の超絶美女。

「っつぅ…!!」

頭を押さえてしゃがむ。

「なんだよ、ブス。」

子犬の真似か?、と、一言言うと、シャルーは、あたしの耳元で、こう、囁いた。


「いいか、シディア。覚悟しとけ?」


あたしは、その意味を理解できないまま、倒れた。


どこかで嗅いだことのある、優しいレモンの香りがした。


そこからは、覚えていない。



シャルー クライシス・フォールズにて


「はあっ……ふぅ……」

長い接吻が終わった。

要するに、ディープキスが終わった。

第三者から見たら、女と女がキスをしている、奇怪な光景だ。

言っておく。

俺は、女ではない。「元」男でもない。

信じるものがいるか?

でも、事実なのだ。

「もう、いいか」

俺は、左回りにくるりと一回転した。

青白い光が俺を包み、瞬く間に男の姿になった。

なった、というより、戻った。

女の姿は、露出度が高い衣装だから、「大事な作業」が終わると、即刻戻らなければ、精神がもたないだろう。

気絶し、倒れているシディアに目を落とした。

「大事な作業」をしたから、こうなっている。

とはいっても、おそらく、初耳だろう。説明してやる。

俺の職は、天国か地獄かそれを見極めること。

見極め方は、相手にキスをすること。

キスをされたものは、俺に生前の記憶を吐きだしてくれる。

通りすぎたが、「キス」が大事な作業のメインだ。

「誰に説明してんのよ…」

新たな人物が現れたようだな。

おそらく知らないだろうから、説明してやる。本日二回目だ。

こいつは、タキリオ。

薄い桃色の髪を二つに結び、いつも悲しげな顔をしているのが特徴で、俺のサポーターだ。

つまり、俺と一緒に記憶を見極める。

「だから、誰に説明してるのよ…」

「気にするな」

「余計に気になるわ」

「気にするなよ?」

「……はぁ」

今、俺、呆れられたのか?

……まぁ、いい。

「タキリオ、死者だ。仕事だぞ」

「あんたは仲間の記憶を覗くのね、『シャープ』さん?」

「やめろ、その名前は捨てたはずだ」

「ごめんなさい、あたしの記憶には、残ってたみたいよ」

「……いいから、見極めるぞ」




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