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第1章:碧の王女

やっと一話目に突入です。

金色の髪、透きとおるような碧の眼、雪のような肌。

その名はエメラルド・アイ、ジュエリー王国の姫君である。


そのジュエリー王国の中央に、そびえ立つ大きな城、エレガント・クリスタル城がある。


その城の中に、彼女はいた。




「エメラルド!エメラルド!」

高くてはっきりとした、女性の声が響き渡る。



窓から体を乗り出そうとしている、1人の王女がいた。

その顔は確かに王女という感じだが、服はとてもじゃないが、王女という服装ではない。


ズバリ、「少年」だ。



 ガチャッと、ドアの開く音がした。

「ちょっとエメラルド!何やってるの!?」


その王女は窓から身を乗り出し、屋根にのぼろうとしていた。


「あ・・・お母様・・・」


お母様と呼ばれた女性は、顔を真っ青にして言った。

「あ・・・あんた・・・何してるの!屋根に上がるのはあれほど禁止って言ったでしょ!?」


王女の母、つまり女王、「オパール・アイ」だ。


「それに何ですか、その格好は!?あなた女の子でしょ!!」

言葉も無い様な真っ白なTシャツに、どこにでもあるような深緑色の半ズボン、おまけに髪を後ろで適当にまとめて、キャップまでかぶっている。


「ああ、これ?いいでしょ、村の男の子がいらないって言ってたもんだからもらってき・・・」

「エメラルド!!」


女王が王女をガミガミ叱りつけていると、遠慮がちにドアが開いた。


「あ・・・あの、女王様、王女様・・・」


「エレナ!」

エメラルドはすかさず窓から降り、母親をかわした。


「あ、エメラルド、話はまだ終わってないわよ!」

オパールが引き止める前に、エメラルドは言った。

「どうしたの?エレナ。」

「あ・・・えぇとですね、1時間後に大広間でプレシャス王国とで宴会がありますので女王様も王女様もなるべくお早く・・・」


オパールはさっきとは別人のような優しい顔をした。

「あぁ、ありがと、エレナ。すぐ準備するわ。」


ちなみに、エレナという女性はエメラルドが生まれてからずっと世話をし続けている、2人のお付きのうちの1人である。もう1人はセレナという。どちらかというと、エレナのほうがエメラルドに甘いのだが・・・。


オパールはエレナに下に行くように伝え、自分も出て行こうとしたが、エメラルドの方に向き直った。

「いい?エメラルド、今日はあのプレシャス王国の、ダイアモンド王子が来てるんですからね。早く着替えて降りてくるのよ。わかったわね?」


(お母様もしたくに色々準備がかかるから、慌ててんのね・・・)

「はいはい・・・」

エメラルドは気のない返事をした。

「はいは一回です!」

「はい・・・」


バタン!


(嵐が去った・・・)


取り残されたエメラルドは、ため息をついた。

「まったく、お母様ったら言い方がきついんだから・・・やんなっちゃうわよ。」


エメラルドは大きく伸びをすると、ベッドにもたれかかった。


「おいで、パール。」

ベッドの下から、1匹の白いネコが出てきた。


パールは小さい体をしなやかに動かし、ベッドに飛び乗った。


「あんたはいいわよね、自由で・・・」

パールは不思議そうな顔をした(ように見えた)。


「ま、当たり前よね、ネコだもの。」

エメラルドは独り言みたいなことをブツブツ言いながら、ベッドから降りた。


(プレシャス王国のダイアモンド王子?・・・そんなの、興味あるかってぇの・・・)



プレシャス王国とは、まだジュエリー王国ができる前からあったと言われる、歴史の長い国である。ジュエリー王国のある場所よりもっと東にあり、最も栄えている国である。

そんな国の王子というのだから、「凄い」王子に越したことはないのだが・・・


はっきり言って、今のエメラルドにそんなことはどうでもよかった。

しかし、王女なのだから出席せざるをえない。


仕方なくエメラルドは、今来ている少年の服を脱いだ。



着替えをし終わると、髪をとかし、顔を洗い、メイクをうっすらし、鏡を見た。


「うん、上出来。」


「エメラルドー!あと10分よ!」

下からオパールの声が響く。


「今行くからちょっと待って!!」

エメラルドも負けずに叫んだ。


「おっと、忘れちゃいけないのがこの冠。」

エメラルドは一番下の引き出しを開けると、『プリンセスの証』と言われる、綺麗に磨かれた冠を取り出した。


遥か昔から、代々受け継がれてきたこの冠。

プリンセスの証・・・。


エメラルドはそれをかぶると、ドアを開け、大広間に向かった。



「エ、エメ様・・・」

見ると、エレナとセーナが立っていた。

「エメ様・・・、なんとお美しい・・・」

先にほめたのはセーナだった。


エメラルドは顔が熱くなるのを感じた。

「やだ、セーナ、お世辞はやめてよ。」

なぜかセーナはムキになった。

「お世辞じゃないですよ!ほんとに、素晴らしいですよ!エメ様、いつの間にコーディネートなんか勉強なさられたんですか?」


「・・・そんなもの、勉強なんかしなくても、何回も宴会出るたびにやってたら嫌でも身につくわよ・・・。」


本当は、そんなことどうでもいいのだが。


「あの・・・」

エレナがぎこちない口調で言った。

「お美しいのは本当ですが、早くしないともう始まりますよ・・・」


「あ!」

時計を見ると、あと7分だった。


エメラルドは急いで階段を下りると、大広間へと足を急いだ。



プレシャス王国の人たちは、もう来ているのだろう。

本当は逃げ出したい気分だったのだが、ここまで来たら、もう行くしかない。


エメラルドはゆっくりと、大広間のドアを開けた。





これがエメラルドの、運命の出会いの始まりなどとは、誰も夢にも思わなかっただろう。





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