困惑の始まり
今日の朝、電子レンジが煙を吹いた。
そのせいで火災検知器?が鳴ってえらい騒ぎに、
近所の方に説明に回るハメになるわ、電子レンジ買い変えなきゃいけんくなるし大変だった。
土曜日にでも買いに行かないと……
吉田義明は一つ大きくため息をついて地面に倒れたイージェ族の長、イーベンの首のなくなった体を蹴った。
「たった一撃当てたってだけで、はしゃいでんじゃねーよ」
そう呟いた姿はお気に入りだった玩具が壊れてしまったように悲しげだった。
戦っている間のイーベンは間違いなく義明のお気に入りだった。
だが、あっけなくイーベンが隙だらけになってしまい冷めてしまったのだ。
自分がまだ殺す気でいるとわかれば戻るかと思い攻撃して見たら、イーベンはこちらの意思を酌むどころか死んでしまった。
あまりにも情けない幕引きに愚痴の一つも出るというものだ。
義明は左肩を抑えつつ、地面に血の混じった唾を吐く。
そこでようやくイーベンとの戦いを見ていた他のイージェ族が動き出した。
皆、族長が殺されたことに憤怒していた。
イーベンの死に様は誰も納得していない。
あのような決着は認めないとばかりに義明に汚い言葉を投げかけ、武器を持ち義明に殺到した。
義明は白い短刀を口に咥え、もう一本の黒い剣を取り出す。
(何が汚いだ。
何が負けたくせにだ。
何時から俺のやっている事は決闘になった?
戦いではある。
だが、最初から俺が戦いを挑んだのはアイツじゃなく、アイツを含めたお前らイージェ族全員だ。
勝手に俺とアイツの二人の戦いにしたのはお前らじゃないか。)
切り掛ってくる3人を避け、避けながら最低限の力で首を切る。
(全く、イライラさせる奴らだ。)
槍のように長い武器を構えて突っ込んでくる敵も、鉈を振りかぶっている敵も、遠くから手投げ斧を投げようとしている敵も、皆遅い。
自分の速さに対応できていたイーベンと戦った後だから余計に弱く感じる。
義明は飽き飽きしつつも攻撃してくる者を淡々と殺していった。
(今なら逃げてくれれば追わないのに……)
森で最初にイージェ族の一人を殺した時は全員殺す気でいたが、イーベンとの戦いの終わり方にすっかり萎えてしまい、今ではそんな気も失せていた。
だけどイージェ族は一人として逃げなかった。
その結果、一人もイージェ族は生き残らなかった。
「あ~あ」
すっかり返り血で赤黒くなってしまった制服を着た義明はポツリと呟く。
武器をしまって近くに建っていた家の壁にもたれかかる。
(疲れたなぁ)
敵だったイージェ族がいなくなり、すっかり緊張も解れてしまった。
ぼんやりとしていると死体を避けてこちらにくる人を見かけた。
顔全体がしわくちゃのイージェ族ではない。
彼らが襲っていたナッツェ族だろう。
ナッツェ族の中に見慣れた格好の姿もあったが、視界がぼやけてよくわからない。
ナッツェ族と義明のクラスメイトが彼のもとに着いた頃には義明はすっかり寝入っていた。
目が覚めた。
寝ぼけることなく一瞬で覚醒した。
誰かに運ばれていたようで義明は丸くて厚さ1メートル程ある葉っぱに横になっていた。
イーベンによって外された左肩とその後の戦いで負った切り傷も治療されており、左腕には包帯が巻かれ、日焼けして若干薄茶色になった布を折って作った三角巾で吊られていた。
葉っぱのベッドから降りて立つと少しふらついた。
壁に手をつけてゆっくりと部屋を出る。
出口を見つけ、出ようとすると突然出口に子供が現れた。
金色の長い髪の6、7歳の女の子だった。
女の子は手に義明の剣を持って走っていた。
出ようとしていた義明と走って突然現れた女の子。
2人とも咄嗟に反応できず正面からぶつかる。
義明はよろめきながら数歩後ろに下がるだけで済んだが、女の子は綺麗な後ろに一回転した。
「ティーナ!それを寄越すんだ!!」
転がった女の子に中年の太ったおっさんが掴みかかった。
どうやら女の子はティーナというらしい。
中年のおっさんはティーナの持つ二本の剣を奪おうとしているらしい。
「それ、俺の…」
義明が小さく呟いた。
(俺の、って言っていいのかな?)
この世界に来た時になぜか持っていたものだが、それを自分のものだと言っていいのか軽く悩む義明。
どうやら義明の呟きが聞こえたようで、中年のおっさんはビクリと大きく体を震わせて義明の姿を確認し、ひきつった笑みを浮かべながらティーナを離してそろりそろりと後ろに下がっていった。
ティーナは二本の剣を持って俺の後ろに隠れて走り去っていく中年のおっさんを睨む。
「?」
現状がよくわからない義明であった。
あ、感想を頂きました。
ありがとうございます。
"学校にテロリスト"のファンタジー世界版っぽい
学校にテロリストって何でしょう?
どこの本でしょうか?
ググったんですがそれっぽい本はなかったんですが?
はて?