情報共有の始まり
私は普段から小説を書く時、メモとかに書く事はせずそのまま執筆をして投稿します。
なので書くのに時間が掛った場合など、投稿ボタンを押した時にエラーが出ると、コピーをとらなかった事を後悔しながら最初から書き始めます。
書く。エラー。苛立ちながら書きなおす。エラー。泣きそうになりながら書きなおす。エラー。不貞寝。少し元気になって書く(←今ここ)。
コピーさえ取っていれば……
風呂屋で体に付いた汚れを流した吉田義明は、義明と同じく風呂に入り汚れも匂いも落とした蘇我深雪と今後の事を話す為、一度義明が泊っている宿に戻った。
宿の食堂、その一角のテーブルに着いて義明は蘇我に問いだした。
ここ、ベルツ大陸に来る前の不思議な場所でどう自分を設定したか、武器に何を選んだか、ここに来てから知った事、変わった事、奴隷になるまでの経緯など思いつく限りの事を蘇我に聞いた。
蘇我自身、義明が助けてくれた事に少なからず感謝していたし、義明の方が現状を正しく認識出来ているように思った故、蘇我は義明の質問に正直に答える。
「人形の頭を押し続けてたら画面変わった。」
「頭だけしか触ってない?」
「うん、いつの間にか武器の並んでる画面になってた。」
「そこでは何を選んだ?」
「武器は剣とかより使いやすいと思って銃にした。」
蘇我が制服の内ポケットから銀色の小さな銃を取り出す。
「デリンジャーだな」
義明がちょっと貸してくれと言って蘇我から銃を取り上げる。
義明は手慣れた様子で銃のストッパーを外し銃身を上に折り曲げて装填状態に持ち込む。
「あれ、弾入ってないじゃん。」
銃身を覗いて弾が込められていない事を知った義明が蘇我にお前持ってる?と聞くと、蘇我は首を横に振った。
「その銃、引き金引くと黒いのが出る。」
蘇我は試しに銃を使った時の事を義明に話す。
「ってことは、なんだ?この銃は二発式なのに連続して十発以上も打てるってのか?」
義明の言葉に頷く蘇我を見て、「ずりぃ、チートだろそれ……」と言って銃を返した。
義明は彼女の銃をチートというが、彼の持っている二本の剣もイージェ族と戦った際、何人斬っても欠けることも斬れ味が落ちることもなかったのだから彼の武器も十分チート級の剣を持っていることになるのだが、刀剣についての知識を持ち合わせていない義明はそのことに気付かない。
「ここ、ベルツ大陸って名前らしいんだけど、ここに来てから体が変になったりしてないか?」
「変に?」
「例えば、あー……血を見ると興奮するようになったとか、生き物の弱いとこがわかるようになったとか、そういうこと」
若干言い辛そうにする義明。
(戦っていた時のあの感覚は自分だけ感じるのだろうか?)
義明がイージェ族と戦っていた自分の事を思い浮かべようとしていると、蘇我が小さく「草」と呟いた。
「草?」
「血を見て興奮するかは見てないから何とも言えないけど、こっちに来てから見た植物の事がわかるようになった。」
「わかるって何が?」
「何て名前か、毒があるか、食べられるか、どういった効能を持っていてどうすれば最大限発揮出来るか。そんな事がわかる。」
例えばと言って蘇我はテーブルに飾られた一輪の赤い花を指差す。
「キイロ草、香りが良くお香にも使われるが根に毒を持っている。最初に発見された時、花弁が黄色かったためキイロ草と名付けられた。紅葉のように色が変わる花。」
淡々と言う蘇我に軽く驚く義明。
「ベルツ大陸の各地で見られるが場所によって変化した後の花弁の色が違う。赤の他に緑、ピンク、青、白とあり黒く咲く場所も存在する。また、戦場で咲いた場合―――――」
「あーもういい!分かった。」
面倒になってきた義明は途中で蘇我の話を切った。
植物の知識を持っていることは確かなようだ。
途中で話を切られた蘇我が頬を膨らましていたが、見なかったことにして質問を再開する。
「他には?頭が変になったりしてないか?」
設定で足に全振りした義明は、自分の足の早さや反射神経などが異常なほど上がっている事を理解している為、同じように頭に全部割り振った彼女にも何らかの変化があるはずだと睨んでいた。
自分の考えている通りなら、蘇我は魔法が扱える。
そう思って蘇我を見ると、蘇我は眉間にしわを寄せて義明を思いっきり睨んでいた。
はて、と睨みつける蘇我に小首を傾げる義明。
「頭が変になる訳ない。失礼な。」
蘇我の発言でようやく義明は自分の言った言葉がどう受け止められたかを理解し、慌てて弁解する。
「別に精神異常者になったのを疑った訳じゃなくて、あー…何て言えばいいんだー!?」
義明の慌てる姿にクスクスと笑いだす蘇我。
「ゴメン、からかった。」
「だー!もー」
義明は両手で頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
「―――――とりあえず必要な事は聞いたわけだけど、なんか質問ある?」
テーブルに突っ伏したまま義明が聞いて蘇我を見ると、彼女は特にないのか少々思考した後首を横に振った。
「んじゃ、次の話。俺はグンになろうとしている。」
「軍?」
「軍隊とかじゃなくてグンな。
グンってのはまぁ、ギルドみたいなもんだ。」
それでも蘇我は首を傾げる。
それもそのはず。蘇我はゲームを持っておらず、漫画もあまり読まない。学校で読む本もそういった言葉が出てくるのない、鉱石や豆知識本などであった。
「あーと、そうだな。困っている人を助けて賃金を得る職業って感じか?」
「……なるほど」
何となく察する事が出来たのか、蘇我が頷く。
「話を戻すぞ。……俺はグンになろうとしてる訳だが、お前はどうする?」
「どうって?」
「俺と一緒にグンになるか、又は何か違う職を見つけるか……
いっとくが俺はお前を養う気はないからな。」
親じゃないんだと義明が言うと、蘇我はムーと腕を組んで目を瞑って難しそうな顔をして考え出す。
その、どこか不満そうな蘇我の顔を見て義明は悟った。
(コイツ当てにしてやがったな……)
「言っとくがお前の為に使った金はキチンと返してもらうからな。
服とか荷物と今日の風呂代は俺の善意だからサービスしてやる。
だけど、お前を買うのに使った2ユジン及び今日からのお前の食費、部屋を別にとる場合はその分の代金も全部払ってもらう。
そうだな、全部金を払い終えたらその首輪を外してやるよ。」
首輪をしている者が生きている間は義明の付けている指輪が彼女の位置を教えてくれる。
義明がいいなと念を押すと蘇我は渋々ながら頷いてわかったと言った。
蘇我の言葉を聞いた義明はよしっと手を叩いて、飯にしようと言ってテーブルの端にあったメニューを手に取った。
「読めるの?」
「読めねぇよ畜生!!」
義明は蘇我の突っ込みを受け、自棄になって叫んだ。
結局女将さんに二人前、適当にお願いしますと大雑把な注文をした。
(文字の事も、何とかしないとな。)
文字や数字が理解できないのは辛い。そう思いつつ義明は溜息を吐いた。
蘇我深雪は吉田義明と共に食事を摂り、ベッドに寝転がっていた。
蘇我は義明に同室にするか、別の部屋を取るかを聞かれた時に同じ部屋でいいと答えた。
今後、義明が彼女に使うお金は全て彼女の借金になる。
(出来る限り借金の額を小さくして、早く返そう。)
ベッドの上で制服を脱ぎ、シャツ一枚になった蘇我は固い枕に頭を押し付け毛布に包まった。
こちらの世界に来てから初めてのベッド、蘇我はあまりの心地よさに直ぐに寝入った。
「俺の部屋、……なんだが」
ベッドをとられた義明の言葉がむなしく部屋に響いた。
最近になって一気に忙しくなってきました。
2週間ほど更新が辛くなりそうな予感……
毎日平均的に忙しければ楽なのになぁ