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Welcome Another World  作者: Cl
13/20

買い物の始まり

亀になる夢を見ました。

亀になった私は長い時を生き、10歳ほど離れた相手を見つけ、結婚をした。

二人で短いながらも幸せな時を過ごし、私は一人、陸に上がった。

砂浜に上がった私は穴を掘り、そこに涙を流しながら我が子を産んd


って私メスじゃねぇか!!


生まれて初めてツッコミながら目覚めた。

「ん、っあ~よく寝た~」


吉田義明(よしだよしあき)は昨日ようやくたどり着いた街、スーザのとある宿屋で何日かぶりに気持ちの良い目覚めが出来た。

ナッツェ族のような分厚い葉っぱではなく、元の世界の物と同じ(若干の違いはあるだろうが)ベッドで起きた義明は食事をとる為、2階に取っていた部屋を出て階段を下りこの宿の女将さんに挨拶をして料理を頼んだ。

頼んだといってもメニューに書かれている物がどのような料理かわからない義明は、適当にメニューを指差してこれをお願いしますと言った。


見た事のない料理を食べ、料金を払った(この宿は宿泊のみ食事完全別料金の宿だった)義明は女将さんにグンの登録をする場所を聞いて宿を出た。

女将さんは義明の体を見て、アンタがグンに?と言いたげな顔をしていたが簡単な地図を書いてくれた。


「確かに俺の体はヒョロイけどさぁ……」


地図を書いてる時の女将さんの顔に軽くブルーになる義明は溜息をつきながらトボトボと所々荒れた石畳を歩いていく。

義明は地図を見ながら歩いているうちに何やら騒々しい場所に来ていた。

騒々しいというよりは活気に満ちているという方が正しいか、地図から目を離して周囲を見るといくつもの店が道に並んで客寄せをしていた。


「安い!やっすいよ~!!ウラガナ虫が一匹何と5レンドだ!!どうだい奥さん!今日の晩飯に!!」


「今日は珍しいウロボがあるよぉ!酒のつまみと言ったらウロボだろ!!そこの親父買ってかねぇかい!?今日の酒が格別になるぜぇ!!」


「クチブの実はいかがだい!?見てくれこの実の赤み!凄く甘くて美味しいよぉ!!」


「ケナム!!ケナムはいらんかねぇ~!!」


「大人気のイリーは残り2頭だよ~!早い者勝ちだ!さぁさぁ急いだ急いだ!!」


聞いた事のない名前の物が並んでおり、好奇心を刺激された義明は一店舗ずつ店を見て回っていた。

義明が途中で買ったヒューズの串焼き(一口大のチキンステーキを6個、串に刺して焼いたもの)を食べながら歩いていると、少し離れた所に何やら別の人だかりを見つけた。

今度は何が売っているのかと興味を持った義明が近づいていく。


(ん?なんだこの匂い!!)


人だかりに近づいていくと酷い臭いがした。

その匂いのもとを辿り着くと義明は驚愕した。


「本日の目玉商品はナッツェ族の若い女!極上の女ですぜ!!ドルイ族の元戦士もいるよ!力仕事に役立つよぉ!!」


奴隷市、それが義明の目の前にあった。

手足に枷を付けられ、薄汚れた布一枚を体に巻きつけた色んな種族の男女が何人も檻に入って顔を俯かせていた。

先程宣伝をしていた小太り男の言うようにその中には尖った耳を持つ女性のみ美しくなるナッツェ族がいた。

他にも体中を鱗で覆ったヅルガ族や猫の獣人といった感じのメイダルカ族など色んな種族が売られていた。

さすがに見ていて気持ちのいい物ではなく、義明はさっさとグンの登録に戻ろうとする。


「おい!!お前!!義明だろ!!吉田義明!!おい!!」


誰かの必死な声が聞こえ、義明は思わず振り返る。

その声は男女に分けられた檻の男の檻から聞こえていた。

声の聞こえる檻に出来るだけ近付くと、他の商品と同じように腰に薄汚い布を巻いた一人の見知った少年がいた。


「楠田、楠田健太(くすだけんた)か?」


クラスメイトの名前を全くと言っていいほど覚えない義明でさえその名前は知っていた。

楠田健太、クラスの中心的な存在で学年3位の学力と抜群の運動神経、顔もイケメンと小説の主人公のような男である。

クラス内で義明と軽い雑談などをする事がある唯一の存在でもある。


「何でここに?」


「俺にも良くわかんねぇよ!教室でテレビに映った変なの見た後におかしな人形とか出てきて!消えたと思ったらなんか草原にいて!!当てもなく歩いてるうちに化け物共に捕まって、服とか脱がされてこんな檻に入れられてんだよ!!訳わかんねぇよ!なぁ助けてくれよぉ!!」


楠田は檻を掴んで泣きだした。


「他にも捕まってる奴っているのか?」


泣き続ける楠田を宥めながら義明が聞くと、楠田は頷いて隣の女の奴隷が詰められた檻を指差す。


「誰がいる?」


「蘇我、だ。蘇我深雪(そがみゆき)


名前を聞いても分からなかった義明は改めてどんな奴?と聞いた。


「蘇我はお前を女にした奴だよ。」


気持ち悪い想像をした義明を見て、目元を赤くした楠田が軽く笑った。


「えっと、お前みたいにクラス内で孤立してるってこと。見た目の事を言った訳じゃない。あー暗いって点は同じだけど。いつも後ろの方の席で一人で本読んでた女子いただろ?アイツだよ。」


「なるほど。」


(昼休みの異変の中、我関せずとばかりに本読んでた女か)


なぁ早く助けてくれよ~、と言ってくる楠田に、ちょっと様子を見てくると言って蘇我のもとへと歩く義明。

背中に待ってくれ!置いてかないでくれ!!と楠田の必死な声が聞こえたが義明はそれを無視した。


(少しくらい待てよ。後で何とかしてみるからさ。)


最悪、奴隷商を殺して奴隷を全員檻から出してやればいい


「っと、どこにいんだ?」


蘇我の顔が分からず、自分たちと同じ、人間っぽい奴を探していく。


「お~い、蘇我~!」


声をかけるが返ってくる声はなかった。


(まさか、誰かに買われた?)


そう思った義明だったが、檻の隅に座っていた女がこちらを見ていることに気付いた。


「あ、蘇我?」


義明の言葉に一つ頷く。

どうやら彼女が蘇我深雪らしい。

座っていた蘇我が立ち上がる。


(小さい。)


170ある自分より頭一つ異常小さい。

こんな女子いたのかと義明が思っていると、蘇我は小さく「……冷たい」と呟いた。

思わずガクッと体勢を崩す義明。

確かに鉄で出来た檻に座っていたら冷えるだろう。

巻きつけている布もけして大きくないのだから当然と言えば当然だ。


「はじめて聞いた言葉が「……冷たい」!?普通そこは「……助けて」とか「……誰?」じゃないのかよ!?」


「……?」


「いやいや!なにその「何言ってんの?」って顔!え、何?俺がおかしいの!?」


思わずハイテンションになって突っ込む義明。

蘇我は何も言わず、義明を無感情に見つめていた。

義明はその蘇我の様子から、コイツこのままでもいいんじゃないか?と思いながら一応「この檻から出たい?」と聞くと少々虚空を見上げて考えた後頷いた。


(楠田、俺とこいつは全然似てないだろう……)


後で文句を言おうと心で決めつつ、檻の出入口の前に立って客寄せに精を出していた魚顔のオワ族の奴隷商に話しかける。


「蘇我、あ~あの黒いボサボサ髪の女を買いたいんだけど……」


思わず名前で言ってしまい、それは通じないと悟り蘇我の特徴を伝えていくらするか聞いてみた。


「お客さん、変わった趣味してますね~。」


奴隷商が気持ち悪い笑みを浮かべながら2ユジンと言って手を伸ばしてくる。


(果たしてこれは女の奴隷としては安いのか否か……)


そう思いながら懐からルイツベーンからもらっていたお金の入った袋を取り出す。

袋の中には12ユジンほどあり(それがどのくらいの金額か義明はイマイチよく理解していない)、2ユジン出そうとしたところで義明の手が止まる。


「あの女が着ていた服や持ち物はあるか?」


「へぇ、一応御座いますがまとめてお買い上げますか?」


奴隷商の目が強く光る。

いくらになる?そう聞く義明の前に奴隷商は6本ある指のうち3本を立てて義明に見せる。


「3ユジン、いかがです?」


制服と荷物で1ユジン、所持金を一気に4分の1失う。しかも楠田も助けると単純に考えて半分になる。

食事代とか宿代とか今後の事を考えると厳しい気もする。

だが、


「いいだろう。」


義明はそう言って袋から3ユジン取り出して奴隷商に渡す。

奴隷商はウヘヘヘと笑い、脇に並んでいた大きな箱の中から一つの包みを探し出して義明に渡した。

どうやらこれが蘇我の持っていた物らしい。

荷物を渡した奴隷商は今度は後ろに立っていた用心棒に命令し、檻から蘇我を出して手足の枷を外して代わりに金色の模様の書かれた黒い首輪を蘇我に掛ける。

奴隷商は義明に蘇我に掛けた首輪のデザインと同じ指輪を渡し、首輪と指輪の説明をした。


「奴隷に命令をする際にお使いください。この首輪は、同じ模様の指輪を付けた者の命令を逆らう事が出来ません。もちろん自分で首輪を外す事も出来ません。そして指輪を付けた人に危害を加える事も出来ないんです。」


自慢げに語る奴隷商。

どうやら奴隷の調教に使う大変高価なものだそうだ。

3ユジンを簡単に支払った事から義明を金持ちと判断し、贔屓にしてもらうための行動なのだったのだが、義明はそれに気付かず、ふーんと返して指輪を嵌める。

だが、指輪のサイズが合う指が見つからず、一本一本入れる指を変えていくと薬指にピッタリ嵌まった。


「あっ!!」


金の変な模様が入った指輪は左手の薬指に嵌まってしまった。

右手で指輪持ってたんだから当然なのだが、よりのもよってといった感じである。

義明はギコギコと油の切れた機械のように首を回して蘇我を見る。


「……」


蘇我は空を見上げてボーっとしていた。

その姿に軽くホッと息を吐いて、蘇我に声をかけて楠田のもとへ向かった。

蘇我に彼女の荷物を渡したが、彼女は「今は汚れてるからこのままでいい」と言って荷物の入った包みを持っている。

確かに彼女の言う事はもっともだ。

髪や顔、布に覆われていない部分のいたるところに泥がこびりついている。

義明は仕方ないと思い、汚れた布を巻いただけの彼女を連れ楠田のいた檻の前に行き楠田を呼ぶ。


「あれ?」


楠田の返事が聞こえない。

姿を探すが見当たらない。

その様子を見た先程とは別の奴隷商に楠田がどうなったかを聞いた。


「あぁ、見た事のない種族の彼ね。顔を気に入ったザミ族のご婦人が少し前に買っていったよ。」


「は?」


楠田は売られていた。


「マジで?」

感想、お勧めのラノベ、いつでも待ってます。

貴方の言葉で私は元気になります。

誹謗中傷は勘弁です。

死にたくなっちゃいます。

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