旅の始まり
今日は日曜日だったので、殆ど家に引きこもってました。
暇潰しにクッキー作ってたらいつの間にか夕飯の時間に、
もちろん夕飯の準備も買い物もしておらず、目の前には大量に焼かれたクッキーが……
美味しかったよ。
栄養とか脂肪分の事考えるのは途中で止めました。
ルイツベーンから旅に必要なものをもらった吉田義明は、夜の闇に紛れてナッツェ族の集落を抜けた。
行き先はルイツベーンから教えて貰った、集落から百五十キロほど南に下ったところにあるスーベという街に決めた。
スーベよりも近場に他の街があったが、グンという傭兵のようなものになる為の登録がスーベで出来るから義明は一直線にスーベに行くことを決めた。
「決めたのはいいけど、キッツイなぁ」
ルイツベーンに渡された荷物が思いの外重く、夜道で足元が見づらい事もあって余計に歩き難い。
荷物を減らす事も考えたが、余分な物がどれか旅慣れていない義明に分かるはずがなく、後の事を考えると適当に捨てるのは得策ではない。
一応、一通り使い方はルイツベーンから教わっているのでどういうものか分かっている事も捨てにくいと思う要因だった。
「何かしら役に立つと思うと捨てらんないよな。って、片付けられない人の言い草みたいだな」
だから捨てらんないのかな?と思いながらも義明は足を動かし続ける。
夜が明けるまでに10キロぐらいは最低でも進んでおきたい。
ルイツベーンによれば、この辺りには滅多に盗賊やらはいないらしいので道中の危険はないらしい。
だが、そういうルイツベーン達ナッツェ族を昨日襲った存在がいた事から信憑性に欠ける。
朝まで待ってから行くことも考えたが、集落の近くは平地が多いので、もし敵が来ても直ぐに気付ける為夜でも安全だと思ったのだった。
その考えが良かったのか、ルイツベーンの言葉が正しかっただけなのか分からないが、義明は何の問題もなく朝日を拝んだ。
「――――――――――――」
地平線から赤い太陽が昇る様はとても綺麗で、声も出なくなるほどだった。
元の世界、地球の時に見た日の出はこちらの太陽より小さく、色も白っぽかった気がする。
「よっし、頑張るぞ!!」
しばし足を止めてこちらの世界の日の出を楽しんだ義明は再び一歩ずつ歩き出した。
「頑張った、俺は頑張ったよ」
義明はルイツベーンから聞いていた30キロの印になる川に辿り着いた。
義明が集落が出てから10時間ぐらいになっていた。
太陽はそれなりに高い所に行って、強い日差しを義明に浴びせていた。
義明は地面に座って、背負っていた荷物の中から薬の詰まった箱を取り出して靴を脱ぐ。
「――っ痛ぅ」
足にはいくつも肉刺が出来ており、その中の二つが潰れていた。
義明は治療を施し薬をしまい、代わりに一枚の干し肉を食べて立ち上がる。
足に痺れる様な痛みが走るがここに止まっていても目的地の街に着く事はない。
義明は歯を強く噛み締めて痛みを耐えながら歩き出す。
(まだ、たった30キロ。)
一歩歩くごとに痛みが走るがそれを押さえつけ義明は歩く。
そこから2キロほど歩いた時にまた足にあった肉刺が潰れ、街までようやく3分の1になった頃には義明の足にあった肉刺は全て潰れていた。
さすがに痛みに耐えられなくなり、日も暮れかかっていたので義明は野営の準備に入った。
荷物の中からテントを出し設置し、地面に落ちた小枝をかき集めた。
動く度に足が痛み、準備が終わる頃にはすっかり日が暮れてしまった。
ライターがないため火打石から何とか焚き火にまで火を大きくして、獣除けにし義明は眠りに着いた。
「グッ!!」
だが、眠ろうとしても足が痛く体は熱く火照って眠れなかった。
横になっているうちに眠れたと思っても、足の痛みで起こされ碌に寝る事も出来なかった。
寝ては起きてを繰り返しているうちに日が昇ってしまった。
明るいうちに少しでも進んでおかなくては、そう思い重い体を動かしてテントを片付け歩き出す義明。
(小説の主人公とかはなんであんなに楽に移動できるんだろう?)
ご都合主義だよなぁ、と愚痴りながら足を動かす。
現実の厳しさを痛感しながら義明は歩き続ける。
獣に襲われなくても十分旅は危険だと認識した義明が目的地の街、スーベに辿り着いたのはそれから4日経ってからだった。
義明はスーベに着いて直ぐに宿をとって、足の治療をして思いっきり寝た。
足の痛みを引きずっていた義明は、いつの間にか足の痛みにも慣れてきていた。
人間は慣れる生き物とは誰が言ったか、その言葉は正しいと実感しつつ5日ぶりに熟睡した義明であった。
はい、今回も短いです。
安全な旅をした義明君、でもそれなりに苦しい思いをしてもらいました。
歩き続けるのって結構疲れるよね。
私も40キロちょっと歩いた事があったけど歩き終った後の足の痛みは凄かったです。しかも途中で休んだりすると疲れも一気に来てエライことになる。
義明君は足の速さはあるけど体力はないので長時間の歩きの旅はさぞきつかったでしょう。
そのうち移動用の足でも出してあげようかな~