補足の始まり(1)
今回は今日書いた10話の補足です。
短いです。
いつもだけど今回はさらに短いです。
「まず、聞きたい事から……」
ルイツベーンの家に上がった吉田義明は数時間前に夕食を食べたテーブルの上で手を組み、ルイツベーンに話し始める。
「では最初に、こちらの世界では傭兵、戦うことでお金を得る事の出来る職業はありますか?」
「傭兵、あぁ、グンの事だね。普段は畑の収穫やら何かの材料を集める仕事ばかりだと聞くけど猛獣の駆除や盗賊団の捕縛なんかもあるらしいよ。誰かが依頼した面倒な事や危険な事を引き受けるのがグンの仕事だよ。」
それがどうしたね、という顔をするルイツベーン。
「俺は、そのグンって奴になりたい。」
どうすればなれるだろうか、と義明は呆気にとられたルイツベーンに問う。
ルイツベーンは数回瞬きを繰り返し、正気かい?と義明に逆に聞いた。
義明は一つ大きく頷いて真っ直ぐにルイツベーンを見る。
義明の目を見たルイツベーンはティーナが悲しむねと小さく呟く。
「そうかい、確かにアンタは強い。昨日のイージェ族との戦いでそれはわかる。でもアンタ、スラットが全然出来ないだろう?」
スラットとは簡単にいってしまえば魔法の事だ。こちらの世界ではそういうらしい。
「スラットの一つも使えない者がグンになっても報酬の高い仕事は受けられないよ。いや、受けるだけなら可能だ。でも絶対に生きて帰ってはこれない。
相手が高位のスラットラー(攻撃力のある魔法を扱える者、魔法使いのこと)だと相性が悪い。遠くから広範囲にスラットを使われたり数に物を言わせて来たらお終いさ。
猛獣の場合だってそうさ、硬い甲羅や毛に覆われていて、刃物が通らないような生き物もいる。そういう生き物と戦う事が出来るのかい?」
日々の生活で使うようなスラットも扱えないと野営も碌に出来ないよ。そう言って義明に馬鹿な考えは止めなと忠告する。
だが、
「出来るさ。」
義明は自信を持って答えた。
「スラットの方はまだ見たことないから何とも言えないけど、猛獣なら何とか出来る。」
別に自分の持つ二本の剣で倒さなければいけない訳でもない。
それに、森で初めてイージェ族を殺した時に自分の頭に入ってきた或るものが義明に自信を持って言わせていた。
「そうかい、ヨシアキがそこまで自信を持って言えるなら信じてみるとしよう。ここに残ってくれないのは残念だと思うが、それはこちらの都合を押しつけてるだけだね。いいだろう、ちょっとここで待ってな。」
ルイツベーンが立ち上がり家から出て行く。
待っていろという言葉に従い、そのままお茶を飲んで待つ義明。
十分ほど経っただろうか、ルイツベーンは大きな布袋を背負って戻ってきた。
「ほれ、これを持っていくといい。」
ルイツベーンは背負った布袋を義明の前にドサリと置いた。
「これは?」
高さ1メートルを超えるその布袋を見てヨシアキがルイツベーンに聞く。
「保存のきく食糧とか、毛布とかだよ。旅に必要な物は大体入ってるはずだよ。」
アンタのお願いってのはこういうことじゃないのかい、と軽く笑いながらいうルイツベーン。
「それとほら、金もいるだろう?」
小さな巾着を義明に渡すルイツベーン。
若干受け取りづらそうな顔をする義明にルイツベーンは、
「それはイージェ族の奴らの金の一部さ、ほとんどは私たちの懐に入ってるから遠慮すんじゃないよ。」
と言って無理矢理義明の手に掴ませた。
「何から何まで、ありがとうございます。」
義明は深く頭を下げる。
そして荷物を持ってルイツベーンの家を出た。
「まったく、明日はティーナが泣くね。」
義明の姿が見えなくなるまで玄関から見送っていたルイツベーンは小さく呟いた。
明日泣くであろう我が孫娘の事を考えると眠れないだろう。
ルイツベーンは大きく息を吐いて家のドアを閉めた。
義明君。夜に旅立っちゃって大丈夫なんだろうか?
ルイツベーンことツベさんが止めないからそこまで危険が無いのかな?
自分で書いたことに軽く突っ込みを入れつつ今回はこの辺で終わりです。
タイトルの(1)は今後の事を考えてやっただけで別に次の話が(2)になる訳ではないので悪しからず。
感想待ってます。
誤字とかあったら教えてくださると嬉しいです。
誹謗中傷は勘弁です。