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110番通報の犬たち

作者: トーイくん

 私は駐在所勤務の警察官。勤続20年以上でベテランの仲間入りをしたが、出世とはまったく縁のない40代の巡査長です。

 警察組織は昇任試験制度が取られていて、優秀な方はもちろん、子供時代にいじめにあっていた人、もっとも記憶の新しいところで警察学校でいじめられていた人、さらに突然偉くなることに目覚めた人がかなり努力をして昇任していきます。ともかくある一組織の昇任なのですが、その影響は大きく、4回ぐらいその壁を越えれば、いわゆる一国一城の主人、警察署長になることもできます。

 話が脱線してしまいましたが、元に戻して続けます。

 私たち地域警察官は本署無線担当からの指示を受け、事件・事故の現場に出向し、事案に対応します。

 

 某月某日午後2時ころ、「佐久島署から平井駐在」と無線連絡が入りました。本職はいつも通り、「平井駐在です、どうぞ」と返しました。「110番事案1件対応願う。」「入電時間14時20分、現場は平井町2丁目27番地、高齢者入居施設ひまわり駐車場、同署において大型の迷い犬が徘徊しており困っているとのこと、貴局は現場に出向し、事情聴取並びに高齢者等の安全確保に努めよ」と司令がありました。簡単に言えば事案内容は高齢者が多数いる、デイサービスを併設した高齢者施設から「大きな犬が20分ぐらい前から駐車場にいる。」という困りごと相談でした。

 本職が現場に到着し、オートバイを施設の駐車場の片隅に止め、本署に無線で「平井駐在現着、これより通報者、及び関係者から事情聴取」と無線を送り、顔を上げると、駐車場に面した4枚の窓の向こう側には、数十人の施設の高齢者が、「お巡りさん危ないよ」と言っていました。

 私は窓に向かって「どこから中に入れますか?」と尋ねると、窓の向こう側の眼差しは、私の問いかけはそっちのけで、一斉に東側に移動しました。

 あわてて横を見ると、すでに成犬の大きさに至ったバーニーズマウンテンドックが私をめがけて一目散に走って来ました。

 バーニーズマウンテンドックとは警察犬で有名なジャーマンシェパードよりも大きく、体重は60キロ以上ある様な犬種です。

 私は片膝を着き、両手を広げて、「ワンちゃん、おいで!」と声をかけました。

 ワンコは、私の手前、数十センチのところでスピードを落として私の腕に中に入ってきました。

 (ちょうどよかった!バーニーズマウンテンをこれまで触ったことはなく、初めての体験でとても嬉しい!)

と思っていたら、先程までは閉まっていた、高齢者施設の駐車場側の窓4枚が開放され、施設の入居者の方や職員の方々が拍手喝采で「おまわりさん!すごいね!大丈夫!怖くないの!」と声をかけられました。

 それからワンコは駐在所から持って行った、散歩ヒモをつなぎ、ワンコの飼い主を探すことにしました。続きはまた次回で・・

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